ユン・ヤンチャオ、ヌリア・ピカスが優勝・2017 Vibram® Hong Kong 100 Ultra Trail Race リザルト

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昨年と同じく、欧米から香港に集まったトップアスリートの活躍が期待される大会でしたが、欧米だけでなく中国のトレイルランナーのレベルの高さ、中国におけるトレイルランニングの人気の高まりが印象に残りました。


Ultra Trail World Tourの開幕戦として昨日1月14日(土)に開催された100kmのトレイルランニング・レース、ビブラム・ホンコン100ウルトラトレイルレース/Vibram® Hong Kong 100 Ultra Trail® Race(HK100)で、ユン・ヤンチャオ Yanqiao Yun(EPSON、中国)、ヌリア・ピカス Núria Picas(Buff、スペイン)がそれぞれ男女で優勝。男子優勝のユン・ヤンチャオは2013年のこの大会での優勝に続いて2回目の優勝で、後半にリードを奪って大会記録と2分差に迫る9時間35分でフィニッシュ。2014年UTWTチャンピオンのヌリア・ピカスはコース後半の山岳パートに入るとその強さを発揮。あっさりと大会記録を大幅に上回る11時間18分で優勝。世界のトレイルランニング界の女王の復活を印象づけました。

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日本から参加した選手では、昨年7位の大瀬和文 Kazufumi Oseがコース前半に転倒して膝に傷を負うというトラブルがありながらも16位でフィニッシュ。昨年9位のいいのわたる Wataru Iinoが27位、永田務 Tsutomu Nagataが72位。原良和 Yoshikazu Haraはコース上で捻挫してリタイアしています。

レースの展開

大会当日の香港は終日の曇り空で気温は平年並み、時折小雨がぱらつきました。気候はトレイルランニングには理想的でしたが、香港のトレイルに多い石階段は小雨で湿り気を帯びて滑りやすかった模様です。

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序盤から13人ほどの先頭集団となってレースは展開。

ランナーは午前8時にスタートすると、Kei Ling Ha / 企嶺下 52kまでのコース前半は香港郊外のサイクンに広がるビーチや小さな漁村の村をつなぐコースへ。比較的高低差が少ないこのパートでは13人ほどの先頭集団が男子のレースをリード。Wong Shek / 黃石(28km)をこの集団は40秒ほどの差で通過します。

その後は徐々にレースが展開し、36km地点の海下 / Hoi Haには昨年のTrans Alpine Run優勝のダニエル・ユング Daniel Jung(イタリア)が単独リードで通過。13人の集団は前後6分差まで広がりました。52km地点のKei Ling Ha / 企嶺下にはユングに続いて1分でセイジ・カナディ Sage Canaday (アメリカ)、さらに1分置いてディドリク・ヘルマンセン Didrik Hermansen (ノルウェー) 、ティム・トレフソン Tim Tollefson (アメリカ)が続き、5番手のユン・ヤンチャオ Yanqiao Yunは先頭から2分半の差でした。

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セイジ・カナディ Sage CanadayがWong Shek / 黃石(28km)へ向かう。

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36km地点の海下 / Hoi Haはダニエル・ユング Daniel Jung(イタリア)が単独リード。

コースはここからマーオンシャンの稜線を進むトレイルに入り、大きめの登りに。65km地点のGilwell Camp / 基維爾訓練營にはユング、ユン、カナディの3人がほぼ同時に到着。8分差でヘルマンセンとトレフソンが負う展開となります。ここからユンがペースを上げ始め、Beacon Hill / 筆架山までの8kmでユングとカナディと7分差の独走体制に。ヘルマンセンとトレフソンの二人がトップから17分差で続きました。

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後半に入ってレースをリード、独走態勢に入ったユン・ヤンチャオ Yanqiao Yun。

結局上位陣はこの体制のままトップのユンがリードを広げていく展開となり、ユン・ヤンチャオは9時間35分11秒でRotary Club Park / 大帽山扶輪公園にフィニッシュ。2位のダニエル・ユングとは26分半という大差で、大会記録(9時間32分26秒、2016年のフランソワ・デンヌ François D’Haene)まで3分弱の大会史上2位に。

