先月、キリアン・ジョルネ Kilian Jornetとスペインのフットウェアブランドである Camper カンペールが手がけるアウトドアブランド「NNormal(ノーマル)」から「Tomir 2.0(トミール 2.0)」が日本国内で発売されました。
耐久性が高く過剰消費を避けられる製品、素材やデザインを通じて環境への影響を最小限に抑えることをミッションに掲げるNNormalは、新しい機能が加わらない限り既存のシューズをアップデートすることはありません。そのことは先月の当サイトとのインタビューでCEOのシト・ルイス・サラス Sito Luis Salasさんもはっきりと話していました。
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Tomir 2.0は元となったTomir(仮にこの記事ではTomir 1.0と呼びます)とどこが違うのか?NNormalからレビューのために提供していただいたシューズを見比べて、そして履いてみて確かめました。結論としては実際に履いた感じ、走ってみた感じでは差はわずかですが、より耐久性と安全性が高まっていることがわかりました。よりトレイルランニングシューズらしいシューズになった、というのが筆者の印象です。
ミッドソールとつま先のディテールの変更でより走ることに適したシューズになった
現在NNormalがラインナップするトレイルランニング・シューズはシンプルながら高い反発力のミッドソールのKJERAG(ジェーラグ)と高いクッション性とプロテクション性を備えたTOMIR(トミール)の二つです。CEOのシトさんとのインタビューでも、この二つのシリーズでトレイルランニングの幅広いシーンをカバーしていて、さらにモデルを増やす予定はない、といっていました。
ユーザーのコミュニティからのフィードバックを受けて大幅な改善がなされたというTomir 2.0のディテールをチェックしてみます。
Tomir 2.0とオリジナルの1.0はみた感じのデザインにはほぼ変更がないのですが、最も大きい変化はミッドソールの素材です。ミッドソールのデザインやボリューム感の見た目は同じなのですが、素材は1.0では「EVAフォーム」であるのに対し、2.0は「EExpureスーパークリティカルフォーム」が使用されています。これはKJERAGのミッドソールにも使われている素材で、低密度のフォームなので軽量かつ反発力が高い素材です。シューズの価格が1.0の27,500円と2.0の33,000円で差があるのも、この先端的な素材を採用したことに関係していそうです。
ランニング中の滑らかな重心移動によりライド感を高めるミッドソールのロッカー構造も改良されているとのこと。
さらに、つま先のデザインが変更されています。Tomirはクラシックなマウンテンブーツを思わせるステッチで、アッパーとミッドソールを外側からナイロン糸で縫い合わせているのですが、2.0ではアウトソールから延びるつま先のチップの部分まで上から縫い合わせる「360° Stitch」に変更しています。さらにチップの形状自体も先端部分を滑らかに、つま先の最初のラグ(突起)の高さを低くしています。この部分は1.0では無骨な感じがしてデザインとしては魅力がありますが、岩や木の根に爪先を引っかけやすいのも確かです。2.0ではより引っ掛けにくい形状に変更された上に、アッパーのつま先の先端部にはよりしっかりした樹脂製のトゥガードが追加されました。テクニカルなトレイルでの特に長時間にわたるランニングではより安心して履けるシューズになりました。
このほかにも細かいところでは、シューズの内部でタンとソールをつなぐパーツがメッシュに変更され、付属するシューレース(靴紐)は縁にうねりのあるほどけにくいタイプになっています。
履いてみた・反発力のあるミッドソールと着地の安定感で長時間でも安心して走れる
Tomirの1.0と新しい2.0を持ち出して、近くのトレイルで交互に履き比べてみました。
足を入れた感じはどちらも変わりないのですが、走り始めてみると2.0の方が着地した時にクッションと反発力をはっきりと感じます。1.0の方はよりミッドソールが固い感じで、着地時の安定感を重視するならこちらの方が良いかもしれません。
Tomir 1.0はより幅広くランニングからハイキングまで楽しめるアウトドアアクティビティのためのシューズとして魅力的な存在です。ミッドソールはしっかりしている方が安定感があって長時間歩いても疲れにくいし、ステッチやラギッドなトゥチップもデザインとして魅力です。Tomir 2.0は反発力のあるミッドソールでランニングのパフォーマンスを高めたシューズ。つま先の耐久性と安全性を高めたことで、特にウルトラディスタンスを走るためのトレイルランニングシューズとして魅力的な存在になりました。
NNormalがいう通り、Tomir 2.0は1.0のアップデートモデルではあるものの、単にデザインを目新しくしたわけではなく、機能や用途で1.0やKJERAGと棲み分けるシューズになっていると感じました。