IZU TRAIL Journey 伊豆トレイルジャーニー 2020 プレビュー

Izu Trail Journey今年も12月13日日曜日にIZU TRAIL Journey 伊豆トレイルジャーニー(ITJ)が開催されます。松崎から修善寺へと向かう約70kmのトレイルランニング・レースは「新しい伊豆の旅の創造」をキャッチフレーズに2013年に初開催。今では走れる林道からブナの原生林のトレイルを経て、冬の富士山や駿河湾の眺めを楽しめる大会として、そして国内のトレイルランニングシーズンを締めくくる長距離レースとして、広く知られる存在です。

Asia_Trail_Master今年春からは新型コロナウィルスの感染拡大のために多くのランニングイベントの開催が見送られました。そうした中で開催される今回のITJは、多くの参加選手の皆さんにとってトレイルランニングのレースを走る貴重な機会となるでしょう。そして、今回の70.3kmのレースは来年開催が予定されているマウンテンランニング・トレイルランニング世界選手権 World Mountain and Trail Running Championships(開催日、開催地は未定)の「ロングトレイル」競技の日本代表選手選考レースの一つとなっています。こうした背景から、今回のITJには有力選手も多数エントリーしており、今年の日本のトレイルランニング界の事実上のチャンピオンを決めるかのようなレースとなりそうです。また、今回もAsia Trail Masterの2020-2021年のシリーズ戦となっています。

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今年のITJでは午前6時のスタートからフィニッシュの関門締切となる午後8時まで、ITJのYouTubeチャンネルで大会の模様をライブ配信します。このライブ配信番組では当サイト編集人の岩佐が番組進行役を務めます。ITJは新型コロナウィルスの感染防止策として様々な対策をとって開催されます。今回のライブ配信についても、多くの皆さんが外出をせずとも大会の様子を知り、密にならなくても応援できる機会となるよう、当サイトとして力を尽くしたいと考えています。

新型コロナ対策、コースの変更点、26kmの新レースも

今年のITJは新型コロナウィルスのために、例年とはいくつかの点で異なる形で開催されます。海外からの参加者が年々増えていた大会ですが、今回大会のエントリーは国内在住者のみとなりました。開催決定の判断に時間を要したことから例年よりも後ずれしたエントリーは先着順。ITJ70kの1200人、初開催のAround Alone 26k(後述)の200人の出場枠は9月23日の受付開始から1時間に満たないうちに定員に達しました。

ニューノーマルを反映した新しい大会運営ルール

感染防止対策として、選手とスタッフ、ボランディアは大会2週間前から検温してONETAPSPORTSに健康状態を記録。大会会場へ移動するバスへの乗車、会場やスタートエリアへの入場では検温。レース中もスタートエリアでのスタート待ち、エイドステーション滞在中、フィニッシュ後の選手はマスクを着用。エイドでは水はウォーターサーバーから各自給水、補給食は個別に包装または盛り分けられた状態で提供。選手や大会関係者以外のエイドへの立ち入りは禁止。応援はマスク着用で周囲の人とは1m以上距離をとり、大きな声での会話や応援、ハイタッチは禁止と、厳格な対策とルールとすることが周知されています。また、大会では目下の新型コロナウィルスの感染拡大状況を受けて判断した結果、12月4日時点では大会を開催するとアナウンスしています(今後の状況によっては新たな判断が大会から発表される可能性もあります)。

コースは中盤の二本杉峠の手前、修善寺のフィニッシュ地点が変更に

松崎から修善寺までの「ITJ70k」は松崎新港をスタート。選手は三つのブロックに分かれて、午前6時から2分おきにスタート。エイドはスタートから9.7kmのところにある宝蔵院がウォーターポイントから計時のみのチェックポイントに変更されましたが、そのほかの3エイド(こがね橋<26.0km>、仁科峠<40.2km>、土肥駐車場<51.2km>)は前回同様に設置されます。

コースについてはスタート直後の櫻田の林道からトレイルへの入り口がこれまでより先になり、林道を通る分だけ多少距離が延びることに。その後、こがね橋の先で二本杉林道を経由してこれまでは南からトレイルで登って二本杉峠までのセクション(約5km)だったところが、二本杉林道から東に登るトレイルに入って二本杉峠に登る(約500m)コースに代わっています。さらに終盤、59km付近の北又川左岸の分岐では、昨年までの川を渡って南側の尾根を経て修善寺温泉街でフィニッシュするコースから、分岐を東に進んでゴルフ場の南側を経て虹の郷でフィニッシュするコースに変わりました。変更されたコースは例年よりやや距離が短い66.0km、累積獲得高度もやや抑え目の3,120mD+となっています。ちなみに台風の影響でコース前半が大幅に変更された昨年は68.3km 3,240mD+、一昨年は71.7km 4,408mD+でした。

