このままだと、来年2015年のウルトラトレイル・デュ・モンブラン / Ultra-Trail® du Mont Blanc®に国内からエントリーできるランナーは例年より少なくなるかもしれません。エントリー希望の方は要注意です。
UTMB(およびCCC、TDS)のエントリーは12月17日に始まりますが、11月26日現在、UTMBのウェブサイトにエントリー資格に必要なポイントが認められる日本国内のレースとして掲載されているもののうち、2014年に開催されたものはUTMFなどわずか5つしかなく、2013年と比べても大幅に少なくなっています。
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これはUTMBのポイントに認められるための手続きが変わったためで、おそらく日本国内の大会主催者の多くがそのことに気づいていないためと思われます。
【スパトレイル(群馬県)、美ヶ原(80k)が申請手続きを進める見込みです。2014.12.8】
【信越五岳がUTMB資格レースリストに掲載されました。2014.12.8】
【ハセツネ・カップ、えびの高原エクストリームトレイルとスリーピークス八ヶ岳トレイルの対応方針について追記しました。2014.12.4】
【国内のレースの対応やUTMFのポイント対象レースリストとの関係について追記しました。2014.11.28】
【追記・
- 当サイトコメント欄に寄せられた情報によればSPA TRAIL(80k)、美ヶ原トレイルラン&ウォーク in ながわの80kmの部はUTMB資格レースとなるべく手続きを進めているとのことです。
以上、2014.12.8】
【追記・
- 信越五岳トレイルランニングレースは、ITRAによるポイント認定が完了し、2014年開催分がUTMB資格レースとなりました。UTMBのウェブサイトでもすでに資格レースのリストに掲載されています。
以上、2014.12.8】
【追記・
- UTMB資格レースへの申請状況についてのアップデートです。ハセツネ・カップは、12月1日のニュースでITRAへの申請を行うと発表しました。2015年UTMBのエントリーが始まる12月17日に間に合うことを目指している模様です。またえびの高原エクストリームトレイルも、12月3日のニュースで申請したことを発表しました。九州で開催される数少ない長距離の大会であることを考慮したとのことです。一方、スリーピークス八ヶ岳トレイルは、12月1日のニュースとして申請はしない方針を明らかにをしました。「来年度以降もUTMBへの申請予定はなく、「地に足をしっかりついた手作りの大会」を続けて参りたい所存」とのことです。
以上、2014.12.4】
【追記・
- 当サイトが国内のトレイルランニングレース主催者に取材したところでは、信越五岳トレイルランニングレース、上州武尊山スカイビュー・ウルトラトレイルは、2014年開催分がUTMB資格レースとなるよう手続きを進めているとのことでした(このほかにも取材に対する回答待ちのレースがあります)。
- ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)は、2015年のUTMFへのエントリーに当たって日本の資格レース一覧(PDF)を発表しており、その中に「UTMFはUTMBの資格レースリストを共有しています」との記述があります。その意味についてUTMF大会事務局に問い合わせた結果は次の通りで、結論としては日本国内各レースはUTMBの定める資格レース申請をする必要があるとのことです。
- UTMBの資格レースリストにあるレースは、UTMFの資格レースとして共有している
- UTMFでは独自に国内のレースについて自らの資格レースリストに加えている
- UTMBの側で資格レースの申請手続きが改められた今後は、UTMFの資格レースリストにある国内レースが自動的にUTMBの資格レースとして共有されることはない(注・従来はUTMFの資格レースリストにある国内レースはUTMB側で自主的に自身の資格レースに加えられていたそうです)
以上、2014.11.28】
UTMBエントリーに必要なポイントとは?