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HK100では2012年に5位(11時間1分)、2013年に優勝(10時間15分)しているユンですが、自身の記録を大幅に塗り替える記録です。UTMBやTNF 50 mile(アメリカ)など欧米のレースを早くから経験しているユンは最近ではTarawera Ultramarathonで2014年に2位、Ultra Trail Australiaで2015年3位、2016年3位となっており、今回はアジアを代表するトレイルランニング・アスリートとして優勝を勝ち取りました。

2位のダニエル・ユングはTrans Alpine Runでの活躍の他は昨年から地元のアルプスの山岳レースで結果を残していますが、世界から有力選手が集まる大会は今回が初めて。今後はUTWTのシリーズ戦にも出場する予定とのことで、今後も注目されることになりそうです。3位にはアメリカのセイジ・カナディ、4位にディドリク・ヘルマンセン(ノルウェー)、昨年のUTMB3位のティム・トレフソンが5位。6位には2014年、15年にウェスタンステイツ2位、2015年UTMB2位のセス・スワンソン Seth Swanson (The North Face、アメリカ)。アドベンチャーレースやMTBでの活躍て知られるタイのジェイ・キアンチャイパイファナ Jantaraboon ”Jay” Kiangchaipaiphanaは長距離のトレイルレースは久々の出場でしたが、その実力の高さを示して7位に。9位は中国のヤン・ジアゲン Jiagen Yangですが、近年はTNF 100 Chinaの上位常連で2011ー13年、15年に優勝。昨年のTDSで18位に入っています。HK100は2014年に28位という記録を残していました。

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6位を走るセス・スワンソン Seth Swanson。

女子のレースはヌリア・ピカス Núria Picas (スペイン) が制しました。Ultra-Trail World Tourで2014年、2015年に年間チャンピオンとなっているピカスは2014年にはUTMFで優勝して日本でも知られる存在ですが、昨年はヒマラヤへの遠征を地震で中止し、その後は体調不良でレースからは離れていました。今回は52km地点のKei Ling Ha / 企嶺下を過ぎて山岳パートに入ってからトップに経つとそのまま圧倒的な強さを発揮。11時間18分57秒でフィニッシュして大会記録の11時間58分04秒(クレア・プライス Claire Price、2013年)を大きく短縮。世界の第一人者としての存在感を示しました。ヌリアは大会当日、タクシーでスタート地点に向かった際にレースのために用意したバックパックをタクシーに置き忘れ、急遽周りから借りて集めた装備でスタートするというハプニングがありましたが、何の動揺も感じさせない走りを見せました。

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2017年のHK100で優勝、復活をアピールしたヌリア・ピカス Núria Picas。Photo by © Lloyd Belcher / Hong Kong 100

女子では2位になったチェン・リンミン Linming Chen (中国)も大会記録を上回るタイムでフィニッシュ。チェンに関しては26歳でフルマラソンで2:40:19(2015年杭州)のほか、2016年にZhangye Qilian Mountain 50kで4位という記録があります。今回は女子のレースをリードしてKei Ling Ha / 企嶺下では2位のピカスに4分差。終盤の大きな登り下りでピカスに差をつけられましたが、今後も活躍が期待されます。3位のマリー・マクノートン Marie McNaughtonは地元香港のレースで今回もスマートなレースを展開。後半から順位を上げ始め、最後の20kmで3位まで順位を上げました。4位のシャン・フーザオ Fuzhao Xiang(中国)も最近中国国内のレースで上位になっており、昨年2016年のZhangye Qilian Mountain 100kで優勝しています。5位はレイチェル・キャンベル Rachael Campbell (イギリス) でした。

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序盤に女子のレースをリードしたチェン・リンミン Linming Chen。

欧米勢の強さが目立つ中、中国でのトレイルランニング熱の高まりが感じられる大会に

アジアの中でもトレイルランニングの人気が高い香港では年間を通して多くの大会が開催されていますが、その中でもこのHong Kong 100はUTWTの開幕戦として世界の注目を集めるようになり、香港、そしてアジアのトレイルランニング界において存在感を高めています。今回も上記のように欧米のトップ選手が見応えあるレースを繰り広げました。そして上記でも紹介したように中国の選手の今回の活躍ぶりをみると、アジアのトレイルランナーにとってHK100は世界レベルのレースで自分の力を試す場としても人気を集めているようです。記事の中で紹介した選手の他にも中国国内のレースで実績を持つ選手が今回のHK100に参加しています。この他、大会を取材した立場からみると一昨年、昨年と比べても今年は取材に来ている中国のメディア関係者や、中国国内向けと思われる写真やビデオの撮影チームが目に見えて増えていました。世界の、そして日本のトレイルランニング・コミュニティにおいても中国のトレイルランナーの存在を感じることが増えそうです。

