肩に食い込まず長距離でも快適・RaidLight Ultra Olmo 5L レビュー #PR


今年春、RaidLightから登場したばかりの新しいUltra Olmo 5Lを使ってトルコのトレイルランニングレース、Iznik Ultraの130kmのレースに参加しました。その使い心地や機能を体感したレビューをお送りします

ボトルを胸に配置するバックパックの先駆者、RaidLightのUltra Olmoシリーズ

当方がRaidLightというブランドを初めて知ったのはUTMBに参加するためにシャモニーを訪れた2010年の夏でした。多くのフランス人のランナーが身につけていたバックパックはチューブがついた二本のボトルを胸のポケットに挿し、背中には小ぶりの荷室という作り。当時は珍しく感じたのを覚えています。

今年春発売のRaidLightの「Ultra Olmo 5L」はあの時当方がシャモニーで見た独創的なバックパックが進化したアップデート版です。

Ultra Olmo 5Lを後ろから見たところ。

Ultra Olmo 5Lを後ろから見たところ。

そのバックパックの名前となっているマルコ・オルモは60歳を目前にしてUTMBで二連覇を成し遂げた伝説的なランナー。マルコ・オルモも積極的に挑戦していた砂漠レースでは多くの荷物を背負い、長時間にわたって行動しなければならず、背中だけでなく体の前部に荷重を分散させることで体への負荷を和らげるというテクニックが知られていました。

Ultra Olmo 5Lを前から見たところ。

Ultra Olmo 5Lを前から見たところ。

それをトレイルランニングにも応用することを提案した先駆者がRaidLight。その後、ボトルや小物を胸のチェストハーネスに設けたポケットに収納するというコンセプトは様々なブランドの間に広まっていき、RaidLightのUltra Olmoシリーズに似たバックパックが発売されるようになりました。

デザインと構造

Ultra Olmo 5Lのデザインの最大の特徴は600mlのドリンクボトル二本が左右に収納できるチェストハーネス。荷重の多くを占めるボトルを対前部に持ってくるのはシンプルな考えですが、このUltra Olmo 5Lでは左右をつなぐストラップはチェストハーネスではなく、ボトルの入るポケットに取り付けられています。この種のバックパックではいくらチェストストラップをしっかり締めても、満タンのボトルの収まったポケットがボトルの重みで揺れることが避けられません。しかし、発想を変えて左右のボトルポケットをチェストストラップでつなぐことで左右のボトルの揺れ、胸元のチェストストラップの締め付けからくる不快さが軽減されています。

Ultra Olmo 5Lのチェストストラップを上からみたところ。ボトルポケットの前をつなぐので胸に密着しない。

Ultra Olmo 5Lのチェストストラップを上からみたところ。ボトルポケットの前をつなぐので胸に密着しない。

さらに、ボトルポケットは完全にチェストハーネスと一体化させずに下半分は自由に動く構造。これもボトルの揺れが直接体に伝わることを避け、快適さにつながっています。

ボトルポケットの下半分はチェストハーネスから自由に動くようになっている

ボトルポケットの下半分はチェストハーネスから自由に動くようになっている

もっとも、この構造はボトルが左右にしっかり収まっていることが前提となるので、ボトルを使わない、あるいはソフトフラスクのような柔らかいボトルを使うと、チェストストラップの締め強度を使いながら調整する必要が出てくるでしょう。

ボトルを入れない場合はチェストストラップの締め方に工夫が必要

ボトルを入れない場合はチェストストラップの締め方に工夫が必要

背中の荷室は5Lという設定もあって背中に当たる面の高さは短め。私の場合は腰には全くかからず、荷室は背中の高い位置に重心がくる感覚です。荷室の一番下には左右から体を包むチェストポケットのような羽があり、この先についているストラップで体にバックパックを固定します。このチェストポケットのような羽は私の場合は肋骨の一番下あたりとなります。

Ultra Olmo 5Lは背中で背負う感覚。

Ultra Olmo 5Lは背中で背負う感覚。

背中側は荷室の縦中央を除いてはメッシュ生地に覆われたやや厚手の柔らかいクッションパッドになっています。これは体に当たる感触は快適ですが、日本の真夏だと蒸し暑く感じたり、汗や雨がしみると重く感じるかもしれません。チェストストラップの部分はパッドはやや薄くて固めの素材になっています。さらにバックパックの縁が腕や脇に擦れて痛むことがないように、本体の周囲が全てグレーの肌触りのいい生地でパイピング処理されているのも今回アップデートされた改良点です。

