[DC] トランスグランカナリア・ある島のレースの歩み/Transgrancanariaは3月1日開催

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【編者より・3月1日に北アフリカ・モロッコ沖のカナリア諸島グランカナリア島(スペイン)でトランスグランカナリア/Transgrancanariaが開催されます。125キロなどのコースを走るこのレースは、Ultra-Trail World Tour(UTWT)のシリーズ戦ともなっています。米国のウェブサイト・RunTrampがこのレースの始まりから今日の歩みまでを紹介した記事を同サイトの許諾を得て日本語に翻訳したものを以下に掲載します。】

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Transgrancanaria: A Brief History of an Island Ultra

トランスグランカナリア・ある島のレースの歩み

2014年2月5日 文・RunTramp 翻訳・.com

RunTramp-logo フェルナンド・ゴンザレス/Fernando Gonzálezとその仲間がグランカナリア島の西海岸と東海岸をつなぐ古道を走ることを思いついたのは11年前のことでした。そんな長距離のトレイルレースはカナリア諸島はおろか、スペイン国内でもまだ存在していなかった頃のこと。質素に始まったトランスグランカナリアは、いまや長距離トレイルレースの世界では最も熱狂的なイベントの一つになりました。

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トランスグランカナリアのコースの風景。 © Transgrancanaria

ゴンザレスは2003年10月に開催された第一回大会を振り返ります。「最初は64人のランナーが67キロのコースを走りました。素朴なもので、コースの目印は石、友人達に水の入ったボトルを持って立っていてもらったのがエイドステーション、通過タイムは手書きで記録。どんな感じか分かるでしょう?」そんな質素な大会は大きな成功を収め、選手の熱意に支えられてゴンザレスはこの大会をもっと素晴らしいものにしたい、と考えるようになります。「とにかく死に物狂いでしたよ、次のレースが待ちきれなくて、2004年3月には二回目のレースを開催したんです。今度は島の南から北に向かうコースです。」山を愛する気持ち、トレイルランニングというスポーツの急成長、そしてカナリアの地元の人たちの熱意に支えられて始まったレースなのです。

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第1回トランスグランカナリアのエイドステーションの様子。© Transgrancanaria

カナリア諸島はアフリカ大陸北東部の沖合に浮かぶ火山列島。この島々は今や山岳ランニングのメッカとして知られるようになりました。カナリア諸島の島々は大半が海岸沿いの岩壁や黒い砂の海岸からまっすぐに切立った地形です。トレイルランニングシューズをはいて、朝方に大西洋の冷たい水に触れてからそのまま山のピークや尾根、渓谷に走っていくことができます。年間を通じて過ごしやすい気候である上に、それぞれの島の地形により島独特の気候があります。カナリア諸島で2番目に大きいグランカナリア島の場合は月面のような灼熱の荒野があるかと思えば、しっとりと湿り気を帯びた松の樹林帯が草原の谷間に続いていて、ほんの数キロの間に大きく植生が変わります。いわば、日当りのいい二つの海岸線の間に小さな山脈が挟まれているようなものです。フェルナンド・ゴンザレスはこの島で生まれ育ちました。

兄が山に登るのをうらやましく思いながらみているうちに、ゴンザレスは山を走るようになります。「僕が育ったのはちょうど町と山の間にあるところです。いつも山のスポーツをしていた兄たちをみていたせいで、僕も山が好きになりました。」16歳で彼はアドベンチャーレースのRAIDという大会に出るようになります。現在のスペインのトップランナーがこの大会から生まれています。そしてゴンザレスは全国大会、国際大会、ついにはワールドカップにまで出るようになります。レースにはトレイルやテクニカルな岩場でのランニングが含まれており、彼はこのパートにどんどん熱中します。そして初めて山岳レースに出場して、これこそが自分の求めていたものだと確信したといいます。「まさに恋に落ちたんです。」

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トランスグランカナリア。ランナーはコースを進む。© Transgrancanaria

トランスグランカナリアというイベントが成長していることは、参加者の地理的な広がりをみれば明らか。初開催から年を追うごとに評判は広がり、最初はグランカナリアの島中に、そしてカナリア諸島の島々に、そしてスペインの国中に広がります。2008年にはイベリア半島から多くのランナーが参加するようになりました。しかし、全てを変えたのは伝説的な山岳ランナーが現れたことです。「マルコ・オルモが参加してくれたのがトランスグランカナリアの転換点でした。」とゴンザレスはいいます。「オルモはこのレースにとって初めての『国際的な』ランナーで、彼の性格と謙虚な態度にこの島のランナーだけでなく住民みんなが引きつけられたのです。」で二度優勝したオルモがスタートラインに立ったことで、トランスグランカナリアはついに本物のレースになったといえます。しかしゴンザレスにとっても、ランニングのことを知らないグランカナリア島の関係当局に、トランスグランカナリアがこの島にとって有益で誇るべき存在であることを認めてもらうことは容易ではありませんでした。

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伝説のランナー、マルコ・オルモ/Malco Olmoがトランスグランカナリアを走る。© Transgrancanaria

「この島の人の多くは、レースを開催するとか走るとか、ただの遊びだと考えていました。」それでもゴンザレスは何度も島の当局や地元の企業に協力を求めて足を運びました。「経済的には本当に苦しい時期がありました。レースの経費がどうやっても賄えなくて、もう止めてしまおうかと思ったこともあります。」しかし、彼や彼の仲間が長距離レースを走るスピリットを持っていたことが幸いでした。つまりじっとその場から離れずに耐え忍んで、苦しい時も闘い続けること。たとえ今までの蓄えに手を付けることとなっても耐えること。「僕たちは夢の実現のために自分の財布からお金を出し合って凌いだこともありました。きっと実現する、と思っていたんですね。」そしてついにその信念を理解してくれる人たちが現れ始めます。

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トランスグランカナリアのシーン。© Transgrancanaria

The North Faceが2011年にスポンサーとなることを決めたのは、トランスグランカナリアにとって大きな一里塚となりました。レースは一躍世界に知られるようになり、UTMBやUTMF, TNF 100 といったThe North Faceがサポートする他のイベントと肩を並べる存在です。世界の最前線に躍り出たのです。さらに、今年産声を上げた国際的なシリーズ戦であるUltra Trail World Tour()に加わることになります。ゴンザレスにとっては長年苦労して育てた作物を収穫するような誇らしい気持ちです。「何年もの間とても苦労してきましたからね。労いの言葉をかけてもらったような気分ですよ。UTWTのシリーズ戦に入ったことは光栄なことです。」しかし、ゴンザレスにとっては夢がついに実現したとはいうものの、本当に大事なことは彼が愛するこのスポーツに深く関わっているとみんなが実感することなのだといいます。「トランスグランカナリアが開催できるのは、我々がこの大会を愛しているからというだけではなく、我々みんながランナーでもあるからなんです。私たちは世界中のレースのことを気にかけています。このスポーツがどこへ向かおうとも、支えていくつもりです。」

2014年のトランスグランカナリアは3月1日に開催されます。

詳細についてはトランスグランカナリアのウェブサイトをご覧ください。


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