週末の7月9日−10日の万座温泉でのトレラン紀行はUTMBの対策セミナーという位置づけ。1日目土曜日の夕方と2日目日曜日の午前の二回に分けて合計3時間ほどのレクチャーが行われ、鏑木さんと消化器外科のドクター・Tさん(いつも上級セミナーやレースでご一緒するタフな実力の持ち主!)のお話を聞いた。鏑木さんからはUTMBのコースの概要、装備についての考え方と具体例、これからレースまでの1ヶ月間のトレーニング、現地での過ごし方・食事などについて。TさんからはUTMBのような長距離レースで多くのランナーが苦しむ胃腸の不調への対策について、それぞれお話があった。
結論からいうと、あっと驚く秘訣やコツが示されることはなかったが、これからレースまでを考えるに当たって、頭が整理された。以下はレクチャーを受けての当方のメモ(文責は当方にあります)。
Sponsored link
(UTMBのコースと注意すべきポイント)
・登りよりも下りに注意。主要なピークの後には必ず急な下りがくるが、いずれも長い下りで調子に乗ってペースを上げすぎると大腿四頭筋を使ってしまってレース後半で大いに苦しむことになる。順にLa Charme、Croix du Bonhomme、Col de la Seigne、Arete du Mont-FavreからCourmayeur、Grand Col Ferret、Bovine、Catogne、La Tete aux Ventsのピークからの下りはいずれも要注意。
・直前1ヶ月の準備としては、長時間トレーニングまたは50キロ超のレースへの出場がお勧め。筋肉痛を意図的に発生させて超回復をねらう。コースでいえばキタタンのコースが近い。富士山や日本アルプスなどの高地トレーニングもお勧め。
・追い込む練習は3週間前まで。捻挫、腸頸靱帯炎(ITBS)に要注意。
その他、装備については参加者の方からも具体的な質問が相次いでいたが、当方の印象に残ったのは、状況を予測して想像力を働かせることが大事、とのお話。UTMBに限らないがUTMBの行われるアルプスは下界と高所で天候が大きく異なることがあるほか、天候自体もめぐるましく変わってくる。ひとたび気温が下がると8月とは思えない寒さ。そして100マイルを走るための二昼夜の間にはランナーの体調も変化し、いつもなら持ちこたえられる変調に苦しむ可能性もある。そうした中では、天気予報をはじめとする情報からどのような装備が必要になるか、何を着るべきか、自分で考え、準備しておく必要がある。
以前参加した人の体験談は参考にはなってもそれをそのまま真似しても自分が出るレースに役立つかどうかはわからない。ましてや鏑木さんのようなエリートランナーと同じ準備が一般ランナーに有効とも限らない。だからといって荷物を増やしすぎれば、今度はその重さや動きづらさがレースで足を引っ張る。結局人の話を一通り聞いた後は自分で考えるしかない。そして実はそのことがこうしたロングトレイルレースのおもしろさの一つなのだろうと思う。
(胃腸の具合についての対策)
・長距離レース中の吐き気などは血流が胃に振り向けられない中で胃酸が分泌されることが一因。イブプロフェンなどのNSAID(痛み止めの薬)の大量服用も大きな原因(痛み止めはカロナールなどがお勧め)。薬をつかうなら、世界でのシェアも高いPPI(プロトンポンプインヒビター)というタイプの薬(タケプロンなど)がお勧めだが日本では処方薬となっていて普通には変えない。市販薬のH2ブロッカーのガスター10、アシノンもよい。しかし基本的な対策は運動量を少し減らして様子をみること。
・下痢については腸内環境を日常から整えておくのが有効。オリゴノールの入ったサプリメントが有効。
・攣り、けいれんの対策としては、芍薬甘草湯が有効。一部の胃腸薬(胃腸薬など)にはその成分が一部はいっていて有効。
・その他グリセリンローディングについて、など。
当方にとっての主な気づきは以上のようなところ。