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7位になったジェイ・キアンチャイパイファナ Jantaraboon ”Jay” Kiangchaipaiphana (The North Face Adventure Team、タイ)

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大瀬和文 Kazufumi Oseは序盤に転倒して右膝に大きな切り傷。痛みを押してフィニッシュし、香港のトレイルランナーの歓声を浴びていた。

もちろん、HK100はエリート選手のためだけの大会ではなく、トレイルランニングを楽しむ人たちが世界から集まるハレの場でもあります。レースディレクターのジャネットさん、スティーブさんが個人でゼロから立ち上げた大会は、今も二人の個性やこだわりにあふれていてます。これからも香港と日本のトレイルランナーの交流の舞台として、日本でもHK100の人気はますます高まりそうです。

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リザルト

大会公式のリザルトはこちらから。

男子 Men

  1. ユン・ヤンチャオ Yanqiao Yun (EPSON、中国) 9:35:11
  2. ダニエル・ユング Daniel Jung (Gore Running、イタリア) 10:01:35
  3. セイジ・カナディ Sage Canaday (HOKA One One、アメリカ) 10:03:50
  4. ディドリク・ヘルマンセン Didrik Hermansen (ASICS、ノルウェー) 10:12:28
  5. ティム・トレフソン Tim Tollefson (HOKA One One、アメリカ) 10:13:40
  6. セス・スワンソン Seth Swanson (The North Face、アメリカ) 10:16:40
  7. ジェイ・キアンチャイパイファナ Jantaraboon ”Jay” Kiangchaipaiphana (The North Face Adventure Team、タイ) 10:23:24
  8. ハリー・ジョーンズ Harry Jones (イギリス・タイ在住) 10:26:55
  9. ヤン・ジアゲン Jiagen Yang (中国) 10:30:13
  10. ジュリアン・ショリエ Julien Chorier (HOKA One One、フランス) 10:43:03
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男子の表彰台。左端の優勝したユン・ヤンチャオ Yanqiao Yunから順にトップ10人が並んだ。

(日本関連)

  • 16 大瀬和文 Kazufumi Ose(Salomon) 11:03:54
  • 28 いいのわたる Wataru Iino(RaidLight)11:42:07
  • 32 田坂洋範 Hironori Tasaka 11:47:54
  • 41 野本哲晃 Tetsuaki Nomoto 12:00:40
  • 60 大野拓平 Takuhei Oono 12:59:27
  • 68 鎌谷哲也 Tetsuya Kamatani 13:21:05
  • 71 エルワン・ルブラス Erwan Le Bras 13:26:44
  • 74 永田務 Tsutomu Nagata 13:29:36
  • 82 齋藤賢一 Kenichi Saito 13:38:41
  • リタイア 原良和 Yoshikazu Hara
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女子 Women

  1. ヌリア・ピカス Núria Picas (Buff、スペイン) 11:18:57
  2. チェン・リンミン Linming Chen (中国) 11:53:47
  3. マリー・マクノートン Marie McNaughton (Gone Running、ニュージーランド・香港在住) 12:26:19
  4. シャン・フーザオ Fuzhao Xiang (中国) 13:01:14
  5. レイチェル・キャンベル Rachael Campbell (イギリス) 13:23:31
  6. インスエ・レオン Ying Suet Leung (香港) 13:26:45
  7. シルビア・トリゲロス Silvia Ainhoa Trigueros Garrote (Race Land、スペイン) 13:31:21
  8. マ・ヤンシン Yanxing Ma (Vibram、中国) 13:49:20
  9. ニコール・ラウ Nicole Lau (香港) 13:51:54
  10. ニコール・レオン Wing Yan Nicole Leung (香港)13:56:49
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女子表彰台。左から2位のチェン・リンミン Linming Chen、優勝したヌリア・ピカス Núria Picas、3位のマリー・マクノートン Marie McNaughton。

(日本関連)

  • 35 田村真由美 Mayumi Tamura 16:38:58
  • 61 佐々木直子 Naoko Sasaki 18:31:39
  • 70 渡辺まゆみ Mayumi Watanabe 18:50:14【お名前の表記を訂正しました】
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