[report] 調子は上がってきた、Champex lacで仮眠・UTMB2011 Part 6

まだ続く参戦記。

(Grand Col FerretからLa Foulyまで10キロ、標高差1000m弱のダウンヒル)

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Grand Col Ferretからの下りは比較的緩いが、夜9時を過ぎて漆黒の夜。霧が濃く、コースを示す反射材料がつけられたポールやテープのコースサインの次をみつけるのにも苦労するほど。LEDライトも手元は明るいが霧には弱い。コースに詳しそうで的確に進んでいくランナーの集団について下っていくが、集団ロストとならないように念のためサインを確認しながら進む。

暗いせいもあって周囲の様子はよくわからない。応援の人たちがいるのか、と思って近づくとカウベルをつけた牛の群れだったりする。斜面をトラバースして長く下りながらの標高と距離の表示をみながら残りを推測する。少し気合いが入ってきたせいか、左膝の違和感も気にならなくなってきた。抑えながらも走る割合を増やし、時折ランナーを追い抜いていく。しかし、林道のような比較的変化の少ないパートになってきたこともあって、このあたりで初めて強い眠気を感じるようになった。

標高2000mよりも下がってくると霧も晴れる。途中でヘッドライトの電池切れのサインが出た。もう数時間は持つはずだが、念のためここで交換。eLiteで手元を照らしながら自力で交換するが、大丈夫か、と声をかけてくれるランナーもいる。

La Foulyの大エイドが近づいてくると、トレイルは里山のシングルトラックになる。ここでhagiさんが前にいるのに気づいて声をかける。前半をかなり抑えて進んだところちょっと遅すぎるようだったので、からはペースを上げて大勢抜いてきたのだという。抑えてきたとはいえ、80キロ過ぎからグンとペースアップとはさすがサハラ砂漠の経験者。ついて行こうかと思ったが、途中のちょっとした登りでの速さについて行けず、背中を見送った。

23:06にLa Foulyの大きなエイドに到着。Arnuvaのエイドからは4時間弱かかったことになる。

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(叱咤しあったり、無言で支え合ったりしながら前へ前へ)

スタートから110キロ地点にあるLa Foulyのエイド。Arnuvaから長くかかるせいかここで制限時間に間に合わなかったのか、あるいは当方が眠気を感じたように疲労が強まってきてか、ここでリタイアしたランナーは多かったようだ。

昨年もそうだったが、レース後半の夜のエイドはランナーの休憩も長くなり、エイドステーションは混雑しがち。このLa Foulyも賑やか。ここには仮眠施設はないが、ベンチで横になれれば一休みできるかと思っていたが難しそうだ。ここでのりさん、ohaさんが眠そうな顔をしながらベンチに腰掛けているのを見つけた。当方が補給をしながら話しを聞くと、「ここがChampexだと思ってた」という。途中から二人で一緒に進むことになり、おぼろげな記憶でGrand Col Ferretから下りた先は124キロ地点のChampex lacのエイドだと思っていたら当てが外れたということらしい。休みたいならこの先のChampex lacのエイドに仮眠施設があり自分もそこで休むつもりであること、このままここで眠そうにベンチにかけているだけでは時間がもったいないこと、Champex lacまではうまくすれば2時間ほどで着くこと、などを話して、3人で一緒にエイドを出る。当方も補給して最後にカフェイン入りジェルとベスパを投入。

23:33にLa Foulyのエイドを出発。どうしてもエイド滞在が長くなりがち。当方は補給とカフェインが効いたのか、身体は動くので数人のフランス人ランナーのグループの後ろについてゆっくりのジョギングでスタート。

