2024年6月29日、カリフォルニア州オリンピックバレーからオーバーンへと向かうアメリカで最も伝統ある100マイル・トレイルランニングイベント、ウェスタンステイツ・エンデュランスラン Western States Endurance Run が開催されました。51回目の大会を制したのは ケイティ・シャイド Katie Schide とジム・ウォルムズリー Jim Walmsley でした。シャイドは昨年の準優勝に続いてついに勝利を勝ち取りました。ウォルムズリーは4度目の優勝となります。そして二人ともにそれぞれ女子と男子のレースで歴代2位のタイムを記録するという、ハイレベルなレースとなりました。
(写真・4度目の優勝を果たしたジム・ウォルムズリー Jim Walmsley。Photo © Hilary Yang)
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女子のレース:シャイドが圧巻の走りで優勝、2位にはシャン・フージャオが歴代3位のタイムでフィニッシュ
米国東部、メイン州出身で現在はフランスに在住のケイティ・シャイドは32歳。今回のレースでは序盤から独走態勢を築き、後続の女子選手に背中を見せることなく圧倒的な勝利でした。男女総合で13位でフィニッシュし、15時間46分というタイムは、昨年コートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter が記録した大会記録の15時間29分に次ぐ、歴代2位の記録となりました。準優勝となった昨年の自らのタイムから自己ベストを約1時間も短縮するパフォーマンスを見せました。
レース序盤、シャイドは最初のエイドステーションであるライオンリッジ Lyon Ridge(10マイル地点)で既にコースレコードペースを12分上回り、ロビンソンフラット Robinson Flat(30マイル地点)では2位のエミリー・ホーグッド Emily Hawgood(ZWE)に21分の差をつけていました。シャイドのリードはその後も続き、ダスティコーナーズ Dusty Corners(38マイル地点)ではコースレコードペースを26分上回る驚異的なペースをキープします。ミシガンブラフ Michigan Bluff (55マイル地点)では少しペースが落ちたものの、順調に進みます。フォレストヒル Foresthill(62マイル地点)では、コースレコードに対するアドバンテージは19分で、このとき2位のシャン・フージャオ Fu-Zhao Xiang(CHN)には48分差です。
オーバーンのプレイサー高校のスタジアムに設けられたフィニッシュラインに、シャイドは15時間46分57秒で到着。昨年のドウォルターによる15時間29分33秒に続き歴代2位となる記録を残しました。2位には今回がウェスタンステイツへの初挑戦だった中国のシャン・フージャオが16時間20分03秒でフィニッシュ。昨年のシャイドのタイムを23分上回る歴代3位のタイムとなりました。そして3位には昨年に続いてハンガリー出身で香港在住のエスター・チラグ Eszter Csillag (HUN) が16時間42分17秒でフィニッシュしました。チラグも昨年の自らのタイムを25分以上短縮しています。
4位にはエミリー・ホーグッド Emily Hawgood が16時間48分43秒、5位にはスウェーデン在住のイングビルド・カスパーセン Yngvild Kaspersen (NOR) が16時間50分39秒、6位にはノルウェー在住のイーダ・ニルソン Ida Nilsson (SWE) が16時間56分52秒でフィニッシュ。ニルソンはマスターズカテゴリー(40-49歳)の大会新記録を樹立しました。
女子ではこれまでの歴代で3人しかいなかった17時間以内のフィニッシャーが6人生まれました(シャイドは昨年に続いて2度目のサブ17)。
男子のレース:ウォルムズリーが4度目の優勝、ファーバードは激しい2位争いを制する
ウェスタンステイツでは3度目の挑戦となった2018年に初優勝、2019年に14時間9分28秒の大会記録を残し、2021年にも優勝しているジム・ウォルムズリー Jim Walmsley、34歳が今年の大会で14時間13分45秒で4度目となる優勝を勝ち取りました。これは自身による大会記録に続く歴代2位のタイムとなります。
レース序盤からウォルムズリーはロッド・ファーバード Rod Farvard と激しく競り合うことになりました。28歳のファーバードは今回でウェスタンステイツには3年連続の挑戦で昨年は11位。惜しくも逃した翌年の大会への出場権は、今年4月の Canyons by UTMB 100K での勝利で手にしています。ミシガンブラフ(55マイル地点)では、ウォルムズリーが先に到着しましたが、ファーバードが先にエイドステーションを出発。フォレストヒル(62マイル地点)でも同様の展開でした。