UTMB(およびCCC、TDS)にエントリーするためには、世界各地で開催されるトレイルランニングのレースを完走することで、UTMBに必要となる走力や山岳での行動力を持っていることを示す必要があります。このため、UTMB大会事務局では世界各地のトレイルランニングのレースについてその距離や獲得高度などをもとにしてそのレースを完走すると得られるポイントを決め、リストにして発表しています。このリストをもとにして、160kmのUTMBであれば、エントリーするには2年以内に3つ以内のレースで合計8ポイント以上を獲得することがエントリー資格とされています(そしてエントリーした人を対象に抽選が行われます)。
この辺りの仕組みの詳細は当サイトの記事をご参照ください。概ね50kmくらいまでのレースは1ポイント、100km以内のレースは2ポイント、100kmのレースは3ポイント、160km以上は4ポイントに相当するようです。
UTMBエントリーポイントの対象レースとなるには、大会主催者が自ら有料の審査を申請する必要がある
従来、UTMBのエントリーポイント対象レース(資格レース)となるための手続きは「おおらか」なものでした。日本国内についていえば、大会主催者とは関係なく、一般の個人がUTMB事務局にメールで「日本のこのレースは資格レースになるか?」と問い合わせると、UTMB事務局の側で確認して、そのレースを資格レースのリストに加えていました。
しかし、今年からはUTMBの資格レースとなるための手続きは、国際競技団体であるITRA(International Trail Running Association)の審査を経るようになりました。UTMBのウェブサイトによると次のような手続きとなります。そしてこの二つの手続きは2015年のUTMBエントリー開始(12月17日)までに完了している必要があります。そして、この申請手続きは大会主催者が行う必要があり、レースに参加した人が申請することはできません。
- 資格レースとなるかどうかの審査はまずITRAが行います。資格レースとなることを希望する大会の主催者は、まずITRAに申請(ITRAのメンバー権<大会規模により年50–500ユーロ>を持つ場合は無料、持たない場合は審査料として100ユーロ)。ITRAは申請した大会についてあらかじめ定めた判断基準に基づいて、ポイントを認定します。
- ITRAが認定したポイントがUTMB事務局に通知され、UTMBは再度自身で各レースについてポイントを認定し、各レースにリザルトの提出とUTMB資格レースに求められる倫理ルールを受け入れることが求められます。
現時点では日本で2014年に開催された資格レースはわずか5つ
現在ではUTMBのウェブサイトに掲載されている資格レースのうち、日本で2014年に開催されたものは次の5つ(Oxfam Trailwalkerは0ポイントのためカウントせず)。
- UTMF(4ポイント)
- STY(3ポイント)
- Oxfam Trailwalker Japan(0ポイント)
- OSJ奥久慈トレイル(2ポイント)
- OSJおんたけウルトラ100マイル(4ポイント)
- OSJおんたけウルトラ100km(3ポイント)
一方、2013年開催分は資格レースのリストにあるものの、2014年の開催分がリストに載っていないのは次のレースです。
ITJ(2、<2014年は中止>)、平尾台(1)、道志村(1)、スリーピークス(1)、菅平(1)、北丹沢(1)、野沢温泉(2)、大雪山(3)、えびの高原(2)、エクステラ日光丸沼(1)、美ヶ原(2)、八ヶ岳スーパートレイル(4, 3, 1、<2014年は中止>)、白馬国際(1)、信越五岳(3)、北海道アウトドアフェスティバル(1または2)、OSJ安達太良(1)、上州武尊山(2)、斑尾(1)、ハセツネ(2)、OSJ氷ノ山(2)、信州戸隠(1)、神流(1)
UTMBのウェブサイトでは「ITRAによる審査は完了しているがUTMB事務局側の作業が遅れているためリストに掲載されていないレースがある、それらについては数週間のうちにリストへ掲載する」とされています。しかし、アメリカや中国について2013年と2014年の資格レースの数を比べると現時点で大きな差はなく、日本についてだけUTMB側での作業遅れが発生しているわけではないようです(当サイトでもこのような事情について調査しています)。
その意味するところは?国内のレースでエントリーに必要なポイントを満たすつもりだったランナーは要注意
さて、「2014年に国内で開催された資格レースが5つしかない」ということは、日本国内からUTMBにエントリーする場合、どのような影響があるでしょうか。
すでに昨年UTMBを完走、あるいはアメリカなどで100マイルレースを完走済み、という経験豊富な方は何も心配はいらないでしょう。しかし、「国内で出場したUTMFと今年の信越五岳、またはハセツネで8ポイント」というつもりだった方は目算が外れる可能性があります。また、CCCやTDSにエントリーするための2ポイントを国内の40kmくらいのレース二つ完走で、というつもりだった方も目算が外れる可能性があります。
目算が外れては困る、という方もおられるはず。そうした方はこの記事を続けてごらんください。
若干の感想:抜け目なく戦略的なUTMBの事業展開、スポーツにビジネスを持ち込むのは邪道なのか?