背中に当たる部分は柔らかく肌触りのよいクッション。

背中に当たる部分は柔らかく肌触りのよいクッション。

カラーは前モデルの白基調に赤のロゴというストイックなものから、白基調のままロゴやジッパーはブルー、メッシュポケットや背中のクッションは蛍光グリーンというポップな印象に変わりました。

収納性

まずメインとなる背中側はU字型ジッパーで開閉する一荷室。背中側は断熱性をイメージさせるシルバーの生地となっていて、背中に直接触れる生地とあわせて二枚構造です。内側にはシンプルなベルクロストラップが二つ付いているのでここに2Lくらいまでのハイドレーションバッグを収納することもできます。ただ、2Lのハイドレーションバッグを満タンにして入れると他に入れる荷物はかなり限られそう。ハイドレーションのチューブが左右いずれの肩口からも引き出せるように口が開いています。荷室の高さは5–6cmといったところで荷物は平たくして収納する必要があります。また荷室内にはゴムのバンジーコードもそれを通すループもないので、荷物が少ない時は揺れないようにパッキングを工夫する必要がありそうです。

Ultra Olmo 5Lの荷室。シンプルな構造で荷物は平たくして収納する。

Ultra Olmo 5Lの荷室。シンプルな構造で荷物は平たくして収納する。

また、荷室内には体の右側に腰のチェストポケットから肩口までイヤフォンやヘッドホンを接続するのに使えるコードが付属しています。スマートフォンや小型のミュージックプレーヤーをウェストポケットの中に入れて肩口のコードにイヤフォンなどをつなぐ、という使い方が想定されているようです。ここは代わりにバッテリー部分を延長ケーブルでヘッドセットから外せる仕様のヘッドライトを使う際にバッテリー用のポケットとしても使えそうです。なお、このウェストポケットは特に防水仕様とはなっておらず、背中の荷室との仕切りもありません。また左側のウェストポケットは外からは開閉することができません。

イヤフォンの延長コードが腰のポケットから肩口まで通っている。バッテリーを分離できる仕様のヘッドライトにも使えそう。

イヤフォンの延長コードが腰のポケットから肩口まで通っている。バッテリーを分離できる仕様のヘッドライトにも使えそう。

その他、背中のバックパック外側の上部にはベルクロ留めのフラップがついたメッシュポケットがあり、ここは薄手の防水ジャケットなどをくしゃくしゃにして突っ込んでおくことができそう。フラップもジッパーが付いていて内側にキーホルダーが付けてあるので貴重品や小物を収めるのに使えます。そして、見落としやすいですが、下部には下にジッパーの開閉口がついているポケットがあります。ここはグローブやフリースキャップのような必要な時はすぐ取り出したい小物を入れるのによさそう。

外側のポケット。上側のメッシュポケットはベルクロだけで止めるので小物の収納には向かないが、ジャケットやウェアを突っ込んでおくのに便利。

外側のポケット。上側のメッシュポケットはベルクロだけで止めるので小物の収納には向かないが、ジャケットやウェアを突っ込んでおくのに便利。

体前部には左右のチェストハーネスのボトルポケットの上にジッパーで開閉するマチのついたチェストポケットがあります。ここは小さめのデジカメやGPSナビ端末を入れるのによさそうですが、当方はここにジェルを入れました。顔に近い位置にくるポケットなので、開け閉めは手探りとなります。片方のポケットだけでジェル6−7個は収まります。さらにこのチェストポケットの外側、ボトルポケットの外側、背中のウェストポケットの付け根には左右にメッシュ生地のポケットがあります。チェストポケットのメッシュポケットはジェルを摂った後のゴミ入れによさそう。ボトルポケットのメッシュポケットは浅いので小物は落とすかも。当方は折りたたみのコップを丸めて突っ込んでいました。ウェストポケットのメッシュポケットは深さもあってテンションもかかるのでジェル入れに。3−4個は入ります。

下側についているジッパーで開け閉めするポケット。

下側についているジッパーで開け閉めするポケット。

5Lというとかなり収納スペースは限られそうですが、ポケットをうまく活用すれば後述のようにUTMBやUTMFの必携装備の最低限は収まります

ギミック(仕掛け)

