トレイルランニングを始めるとなればまずはバックパックとハイドレーションバッグを揃える、というのが普通かもしれない。しかし、数時間程度里山を走るくらいであれば、あるいは水場や自動販売機で水分を得られる見込みがあるならば、わざわざバックパックとハイドレーションバッグを使わなくても、ボトルとそれをいれるウェストバッグがあればより軽快にトレイルランニングを楽しめる。レースでこのスタイルでいけるなら、より速く軽快に走れるかもしれない。
昨日、The North Faceから発表された新製品、「Endurance Belt」はそんなウェストバッグの新作だ。鏑木さんのセミナーに参加したことのある方であれば、鏑木さんが最近ウェストバッグを使っておられたのをご記憶かもしれない。先月のWestern States 100でも使っておられたあのウェストバッグがようやく発売されることになった。というわけで早速某店にてこのウェストバッグをゲット、使ってみた。
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【THE NORTH FACE】自在にフィット感の調整が可能なウエストバッグ「Endurance Belt」を新発売/トレイルランニングの鏑木毅氏と共同開発 < プレスリリース | GOLDWIN
結論としては、見たとおりの製品でそれを大きく覆される印象は受けなかったが、この帯状のベルトをベルクロで固定するタイプのウェストバッグは非常にフィット感が高く、似たタイプの製品は他社でも少ないので貴重な存在。構造上、お腹の部分をベルトで締めることになるので、その圧迫感は好き嫌いがあるかもしれない。しかし、バックパックを背負えばより広い面積が圧迫されるわけだから、そのあたりまで考えてウェストバッグのメリットを評価できるかどうかが、この製品を気になるかどうかの分かれ目かもしれない。
(各部紹介)
まずはボトルホルダー。本製品にはボトルは付属しないが、一般的なスポーツ用のボトル(例えばNathanの22ozのボトル)であればぴったり収まる。500mlのペットボトルでは細すぎて固定できない。上の写真では背の高い800mlのボトルを入れてみた。これでも収まるが重さがあるため、かなりタイトにバッグ自体を身体に装着しないと揺れを感じる。一般的な600mlのボトルを使うのが無難だろう。
サイドに伸縮するメッシュの部分があるので、、外側のバンジーコードを絞れば少しだけボトルの固定度合いを高めることができる。もっともこのバンジーコードはウィンドシェルなどを挟んで留めておくのが主な目的だろう。そうした使途であればもう少しバンジーコードが太い方が実用的かもしれない。
左側にはベルクロで開閉するポケット。ベルクロでの開閉は鏑木さんの好みだろう。ポケットには伸縮性の高いメッシュが使われているので、多少多めの詰め込むこともできそうだ。
右側のポケットはジッパーで開閉するナイロンのポケット。キークリップも付いている。左側のメッシュのポケットよりは小さめ。ジッパーは止水のものではないのでポケットは防水性はないと思われる。左右のポケットをあわせて2リットルくらいだろうか。
前面。ベルトをベルクロで留める仕組みで、身体の前面に来るところには小さなメッシュのポケットがある。コインを入れたり、ベスパなどのサプリメントを入れたりできそうだ。右側に取っ手のようなものがあり、その後ろにベルクロの留める面がついている。不思議な仕組みだが、取っ手は例えば手がかじかんだ状態あるいは真っ暗な闇夜でもベルクロの開閉がしやすいようにという狙いか。だとすればその下のベルクロの延長は取っ手をベルクロの接着面に巻き込まない、あるいは取っ手を何かに引っかけても容易にベルクロが剥がれないようにするためなのだろう。
バッグの裏側。縦の4本の筋の中にはやや硬めのステー(骨)が入っている。これによって背中を伸ばすコルセットのような効果が期待できるらしい。これはこのバッグの特徴。
(使用感)
着用して試走へ。せっかくなので昨年版の男塾制服で出撃w。
フィット感だが、やはり腰のくびれのあたり、あるいは下腹のあたりをしっかりと締め上げることになるだろう。このように締めれば、800mlの満杯のボトルも気になるほど揺れることはなかった。ちなみにサイズはMでウェスト70-86cmとなっている。
Nathanなどでは呼吸をしやすくするため、腹部で締めるのではなく腰骨のあたりで締めることを推奨しているが、このように荷物も入れるバッグでは腰骨で締めても揺れて上に浮いてしまう。腹をきつく締めるのは最初は抵抗感もあるだろうし、夏は暑苦しいが、バックパックを背負うことに比べればまだ楽、ボトルと最小限の荷物を持ち運べること、を考えればメリットは大きいといえるだろう。
また、同種の製品であるHaglofs/Sprint Lumbar Bagと比べてベルト部分はより細くてソフトな素材だ。ベルトの太さを比べるとEndurance Beltが9センチ、Sprint Lumbar Bagは11センチ。当方の場合だと後者では一番下のあばら骨がベルトに当たる感じがするが、前者ではその不快感はない。このあたりも日本人の体格に合わせて開発がされた成果なのだろう。
もし、このようなボトルホルダー+2Lくらいのポケット、を生かせるシーンが思い浮かべられるなら、この製品は買いだろう。前述の通り、里山での数時間程度のトレイルラン、途中でコンビニや自動販売機に立ち寄れるコースでの長時間のトレーニング、エイドが多くてあまり距離が長すぎないレース、といったあたりがそのしーんとなるだろうか。多少腹部を押さえるような感じはあるがそれを上回るメリットがあると思えるかどうかを考えてはどうだろう。
もっとも、なかなかそうした使用シーンを思い浮かべることは意外と難しいかもしれない。レースに出ようとすれば、日本国内の人気レースは40キロ以上10時間越えといったものが多い。また、トレーニングもつい本格的はハイキングコースを選んでしまい、給水を得るのも一苦労だったりする。そうしたシーンではやはりバックパックが必要だ。
されにより軽快な選択肢としてはNathanの例えばこれの方がより軽快で締め付ける感じもあまりしない。荷物は鍵と小銭とジェル少々、水は補給が容易ならこちらの方がより楽かもしれない。
もっともこうした用途にかかわらず、鏑木さんのファンであれば手に入れておきたいというニーズも高いかもしれない。