[report] Pacing, not racing. また一つ学んだ信越五岳トレイルランニングレース2011ーその2

9月24日土曜日に行われた信越五岳トレイルランニングレース/Shinetsu Five Mountains Trail 110kの参戦記の後半です。

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(5A乙見湖から6A大橋まで)

・66.6キロ地点の5A乙見湖ではドロップバッグに念のため寒さ対策で長袖シャツ、防寒用のグローブ、足の濡れ対策で替えのシューズとソックスを置いていたがいずれも使わず。斑尾の2Aから袴岳のあたりのぬかるみで足は濡れていたが、今のところ水抜けしたようでマメの徴候もないので、シューズとソックスはそのままでいくことにした。結局ヘッドライトと替えの電池、指先の出たグローブを付け替えた他はジェルなど補給食の補充のみ。補給食は後半用をひとまとめにしていたが、念のため別にしていた予備のジェルも全て持っていくことに。結局この日は最後までにジェルに換算すれば17−18個くらいのジェルは摂っただろう。このあたり、手際よく補充を手伝ってくれたhogeさんはじめ皆様に感謝。

・5Aを出て階段を上ると蕎麦畑があり、抜けるとしばらくフラットなトレイル。脇に神社の鳥居がいくつかある。気持ちよく走った後に再び林道が3キロほど続く。相変わらず、前後に人は少なく、林道に入ってからは気配も感じなくなる。

・73キロ地点で給水だけができるポイントが現れ、ここから黒姫山への登山道に入る。ジェルを摂って水で流し込む。スタッフの方は当方の白いウェアをみて「キリアンですね」と一言。ネタが通じてうれしい。

・この1350m位の地点からシングルトラックの登りに入る。特にピークは踏まないが最高で1650m位まで上がる。この黒姫の脇を抜けるコースは毎回ぬかるんでいて、今回も激しいぬかるみ。下りに転じてからはガレた感じの箇所も時々現れる。相変わらず誰とも会わず、すっかりのんびりしていたスタッフの方が当方が現れてびっくりされていたほど。前は遠そうだ。

・古池を回っていよいよロードに出る手前で後ろで人の気配。ペーサーの方と一緒に現れた上宮さんだった。下りを譲った。

(6A大橋から8A戸隠スキー場ゲストハウス岩戸まで)

・ロードに出てから81.0キロ地点の8A大橋まではすぐ。8Aでは温かいスープとそれまで食べていなかったチップスターをいただく。デンプンを摂ってもエネルギーへの貢献はあまり期待できないが、塩気と食感と腹持ちがありがたい。上宮さんやそのあとから来たランナーより先にこっそり出発。さかさ川林道の始まりまでのロード1.5キロほどをせっせと走る。

・相変わらず前には誰もみえないが、随神門前の参道約1キロは気合いを入れて走る。まだ観光客の皆さんがたくさんいる。

・87キロ地点の7A鏡池の手前で精力的な毎朝の走り込みに励んでおられる強者、naoyaさんに会う。コース序盤で会っていたのだが、その時と比べるとやや辛そうだ。ほどなく上宮さんも到着。当方がトイレに行っているうちに皆さんは出発。後ろから追いかける。

・7Aを出たあとの緩い起伏は昨年も一昨年も非常に辛かった記憶があるが、今年は結構スムーズにいける。ほどなくnaoyaさん、上宮さんに追いつき、先を行かせてもらう。

・92.3キロ地点8A戸隠スキー場ゲストハウス岩戸に到着。JUKUCHOがいたので皆の様子を教えてもらう。水を補給して蕎麦を食べていると、「キリアンが蕎麦食ってる!」と元気な声。3Aで分かれていたTatsuroさんだった。なんとここへ来て追いつかれたのだ。しかし、距離が長くなるほど強さを発揮するTatsuroさんに対してここまでリードを維持できたのだから、今日の自分もよく頑張った。サポートをされている奥様ともお目にかかり、これまでの様子についてお話しする。

・さらにHagiさんまでやってきた。Wさんのペーサーをされていたのだが、5Aから猛烈な勢いで進んでいるとのこと。ここまで一人旅だったのがずいぶん賑やかになってきた。

(8A戸隠スキー場ゲストハウス岩戸からフィニッシュまで)

