1974年に始まった大会は50年目を迎えました。
今年も6月24 – 25日にウェスタン・ステイツ Western States Endurance Runがアメリカ・カリフォルニア州で開催されます。100マイルのトレイルランニングレースの元祖であり、今日ではアメリカのみならず世界のランナーにとって憧れの挑戦の舞台です。
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今年もそのコースはオリンピック・バレーに位置するスキーリゾートであるパリセード・タホ Palisades Tahoeをスタート。シエラネバダ山脈を横断してオーバーンのプレイサー・ハイスクールでフィニッシュする100.2マイルの累積獲得高度は18,000フィート、累積喪失高度22,000フィートのコースとなります。昨年冬の記録的な降雪量により、今年はコースの序盤に雪が多いコンディションであり、融雪によりアメリカン川の水位は高い状況だといいます。下流では多くの水位が上がります。また、昨年9月から10月にかけて続いた山火事「モスキート・ファイア」は大会のコースのうち16マイルに重なりました。大会ではこの山火事後にトレイルの整備作業に取り組んでいます。例年、ランナーは灼熱と闘いながら走り続けることになりますが、山火事により日陰を作る森が失われたセクションではさらに過酷なレースとなることでしょう。
今年のレースのスタートは6月24日土曜日午前5時(日本時間同日午後9時)となります。この記事では今年のウェスタン・ステイツの有力選手を紹介します。
女子の有力選手
昨年のこの大会の女子上位4選手が今年の大会には参加しない中で、優勝候補として注目されるのはコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA)でしょう。2018年のこの大会で優勝した時の17時間27分は当時の歴代2位となる大記録でした(現在の大会記録は16時間47分19秒<エリー・グリーンウッド、2012>)。その後の活躍は誰もが知るところで、2021年にはUTMB、2022年はHardrockで優勝しています。
昨年のUTMBで優勝したのはスイス在住のケイティ・シャイド Katie Schide (USA) で今回のウェスタン・ステイツに登場します。今年はフランス・パリで開催のEcoTrail Parisの80kのレースを6時間23分で優勝。これは歴代2位の好記録でした。
今年4月のCanyons by UTMBの100kmで優勝して今年のウェスタンのチケットを得たイーダ・ニルソン Ida Nilsson (SWE)は昨年11月のチェンマイでのWMTRC世界選手権の80kmで銀メダルを獲得しています。意外ですが100マイルのレースには今回が初挑戦です。
加えて、昨年の4位から9位までタイムはわずか1時間14分の間に収まる接戦となった5人のアスリートが今年の大会にエントリーしています。
- エミリー・ホーグッド Emily Hawgood (ZIM) – 昨年の5位。過去2年間でUTMBで10位と6位を記録しています。
- リア・インリング Leah Yingling (USA) – 昨年の6位。今年はWay Too Cool 50kで2位、Bull Run Run 50マイルで優勝。
- テイラー・ノウリン Taylor Nowlin (USA) – 昨年の7位。
- カミーユ・ヘロン Camille Herron (USA) – 昨年の8位。今年3月に48時間走で世界新記録を達成しました。
- ケイティ・アスマス Katie Asmuth (USA) – 昨年の9位。今年はWay Too Cool 50kとGorge Waterfalls 50kで3位に入りました。
その他の注目選手としては、以下の選手が挙げられます。
- キーリー・ヘニンジャー Keely Henninger (USA) – 今年のBlack Canyon 100kで優勝。ウェスタン・ステイツでは2021年に9位となっています。
- エスター・チラーグ Eszter Csillag (HUN) – 香港在住でアジアのトレイルランニング界で活躍していますが、昨年はUTMBで5位、WMTRC世界選手権の80kで4位、Transgrancanariaで5位となっています。
- デヴォン・ヤンコ Devon Yanko (USA) – 2016年のウェスタン・ステイツで3位。昨年はUmstead 100で大会記録を更新、Javelina 100で優勝。
男子の有力選手
男子ではこの大会を3度制し、大会記録を持つジム・ウォルムズレイ Jim Walmsleyも、昨年初出場で優勝したアダム・ピーターマン Adam Petermanも今年のウェスタン・ステイツにはエントリーしていません。そうした中では昨年2位のヘイデン・ホークス Hayden Hawks (USA)が今年の優勝候補として名前が挙がります。そのスピードには定評があり、2021年の8位に始まる3度目の挑戦に注目が集まります。今年はCanyons 50kで優勝、Tarawera Ultramarathon by 100kで2位といった記録を残しています。
初出場で3位となって昨年注目されたアーレン・グリック Arlen Glick (USA)も今年の優勝候補の一人。昨年のウェスタン・ステイツののちにJavelina 100、Mohican 100、Burning River 100と米国の100マイルで優勝を重ねました。
ヨーロッパからは昨年のUTMBの2位、マチュー・ブランシャール Mathieu Blanchard (FRA) が参戦します。今年2月にはステージレースのCoastal Challenge Expedition Runで2位、Marathon des Sablesで3位となる一方、パリ・マラソンで2時間22分というタイムでした。
怪我と手術を克服して昨年のUTMBで3位のトム・エヴァンス Tom Evans (GBR)は2019年のウェスタン・ステイツで3位となった経験があります。今年はBlack Canyon 100kで2位、Ultra-Trail Snowdonia 50kで優勝。
続く注目選手は、次のとおり。
- タイラー・グリーン Tyler Green (USA) – 昨年の4位。今年はTransgrancanariaで3位に。
- ルドヴィック・ポメレ Ludovic Pommeret (FRA) – 昨年のレースで6位。フランス出身の46歳で昨年はTDSで優勝しています。
- アレックス・ニコルズ Alex Nichols (USA) – 昨年の8位。一昨年の10位。
- コディ・リンド Cody Lind (USA) – 昨年の9位。今年はValhöll Ultra Trail by UTMBの80kで優勝。
- スコット・トレア Scott Traer (USA) – 昨年の10位。今年はUmstead 100を大会新記録で優勝、昨年のJavelina 100でも優勝しています。
- アンソニー・コスタレス Anthony Costales (USA) – 今年のGolden ticket raceのBlack Canyon 100kで優勝。近年では2019年のChuckanut 50kで優勝、2021年のRun Rabbit Run 100での2位。
- ダコタ・ジョーンズ Dakota Jones (USA) – 10年以上前からその名を知られるアスリートですが、近年再びレースでの活躍で名前を聞く機会が増えました。昨年のJavelina 100で優勝したほか、今年5月のTransvulcania Ultramarathonでは11年ぶりに優勝したことも話題となりました。
- チョウ・ジアジュ JiaJu Zhao (CHN) – 今年4月のウルトラトレイルマウントフジで優勝したことで日本のトレイルランニング界ではその名を知られます。昨年12月のDoi Inthanon by UTMBの100マイルで優勝してこの大会の出場権を得ています。初めてのアメリカでのレースでどんな走りを見せるか注目が集まります。
日本からは井原知一 Tomokazu Ihara、田中裕康 Hiroyasu Tanaka、西城克俊 Katsutoshi Saijoの各選手が出場します。