[DC] 日本からのエントリーへの影響は?ウルトラトレイル・デュ・モンブラン / Ultra-Trail du Mont Blancが新ポイントによる資格基準を発表 #UTMB

CCC2015-Start

日本の大会主催者の反応によってはのエントリーの門戸が広がるかもしれません。ウルトラトレイル・デュ・モンブラン / Ultra-Trail du Mont Blanc(UTMB)が来年2016年大会へのエントリーに新規格に基づくポイント(新ポイント)による資格基準を設けることを発表しました。新ポイントは最高6ポイントまでとなり、従来ではポイントが認められなかった概ね50km以下のトレイルランニングレースにもポイントが認められるため、従来よりも必要な資格ポイントを得るチャンスは増えることになります。すでに発表されている従来規格に基づくポイント(旧ポイント)による資格基準も2016年大会のエントリーでは有効ですが、2017年以降は新ポイントによる資格基準に一本化されます。2016年のウルトラトレイル・デュ・モンブラン / Ultra-Trail du Mont Blanc(UTMB)のエントリーは12月16日水曜日から1月5日火曜日までに大会ウェブサイトで受付けが行われ、1月13日水曜日午前10時(日本時間同日午後6時)に抽選結果が発表されます。

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ウルトラトレイル・デュ・モンブランの新ポイントによる資格基準とは

ウルトラトレイル・デュ・モンブランの中で開催される168kmのUTMBをはじめとする各レースにエントリーするには、世界各地のトレイルランニング大会を完走してそれぞれの大会について認められるポイントを獲得し、必要なポイント数を満たしておくことが資格の一つとなっています。2015年大会からウルトラトレイル・デュ・モンブランでは国際トレイルランニング協会(ITRA)が行うトレイルランニング大会の審査によって認められたポイントに基づいて、自らの大会のエントリー資格となるポイントを認めることとしています。

審査を行うでは以前からウルトラトレイル・デュ・モンブランが行っていたのと同じように、各トレイルランニング大会についてその距離と累積獲得高度に基いて一定の規格(1ポイントから4ポイントまでの旧ポイント)でポイント数を認定していましたが、今年4月により距離の短い大会についてもポイントが認められる新しい規格(1ポイントから6ポイントまでの新ポイント)による認定も並行して行うことを発表しました(新ポイントについての詳細はこの記事の後半で解説します)。

ウルトラトレイル・デュ・モンブランはこのITRAの新規格によるポイント認定を受けて、来月12月に始まる2016年大会のエントリーについて、すでに発表されている旧ポイントによるエントリー資格に加えて新ポイントによるエントリー資格を発表しました。

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新旧ポイントによるエントリー資格。ウルトラトレイル・デュ・モンブラン大会ウェブサイトより。

新旧ポイントによるエントリー資格を見比べると、概ね旧ポイントでエントリー資格を満たしている場合は新ポイントでもエントリー資格を満たしているといえそうです。例えば168kmのUTMBでは旧ポイントで9ポイントを2014年1月1日から2015年12月31日までに開催される最大3つのレースを完走して獲得するのがエントリー資格。これは概ね100マイルのレースを2回+50kmを1回、100マイル1回+100km1回+70km1回、100kmを3回といった組み合わせが該当しますが、そのいずれの場合も新ポイントでエントリー資格を満たすことになりそうです。

一方、旧ポイントで3ポイントがエントリー資格の100kmのCCCや120kmのTDSの場合は新ポイントで7ポイントが必要となります。これにより、従来なら旧ポイントで3ポイントのレース一つでエントリー資格を得られたのが、新ポイントでは必ず二つのレースを完走してエントリー資格を得る必要があります(3つ以上のレースは不可)。この意味ではCCCとTDSについては多少ハードルは高くなったといえるでしょう。

他方では、旧ポイントで1ポイントがエントリー資格の50kmのの場合は新ポイントによるエントリー資格は3ポイントを最大2つのレースで獲得すること。旧ポイントでは概ね50km以上のレースでないと最小の1ポイントが得られませんでしたが、新ポイントでは20kmくらいのトレイルランニングレースにも1ポイントが認められます。このため、OCCについては従来の旧ポイントではウルトラトレイル・デュ・モンブランに出場するチャンスが得られないランナーにもチャンスが得られるようになったといえそうです。

ITRAのポイント認定の従来基準と新基準の比較

上記のようなウルトラトレイル・デュ・モンブランのエントリー資格で用いられているITRAのポイント認定について従来規格(1ポイントから4ポイントの旧ポイント)と今年4月に発表された新規格(1ポイントから6ポイントまでの新ポイント)を比較してみましょう。

変更点は(1)旧ポイントが4段階だったのが新ポイントでは6段階となり、より距離の短いレースにもポイントが認められるようになったこと、(2)「山岳度」(Montagne)と「完走難易度」(Finisher)の二つの指標が加わったこと、の二点です。

1. 旧ポイントが4段階だったのが新ポイントでは6段階となり、より距離の短いレースにもポイントが認められるようになった

コースの難易度を示すポイントの計算は「(コースの距離<km>+累積獲得高度<m>)/ 100」により得られた数値をもとにITRAが各レースの特徴を考慮してポイントを認定します。数値と新旧ポイントの対照表は下のようになります。

ITRA-new-scale-point

コースの距離と累積獲得高度から産出される数値と新旧ポイントの対照表。ITRAウェブサイトより。

これをみると、従来規格では数値が65以上でないとポイントが認められなかったのが新規格では25以上で1ポイントが認められるようになっています。数値が65とは概ね50km以上のレースが相当しますが、数値が25ならば20kmくらいのレースで1ポイントが認められることに。30–40kmのレースは概ね2ポイントとなりそうです。このように従来はITRAの審査でポイントの対象とならなかった概ね50km以下のレースについてもポイントが認定されるようになります。

2. 「山岳度」(Montagne)と「完走難易度」(Finisher)の二つの指標が加わった

従来なかった新しい二つの指標がITRAの審査で設けられるようになりました。「山岳度」(Montagne)はコースを占める登り下りの割合やその長さ、標高などをもとに1から12の段階で評価され、「完走難易度」(Finisher)は各レースの制限時間ギリギリで完走したランナーを想定してそのランナーのITRA成績指数を算出したもの。この値が高いほど制限時間は厳しく設定されているということができます。また参加者にとっては自分が他の大会を完走した時の成績指数とこの完走難易度を比較すれば、自分がその大会を制限時間以内に完走できるかどうか判断する目安とすることができます。

ただし、ITRAのポイント認定には大会側からの審査申し込みが必要

このようにITRAの新規格への移行でより幅広いトレイルランニング大会についてポイントが認められることになりますが、ここで課題となるのはITRAによるポイントの認定には大会側からのITRAに対して審査申し込み、あるいはITRAの会員になる必要があるという点です。この点は日本の大会の場合はかなり影響が大きくなりそうです。UTMBのエントリー開始まで6週間の本稿執筆時点でUTMBのポイント認定大会の一覧をみると2014年中の大会では奥久慈、スパトレイル、OSJおんたけウルトラ、志賀高原エクストリーム、OSJ安達太良、信越五岳、上州武尊山、ハセツネCUP、OSJ氷ノ山が対象となっていますが、今年2015年に開催された大会では志賀高原エクストリームのみ。このままでは日本在住のトレイルランナーにとっては、ITRAの新規格への移行による恩恵は受けられないままUTMBへのエントリーのハードルが上がることになるかもしれません。

参考

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