今回も日本のアスリートの活躍が際立つアジア選手権となりました。先週末の12月3日日曜日に香港・ランタオ島のMSIG Lantau 50の50kmのレースでスカイランニングアジア選手権 Asian Skyrunning Championship・Ultraカテゴリーが開催されました。男子はクリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente(スペイン)が優勝。日本の三浦裕一 Yuichi Miura、星野和昭 Kazuaki Hoshino、長田豪史 Goshi Osadaが2位、3位、4位と続いてアジア選手権のメダルを独占。女子は久々に香港のレースを走ったミラ・ライ Mira Rai(ネパール)が圧勝。星野由香理 Yukari Hoshinoと丹羽薫 Kaori Niwaがアジア選手権の銀、銅メダルをそれぞれ獲得しました。スカイランニングアジア選手権は9月に日本で開催されたZAO SkyrunningでのVK、Skyの両カテゴリーに始まった日程を終了しました。
(写真・MSIG Lantau 50で先頭を走るクリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente、星野和昭 Kazuaki Hoshino、三浦裕一 Yuichi Miura。Photo by Koichi Iwasa, DogsorCaravan.com)
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日本勢の健闘が光った50km
MSIG Lantau 50の50kmのレースは日の出前の午前6時半にMan Tung Road Parkをスタート。直後からケーブルカーの下の直線的な登りを経て最初のエイドがあるNgong Ping(9.5km地点)までの先頭グループは三浦裕一、星野和明、長田豪史、台湾のチョウ・チン Ching Chou、そしてクリストファー・クレメンテという5人が先頭集団でした。
当サイトも見込んでいた通り、2016年のスカイランナー世界シリーズ年間チャンピオンで今年のIAUトレイル世界選手権(Trail Sacred Forest)で2位というクリストファー・クレメンテ Cristofer Clementeの実力は今回の参加選手の中ではひときわ抜きん出ていました。コース中盤のCP3(Shek Pik BBQ、32.1km)では後続とはまだ1分以内の差しかありませんでしたが、急な石の階段が続くLantau Peakを越えたCP4(Pak Kung Au、41.7km)では2位の三浦との差は9分。もう一つのコースのハイライトであるSunset Peakを越えた後のCP5(Pak Mong、50.9km地点)では13分まで差を広げ、結局5時間49分でフィニッシュ。昨年のこの大会で2位となったときの自身のタイム(5時間44分)には及ばなかったものの、余裕の勝利でした。
欧州のトップ・スカイランナーであるクレメンテにはおよばなかったとはいえ、日本の選手の活躍が今年も際立ちました。三浦裕一 Yuichi Miuraは後半のLantau PeakとSunset Peakでクレメンテに差をつけられたのは確かですが、コース前半や最後の起伏の小さめのトレイルでは善戦。今回は6時間2分で準優勝という結果を出しました。昨年のこの大会で7位となった時のタイム(6時間44分)を40分以上短縮、昨年のクレメンテとのタイムの差は昨年の60分から13分まで縮めたのは見事でした。昨年この大会を走った経験を確実に今年のレースに生かしました。
3位になったのは星野和昭 Kazuaki Hoshino。フィニッシュではクレメンテとの差は50分まで開きましたが、中盤まではクレメンテや三浦に引けを取らないレースを展開。50km(正確には54.8km)という今までに走ったことがない距離のデビューを果たしました。4位は長田豪史 Goshi Osadaでした。昨年のMSIG Lantau 50の27kmでは8位だった長田ですが、今年は韓国のHigh 1 Skyrunning 20kで3位、TransJeju 50kで優勝していました。これからの日本のスカイランニング界を担っていくことが期待される20代です。このほか、昨年のこの大会で8位だった町田知宏 Tomohiro Machidaが9位でした。
地元の香港をベースにするアスリートではルディ・ボティン Rudy Bottin(フランス)が5位、ベテランのジェレミー・リッチー Jeremy Ritcey(カナダ)が6位、ジョン・エリス John Ellis(オーストラリア)が8位に。アジア勢では韓国のノ・ヘソン Heesong Nohが7位、マルセリーノ・サナオイ Marcelino Sana-oy(フィリピン)が10位。序盤に上位を走った台湾のチョウ・チン Ching Chouは後半に大きく順位を落として男子21位でのフィニッシュでした。
