[DC] あらゆる出来事を受け入れて(その3)・30マイルから62マイルまで 岩佐のウェスタン・ステイツ/Western States 100 レースレポート #WS100

6月29日土曜日に開催されたウェスタン・ステイツ/Western States Endurance Run (WS100)で24時間以内の完走賞、「シルバーバックル」を手にした。当サイト・岩佐のレースレポートをお送りします。3回目のこの記事ではRobinson Flat(30マイル地点)からForesthill(62マイル地点)までの中盤の模様をつづります。たぶん後1回で完結します。

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深いキャニオン、谷底は暑いが前後のランナーをに比べればまだ元気ーRobinson Flat(30マイル地点)からForesthill(62マイル地点)まで

  • コースの概要図とプロファイル(詳細は大会サイトにて)
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Robinson Flatのエイドステーションを出て、応援やクルーで来ているたくさんの人たちの間を抜けるとLittle Bald Mountainまで小さな登りが続く。Robinson FlatのエイドからZiplockの袋にいれてきたPBJ(ピーナツバターとジャム)のサンドイッチを食べながら歩く。まとまった登り区間はあわてて走ることもないので、こうしてエイドでの滞在時間を減らすのがベストプラクティスといわれている。ただこの辺りでも既に食欲は減退気味。エイドでも水分の多いスイカやメロンに手が伸びてしまうが、これらはエネルギーには乏しい上、食物繊維が多く消化に負担となってとりすぎると胃のトラブルを招く。PBJサンドイッチを噛みながらボトルの水で胃に流し込む。

Little Bald Mountainsをすぎるとコースは開けたトレイルに。かつて山火事に見舞われたエリアもあり、焦げ痕が生々しい。さらに進むと未舗装の林道に。ここからLast Chance(43.3マイル地点)までは林道とトレイルをつなぎながら進むがおおむね緩やかな下りでテクニカルな箇所もない。ただ日差しを遮るものがないパートが多く、暑さが次第に身体に堪える。長く続く下りも太ももの大腿四頭筋や足首には負荷となって立ち止まりたくなってくる。当方もここでは無理にスピードを上げないが立ち止まることはしないようにして進む。前後のランナーとは時々抜いたり抜かれたり。しばらく地元のランナーで横須賀の海軍基地にいたことがあるという人と方を並べて走り、背中を見送った。

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序盤の日向を慎重に走る当方。Photo by Facchino Photography

昨年はこのあたりでもかなりたくさんのランナーと一緒に走った記憶があるが、今年はランナーの姿が少しまばらな気がする。暑さのせいで全体にペースがゆっくりなのかもしれない。Miller’s Defeat(34.4マイル)の通過は11:55am(24時間ペースは12:25am、昨年は12:24)、Dusty Corners(38マイル)の通過は12:42am(24時間ペースは12:55am、昨年は1:06pm)。

Dusty Cornersを出て、いよいよ大きなキャニオンに下ると思っていたが、小さなアップダウンを繰り返しているうちに次のエイドステーション、Last Chance(43.3マイル地点)に到着。1:37pm(24時間ペースで1:55am、昨年は2:04pm)。キャニオンが始まるのはもう一つ先だった。この辺りも給水はハンドヘルドのボトル2本をエイド到着までに飲みきってしまっていて、毎回一本は水、一本はスポーツドリンク(GU Brew)で補給。氷を入れてもらうと最初は冷たくて握っていられないがすぐに普通に持てるようになる。補給食もエイドの食べ物はなかなかのどを通らないが、ジェルは長くても30分に一個は必ず摂っている。エイドステーションに着くごとに冷たい氷水を首や背中にかけてもらうのが気持ちよく、この辺りはエイドステーションで水をかけてもらうことを動機付けに先に進んでいたようなものだ。

Last Chanceを出ると、いよいよ二つ目のキャニオン、Deadwood Creekまで下りるトレイル。標高差で550mは下ってキャニオンの底の沢にかかる吊り橋を渡って400mほど登る。この区間では前後にあまり人を見かけない。太ももを使いすぎないように小さなステップで力を使わないように気をつける。キャニオンの底へと下りていくにつれて次第に湿気を含んだ熱気に包まれる。吊り橋近くで何人かのランナーと一緒になる。吊り橋の先に小さな沢があり、ここで水浴びをして身体を冷やしたり、沢水で水分を補給したり(飲めるらしい)するとよいのだが、当方は足裏のマメが気になって積極的に水浴びをする気になれず。登り返しはパワーハイクでリズムよく登るだけだが、先行するランナーよりは少し力が残っているようで何人かを抜いた。登りの途中でボトルが空になり、そこからエイドまでが遠く感じた。登り返した先にあるエイド、Devil’s Thumb(47.8マイル)到着は2:55pm(24時間ペースは3:15pm、昨年は3:17pm)。

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キャニオンの谷底では沢を渡渉する。水浴びをして体を冷やすにはもってこいのポイント(写真はDuncan Canyon)。Photo by Facchino Photograpy

エイドを出ると息つく間もなく次の大きなキャニオン、El Drado Creekへと下っていく。標高差で730mほどの下りを5マイルほどかけて下っていく。尾根から斜めについたトレイルを谷底へと下りるので斜度はそれほどでもなく、ペースは上げられそうだがここは我慢。ここで数人のランナーが猛スピードで下りていくのにすれ違ったが、谷底にたどり着くまでにすっかりペースを落として歩いているのを見かけた。かくいう当方もこの長い下りが終わる頃にはとうとう太ももに鈍い重さを感じるようになった。谷底にかかる橋のたもとに設けられたEl Drado Creekのエイド(52.9マイル)には4:04pmに到着(24時間ペースで4:20pm、昨年は4:22pm)。ここも湿気を含んだ熱気がたまっている。チキンスープをもらって濡れたタオルで身体を冷やす。ここでエイドのボランティアをされていた日系の年配の男性に声をかけられる。生まれは東京なのだとか。24時間完走ペースにおさまっている、と励まされてエイドを出る。

