【追記あり】エナジージェルの栄養成分表示が不正確?アメリカの人気ブランドで問題が明らかに

【追記・iRunFarによる独自の検査の結果とそれを報じた記事について追記しました。2024.06.04】アメリカのトレイルランニングコミュニティで先月から話題となっていましたが、先週になって大きな局面を迎えました。

天然成分を生かしたスポーツ補給食のブランドとして北米で人気を高めている「Spring Energy」のエナジージェル製品について、表示されている栄養成分と実際の成分に大きな乖離がある可能性がが明らかになっていました。最近になって複数の独立した検査結果により、ジェルのカロリーと炭水化物の含有量が表示よりも大幅に少ないことが確認されました。このことを受けて、メーカーは製品の販売を停止し、ウェブサイトからもこの製品を削除しています。

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天然成分100%であることをアピールして人気を集めていたことや、著名なコーチやアスリートが開発やマーケティングに関わっていたこともあり、アメリカのランニングコミュニティでは大きな話題となっています。

天然志向とランナーのニーズを捉えて人気を集めた新製品

Spring Energyは、2014年にスポーツ栄養学の博士号を持つラファル・ナザレヴィチ Rafal Nazarewicz 博士とアダム・ゴレニフスキー Adam Goleniewski によって設立されたスポーツニュートリションブランドです。ナザレヴィチ博士はウルトラランナーでもあります。Spring Energyは、自然の力を活用した天然成分100%の製品を提供すること、胃腸のトラブルや血糖値の急上昇・急降下を避けるために低GIの複合炭水化物、脂肪、タンパク質を配合することをうたっています。

2021年にSpring Energyは「Awesome Sauce」という新しいエナジージェルの製品を発売します。バスマティ米、アップルジュース、オーガニックアップルソース、タロ芋、メープルシロップ、オーガニックレモンジュース、海塩、シナモン、バニラなどの天然素材のみを原材料としつつも、54gの1パックには45gの炭水化物を含み、180カロリーを摂取できるとされていました。さらに風味も人工的でなく滑らかで飲み込みやすいことから、1パック約5ドルという価格ながらも人気を集めます。この製品はランニングコーチとして著名なデビッドとメーガンのローチ夫妻がコンセプトを提案し、開発に関わってきたことも売り文句になっていました。

この材料では表示されているカロリー量に達しないという指摘からはじまる

この製品への疑惑のきっかけとなったのは今年4月12日のReddit(英語圏の掲示板サービス)への投稿でした。あるユーザーが「Awesome Sauce」の成分を再現しようとしたところ商品に表示されている炭水化物とカロリーに疑問を感じたのをきっかけに、ジェルを脱水して重量を測定したところ、表示の45gに対し実際は16gしかなかったのだといいます。

これをきっかけに、同様の実験で同じ結果だったとする投稿が相次ぎます。これに対してSpring Energyは「成分表示は正しい」としつつも再評価を検討する姿勢を示します。

5月17日にはドイツの小売業者が検査を実施し、この製品に含まれる炭水化物が表示の1/3程度であることを確認しました。この後、Spring Energyはこの小売業者へのメールの返信で「平均的には表示通りの栄養価」と回答したといいます。

成分表示を満たしていないことを認めて販売停止に

そして5月28日にウルトラランニングコーチのジェイソン・クープ Jason Koopが「Awesome Sauce」を検査機関に送って分析した結果を明らかにしました。それによれば、1パックあたりの炭水化物は18g、エネルギーは75カロリーであり、パッケージに表示されている45g、180カロリーからは大きく下回っていました。クープは他の製品も検査を依頼していますが、Spring Energyの他の製品でも炭水化物とカロリーは表示の約半分、一方で競合ブランドであるGUの「Chocolate Outrage」は概ね表示に近い結果でした。クープが明らかにした検査結果をきっかけに、ランニングコミュニティではSpring Energyの信頼性に対して大きな疑問が広がっています。

5月29日にSpring Energyは「Awesome Sauce」の販売を停止し、公式ウェブサイトから製品ページを削除。製品の改良して、改良版の製品を販売すると発表しています

【追記・iRunfarは6月4日にこの問題についての記事を公開しました。iRunFarが自らクラウドファンディングのGoFundMeでキャンペーン「Fueling the Truth in Sports Nutrition」を立ち上げ、110人のドナーから2,805ドルを集めて、Spring Energyやその他7ブランドのエネルギージェルについて第三者機関による検査を実施。その結果、Spring Energyの「Awesome Sauce」ほか一製品で表示成分を下回った一方、天然素材を原料とするHoney Stinger、Hüma、Näakの各製品、および精製糖を原料とするGu Energy、Maurten、Precision Fuel、Science in Sportsの各製品など他7ブランドのエナジージェルではラベル表示通りの栄養価であることが分かりました。iRunFarからコメントを求められ、Spring EnergyのナザレヴィチCEOは一部のロットで栄養価が低かったことを認め、製造方法などに問題があったと説明し、今後の対応については数週間以内に詳細を公表するとしています。2024.06.05】

透明性を高める努力が求められる

この問題はSpring Energyの信頼性に大きな影響をもたらしており、ランニングコミュニティでは炎上している状況です。これをきっかけに他のスポーツニュートリション製品についても疑問や検証を求める声が上がるかもしれません。

この件について報じる海外メディアの記事(米 Trailrunner 誌)によれば「Awesome Sauce」について、摂取してもすぐに空腹を感じたアスリートもいたとのこと。体感で疑問を感じた消費者も多かったのでしょうが、それをきっかけに自ら検証するのはなかなかできないことです。栄養補給食品の成分を消費者側で判断することは難しく、メーカーあるいは業界として成分表示の正確さを担保する透明性の高い仕組みが求められるでしょう。しかし、そうした仕組みを可能にするには、消費者の商品選びに成分の正確さが意味を持つことが前提になります。消費者側にもスポーツと補給食の関係について知識を得る努力が必要なのかもしれません。

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