このUltra Olmoシリーズに限らず、どんな製品にも細かいアイディアを盛り込んでくるのがRaidLightのこだわり。このOlmo 5にもランナーの立場から考えた細かいギミック(仕掛け)があります。

ギミックの中で一番ユニークなのが今回初めて搭載された体前部にトレッキングポールを固定するバンド。左右のボトルホルダーの前に幅3cm・長さ8cmほどのゴムバンドが縦についているだけなのですが、折りたたんだポールをこのゴムバンドを伸ばして左右に渡すように取り付けると確かに安定します。当方の経験でもトレッキングポールは必要な時に取り出し、用が済んだらしまうという動作が楽にできるように、体前部にポールを取り付けられる仕組みがあるととても便利。このアイディアが市販の製品に盛り込まれたのは初めてではないでしょうか。

体前部のトレッキングポールホルダー。トレッキングポールを使ったりしまったりが容易にできる

体前部のトレッキングポールホルダー。トレッキングポールを使ったりしまったりが容易にできる。

また、ポールをバックパックの背中側に斜めに取り付けるためのバンジーコードも取り付けられているので、長時間使う見込みがない時はこっちにつけておくのがよさそう。なお、前モデルに付属していたポールを収納しておくための袋状のトレイルクィーバーは付属していません。

レースのスタートや長時間ポールを使わないことがわかっているときは背中に収納できる。

レースのスタートや長時間ポールを使わないことがわかっているときは背中に収納できる。

さらにウェストポケットの左右をつなぐウェストストラップにはストラップの余りをまとめておけるロゴ入りのカバーが付けられているほか、チェストストラップを締めた後に残りのストラップが垂れ下がらないようにするためにゴム製のストッパーが付いています。こうした細かいギミックはよく考えられていると感じます。

チェストストラップを締めた後、脇から伸びる余ったストラップ。これがプラプラしてしまいがち。

チェストストラップを締めた後、脇から伸びる余ったストラップ。これがプラプラしてしまいがち。

余ったストラップを端から巻き取ってゴムで固定する。これでもうストラップをプラプラさせずに済む。

余ったストラップを端から巻き取ってゴムで固定する。これでもうストラップをプラプラさせずに済む。

実際に使ってみて

さて、この新しいUltra Olmo 5Lをイズニック・ウルトラ/Iznik Ultraの130kmのレースで実際に試しました。

トルコの大都市、イスタンブールから南東へ約200kmのところにある歴史ある町、イズニックを拠点に開催されるこの大会は今年が4回目。イズニック湖の周りを一周してイズニックの町でフィニッシュするコースの全長は136km、累積獲得高度は約3000mです。コースは比較的走りやすい林道が多いコースです。このレースの必携装備は概ねUTMBやUTMFと同じ。防水ジャケットや長袖の防寒シャツ、グローブなどは必ず持つ必要があります。さらに夜間用ということか、一定の基準を満たした視認性の高い反射材がついたベストが必携品に含まれています。該当するものを日本で探して手に入れましたがこれがかなりかさばります。でも、Ultra Olmo 5Lにはしっかり収まりました。これならUTMBやUTMFの必携装備も最小限のものは収まりそうです。

Iznik Ultraの装備。右上の反射材付きベストがかさばります。

Iznik Ultraの装備。右上の反射材付きベストがかさばります。

レースのスタートは深夜0時。大会の行われた週末は天候に恵まれましたが、夜の気温は10℃以下に下がるのでかなり肌寒く感じます。必携品の防寒長袖シャツを着込み、かさばる反射材付きベストも着込んだので、背中の荷室は多少余裕があります。

Iznik Ultraの130kmは深夜12時のスタート、制限時間は25時間。

Iznik Ultraの130kmは深夜12時のスタート、制限時間は25時間。

いよいよレースがスタート。最初の55kmくらいは比較的走りやすいなだらかな林道やオリーブ畑の作業道です。走り始めてまず感じたのは肩にかかる負荷を小さく感じること。Ultra Olmo 5Lは背中の重心が高く、胸のストラップも体を直に締め付けずにボトルポケットの間のストラップが揺れを吸収しながら両脇から締める感じ。悪く言えば胸には圧迫感は多少ありますが、肩は楽に感じました。

