シューズレビュー inov-8・Trailtalon 290

岩場と低い草木の茂みが入りまじるウェットな丘陵の中を地図とコンパスを頼りに走る、というのがイギリスで長い歴史を持つフェル・ランニング fell running。そのフェル・ランニングの盛んな湖水地方で生まれたinov-8 イノヴェイトはブランドのアイデンティティを感じさせる優れたグリップ力を誇るX-Talonシリーズ、山の岩場も想定して幅広いアウトドアのコンディションに対応するRocliteシリーズなど、トレイルランニング・シューズの名作で知られています。いわゆる走れるトレイルランニングシューズで昨年リニューアルされたTrailrocシリーズもファンの支持を集めています。

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inov-8 Trailtalon 290をテストしました。

そんなinov-8から今シーズン新たに登場したのがTrailtalonシリーズです。こちらはクッション性を高めて長距離のトレイルを快適に走ることに適したモデルですが、同じく長距離向けとして他のブランドから発売されているトレイルランニングシューズとは違うinov-8らしい個性が感じられるシューズに仕上がっています。今回は新登場のTrailtalonの二つのモデルのうち、プロテクションをより重視したTrailtalon 290についてレビューします。

アウトソールの硬度の違う3種類のラバーが作るinov-8らしいライド感

ロングディスタンス向きのトレイルランニングシューズといえば、他のブランドではつま先からかかとまでアウトソールには硬度の高いラバーとロックプレートを配することで、突き上げを感じにくくするとともに登りで着地した時の反発力を高める、というシューズが一般的。こうしたシューズでまず感じるのは着地した時の安定感です。一方、Trailtalon 290をはいて走り出すと、まずソールが足に沿うように曲がる感覚に驚くでしょう。長距離向けのトレイルランニングシューズとしてのTrailtalon 290のアプローチのユニークさが際立ちます。

Trailtalon 290のアウトソールには硬度の異なる3つの素材が使われている。

Trailtalon 290のアウトソールは硬度の異なる三つのパートからなっています。かかとから足の後部の濃いブルーは最も硬く耐久性もある素材。前足部の明るいブルーはやや柔らかい素材。そして足の左右の縁を取り囲むように配置された黒いラバーは一番柔らかくなっています。こうした素材の違いにより、着地時に重心が集中するヒールは安定させるのに対して、前足部は地面を捉えて足の土踏まずのアーチの反発力で踏み返す動きをシューズが妨げない、いわゆるナチュラルなランニングを可能に。ミッドソールの中に配置されるシャンクについても、Trailtalonシリーズは「DFB」というしなやかさとナチュラルな履き心地を重視したシャンクを採用しています。

かかとにはブルーの最も硬いラバー素材を配置。かかとはミッドソールとあわせて19mmのソール高で長距離を走る足を守る。

前足部は内側にやや柔らかいラバー、左右の縁(黒い部分)にさらに柔らかいラバーを配置。グリップ感と足裏のナチュラルな動きがinov-8らしいライド感を生み出す。

ナチュラルな履き心地というと、ミッドソールが薄くて足に衝撃が伝わりやすいシューズが少なくありませんが、Trailtalon 290はしっかりしたミッドソールを備えています。ソールの厚さはかかとが19mm、前足部が11mmとinov-8のシューズの中では最も厚いソールを備えているシューズの一つです(注・昨年登場したParkclaw 275はかかと、前足部ともにさらに1mmずつ厚いソールとなっています)。

inov-8 Trailtalon 290を足の外側から見たところ。

inov-8 Trailtalon 290を足の内側から見たところ。

フィット感とアッパー:つま先とかかとは広めだが、中足部はしっかりホールド

足を入れてみると、inov-8のシューズの特徴ともいえる広いトゥボックス(足指が収まるつま先のスペース)は健在で、ウルトラディスタンスを走るランナーにはこれを好む人が多いでしょう。かかとについてはブレを防ぐための目立った補強のパーツなどはなく、長距離向けのシューズとしてはやややわらかめという感じはあります。ただ、ナチュラルな履き心地で走る、というこのシューズのコンセプトにこの柔らかめのかかとは合致しています。

Trailtalon 290のトゥボックスは広め。

Trailtalon 290のヒールには硬いパーツなどはなく、プロネーション対策のプロテクションは控え目。

ナチュラルランニング重視のTrailtalon 290で足を入れた時のフィット感を高めているのはシューズの左右の外側から足を覆うように付けられたTPU製と思われるパーツです。このアダプターフィット ADAPTERFITとよばれるパーツにシューレースを通すようになっていて、このパーツは足の甲に当たる部分のアッパーには完全には固定されていません。これによって通常のシューズよりもレースの締め具合の調節がしやすく、シューズの足へのフィット感がダイレクトに調整できるようになっています。

足の両側からシューレースとともに足を包んでいるのがADAPTERFITというパーツ。

ADAPTERFITはアッパーに完全には固定されていない。

このほか、アッパーの生地はシンプルなメッシュ生地ですが、つま先は薄いながらも硬度のあるラバーがバンパー(トレイルランニングシューズには必須です)として接着されています。シューズのタン(べろ)のクッションはしっかりしていて、ガセット(シューズに砂や埃が入らないようにタンと本体の間をつなぐ生地)もついています。また、かかとの左右には小さなポケットがあり、ここには別売りの「ALLTERRAIN GAITER」(¥2,800<+税>)を取り付けることができます。

かかとの左右に別売りのゲイターを取り付けるためのポケットが設けてある。

ウルトラディスタンス向きながら、着地感や足の動きの滑らかさを強調したユニークなシューズ

inov-8からは長距離を走るためのシューズとして2015年にRaceultra 290が発売されていましたが、今回のTrailtalon 290はアッパーやフィット感を中心に大きく改善されています。同じinov-8のTrailRocやRocLiteではシャンクとして足裏の突き上げを軽減するためにプレート状の「META-SHANK」を搭載しています。一方でTrailtalon 290ではよりナチュラルな履き心地にするために「DFB」というシャンクを搭載。80kmや100km、さらに100マイルといった長距離を走るレース、トレイルだけでなくロードが続く区間もあるようなレースで、inov-8らしいナチュラルランニングを楽しめるシューズを求めていた人には待望の一足です。

さらに軽量でスピードに対応したモデルとしてTrailtalon 235も同時に登場しています。こちらはアッパーがさらにシンプルになっているほか、ミッドソールのボリュームを落としてドロップも4mm(かかと 11mm、前足部 7mm)となっています。

スペック

  • サイズ:メンズ・25.0-30.0cm、ウィメンズ・22.0-25.5cm
  • カラー:メンズ・Black/Blue、Black/Teal
  • ドロップ:メンズ、ウィメンズとも・8mm(かかと 19mm、前足部 11mm)
  • 価格:¥16,000 (+税)

(協力:デサントジャパン株式会社

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