今年のITJ70kのコースマップ。大会ウェブサイトより。

今年のITJ70kのコースマップ。大会ウェブサイトより。

無補給で26kmを走る新レース、Around Alone 26k

今年はもう一つ、新しいレースとして「Around Alone 26k」が開催されます。今年はトレイルランニングの大会が少なかったことに鑑みて、70kmとは違う距離のレースを走る機会を設けたいという趣旨から作られたレースで、コースは70kの後半部にあたる仁科峠から修善寺・虹の郷までの25.8km 1,040mD+。ユニークなのはスタートからフィニッシュまでエイドステーションでの給水や給食を受けない無補給というルールとなっている点です。スタートは200人の選手が10ブロックに分かれ、午前11時から3分おきにスタートします。

Around Alone 26kのコースマップ。大会ウェブサイトより。

Around Alone 26kのコースマップ。大会ウェブサイトより。

当サイトが注目する2020年IZU TRAIL Journeyの有力選手

前述のとおり、今回にはこれまでのITJにおいて上位となった経験を持つ選手を含め、日本のトレイルランニングの有力選手が多数出場します。今年は全ての選手にとってレースを走る経験がとても少なかった一年です。この特異な条件のもとで、伊豆に集まるアスリートの皆さんがどんなレースを繰り広げるのか、ファンにとっては注目の一日となります。

ここではマウンテンランニング・トレイルランニング世界選手権 World Mountain and Trail Running Championshipsの日本代表選手選考レースとなっている「ITJ70k」について、当サイトが注目する有力選手を紹介します。

女子 Women

吉住友里 Yoshizumi Yuri

昨年、UTMB®︎ Mont-Blancの55kmのレース、OCCで3位となった吉住友里 Yoshizumi Yuriが今回ITJに初参戦します。昨年は富士登山競走山頂コースで三連覇するなど、日本のトップアスリートとして活躍する吉住は今年の夏以降、野沢トレイルフェス 33kで男女総合7位の好成績で圧勝。10月の尾瀬岩鞍VK、11月のスカイラングランドファイナルin希望ヶ丘でも優勝。10月末には今シーズンの数少ない国際的な大会となったGolden Trail Championship(ポルトガル・アソーレス諸島)で世界のトップ選手たちとのレースも経験しています(24位)。今回のITJの女子のレースでは積極的にレースをリードすることになるでしょう。

高村貴子 Takamura Takako

現在ハセツネCUPを三連覇中(2016-2018)の高村貴子 Takamura TakakoもITJに初参戦。昨年はスカイランナーワールドシリーズの粟ケ岳スカイレース(3位)、Royal Race Gran Paradiso(7位)、Skyrun Comapedrosa(8位)など海外レースに積極的に挑戦して結果を残してきました。今シーズンは嬬恋スカイラン 24kで優勝、野沢トレイルフェスでは吉住に続く2位。9月のOSJ安達太良50Kでも優勝しています。

大石由美子 Yumiko Oishi

ITJでは2016年、2018年に優勝、昨年は2位の大石由美子 Oishi Yumikoにとって、今回は慣れ親しんだコースでさらにエキサイティングなレースとなることでしょう。昨年はOSJ新城64k、奥三河65k、道志村44k、美ヶ原90k、上州武尊山143k、甲州アルプス70kと国内レースで活躍。今年2月にはニュージーランドのTarawera Ultramarathonで100マイルを完走して女子6位。9月のOSJ安達太良50kでは高村に続く2位でした。

浅原かおり Asahara Kaoriも大石とともにこれまでITJの女子のレースを引っ張ってきたアスリート。2016年から2位になること3度、昨年は3位。2018年、2019年はUTMFで続けて3位となり、海外のトップ選手たちと表彰台で肩を並べています。 今シーズンは10月のOSJ KOUMI 100で100マイルを2位で完走しました。

宮﨑喜美乃 Miyazaki Kimino

さらに宮﨑喜実乃 Miyazaki Kiminoは2018年にハセツネCUPで8位、2019年Oman by UTMB®︎ 170kで3位。今年2月の高隈山ピークハント30kでは男女総合4位で女子優勝。秋山穂乃果 Akiyama Honokaは2018年STYで3位となったあと、同年のスパトレイル71kや2019年OSJ新城32kで優勝。今年はスカイランニング日本選手権となった志賀高原エクストリーム32kで2位、先月のびわ湖バレイVKで優勝。昨年のスカイランニング日本選手権となった志賀高原エクストリーム32kで優勝して注目を集めた楠田涼葉 Kusuda Suzuha。今年は秋以降にスカイランニングの大会に積極的に参加して嬬恋スカイラン 24kで2位、黒井城22kで優勝。各選手とも今回のITJで上位入りが期待されます。