78マイル地点のラッキーチャッキーのアメリカン川渡渉はウォルムズリーとファーバードがほぼ同時に川を渡り、その後もリードを交互に奪い合うという緊迫した展開が続きます。グリーンゲート(80マイル地点)では、ファーバードがリードを奪いましたが、ウォルムズリーはその後のエイドステーションでリードを取り戻し、94マイルのポインテッドロックスでは差は11分まで広がりました。ウォルムズリーは14時間13分45秒でオーバーンにフィニッシュしました。
ウォルムズリーとファーバードの先頭争いの間も3位以下の選手が順位を入れ替えながら激しいレースをくり広げていました。ダコタ・ジョーンズ Dakota Jonesやダニエル・ジョーンズ Daniel Jones (NZL)、ジョン・アルボン Jonathan Albon (GBR)といった選手たちと肩を並べる中から3番手に抜け出してきたのはヘイデン・ホークス Hayden Hawksで、グリーンゲートではトップから10分差でした。ポインテッド・ロックスでは2番手のファーバードから7分差でしたが、終盤の猛迫で残り1マイルのロビーポイントで2位に2分差まで迫ります。最後は
ロッド・ファーバードが14時間24分15秒でフィニッシュして2位となりました。3位のヘイデン・ホークスは14時間24分31秒でファーバードにわずか16秒差まで迫りました。
4位にはニュージーランドのダニエル・ジョーンズ Daniel Jonesが14時間32分29秒、5位にはケイレブ・オルソン Caleb Olson が14時間40分12秒、6位にはノルウェー在住のジョン・アルボン Jonathan Albon (GBR) が14時間57分01秒でフィニッシュしました。
ハイレベルなレースとなった今年のウェスタンステイツ
今年のレースは、男女ともに非常にハイレベルな戦いとなりました。男子の上位5人は全員が昨年の優勝タイムを上回り、女子の上位10人は昨年の上位10人の合計タイムより40分近く速いタイムでフィニッシュしたことから、今年のレベルのが高さがわかります。
昨年、コース近くで発生した山火事の影響で今回はコースの変更を余儀なくされるなど、予期せぬ出来事もありましたが、選手たちは困難を乗り越えて素晴らしいパフォーマンスを見せました。
中でも中国のアスリートの存在感がますます高まったのは今年のウェスタンステイツのトピックの一つです。Mt. FUJI 100での2度の優勝で日本のトレイルランニングファンにもおなじみのシャン・フージャオ Fuzhao Xiang は歴代女子3位で準優勝という成功を収めました。男子ではシェン・ジアシェン Jiasheng Shen が昨年の4位に続き今年は8位となり再びトップ10入り。12位にはドー・ジー Ji Duo、14位に今年のMt. FUJI 100優勝のデン・グオミン Guomin Dengが入りました。世界各地から選手を集めてハイレベルなレースへと進化し、ライブ配信に象徴されるように大会の魅力を新たな次元で伝える努力を重ねているウェスタンステイツ。今後もアメリカのクラシックイベントとしてのアイデンティティを守りつつも、ますます注目を集めるエキサイティングなイベントであり続けるでしょう。
リザルト
全体のリザルトはこちら。
女子トップ10
- ケイティ・シャイド Katie Schide – 15:46:57
- シャン・フージャオ Fu-Zhao Xiang(CHN)- 16:20:03
- エスター・チラグ Eszter Csillag(HUN)- 16:42:17
- エミリー・ホーグッド Emily Hawgood(ZWE)- 16:48:43
- イングビルド・カスパーセン Yngvild Kaspersen(NOR)- 16:50:39
- イーダ・ニルソン Ida Nilsson(SWE)- 16:56:52
- ヘザー・ジャクソン Heather Jackson – 17:16:43
- レイチェル・ドレイク Rachel Drake – 17:28:35
- プリシラ・フォージー Priscilla Forgie(CAN)- 17:30:24
- リア・イングリング Leah Yingling – 17:33:54
男子トップ
- ジム・ウォルムズリー Jim Walmsley – 14:13:45
- ロッド・ファーバード Rod Farvard – 14:24:15
- ヘイデン・ホークス Hayden Hawks- 14:24:31
- ダン・ジョーンズ Dan Jones(NZL)- 14:32:29
- ケイレブ・オルソン Caleb Olson – 14:40:12
- ジョン・アルボン Jon Albon(GBR)- 14:57:01
- タイラー・グリーン Tyler Green – 15:05:39
- シェン・ジアシェン Jia-Sheng Shen(CHN)- 15:09:49
- ジョナサン・レア Jonathan Rea – 15:13:10
- クリス・マイヤーズ Chris Myers – 15:18:25