[DC] あらゆる出来事を受け入れて(その2)・スタートから30マイルまで 岩佐のウェスタン・ステイツ/Western States 100 レースレポート #WS100

今年も6月29日の暑い土曜日に開催されたウェスタン・ステイツ/Western States Endurance Run (WS100)。当サイト・岩佐も24時間以内の完走賞、「シルバーバックル」を手にすることができました。

以下に岩佐のレースレポートをお送りします。2回目のこの記事ではスタートからRobinson Flat(30マイル地点)まで。全部で3回程度にわけてお届けします。

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ウェスタン・ステイツ/Western States 100 データ、マップのまとめ

以下、レースのスタートからフィニッシュまでを振り返るが、その元となるデータなどは次のとおり。

  • 昨年2012年の岩佐のラップタイム(25:27で完走)
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  • 今年2013年の岩佐のラップタイム(23:44で完走)
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  • 今年2013年の岩佐のGPSログ(分散したデータをつなぎ合わせたもの、序盤のLyon-Red Star間でGPSデータの取りこぼしあり、Green Gateから先の1マイル強のロストを含む)

  • コースの概要図とプロファイル(詳細は大会サイトにて)
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  • エイドステーションの一覧と完走タイム別ラップ一覧

Aid Stations – Western States Endurance Run

確かに暑いがまだまだ元気、慎重に進む ー スタートからRobinson Flat(30マイル地点)まで

当日の6月29日土曜日の朝は3時過ぎに起床。シャワーを浴び、用意していたウェアに着替える。前日の朝の感じではスタートの朝5時からしばらくの日が昇るまではひんやりするので、半袖のTシャツと頭にはバイザー。ウィンドジャケットはなしで良さそうだ。同じ理由で水分補給のためのハンドボトルはスタート時点では一本だけ。シューズは昨年ミニマリスト系シューズで後半の脚のダメージに苦しんだので、無難にMontrail/Bajada。Bajadaは履いていて特別な楽しさというのはないが、長距離のレースではアッパーの軽さと適度なクッションのあるミッドソール、トラクションのあるアウトソールのバランスがとれていてなかなかこれを上回るものが見当たらない。ただアッパーの耐久性は高くないので使い古したものを本番で使うのは避けたい。朝食では当方は海外ではレース中も含めて日本食を持ち込んだりはしないのだが、今回は鏑木さんからいただいたアルファ米があったので熱湯で戻して頂戴する。

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スタート時のウェア。右はベイエリアの俊足日本人ランナー、Yazさん。来年は是非WS100に出てください!

午前4時前にスタート地点近くで最終チェックイン。ここでようやくナンバーカードと計測チップを受け取る。ナンバーカードをアメリカ流に数字のところだけ見えるように折りたたんで安全ピンでランパンに止める。コーヒー少しとオレンジジュース、マフィンをもらって軽い朝食。ジェルを一袋とってエネルギー補給を駄目押し。サブリナさん、Yazさんとも握手。地元のカリフォルニアのランナーは選手だけでなくクルー、応援でもたくさん駆けつけているので、次々と顔見知りとの話に花が咲くようだ。

昨年同様、特段の緊張感もなく、ワイワイガヤガヤするうちにスタート時間が近づくと皆スタート地点に移動。スタート地点はランナーだけでなく、家族や仲間も直前まで一緒にいる。選手が400人弱と小規模だからできるアットホームな感覚だ。そして午前5時に大きな声援に送られてスタート。

スタートからの3.5マイルはスキー場の斜面につけられたダートの作業道の登りが中心だ。コース最高地点の2,565m (Watson’s monument)まで標高差900mを登る。ここはあまり慌てる必要はないのでほとんどを早歩きで1時間弱。天候の悪かった去年は雨や霰で手がかじかんでひどく不安だったが、今年は爽やかな朝で途中で素晴らしい日の出を見ることもできた。

ここから先は少しづつ下ってからしばらく標高2000mあたりで小さなアップダウンのあるトレイルを走る。例年このパートでの雪が話題になるが、昨年に続いて今年もトレイル上には全く雪はない。時折雪解け水が流れてシューズの中まで濡れるが快適なトレイル。朝も早いのでまだ暑さはそれほどでもなく、スピードを出したくなるが、あまり慌てない。この辺り遠くにはまだ雪を被ったシェラネバダの山々が見える。

鏑木さんからは暑さに注意が必要なのは30マイル地点のRobinson Flatから、というアドバイスをいただいていたが、これは上位を狙う鏑木さんのペースの話。当方は用心してその手前でドロップバッグがおける最初のエイドではRed Star Ridge(16マイル地点)に暑さ対策のアイテムを用意した。8:06amに到着(昨年は8:18am、24時間ペースは8:20am)。シャツを半袖からタンクトップに替え、頭はバイザーから白のキャップと首筋に垂らす日よけ(いわゆる二等兵スタイル)。首元には日本のドラッグストアで買った水に濡らして使う首巻き。腕に着けるアームカバーはとりあえず腕につけずにウェストバッグに括り付けておく。ハンドヘルドのボトルを追加して二本体制に。

エイドは昨年同様に涙が出るほどのホスピタリティでエイドに入るなり、ボトルに何をいれて欲しいか、と聞かれて答えるとスタッフの方がボトルを預かって補給してくれる。その間、ランナーはエイドで好きなものを食べろ、というわけだ。

