スカイランニング、トレイルランニングで活躍するランナーだけでなく、ロードレースでトップクラスの実力を持つランナーも参戦し、予想のつかない展開となりました。今年で8回目となる 菅平スカイライントレイルランレースは、42kmのスカイマラソンがスカイランニング日本選手権のSKYの部として、菅平高原(長野県上田市)で6月14日日曜日に開催されました。
Sponsored link
約500人が参加した42kmのスカイマラソンは上田瑠偉 / Ruy Ueda(Montrail/MountainHardwear)と長谷川香奈子 / Kanako Hasegawa(Dynafit)が優勝。男子では、河野健一 / Kenichi Kawano、松本翔 / Sho Matsumoto、小林誠治 / Seiji Kobayashiなど実業団などでロードランナーとしての実績を持つ選手も参加して上位でフィニッシュし、スカイランニング、トレイルランニングの競技層の広がりを感じさせました。優勝した上田瑠偉、長谷川香奈子はスカイランニング日本選手権のSKYの部(概ね42kmまで)のチャンピオンとなり、日本代表として来年開催のスカイランニング世界選手権への切符を手にしました。
この日は約500人が参加した42kmのスカイマラソン以外にも、21kmのスカイハーフ、5kmのスカイミニも開催され、小中高生も含めた多くの人が菅平でのスカイランニングを楽しみました。
当サイトではこの菅平スカイライントレイルランレースの現地からリアルタイム速報で様子をお伝えしました。今回のレポートは大会実行委員会とジャパンスカイランニングアソシエーションのご協賛により皆さまにお届けしました。
レース展開
薄曇りの一日で夕方まで雨も降らなかったため、山岳エリアでのランニングレースには最適な天候の一日となりました。
午前7時に菅平高原国際リゾートセンターをスタートした42kのスカイマラソンはまずロードとスキーゲレンデを経て大松山への登りに向かいます。序盤をリードしたのは市民ランナーでありながらも各地のロードマラソンで上位を占めている話題のランナー、松本翔 / Sho Matsumoto。第一エイドのすぐ手前の7km地点に39分で到着。僅差で上田瑠偉 / Ruy Uedaや九州の実業団ランナーとして実績豊富な小林誠治 / Seiji Kobayashi、河野健一 / Kenichi Kawanoが追います。1分置いて菊嶋啓 / Kei Kikushima、門出康孝 / Yasutaka Monde、平澤賢市 / Kenichi Hirasawaが続く展開。
石戸山のハイキングコース、13km地点の第二エイドを経て第三エイド(菅平牧場)を出てクロスカントリーコースに入ったところ(19.5km地点)では、上位陣はまだ様子見の雰囲気。松本翔がリードしていましたが上田瑠偉はその背中を射程に捉えて続きます。3、4、5番手には河野健一、小林誠治、菊嶋啓が続きます。
レースが展開し始めたのはクロスカントリーコースの中でした。再び菅平牧場に戻ってきた29km地点では松本翔の表情が冴えず足取りが重くなり後退。トップに立ったのは上田瑠偉。2分で河野健一が続き、さらに2分で山田琢也 / Takuya Yamada、石井克弥 / Katsuya Ishiiが追い上げて3位4位に。松本翔はトップから7分の5位。小林誠治は9位に後退。
小根子岳への登りを経て6kmの下り区間のガレたくだりが一段落した中間地点(37.5km)では上田瑠偉が後続に7分ものリードでトップで通過します。やや足取りが重く見えましたが、直前に足が攣ったため少しペースを落としていたとのこと。続くのは下りで転んで両膝から出血しながら走る河野健一。3位には石井克弥、4位に山田琢也が一分おきに現れます。
上田瑠偉はその後もペースを緩めることなく加速。4時間を切る3時間59分48秒という好タイムでフィニッシュし、今年のスカイランニング日本選手権チャンピオンの座を手にしました。2位には転んだ傷をもろともしない激走で河野健一、河野まで十数秒まで迫った石井克弥が3位に。4位に山田琢也、5位に森本幸司 / Koji Morimoto、6位に牛田美樹 / Miki Ushidaが入り、表彰台に立ちました。
女子のレースは終始、長谷川香奈子 / Kanako Hasegawaがリード。5時間26分で優勝。20分後にスカイランニングの上位常連の岩楯志帆 / Shiho Iwadateが続き2位でフィニッシュ。3位から5位にはお互いの姿を捉えながら僅差で折戸小百合 / Sayuri Orito、浅原かおり / Kaori Asahara、須藤吉仕子 / Kishiko Sutoが相次いでフィニッシュ。表彰台に登るトップ6を締めくくる6位には片桐久美 / Kumi Katagiriが入りました。
リザルト
(女子)
1. 長谷川香奈子 / Kanako Hasegawa (Dynafit) 5:26:07
2. 岩楯志帆 / Shiho Iwadate 5:46:43
3. 折戸小百合 / Sayuri Orito 5:56:55
4. 浅原かおり / Kaori Asahara 5:57:14
5. 須藤吉仕子 / Kishiko Suto (Inov–8) 5:57:26
6. 片桐久美 / Kumi Katagiri 6:28:23
7. 廣木弥生 / Yayoi Hiroki 6:35:16
8. 松浦佐知 / Sachi Matsuura 6:39:44
9. 三浦枝利子 / Eriko Miura 6:50:07
10. 寿賀本恵 / Megumi Sugamoto 7:01:13
(男子)
