[note] 「週250キロは走るよ」Anton Krupickaへのインタビュー

Anton Krupicka(アントン・クルピチカ、愛称トニー)はコロラド州ボルダーに住む27歳の大学院生でウルトラ/トレイルランナー。輝かしいレースでの結果はもちろんのこと、上半身裸で長髪をなびかせながら走るそのスタイルは一度見たら忘れられないインパクトがある。


昨年の夏になる前に脚にケガをしてレースから遠ざかっていたトニーだが、今年はニュージーランドやスペインのレースに参加、7月にはUTMBを上回るハードなトレイルレース、Hardrock 100にも参加の見込み。

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そんなトニーの最近のインタビュー記事が読んでいろいろ興味深かったので、いくつかのポイントをご紹介。トレーニングの他、アメリカとヨーロッパのトレイルレースの違いについての話しも興味深い。

ANTON KRUPICKA “CREO QUE 200-250km SEMANALES ES UNA DISTANCIA SUFICIENTE DE ENTRENO” | Sportvicious


以下は、上記リンクの後半にある英語版の記事を当方が抄訳したものです。


(ベアフットランニングについて)

・慣れていないまま裸足で走るとケガをする恐れがあるか
AK:裸足で走るときは、芝生や砂浜などの自然なところを選ぶことが大事だと思う。裸足で走るのは自分の身体を知り、より自然で効率的なフォームを練習することにある。裸足で走ることは脚や足に負担がかかり、筋肉や腱が鍛えられるには時間がかかる。裸足で走るなら短い時間から始めて少しずつ増やしていくことが大事だ。

・裸足でランニングすることのメリット
AK:短く速いストライド、重心での着地など効率的で自然なフォームを身につけることができる。ランニングに伴う衝撃を骨格ではなく筋肉や腱で受け止めるようになる。このようにフォームを変えて脚を鍛えることで軽量なシューズをはけるようになり、結果としてランニングをより楽しめるようになる。特にテクニカルな不整地でのトレイルランニングで効果が大きい。

(レースとトレーニング)

・UTMBに出場するか
AK::おそらく近いうちに、たぶん2013年には参加すると思う。UTMBは是非出たいレースの一つ。

・2010年のWS100でコースレコードを更新した際のトレーニングについて
AK:6ヶ月前から毎週23~28時間程度、獲得高度の合計で30,000-35,000フィート(9,144-10,668メートル)程度を走っている。こうして継続的にトレーニングを積むことで精神的にも肉体的にも強さを身につけることができた。ただ、Geoff (Roes)もコースレコードを上回るタイムで自分よりも6分も早かった。Geoffには負けたが、GeoffやKillianのような世界最高のランナーとレースをすることができてとても満足している。

・週に300kmを超えるトレーニングをすることもあるか
AK:週300キロを超えることもよくあるが、数年前からは走った距離ではなく、走って登った獲得高度の合計を気にするようにしている。トレイルの急坂をたくさん走って登るほうが、平坦なトレイルを長く走るよりも楽しいし、得るものも大きいと思っている。ただ長く続けるには週200-250kmくらいにとどめたほうが適切だと思う。

(アメリカとヨーロッパのカルチャーの違い)

・アメリカのトレイルレースでもヨーロッパのように必須の装備品を持つようにすべきか
AK:全く必要ないと思う。山岳でのレースでは個人の責任を重んじるべきだと思う。装備については各々が必要かどうかを判断できると思う。とはいうもののレースでは、限界まで追い込んでも頼ることができる体勢を当てにしているのも確かだ。トレーニングでは、長時間のランニングでも最悪の事態を常に避けられるように限界をわきまえておくことが重要。レースは追い込んでも頼れるサポートが得られる特別な機会だが、レース主催者にこの種のサポートを期待するのは間違っていると思うし、自分もほとんどの場合世話になることはない。装備を最小に切り詰めるときは、必ずサポートクルーをつけるようにしている。

・アメリカの長距離レースは平坦なコースが多いか
AK:そんなことは全くない。北米にはあらゆるタイプのレースがある。例えばHardrock 100は非常に急峻な山岳地帯を走るレース。確かにWestern States 100は相対的にフラットなコースであり、一般にヨーロッパではもっと獲得高度が大きいレースが多いと思う。ただ、それでも北米にはあらゆる種類のレースがある。もっとも有名なWestern States 100とLeadville 100という二つのレースがたまたま比較的フラットというだけのことだ。

・アメリカのレースでメディカルチェックがあることについて
AK:決してわずらわしいとは思わない。100マイルレースでは途中で2、3回体重を量るくらいでレースを通じても合わせて1分もかからないくらいだ。主催者がランナーの健康状態に注意するのはいいことだと思う。ただ、必要不可欠なことだとは自分は思わない。

・アメリカのランナーがヨーロッパで結果を出していないのはなぜだと思うか
AK:ヨーロッパでレースに出たことがないので確かなことはわからない。ただ、女子ランナーはヨーロッパでも活躍しているといえる。また、トレイルランニングはアメリカに比べてヨーロッパではずっとプロフェッショナルなものだと思う。ヨーロッパでは山岳スポーツの文化が根付いており、山岳走のレースには山岳スポーツの才能あるアスリートがたくさん集まってくる。アメリカにやってきて100マイルレースで活躍しているヨーロッパの選手(Killian Jornet、Julien Chorier、Ryan Sandesなど)をみると、どの選手もサロモンのサポートを受けていて、レース前からアメリカに滞在してコースや雰囲気に慣れる余裕がある。アメリカの男子ランナーでUTMBに備えてそのような準備ができた選手はまだいないが、このような準備は非常に重要だと思う。Kilianは(優勝した)2011年のWestern States 100でこの準備は十分できなかったようだ。しかしKilianには前年2010年の経験もあり、何よりも世界中のどの山岳ランナーよりも傑出した才能の持ち主であることを考えれば、この一般則は当てはまらないのだと思う。

(痛みや故障)

・レース中の痛みについて
AK:100マイルレースであれば、大体70マイルあたりから苦しくなってくる。これはランナーであれば誰でもそうだろう。痛みについては無理に押さえ込まず、受け入れるが、痛みに沈み込まないようにしている。長いレースにおいてはたくさん苦しみがあり、その点に注意を向けても意味はないということを知る必要がある。誰もが痛みを感じ、それは特別なことではない。自分は目の前のこの瞬間に集中するようにして、フィニッシュのことは考えないようにしている。レースをできるだけ小さな何とかできると思える部分に分割して考える。

・故障した場合にはどのように対処しているか
AK:休養を取るのは好きではないけれど、少し休むだけでも大きく違う。加えて、自分が住んでいるボルダーでは診療所やマッサージ、鍼治療なども整っている。これらを組み合わせることで、ただ休養しているよりもずっと早くトレーニングを再開できる。

– Posted from my iPhone

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