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加えて、以下の選手にも注目です。

  • 渡邉ゆかり Watanabe Yukari: 2019年ITJで4位、2018年上州武尊山74kで優勝。
  • 太田美紀子 Ota Mikiko: 2019年OSJ安達太良50k優勝、2020年志賀高原エクストリーム56kで4位。2018年、2019年サロマ湖100kmで2位。
  • 松尾和美 Matsuo Kazumi: 2019年スパトレイル72kで優勝、2020年菅平43kで2位。
  • 相原千尋 Chihiro Aibara: 2020年恐羅漢ランバージャック38k優勝。
  • 中島明日香 Nakajima Asuka: 2020年Kakitsu 28kで優勝。
  • 河西智映子 Chieko Kasai: 2019年比叡山インターナショナル50kで優勝。
  • 小川ミーナ Mina Ogawa: 2011年、2012年、2015年富士登山競走山頂コース優勝。

男子 Men

川崎雄哉 Kawasaki Yuya

男子のレースにも注目選手が揃います。当サイトの考える優勝候補としてはまず川崎雄哉 Kawasaki Yuyaです。2016年のハセツネCUPチャンピオンは2017年のITJで2位に。トレイル世界選手権には日本代表として3度出場しており、昨年は23位となっています。来年の世界選手権に向けて日本代表の座を今回のITJで狙うことでしょう。今年9月のOSJ安達太良50Kで優勝しています。

大瀬和文 Kazufumi Ose

もう一人の優勝候補には大瀬和文 Ose Kazufumiを挙げたいと思います。昨年春にはヨーロッパのトップ選手たちが参加した香港の9 Dragons 50/50、Translantau 100kで優勝、クロアチアの100 Miles of Istria 100マイルで優勝。その後もアジア各地の100km超のレースを転戦したほか、国内では信越五岳110kで2位に。今シーズンはHOTAKA SKYRUN 25kで2位となった他はレースには出ていない様子ですが、シーズン最後の伊豆でどんな走りを見せてくれるか。ITJでは2013年の第一回大会で3位になっています。

そして昨年のITJのチャンピオン、西村広和 Nishimura Hirokazuも今年の優勝候補です。昨年後半の西村は6月のスパトレイル72kの優勝に始まり、9月の信越五岳110k、12月のITJと勝利を重ねました。今シーズンはほぼ一年間、レース出場はブランクだった模様ですが、相性のいいITJではまた素晴らしい成果を手にするかもしれません。

さらに表彰台を狙う有力選手のみなさんが続きます。

横内佑太朗 Yutaro Yokouchi

横内佑太朗 Yutaro Yokouchi

昨年のITJで2位だった横内佑太朗 Yokouchi Yutaroは今年10月の菅平43kで後続に12分以上の差をつけて優勝しています。昨年のUTMFで7位、アメリカのWaldo 100kで2位となっていた鬼塚智徳 Tomonori Onitsukaは昨年、初めてのITJで3位になりました。今年は9月の五ケ山トレイル11の60kmで2位でした。奥宮俊祐 Shunsuke Okunomiyaは昨年のITJで6位で、今年はOSJ KOUMI 100で3位に。

城武雅 Masashi Shirotake

須賀暁 Suga Satoruは昨年のOSJ安達太良50Kのチャンピオンで、6月の越後カントリートレイル53kでは大瀬に続いて僅差の2位。ITJでは2015年に5位となっています。今シーズンは10月の志賀高原エクストリーム56kで上田瑠偉に続いて2位でした。城武雅 Masashi Shirotakeは2018年春にハセツネ30Kで優勝して秋のハセツネCUPで2位と、トレランデビューのシーズンに活躍。昨年2019年にはトレイル世界選手権に日本代表として出場しています。2013年ハセツネCUPチャンピオンで昨年の北丹沢31kで3人のタイでトップでフィニッシュした東徹 Higashi Toruは今回初めてITJにエントリーです。

加えて次の各選手にも注目です。

  • 町田知宏 Machida Tomohiro: 昨年のITJで4位、今年の志賀高原エクストリーム56kで6位、龍馬脱藩トレイル70kで優勝。
  • 山口純平 Yamaguchi Jumpei: 昨年のITJで5位。
  • 牧野公則 Makino Masanori: 2019年OSJおんたけ100マイル優勝、今年のOSJ奄美50Kで優勝、OSJ KOUMI 100で2位。
  • 青木純 Aoki Jun: 2019年OSJ奥久慈50Kで2位、今年のOSJ安達太良50Kで7位。
  • 矢部達也 Yabe Tatsuya: 2019年上州武尊山143kで2位、2020年菅平43kで2位。
  • 牛田美樹 Ushida Miki: 2019年美ヶ原45kで優勝、ITJでは2015年に3位、2016年に優勝。
  • 森本幸司 Morimoto Koji: 2019年千羽海崖37Kで優勝、2015年ITJで2位。
  • 松原克博 Matsubara Katsuhiro: 2018年ITJで2位。2019年FTR飯能48kで優勝。今年の志賀高原エクストリーム56kで4位。
  • 長田豪史 Osada Goshi: 2019年比叡山インターナショナル50Kで2位、Formosa Trail 100kで優勝。
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