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ここから先は、Champex lacへの登り口まで10キロ弱の緩い下りが続く。昨年ここを通ったときはまだ明るく、川沿いのトレイル、途中の大きく開けた牧場の中の村(まるで「アルプスの少女ハイジ」に出てくるような)、Praz de FortやIssertといった村の古い造りの民家の軒先を通り、住民の皆さんから声援を受けるなど厳しいコースの中で楽しめるパートだった。しかし今回は深夜で周りの様子もよくわからない。ランナー同士で集団で走ることが多かったが、言葉は交わさなくても一緒にこの時間を共有している連帯感を感じる。しかし、当方は一人で未知のトレイルを進むのもワクワクして好きだ。集団についてはしばらくして集団を追い越すことを繰り返しながら前へ進む。

Issertのあたりで、前を一人で進むフランス人と並んだところ「俺たちはUTMBデュオだね」と話しかけられた。こちらも会話をしようとするのだが、英語はわからないという。近くに住んでいるわけではないらしいので、どの地方から来たのか聞いてみるが、返事を聞いてもフランスの地理には疎くてよくわからず。

そんな話をしているうちに、ロードから右側(西側)に延びる登り口に到着。標高差で500mほど登るとChampex lacの大エイドに着く。

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(調子は戻ってきた感じ、しかし慎重に仮眠を取る)

Champex lacへの登りでも調子は悪くなく、悪くないペースで登っていくことができた。このあたりではそれなりにランナーを抜いた気がする。トレイルの両脇には切り株に直接何か動物の像を彫ったりしてあるのが珍しい。

途中でスタッフによる通過チェックが行われるが、このときChampex lacまでは「ワンミニット」(one minite)だというので、あれもうすぐかと思ってよく聞くと、「ヴァンミニ」(vingt minites)、すなわち20分だった。おそるべしフランス語。

高台の上に明かりの付いた建物が見えてくるとChampex lacだ。深夜だが応援の人も多い。2:15に到着。

124キロ地点のChampex lacのエイドに到着すると、この先標高差700mの登りとなるBovineはトレイルに危険な箇所があるため、Martignyの街に下りるとの案内があった。スタート前にでその噂があることは聞いていた。かなり長い直登となるらしい。スタッフに説明を受け、ついでにここでレースの結果を聞き、キリアンが優勝、2位にスペインのIker、3位にセバスチャンが入ったこと、鏑木さんが7位に入ったことを聞いた(鏑木さんがフィニッシュしたのはLa Foulyでのりさん、ohaさんと話していた頃だ)。

Champex lacには仮眠施設があり、ここで少し仮眠することを予定していた。しかし夜間は混み合うはず。補給の前にまず空きがあるか確認しようと裏手にある仮眠施設へ。二つのテントが張られていて、合わせて40人くらいは寝られるだろうか。しかし満員のようだ。しかし、一人がちょうど起き出したので出るのを待ってそこに横たわる。毛布がないのでフル装備のままで仰向けになり、耳たぶにつけるアラームをセットして目を閉じる。スタッフのおじさんが毛布代わりに親切に梱包材(いわゆるプチプチ)を切ったものをかぶせてくれたのがありがたかった。

アラームが鳴って起きる。30分のアラームをセットしていたのだが、5分ぐらいしか経っていない気がする。あっという間に眠りに落ちていたようだ。エイドステーションに戻って水と食べ物で補給をしていると、ベンチに腰掛けて眠そうにしているのりさん、ohaさんを発見。ちょうどこのエイドについたばかりだという。裏手のテントで仮眠することを勧めると、横になって寝てしまったらもう起きられないから、という。あまり長く休みすぎない方がいいよと伝えて、エイドを出た。

あとで聞いたが、日本人のランナーの方々でも途中で調子を崩し、Champex lacで仮眠して回復を待った方は少なくなかったらしい。順調に進めた場合でも、全体を考えればこのChampex lacのエイドで少し仮眠を取るのが賢明な気がする。とはいえ、時間帯によっては込んでいることもあるだろうから、プランBは考えておく必要はある。

午前3時20分、1時間5分の滞在後にエイドを出る。ここからはコース変更のあったパートだ。

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