フランソワ・デンヌ、ドン・リーが優勝・2016 Vibram® Hong Kong 100 Ultra Trail Race リザルト

結果としてはランニングには好条件の中で、終盤まで走りきれた選手が上位を勝ち取った大会となりました。欧州を始め世界各地から有力アスリートが参加する100kmの世界的なトレイルランニング・レースビブラム・ホンコン100ウルトラトレイルレース/Vibram® Hong Kong 100 Ultra Trail® Race(HK100)が今年も1月23日土曜日に香港で開催されました。このUltra Trail World Tourの開幕戦で、男子は2014年にUTMF、UTMB、レユニオンの三冠を達成しているフランソワ・デンヌ / François D’Haeneヤン・ロンフェイ/Yan Long Feiとの競り合いを制して大会新記録で優勝。女子は昨年のこの大会で2位だったドン・リー / Li Dongが優勝しました。日本のランナーではトップ10に大瀬和文 / Kazufumi Oose(7位)、いいのわたる / Wataru Iino(9位)が入りました。【追記・大会は制限時間の30時間を待たず24日日曜日の早朝に中止されたことを追記しました。】

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レースの展開

HK100_logo.jpg寒波に見舞われて例年にない異例な寒さが予想された今週末の香港。スタート地点のSai KungエリアのPak Tam Chung / 北潭涌の朝は曇り空で風が強く体感気温は5-6℃といったところ。夕方のフィニッシュ地点では3℃ぐらいでした。ただ日中は雨が降ることもなかったため、ランニングのためのコンディションとしては好条件といえる1日となりました。

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スタート前のブリーフィングでは「防寒着が足りないランナーは本部で貸すので申し出るように」と異例のアナウンスも。

Hong Kong 100のコースは序盤に美しい自然の残る走りやすいフラットなトレイルで始まります。昨年と同様に上位争いの主役が揃い始めたのはCP3 海下 / Hoi Ha 36kあたりから。ゲディミナス・グリニウス / Gediminas Griniusを先頭に、フランソワ・デンヌ / François D’Haeneヤン・ロンフェイ/Yan Long Feiベド・スヌワル / Bed Sunuwarが1分以内に続きます。この先頭集団に続いて、ブラド・イクセル / Vlad Ixelパウ・カペル=ジル / Pau Capell Gil永田務 / Tsutomu Nagataジョルディ・ガミト / Jordi Gamitoと続きます。

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序盤をリードしたゲディミナス・グリニウス / Gediminas Grinius(Vibram、リトアニア)

CP4 Yung Shue O  /  榕樹澳 45kを過ぎたあたりから次第にゲディミナスが後退し、フランソワとヤンの二人が先頭に立ちます。二人の優勝争いはCP8 Shing Mun Dam / 城門水塘 83k、CP9 Lead Min Pass / 鉛礦坳 90kでヤンがフランソワに1分ほど先行するようになって勝負がついたかに見えましたが、最終盤の最後のピークとなるTai Mo Shan / 大帽山 (957m)には二人は同時に到着。

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僅差でフランソワを追うヤン・ロンフェイ / Long Fei Yan(Salomon、中国)

ここからの下りでフランソワが一気に加速してヤンを引き離してフィニッシュ。終盤まで冷静に体力を温存したフランソワが大会記録を20分短縮する9時間32分で優勝しました。5分差の2位でフィニッシュしたヤンはフィニッシュ後、しばらく横になって休むありさま。2014年の三冠王のフランソワとフルマラソンで2時間15分のヤンというそれぞれの強みを持つアスリートの駆け引きが見所となりました。

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フランソワ・デンヌ / François D’Haene(Salomon、フランス)が大会記録を更新して優勝。

3位にはこの日のレースの序盤を引っ張ったゲディミナス。4位のパウ・カペル=ジルは24歳。昨年のTransgrancanariaの86kで優勝した新鋭ですが、この日は崩れない力強い走りでした。5位のジェライ・デュラン / Yeray Duran Lopez、6位のジョルディ・ガミトも上位集団からこぼれることのなくトップ10を手にしました。

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パウ・カペル=ジル / Pau Capell Gil(Compressport、スペイン)

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ジェライ・デュラン=ロペス / Yeray Duran Lopez(Buff、スペイン)

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ジョルディ・ガミト / Jordi Gamito Baus(WAA、スペイン)