1. 上田瑠偉 / Ruy Ueda (Montrail/MountainHardwear) 3:59:48
2. 河野健一 / Kenichi Kawano 4:08:17
3. 石井克弥 / Katsuya Ishii 4:08:30
4. 山田琢也 / Takuya Yamada (Montrail/MountainHardwear) 4:10:29
5. 森本幸司 / Koji Morimoto 4:11:27
6. 牛田美樹 / Miki Ushida (Inov–8) 4:13:19
7. 小林誠治 / Seiji Kobayashi 4:19:00
8. 小川壮太 / Sota Ogawa (Salomon) 4:19:19
9. 平澤賢市 / Kenichi Hirasawa 4:20:57
10. 松本翔 / Sho Matsumoto 4:24:41
11. 植村裕樹 / Hiroki Uemura 4:34:15
12. 菊嶋啓 / Kei Kikushima 4:38:10
13. 佐々木跡武 / Atomu Sasaki 4:39:53
14. 谷口佳希 / Yoshiki Taniguchi 4:41:19
15. 小野塚稔 / Minoru Onozuka 4:42:16
16. 竹内正宏 / Masahiro Takeuchi 4:45:16
17. 佐藤圭介 / Keisuke Sato 4:48:57
18. 依田修治 / Shuji Yoda 4:49:26
19. 高野健太郎 / Kentaro Takano 4:50:22
20. 門出康孝 / Yasutaka Monde (Inov–8) 4:53:38
日本選手権にふさわしく様々なバックグラウンドの選手が集結、菅平のレースの魅力に新しい一面が加わる
男子優勝の上田瑠偉さんは昨年のハセツネ・カップを大会新記録で優勝して以来、日本のトレイルランニング・コミュニティでは知らない人はいない有名人です。先週末にスリーピークス八ヶ岳トレイルで優勝したばかりですが、今回の菅平では「走っているうちに体がほぐれてきた。序盤は他のランナーの様子を伺いながら走った」といい、トップに立った後半も「後続に追いつかれてもそこから加速できるくらいの余裕を残して走っていた」という余裕。自身も「これまでのトレイルのレースで一番スマートに走ることができたと思う」と振り返っていました。思い切って前に出るというような大胆なレース展開が多かった昨年までから、余裕と巧みさを感じさせる展開でした。女子優勝の長谷川香奈子さんは「20km前後の山岳レースを中心に取り組んできたので、今日は42kmという距離を集中力を緩めずに力を出し切ることを目標にした」とのこと。「優勝はしたものの世界のレベルにはまだ遠い。これからもスカイランニングのSKY(20–40km前後のカテゴリー)を中心に挑戦していきたい」との抱負を話してくれました。
この日は、ロードランナーとして実力ある選手がレースをリードしたことも目を引きました。序盤にリードしてレースを引っ張った松本翔さんは東大出身で実業団を経て現在は市民ランナーでフルマラソンを2時間13分台という好成績を挙げていることで注目されています。今回の菅平では中盤以降に補給のバランスが崩れたのかペースを落としましたが、今後も注目の存在です。なお松本翔さんにはコース最序盤の大松山までの登りパートを最初に登りきった選手へ与えられる「大松バーティカル賞」が与えられました。また2位となった河野健一さん、7位の小林誠治さんもそれぞれ九州の実業団チームで活躍してきたランナーです。この日の河野さんは転倒して捻挫したり膝から出血したりと満身創痍のフィニッシュでしたが、これからもスカイランニングやトレイルランニングのレースにチャレンジしたいとのことでした。
菅平スカイライントレイルランレースは今年が8回目の開催ですが、これまでは山岳ランンニングの入門レースとして人気を集めていたように思います。しかし、スカイランニング日本選手権として有力選手が挑戦した今年のレースをみると、序盤のスキーゲレンデや林道の走りやすいパートに続いては鬱蒼とした森の中のパートもあり、小根子岳への長い登り、そこからのガレ場や浮石の続くテクニカルな下りなど、様々な力を試されることとなりました。今年はこの菅平のレースに新しい魅力が加わったと感じました。
また、菅平高原はアウトドア・リゾートの盛んな場所で、ラグビーやランニングの合宿地としても知られ、2019年のラグビーのW杯日本開催に向けた準備も進んでいる様子です。当サイトとしては、ここ菅平がいつかスカイランニングの国際的なイベントの舞台となったら素晴らしい、と感じました。
スカイランニングの次のイベントはびわ湖、美ヶ原へ
今年度はSKYカテゴリーの5つのイベントから構成されているスカイランナー・ジャパン・シリーズ(SJS)の次のイベントは第3戦のびわ湖バレイスカイレースが(滋賀県、20k / 2000mD+)が7月5日に開催。スカイランニング日本選手権は、VKの部が5月に開催された上田バーティカルレース、SKYの部が菅平スカイライントレイルランレースとして開催され、残るULTRAの部が美ヶ原トレイルラン&ウォーク(長野県、80km / 4000mD+)が7月4日に開催されます。
参考
On June 14th, 2015 in Sugadaira, Ueda. 菅平スカイライントレイルランレース&アウトドアフェスタ is produced by Fields . Photos by Koichi Iwasa and of DogsorCaravan.com
Posted by DogsorCaravan.com on Sunday, June 14, 2015