ちなみにエイドは充実していて、バナナやスイカ、メロン、ぶどうなどのフルーツ類のほか、小さく切ったPBJ(ピーナツバターとジャム)やターキーのはさんだサンドイッチ、エイドによっては具を薄いパン生地で巻いたラップもあった。そのほか、チョコやキャンディー、ポテトチップスやプレッツェルなど。さらにエイドによっては温かいスープもある(ちなみにスープの具はいらないので汁だけが欲しい場合は”broth”(ブロース)と伝える)。またエナジージェルはスポンサーのGUの製品を必要なだけ取ることができる。ドリンク類は水やGU Brew(スポーツドリンク)、コーラ、スプライト、マウンテンデューなど。ボトルへの補給は水かGUだが氷をいれてもらうことができる。サプリメント系では、電解質がカプセルに入ったソルトピル(スポンサーのS!CAPSのもの)をとることができる。

当方の場合は、ハンドヘルドボトルには水とGUを一本ずつ、ジェルを常にエイドを出る時に4、5個持つように補給。ソルトピルは1〜2時間おきに一個(ソルトピルの効果については正直よくわからないところはあるのだが)。エイドではついスイカやメロン、ぶどうなど水分が多くて食べやすいものに手がのびるが、これらは量をとってもカロリー補給の効率が悪く、食物繊維が胃腸の負担になるので、取り過ぎは禁物。お気に入りはPBJサンドイッチを飲み物で流し込むことだが、今回は後半は流石に手が伸びなくなった。

今回、ジェルの補給はかなり積極的に行い、スタートから1時間後には補給を始め、25分から30分おきに一個(100kcal)を取り、できるだけ前倒しで取るようにした。これはかなりうまく行ったが、後述のようにレース後半になってくると暑さや脱水で胃の機能が落ちたためなのか、ジェルをとってもすぐにパワーが出てくることはなくなった。

今年のように暑い日には積極的に水を頭や首筋にかけて冷やすことが必要。貴重な水なのでひしゃくでぶっかけるというスタイルではなく、スポンジに含ませた氷水を頭や背中に垂らす、あるいは濡らしたタオルを背中にかぶせるというスタイル。エイドの度にこの水浴びをして、コースでも小さな沢があるとそこで水を被ったりといった具合。これのおかげでかなりリフレッシュすることができた。

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30マイル地点のRobinson Flatでスポンジで水をかけてもらう。Photo by Auburn Journal

暑さ対策を整えてRed Star Ridgeを出るとしばらくは標高2100mくらいで小さなアップダウンが続く。尾根上なので日差しが照りつけてだんだん暑さが増してくる。体感的にはあまり暑さは感じなかったが、時々トレイルの出っ張りにつま先を引っ掛けるとふくらはぎが攣りそうになる。さらにしゃがんでシューズに入った小石を取ろうとすると強烈な攣り。さらにはジェルを取ろうと少し腰をひねっただけで攣り。攣りのせいなのかこの区間で転倒して膝を擦りむく。攣りの原因は複雑と聞くが、大量の汗で体内の何らかのバランスが崩れて神経筋肉系の刺激が生じたのかもしれない。擦りむいた時に少し腰掛けて手持ちの大正漢方胃腸薬(主成分の芍薬甘草湯が攣りに即効性があると言われている)を飲んだ。即効とまでは感じなかったが、次第に攣りは意識しなくなったので効果があったのかもしれない。

またこの区間から早くも足裏にマメ(肉刺、blister)の感触が。某社製品を足に塗り込むなど対策をしていたのだが、汗で濡れたのか、エイドでの水浴びで濡れたのか。当方に限らず、今回はマメに悩まされたランナーは少なくなかったようだ。この先どんどんひどくなるばかりで痛みも増す。ただ、レース中は処置をしたところで痛みが収まるわけではないので、この後もフィニッシュまでマメについては無視、痛みに耐えながら前に進む。

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Duncan Canyonに向けて走りやすいトレイルを進むがすでに日差しがじりじりと照りつける。

標高1900mくらいまで降りてきたところでDuncan Canyon(24マイル地点)に到着。9:32am(24時間ペースは9:50am、昨年は9:48am)。WS100のコースの難所の一つは中盤に控えるキャニオンへ下りてから登り返すことの繰り返し。数え方にもよるが当方はここから大小4つのキャニオンがあると頭にいれていた。すなわち、小さめのDuncan Canyon、大きめのDeadwood Creek、大きめのEl Drado Creek、小さめのVolcano Canyon。これらを全て越えると、「レース」がいよいよ始まる62マイル地点のForesthillにたどり着く。Duncan Canyonのエイドからいよいよ下りが始まるがここはまだ標高差200mくらいの下り。ただ脚を温存すべくステップを小さく、着地する足裏に重心がくるように心がけて慎重に下る。小さな沢を渡ると今度は登り返し。標高差で400mくらいの登りだがここは無理に駆け上ったりせず、早歩きのパワーハイクで。

登り切るとしばらくフラットなトレイルになり、大きな歓声が聞こえてくる。29.7マイル地点のRobinson Flatは比較的アクセスがしやすいので、ランナーをサポートするクルーや応援の人たちで大にぎわいだ。10:56am到着(24時間ペースは11:20am、昨年は11:18am)。今回はタイムを意識しすぎないよう、終盤までは24時間完走ペースとの差を意識しないようにしたが、こうして振り返ってみるとコンディションのよかった昨年よりペースを抑えているつもりなのに到着タイムは早めだ。走力が上がったのか、あるいは単に興奮して気持ちが高ぶっていただけなのか。

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30マイル地点のRobinson Flatを出るところ。Photo by Sabrina Okada

去年はここで長居してしまったが、今年は最小限の補給のみ。クルーをして下さったサブリナさんとYazさんにも会う。今回ボトルを預かってもらったくらいで物理的な補給を頼ることはなかったが、待っていてもらえたことで大きな励みになった。エイドを出ようとすると、ランナーを待つクルーや応援の人たちの多さに圧倒された。ざっと見て5、600人はいただろうか。

体感的には去年に比べてもかなり余力を残した感じ。悪くない一日の始まりだ。

(続きます)

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