7位の大瀬和文 / Kazufumi Ooseはレース前にも「序盤は抑えて後半から勝負」と話していました。この日はその言葉通り、20位圏内からCP5以降にトップ10入りし、上位選手が脱落するなかで順位を上げていくという、ウルトラマラソンの王道ともいえる展開。昨年のHong Kong 100でもそうでしたが、中盤に大きく崩れるパターンが最近多かっただけに、今回は手応えを感じたことでしょう。8位に香港の誇る名トレイルランナー、ストン・ツァンを挟んで9位にはいいのわたる / Wataru Iino。いいのも後半に徐々に脱落する上位選手をかわしていく着実なレースを見せました。フィニッシュラインでのインタビューでは「アイムハングリー、ヌードルプリーズ」と応え、会場から人気を集めました。10位にはフィンランドのユシー・ノケライネン / Jussi Nokelainenが入りました。

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7位になった大瀬和文 / Kazufumi Oose(Salomon)

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9位でフィニッシュのいいのわたる / Wataru Iino(RaidLight)

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10位にユシー・ノケライネン / Jussi Nokelainen

このほか、日本からの参加では奥宮俊祐  / Shunsuke Okunomiyaが12位に。素晴らしい結果ですが、大瀬、いいのに先を譲ることとなったせいか、レース後には「準備不足でした」とやや残念そうな表情を浮かべました。前半に上位を走った永田務はCP5を出た後のコース上で転倒するというアクシデントに見舞われました。命に別条はなかったものの、顔からの出血が目立ったため大会スタッフの救護を受けてそのまま病院に向かうこととなりレースからはリタリア。上位選手に引けを取らないスピードを持ち、今回は上位が期待されていましたが残念な結果となりました。最新の情報ではケガで顔に腫れがあるものの、それ以外は健康に支障はないとのことです。

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12位となった奥宮俊祐 / Shunsuke Okunomiya(Montrail/MountainHardwear)

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転倒してケガ、DNFとなった永田務 / Tsutomu Nagata

女子のレースは中国の26歳、ドン・リー / Li Dongと欧州の長距離トレイルレースでライバル同士のリサ・ボルサニ/Lisa Borzaniシルビア・トリゲロス / Silvia Ainhoa Triguerosの3人が激しい上位争いを繰り広げました。序盤はドン・リーとシルビアが並んで走る展開となります。しかし中盤のCP5 / 52kmではドン・リーが先行し始め、2番手のシルビアにリサが並びます。2番手争いはCP8 / 83kmまででリサがシルビアを引き離すこととなって決着することとなりました。4位以降は昨年の信越五岳で優勝のコリーヌ・ウイリアムズ / Corinne Williams、アイスランドのエリザベト・マルガースドッティル / Elisabet Margeirsdottir、シンガポールのエミリー・タン / Emilie Tan。7位から10位に地元香港在住のマリー・マクノートン / Marie McNaughtonナタリア・ワトキンス / Natalia Watkinsニコール・ラウ / Nicole Lauウィンヤン・ニコール・レン / Wing Yan Nicole Leungが続きました。

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1、2位で上位争いを繰り広げるシルビア・トリゲロス / Silvia Ainhoa Trigueros(奥)とドン・リー / Li Dong。Photo by Erwan Le Bras

日本からは野間陽子 / Yoko Nomaが18位、常田めぐみ / Tokida Megumiが19位となり、16時間以内完走者に与えられるゴールドアワードを手にしました。

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この日は前述の通り、寒波の到来により香港にとっては例年になく低い気温となりましたが日中は雨は降らず、上位選手にはよいコンディションとなりました。しかし、日没後は気温の低下でTai Mo Shan / 大帽山近辺の凍結が見込まれたことから、終盤のコースの一部が急遽変更されるなど、寒波の影響も受けた一日となりました。

【追記・上位選手がフィニッシュして深夜となってから、香港は雨となり、最終盤のTai Mo Shan / 大帽山付近は気温がさらに低下。こうした状況を受けて、大会は大会スタートから制限時間の30時間を待たず24日日曜日の早朝に中止されました。Facebookなどにはウェアやバックパックが凍結している写真が多数紹介されています。またこのことをめぐってFacebookではもっと早く中止すべきだったのではないか、いやトレイルランニングというスポーツの性質からいって参加者に自律が求められるべきだ、といった議論もなされている模様です。】

COURSE UPDATE: Race is abandoned due to ice making Tai Mo Shan unsafe. Marshals: Please hold runners at Tai Po Road…

Posted by Hong Kong 100 Ultra Marathon on Saturday, January 23, 2016

The freezing conditions are creating carnage of all sorts. Currently trying to get runners off Tai Mo Shan. There’s s lot of ice in the roads and its treacherous from the top. Rescue services are working hard.