夜が明けたばかりで50kmを過ぎた頃。Ultra Olmo 5Lは肩の負担を軽く感じる。

夜が明けたばかりで50kmを過ぎた頃。Ultra Olmo 5Lは肩の負担を軽く感じる。

朝になり、ドロップバッグの置いてあるエイドに到着。これから日中は気温も上がるので、Tシャツに着替えます。防寒長袖シャツとかさばる反射材付きベスト、ヘッドライトなどをUltra Olmo 5Lの荷室にぴったり収めます。補給食のジェルは決めておいたポケットへ。数を覚えておき、残りの個数がわかるようにしておきます。ウェアが身軽になった分、背中の荷物が膨らみましたがUltra Olmo 5Lは快適です。

ドロップバッグを受け取り着替えを済ませる。背中の荷物が少し増えたが、Ultra Olmo 5Lなら快適なまま。

ドロップバッグを受け取り着替えを済ませる。背中の荷物が少し増えたが、Ultra Olmo 5Lなら快適なまま。

体前部に収めるボトルも快調でした。これまでドリンクボトルは手に持ってボトルを上に向けながら中身を飲むという使い方しかしたことがありませんでしたが、このストロー状のチューブとバイトバルブがついたUltra Olmo 5Lのボトルはポケットに入れたまま顔を少し傾ければバイトバルブからドリンクを飲むことができます。吸うだけでも飲めるし、ボトルを少し握ればさらに飲みやすい。この辺りは全くストレスを感じませんでした。また、バイトバルブから飲むと一回に飲む量が限られるので、水分を少しずつ必要なだけ摂ることができたと思います。

また、エイドでの補給はボトルならバックパックを外す必要もなく、ボトルを取り出すだけでできます。この大会ではエイドのスタッフの方がボトルを渡すだけで水を補給してくださることが多く、大変助かりました。

エイドのボランティアの皆さん。どのエイドでも親切に補給を手伝ってくださいました。

エイドのボランティアの皆さん。どのエイドでも親切に補給を手伝ってくださいました。

左右に600mlものボトルを胸につけて走ればさすがに揺れて体に当たるのではと気になっていましたが、最後まで気になりませんでした。やはりボトルホルダーの前にストラップがくるこの構造のおかげでしょう。

22時間ほどで何とかフィニッシュ。

22時間ほどで何とかフィニッシュ。

結局最期のエイドで日没に備えてもう一度着替えることになりましたが、フィニッシュまでの22時間の間、背中のUltra Olmo 5Lは用がない限りは背負ったまま。そのまま快適にフィニッシュすることができました。

Ultra Olmo 5L のいいところ・気になるところ

いいところ

  • 5Lというサイズにしては収容力があり、UTMBやUTMFの必携装備が収まる
  • 背中と胸で背負う感覚で、肩にかかる負荷を意識しないで済む
  • 胸のボトルの揺れは少ししか感じない
  • 長時間身につけていても快適
  • ストロー付きボトルはハンドヘルドのボトルとハイドレーション・バッグの長所を兼ね備える
  • ストラップをしまうギミックなど細かいところに配慮を感じる

気になるところ

  • 付属のドリンクボトルを使うと最も快適になるように作られているので、ボトルを使わないときは使いながらこまめに調整が必要になるかも
  • 背中の荷室は一つで防水されているポケットはないので、濡らしたくないものは分けて袋に入れておく必要あり
  • 背中のクッションは柔らかく肌触りがよいが日本の夏場は暑苦しいかも。使った後のお手入れはこまめにする必要あり

まとめ

Ultra Olmo 5Lはボトルを体前部のポケットに入れるトレイルランニング用のバックパックとしては定番といえる製品ですが、今回のアップデート版には細かな工夫と改善が加わり、ますます長時間、長距離でも快適になりました。UTMFのような長時間、長距離のレースには最適でしょう。また、背中の荷室にハイドレーションバッグを入れれば、ハセツネ・カップのように給水に限りがあるレースに使うのにもよさそうです。もちろん、春夏の気候がよいときであれば、最小限の着替えを背中に入れて、週末の日帰りトレイルランニングに出かけるのにもぴったり。

トルコでもTeam RaidLightが存在感を示していました。

トルコでもTeam RaidLightが存在感を示していました。

Ultra Olmoシリーズには他にもボトルと最小限の荷物だけを背負うR-Zoneのほか、8L、12L、20Lというバリエーションがあり、季節や目的に合わせて対応できるようになっています。今シーズンのトレイルランニングをUltra Olmoシリーズで快適に楽しんでみてはいかがでしょうか。

(協力・RaidLight 同社よりレビューのためにご提供いただいた製品を使ってこの記事をお送りしています。)