週末の9月16日(日)、信越五岳トレイルランニングレースが開催された。110キロという本格的なトレイル・ウルトラランニングレースであり、600人程度と少なめに限られたランナーの数やペーサー制度などアメリカ的なウルトラマラソンの要素を取り入れたこのレース。
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今年は快晴の天気に恵まれて午前5時30分に斑尾高原をスタート。気温はどんどん上昇し、3A妙高高原兼俣(38.5キロ地点)から8キロ程度続く関川沿いの登りの砂利道は照りつける日光と暑さで多くのランナーが苦しむことになった。まだレース序盤・中盤の3A、4A黒姫高原(51.5キロ地点)、5A乙見湖(66.6キロ地点)でも、熱中症や脱水などで相当数のリタイアが出た模様。
レースはこのレースを3連覇している相馬剛さん、昨年上位の西城克俊さん、石井克也さん、中辻悠貴さん、武藤尚一郎さん、山屋光司さんに加え、関西の原良和さん、中野正道さん、新潟県の貝瀬淳さん、アメリカから参戦のJustin Angleが上位集団を形成。序盤では相馬さんがリード。
しかし、5A乙見湖では中野さんがトップに立ち、貝瀬さん(トップから+6分)、原さん(+7分)、武藤さん(+14分)が続く展開に。山屋さんは5A乙見湖、Justin Angleは4A兼俣でリタイア。
後半に入って、原さんが追い上げてリードし、11時間30分で優勝。このレースが110キロとなってからの相馬さんの優勝タイム(2010年11時間7分、2011年11時間5分)と比べると、今年のコンディションの厳しさが窺える。2位には貝瀬さん(+6分)、3位に武藤さん(+10分)が続いた。相馬さんは13時間で14位のフィニッシュとなった。
女子では2010年2位、2011年3位の小川比登美さんが序盤からリード。その後も着実にペースを刻んで14時間23分で、2位の多田恵里佳さんに30分以上の差をつけて優勝した。
過去3回のレースで上位を占めてきた選手達にくわえて、原さんや貝瀬さん、中野さんといったランナーが強さを発揮したのが印象に残った。優勝した原さんは今年だけでも大阪府チャレンジ登山大会・山岳マラソンの部(ダイトレ)で2位、野辺山優勝、おんたけウルトラ100k優勝など、ウルトラマラソンで強いベテラン。2位の貝瀬さんは今年はキタタン3位、美ヶ原(35キロ)優勝と実力を発揮し始めている若いランナー。信越五岳が名実ともに日本を代表するウルトラ・トレイルランニングレースとしてレベルが上がってきていることを印象づける結果となった。
一方、トレイルランニングらしい温かいストーリーも。閉会式でのレースディレクター・石川弘樹さんの挨拶の中では、上位を競う選手の中にペーサーが思いがけずペースを大幅に落としてしまったのにもかかわらず、一人でレースで競うのではなく、ペーサーとともに安全にフィニッシュまで向かうことを選んだ選手がいたとのこと。競技のレベルは上がり、スポーツとしての魅力が増しながらも、自然の驚異と魅力、仲間との連帯を大切にするカルチャーがトレイルランニングを魅力あるものにしていることを再確認した。
(男子)
1位 原良和 11:30:34
2位 貝瀬淳 11:36:29
3位 武藤尚一郎 11:40:17
4位 中野正道 11:41:00
5位 西城克俊 11:50:22
6位 前沢宣夫 12:01:49
7位 加藤淳一 12:14:07
8位 中辻悠貴 12:18:04
9位 石井克也 12:18:45
10位 吉田賢治 12:31:51
(男子優勝の原良和さん)
(女子)
1位 小川比登美 14:23:09 (総合28位)
2位 多田恵里佳 14:58:38
3位 藤本周子 15:01:48
4位 岡さゆり 15:17:04
(女子優勝の小川比登美さん)
(観戦記)
2009年の第1回以来3回連続でこのレースに参加してきた当方だが、今年はエントリー開始からわずか10分足らずで定員となってしまったエントリーに間に合わず。昨年のレースで最終盤に競り合ったTatsuroさんのペーサーをさせていただくことになり、このレースに今年も参加することができた。
朝5時半のスタートは例年シャツ一枚では寒いのだが、今年はさほどでもない。空は雲一つない快晴。その後、ペーサーのバスに乗って2A、杉野沢の関川登りの終わりなどでランナーを応援したが、どんどん気温は上昇。
10時半にはペーサーバスは5A乙見湖に到着。当方も小一時間ほど仮眠して備えるが、午後になってやってくる選手は口々に暑さと渇きを訴えている。強いランナーでもここでリタイアしたり、横になって長い休憩を取る人が多数。
当方の相方のTatsuroさんも想定から大きく遅れて15時20分過ぎに5Aに到着したが、かなり辛そう。UTMBからの疲れが残ってもいたようで、ここで無理せずリタイア。残念な気持ちは痛いほどわかるが、ここは無理しない方がいい。Tatsuroさんは春のさくら道、UTMFなどロングレースを連戦し、長いレースで強さを発揮するランナーなのだが、そのTatsuroさんをこれほど苦しんでいるのをみて改めて今年のコンディションの厳しさを実感。
当方はその後も5A乙見湖に残って午後6時半の関門締切までランナーを迎えたが、日が傾いてくる後半になるほど、到着するランナーも迎える応援、サポートの皆さんもドラマチックになってくる。日が暮れて、トレイルの中からヘッドランプをつけたランナーが近づいてくるのを迎えるのは少し感動する経験だった。