女子のレースはこちらも当サイトの見込み通り、ミラ・ライ Mira Raiが序盤からリード。後半に入ってもそのペースは落ちることはなく優勝を果たしました。男子選手も含めた総合順位でも後半に順位を上げていて、フィニッシュでは総合7位となりました。昨シーズンは脚の故障でレースから遠ざかっていて、今回もベストのコンディションではなかったようですが、アジア選手権では別格の強さでした。2位には今年の日本選手権・美ヶ原80k優勝の星野由香理 Yukari Hoshino。後半の二つのピークでは優勝のミラ・ライに差をつけられたものの、2番手を譲ることはありませんでした。3位には丹羽薫 Kaori Niwa。この日の丹羽は前半はややスローなスタートとなりましたが二つ目のサンセット・ピークを超えた後のCP5(Pak Mong、50.9km地点)では先行していた香港のアルピニスト・インフン・ツアン Yin Hung Tsangをとらえて3位になっていました。4位には丹羽から2分40秒差でインフン・ツアン、5位はクリス・クワン Chris Kwan(香港)でした。
大会の表彰式では、アジア人選手を対象としたアジア選手権のメダル授与も行われました。男子では三浦裕一が昨年に続いて金メダルを獲得。銀メダルが星野和昭、銅メダルが長田豪史と日本勢がメダルを独占。女子はミラ・ライ、星野由香理、丹羽薫が金・銀・銅の各メダルを獲得。日本勢が6個のうち5個のメダルを得ることになりました。
日本勢の上位独占ではあったが
アジア各国からの参加選手は9月にVK、Skyカテゴリーのアジア選手権が行われたZAO Skyrunningに参加した選手も多く、香港で再開して友情を温めることとなりました。昨年のこの大会にはフランスをはじめ欧米のエリート選手が出場したのに対し、今年はそうした選手が少なかったこともあり、今年の大会では日本勢の活躍が目立つことになりました。ただ、アジア選手権だけでなく、広い意味でのトレイルランニングまで含めてみれば中国、ネパールには世界トップレベルの実力を持つ選手が現れており、アジアで日本の選手の実力は抜きん出ているというのは早計のように思えます。そうした選手が一堂に会する場が今後生まれてくるのかどうか、今後のスカイランニング・アジア選手権に注目していきたいと思います。
MSIG Lantau 50 – 50km / スカイランニングアジア選手権・Ultraカテゴリー リザルト
全体のリザルトはこちら。
男子
- クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente(Salomon、スペイン) 5:49:02
- 三浦裕一 Yuichi Miura(Columbia Montrail/Mountain Hardwear 、日本) 6:02:09
- 星野和昭 Kazuaki Hoshino(Salomon 、日本) 6:39:11
- 長田豪史 Goshi Osada(日本) 6:42:47
- ルディ・ボティン Rudy Bottin(フランス) 6:43:27
- ジェレミー・リッチー Jeremy Ritcey(Salomon、カナダ<在・香港>) 6:46:57
- ノ・ヘソン Heesong Noh(Salomon、韓国) 6:55:43
- ジョン・エリス John Ellis(オーストラリア<在・香港>) 6:56:05
- 町田知宏 Tomohiro Machida (日本) 7:04:49
- マルセリーノ・サナオイ Marcelino Sana-oy(フィリピン) 7:04:54
女子
- ミラ・ライ Mira Rai (Salomon、ネパール) 6:50:34
- 星野由香理 Yukari Hoshino(Altra、日本)7:52:32
- 丹羽薫 Kaori Niwa(Salomon 、日本) 8:02:10
- インフン・ツアン Yin Hung Tsang (香港)8:04:53
- クリス・クワン Chris Kwan(香港)8:30:05
- サンディ・アバハン Sandi Menchi Abahan(フィリピン) 8:51:18
- ジャネット・ワン Jeanette Wang(香港) 9:03:18
- ジュリアン・ラクロワ Juliane Lacroix (カナダ) 9:06:30
- オリビア・ラク Olivia Luk(香港) 9:12:41
- 竹重仁子 Jinko Takeshige (日本)9:14:56