Posted by Hong Kong 100 Ultra Marathon on Saturday, January 23, 2016

リザルト

UTWT-Ultra Trail World Tour logo大会公式のリザルトはこちら

男子

  1. フランソワ・デンヌ / François D’Haene(Salomon、フランス) 9:32:26 (大会新記録<これまでの記録は2015年のヤン・ロンフェイ/Yan Lonfeiによる9:52:42>)
  2. ヤン・ロンフェイ/Yan Lonfei(Salomon、中国) 9:37:17
  3. ゲディミナス・グリニウス  / Gediminas Grins(Vibram、リトアニア) 9:53:51
  4. パウ・カペル=ジル / Pau Capell Gil(Compresport、スペイン) 10:06:42
  5. ジェライ・デュラン / Yeray Duran Lopez(Buff、スペイン) 10:36:04
  6. ジョルディ・ガミト・バウス/Jordi Gamito Baus(WAA、スペイン) 10:37:36
  7. 大瀬和文 / Kazufumi Oose(Salomon、日本) 10:47:39
  8. ストン・ツアン/Stone Tsang Siu Keung(Champion System/The North Face、香港) 10:53:02
  9. いいのわたる / Wataru Iino(RaidLight、日本) 10:56:59
  10. ユシー・ノケライネン / Jussi Nokelainen(Inov-8、フィンランド) 11:07:55
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表彰式に揃った男子トップ10。

(上位に入った日本から参加の皆さん)

  • 12位 奥宮俊祐/Shunsuke Okunomiya(Montrail / MountainHardwear) 11:26:01
  • 27位 熊澤光 / Akira Kumazawa 12:17:15
  • 34位 エルワン・ルブラス / Erwan Le Bras 12:51:48

女子

  1. ドン・リー/Dong Li(Salomon、中国)   12:05:32
  2. リサ・ボルザニ/Lisa Borzani(Tecnica、イタリア) 12:30:41
  3. シルビア・トリゲロス / Silvia Ainhoa Trigueros (Rand、スペイン) 12:34:23
  4. コリーヌ・ウイリアムズ / Corinne Williams(アメリカ)  13:19:34
  5. エリザベト・マルガースドッティル / Elisabet Margeirsdottir(アイスランド) 13:41:40
  6. エミリー・タン / Emilie Tan(カナダ、シンガポール在住) 13:47:52
  7. マリー・マクノートン / Marie McNaughton(ニュージーランド、香港在住) 13:55:52
  8. ナタリア・ワトキンス / Natalia Watkins(アメリカ、香港在住) 14:06:09
  9. ニコール・ラウ / Nicole Lau(香港) 14:10:52
  10. ウィンヤン・ニコール・レン / Wing Yan Nicole Leung(香港) 14:14:09
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表彰式に揃った女子トップ3。優勝のドン・リー / Dong Li(左から二人目)、2位のリサ・ボルザニ / Lisa Borzani(右)、3位のシルビア・トリゲロス / Silvia Ainhoa Trigueros(左)。

(上位に入った日本から参加の皆さん)

  • 18位 野間陽子 / Yoko Noma 15:44:22
  • 19位 常田めぐみ / Tokida Megumi 15:49:33

参考

    • 香港のフォトグラファー・Lloyd Becherによる大会当日の写真集。永田務さんのケガの様子も収められています。: Hong Kong 100 2016 – Compressport
    • 香港のトレイルランニング・メディア、Asia Trailによる大会の模様をまとめたビデオ

当サイトのお送りしたライブ速報のログ


Live Coverage of 2016 Vibram Hong Kong 100 Ultra Trail Race – Togetterまとめ

謝辞

今回もHK100の取材にあたっては、ちあき・フィエルドさんやその友人の皆さんに事前の情報や大会当日の移動についてご支援いただきました。レースの速報にあたってはHK100のオーガナイザーであるジャネットさん、スティーブさんUltra Trail World Tourにご協力いただきました。感謝いたします。

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