今までなら、日本で何も気にしなくても日本の主なトレイルランニングレースはUTMBの資格レースとなっていて、そのおかげでUTMBという夢の舞台に立てたというランナーも少なくないはずです。おおらかに資格対象レースを広げていくことで、UTMBへの門は開かれ、UTMBに参加したランナーが大いに感激し、ますますUTMBの人気は高まっていきました。
このようにUTMBの世界最高のトレイルランニングレースとしてのブランドが確立されるまでには時間をかけた取り組みと、綿密な戦略、リスクを厭わない冒険がありました。趣味人が愛好するマイナースポーツだったトレイルランニングに、国際競技団体を作り、競技の種類やレベルに一定の物差しを設けることで、世界的なスポーツの盛り上がりを作り出す。UTMBが進めようとしているそうした事業展開は年々勢いを増しています。例えば、UTMB以外のレースがITRAという国際競技団体の作る標準的な評価であるポイントをもとに参加資格やレースの評価を決めることも考えられるでしょう(UTMFはすでにそうした動きに連なっているといえます)。
こうしたUTMBの動きをどのように評価するか、人によって意見は分かれるでしょう。すでにUTMBを経験している人は、昔のUTMBはよかったのに今はビジネスを持ち込んで好きになれないと思うかもしれません。しかし、世界にはUTMBが用意した物差しを手掛かりにして、新たにトレイルランニングの大会を作り、自分の国、自分のトレイルを世界の人たちに知ってもらおうとする人たちも多くいて、そうした新しいトレイルに足を運び、楽しもうとするランナーもたくさんいます。
上記のように、11月26日時点で日本で2014年に開催されたレースで資格レースとなっているのは実質5つ。一方でオーストラリアでは26、中国(香港を含む)は22、アルゼンチンが20となっています。足元のトレイル利用のマナーやエチケット以外にも日本のトレイルランニングの課題はあるといえそうです。
このままではUTMBにエントリーできなくなりそうな方へ:日本の大会主催者に連絡してみましょう
このままでは当てが外れて来年のUTMBにエントリーできない、という方もおられるはず。そうした方にできることとしては、出場した国内のトレイルランニングレースで資格レースとなっていないレースの主催者に、「UTMBの資格レースとなる申請手続きをすぐにしてください」とお願いすることが考えられます。
しかし、申請をするかどうかはそれぞれの大会主催者が決めること。わざわざ英語のサイトにアクセスして、必要なデータを揃えて有料の申請手続きをするかどうかは、大会主催者の考え方次第でしょう。
日本国内の大会主催者でUTMB資格レースに申請してみようという方へ:とっかかりは次のような手順で
有料で手間はかかっても、あのUTMBの資格レースとなることで自分の大会に箔がつく、ポイント目当てで参加する人が増えるかもしれない、という考え方もあるでしょう。そうした大会主催者の方は次のような手順で早急に手続きをすれば、2015年のエントリーに間に合うかもしれません。
ITRAへの申請に関する説明のページはこちら。ポイント認定の基準や、申請にはコースのGPXファイルが必要なこと、申請の審査料について説明があります。
そして、ITRAに申請をするにはITRAのトップページから大会主催者用のアカウントを作成します。下の赤丸の部分をクリック。
そして画像の右側の「Create an account」をクリック。ここから先は、「ITRAメンバーとなってメンバー会費を払って審査を受ける」か「ITRAメンバーにはならず、レースの審査のみ受ける」かどちらを選ぶことになります。
アカウントを作った後、自身のレースについてITRAのウェブサイト上で登録することになります。その手順については、ITRAウェブサイトに掲載されているPDFファイル形式の手引きが参考になります(コピーはこちら<PDFへのリンク>)。