この谷底から登り返してMichigan Bluffまでは約3マイル、標高差500mほどの登り。楽ではないがMichigan Bluff(55.7マイル)まで来るとようやく前半の難所はクリアできた気がする。エイドへの到着は5:05pm(24時間ペースで5:20pm、昨年は5:20pm)。昨年に比べればかなり余裕を残してここまで来たような気がする。ここはたくさんのクルーやエイドでにぎわっていて、少し元気が出てくる場所だ。サブリナさん、Yazさんのほか昨年もここMichigan Bluffでお目にかかった現地にお住まいの斉藤さんご夫妻に出迎えていただく。エイドでは昨年と同じく小学生くらいの男の子たちがドリンクのサービスをしてくれていた。エイドのボランティアの方で昨年ここを通過した当方を覚えているという方もいて感激。名残惜しいが、斉藤さんからいただいたペットボトルの冷たいお茶を一口いただいてリフレッシュしてスタート。

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Michigan Bluff(55.7マイル)のエイドにて。久々に大勢の人でにぎわうエイドでほっと一息。Photo by Sabrina Okada

Michgan Bluffからは走りやすいロードと林道の緩い登りがあったあと、Volcano Canyonへと下る。標高差で300mほどの下りだが、前の二つの印象が大きいせいかあまり覚えていない。登り返しのトレイルが終わって舗装路に出るとBath Roadのエイド(60.6マイル)。舗装路の登りは60マイルを走ってきた脚には堪えるがゆっくりと走る。この先のForesthill(62マイル)はアクセスしやすくエイドも大規模、ペーサーもここから付くことができるのでたくさんの人でにぎわうエイドだ。さらにここから自分のランナーが走ってくるのを待ち受けようとペーサーの人たちがBath Roadへと歩いてきている。

たくさんの人たちから”Good job!”を声をかけてもらいながら舗装路を進んでいると当方のペーサーをしてくれるRoxanaの切れのいい声が聞こえた。この暑さの中、なんとかここまで持ち堪えてまずまずの時間でたどり着き、Roxanaの声を聞いて当方の気持ちもほぐれる。Foresthillまでのロードを一緒に走る間に、彼女はボトルに何を補給するか、ドロップバッグから何を取り出したいか、などをテキパキと聞いてくる。当方も二つ持っているボトルの一個をここに置いていくかどうか、夜に向けてジャケットを持った方がいいか、を彼女に聞いてみる(結局ボトルは一個を置いていき、夜も気温は大きく下がらないのでジャケットは持たないことにした)。Foresthill(62マイル)到着は6:37pm(24時間ペースは6:45pm、昨年は6:48pm)。喧噪の中をエイドに到着して体重計に乗り、食べ物を口にしてジェルを補給。その先にサブリナさんやYazさん、斉藤さん、この先のGreen Gate(80マイル)からのペーサーをお願いしているShyamal、Roxanaのボーイフレンドで昨年のWS100を完走しているWilly、さらにはそのランナー仲間のみんなに迎えてもらい、気づけば10人ほどのクルーに囲まれている。昨年はほとんど一人でこの辺りを走っていたのに比べると大変なにぎわいだ。特にここで何か具体的な補給や世話をあてにしていたわけではないのだが、メンタルな力をもらったのは間違いない。

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Foresthillに到着。全身に冷たい水をかけてもらって体を冷やす。Photo by Sabrina Okada

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Foresthillで。気づけばたくさんのCrewに囲まれて装備を整える。Photo by Sabrina Okada

この先から一時間半ほどで日が落ちるので頭から垂らす日よけは外し、代わってヘッドランプを装着、予備電池をウェストバッグに詰め込む。電池が減ったGPSウォッチを取り替え。二つのボトルのうち一つを置いていく。替えのシューズやソックスを用意していたが、特段の不具合はなく替えたところでマメの痛みの酷さを確認するだけだし、この後もRucky Chuckyの川の横断で胸から下は全部濡れることがわかっていたのでシューズもソックスもそのままで行くことに。Willyに冷たい水を太ももにかけてもらって軽くマッサージをする。

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Foresthillに用意していたドロップバッグ。夜に備えてシャツやソックス、シューズの替え、ヘッドライトなどを用意していたが実際には本文中にあるようにヘッドライトとGPSウォッチを替えるくらいで済ませた。

Roxanaをはじめクルーのみんなに追い立てられるようにしてあっという間にForesthillを出発。この暑さでかなりペースは抑えてきたつもりだが、ここまでは昨年同様に24時間完走ペースに追いつく形でくることができた。体感的にも水分も糖分もうまく補給できていて胃等の不具合もない(この間、2時間おきくらいにエイドで電解質補給のためのソルトピルを念のためにもらって飲んでいる)。ただ、後になってタイムを振り返ってみると、4つのキャニオンを通過する時間はそれまでのペースよりも少し落ちているように思える。

コースはここから比較的アップダウンが小さくなり、走りやすいトレイルの割合が増える。順位やタイムを狙うならここからの38マイルをどれだけ元気に走ることができるかが重要だといわれている。昨年はここからジェルを飲み込もうとすると吐き気がし、眠気を感じるようになって大きくペースが落ち、その後も走れるはずのパートで腫れた足首や太ももの鈍痛で歩く区間が長くなってしまって自滅した。さて今年はどうか。昨年と違って今年は二人のペーサーに交代でこの先を一緒に走ってもらえる。実際、当方にとっての今年のウェスタン・ステイツのドラマは日が落ちてきたここから夜明けまでの間に起こる。

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