・TatsuroさんやHagiさん、Wさんより先にエイドを出た。この時点ではまだ日は落ちていない。昨年は7Aを出たらライトを点けていたのでそれだけ早くここに来ているということか。
・冷え込みに備えてアームカバーをつけ、ウィンドジャケットを着る。このあと、夜になって冷え込むが身体を動かしていればこの程度で十分しのげた。グローブはSalomon/XT wing 2 SLab Glovesを使ったのだが、手の甲にしまってあるフィンガーカバーをつけると予想以上に暖かくて快適。使えるシーンは限られるだろうが、冬以外、高山以外で昼間から夜にかけて同じ装備で走らなければならないという場合には有効だと思った。
・コースはやがて瑪瑙山の山頂に向けた急な登りになるが、ここはどうにも身体が重くて進まない。腕で膝押しをするのにも限界がある。しかし元気なランナーが2,3人やってきて抜かれた。ここへ来てスタミナが切れたか。最後にピークを目指してスキー場のゲレンデを登ったが、ここで上宮さんに追いつかれる。ピークからいよいよ下りに転じると上宮さんとペーサーはすごい勢いで駆け下りていく。当方はここで一昨年も昨年もITBS(腸靱帯炎)の膝外側の痛みが出て、その後のレースで苦しんだだけでなく、年明けまでのレース、トレーニングが思うようにできなくなってしまった。今回はそうならないよう膝に負担をかけないようにしながら下りる。後ろからTatsuroさんがやってきてこの下りで抜かれた。「ライトが暗くないですか」とご指摘。下ったあとで確認したら、明るいモードに切り替え損ねていた。ご指摘に感謝。
・ゲレンデを下りてからのトレイルはガレ気味でぬかるんでいるところや沢も多く、夜の走行は注意を要する。ここも慌てず慎重に。相変わらず前後に人は少ないが2人くらいには抜かれたか。それでもここへ来てペースアップは難しい。自分のペースを維持するしかない。
・飯綱山の西登山道を下りきると103キロ地点の給水ポイント。スープをいただき、最後のジェルを摂って水で流し込んで再出発。
・残り7キロちょっとだが、ここからがめっぽう辛い。変化の少ない真っ暗な林道を走っていると距離感や時間の感覚がぼやけてくる。2,3人と抜いたり抜かれたり。Garminで残り距離を確かめながら走り続ける。幸い、先ほどのゲレンデ下りを抑えたおかげか膝には痛みはない。林道が終わる最後のところで、一人でランナーを迎える石川弘樹さんが立っておられた。
・飯綱高原ハイランドホールの前の下り坂に到着。目の前にフィニッシュゲート。ここでジャケットを脱ぎ、フィニッシュへ。最後はUTMBのフィニッシュでキリアンがしたようにバックパックを高く掲げてみたが、このネタに気づいた人は少なかった。14時間36分48秒でフィニッシュ。長い旅は終わった。今回も見事入賞を果たされたDMJのYamayaさん、Tomoさん、そしてJUKUCHOに迎えていただく。さらに先にフィニッシュしていた上宮さん、Tatsuroさんとも握手。あとでリザルトをみると、思ったほど大きく差をつけられたわけではなかったようだ。終わってみれば昨年の15時間34分より1時間近く短縮できていたのだが、5A乙見湖以降の後半の45キロでもしっかり30分くらいはタイムを短縮できていたのに我ながら驚いた。
(Pacing, not racing.)
この信越五岳トレイルランニングレースとは当方は相性がいいのか、昨年に続いて自分の力を最大限発揮することができたように思う。長いレースだが、いや長いレースだからこそ、前後のランナー、仲間のランナーのことを意識して彼らがどんな思いで走っているのだろうかと考えることになる。しかし、だからといってそれに合わせて自分がペースを上げ下げするレースをしてしまっては、全体を通したパフォーマンスは下がってしまう(場合によってはリタイア)ことになるだろう。仲間や周囲に思いを馳せつつも、自分が取るべきペースを計算し、それを維持し続けること。自分の体調、疲労度を見極めて補給や休憩、ペースダウンなどで適確に対応すること。そんなことの重要さを改めて体感した。
ウルトラレースでは序盤から飛ばしすぎないように、とはよくいわれるが、ある程度自分の限界まで力を出し切ろうとおもうなら、飛ばしすぎないといっても楽に行けばいいということにはならないだろう。ある程度苦しい思いはしながらも、それをレース全体を通して苦しみ続けられるレベルで維持する。そんなレベル感を探ることとそれを実際に維持することに経験と工夫がものをいうということになるだろうか。
Camera Roll-0
(5A乙見湖に入る拙者、hogeさんがドロップバッグを持って待機してくれていた。写真はTatsuroさんご提供。)
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