UTMBワールドシリーズファイナル、UTMBは女子は大接戦、男子はウォルムズレーの連覇なるかに注目【 #UTMB 2024 プレビュー】

2024年の HOKA UTMB Mont-Blanc のイベントの中で、日程の後半に開催されるOCC(50Kカテゴリ)、CCC(100Kカテゴリ)、UTMB(100Mカテゴリ)の三つのレースは2度目のシーズンとなる今年のUTMBワールドシリーズのファイナルとなっており、上位入賞選手には賞金も贈られます。

それぞれのレースのライブトラッキングはUTMB Liveでチェックできるほか、8月29日木曜日から9月1日日曜日にかけてライブ配信で視聴できます。

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2024.08.22
この記事では8月30日金曜午後6時(日本時間31日土曜日午前1時)にスタートするUTMBの注目選手を紹介します。

(All photo by © UTMB)

世界最高峰の100マイルレース・UTMB 〜トップランナーによる戦いの行方は?

CCCのコースはモンブランのイタリア側の麓に位置するクールマイユール(Courmayeur)をスタートし、スイスのシャンペ(Champex)を経由して、シャモニー(Chamonix)でフィニッシュします。距離は101km、累積獲得高度が6,062mD+で、ほぼ100マイルのUTMBのコースの後半部に重なります。

2006年に100マイルのUTMBに並ぶ二つ目のレースとして登場した時には、UTMBの短縮版、入門編という位置付けだったかもしれませんが、近年ではUTMBや他の国際的な100マイルレースで上位になった経験を持つ選手やOCCをはじめとするミドルディスタンスのスピードスターたちが入り混じる、いわば異種格闘技のようなハイレベルなレースとなっています。

UTMBのコースはフランス、イタリア、スイスの3カ国にまたがり、距離176.4km、累積獲得高度9,915m。シャモニーをスタートして反時計回りにモンブランの周りを一周します。コースは最終盤の159km付近のコル・デ・モンテ Col des Montetsから直進してトレ・ル・シャン Tré-le-Champの手前からBécharを経てフレジエールへと登るコースとなります。以前のコル・デ・モンテからテット・オー・バン Tete au Ventを経由してフレジエール Flégèreに至るルートからは前回同様変更されています。

女子のレースは大接戦の予感

今年のUTMBの女子のレースは、文字通り世界中から集まったトップ選手による激しいレースとなりそうです。

前回のUTMBで3回目の優勝を成し遂げたコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA) は今年のエントリーを見送っています。一方、2022年に23時間15分という大記録で優勝したケイティ・シャイド Katie Schide (USA)は昨年のOCCでの2位を経て今回はUTMBに戻ってきます。この間、シャイドは2023年ウェスタンステイツで2位、2024年ウェスタンステイツでは歴代2位となる15:46で優勝。今回の女子のレースでは2度目の勝利となるか注目されます。

昨年のUTMBでコートニーに53分差の24:22で3位になったブランディーヌ・リロンデル Blandine L’hirondel(FRA)も今回の優勝候補の一人です。昨年からは長い距離のレースは走っていませんが、今年6月のオフロード欧州選手権の58kmでは銀メダル、7月のRestonica by UTMB 33kmで優勝。UTMB Mont-Blancでは2021年のOCCで優勝、2022年のCCCで優勝しており、今回UTMBのタイトルを勝ち取れるかどうかも話題となっています。

シャン・フージャオ Fuzhao Xiang (CHN) といえばマウントフジ100での2019年、2023年の優勝で日本のトレイルランニングコミュニティにもよく知られていますが、昨年からは大舞台での活躍が続いています。昨年のUTMBでは4位でフィニッシュし、12月のTranslantau by UTMB 140Kでは総合5位で女子優勝。4月のMount Yun by UTMB 50K優勝を経て、今年のウェスタンステイツを歴代3位の記録となる16:20でフィニッシュしてケイティ・シャイドに続く2位を勝ち取りました。この勢いで今年のUTMBでトップ3入りを期待する声も高まっています。

2015年のCCCで優勝、2018年と2019年はOCCを連覇したルース・クロフト Ruth Croft (NZL)は昨年のUTMBにエントリーしていましたが、不調のため直前に参加を見送りました。今年は満を持してのUTMB参戦となるか。最近のクロフトは2022年のウェスタンステイツで優勝のほか、昨年11月のUltra-Trail Cape Towin 100k、今年2月のTarawera by UTMB T102、5月のTransvulcaniaをいずれも優勝しています。

香港在住のエスター・チラグ Eszter Csillag (HUN)も今年のウェスタンステイツで16:42という好タイムでフィニッシュ、3位で歴代4位の記録を残しています。UTMB Mont-Blancでは2021年のCCCで4位、2022年のUTMBでは5位。昨年は6月のウェスタンステイツで3位となった後でUTMBではDNFとなっていました。今回のUTMBでのパフォーマンスは2ヶ月前のウェスタンステイツからのリカバリー次第となるのかもしれません。最近では11月の香港で開催のTranslantau by UTMB 100K、12月に来日してITJ70kでいずれも優勝しています。

今年のウェスタンステイツで4位のエミリー・ホーグッド Emily Hawgood (ZIM)も今回のUTMBに参戦します。2021年に初めてUTMBを走った際は10位。翌年は6位で昨年はCCCで準優勝でした。2021年、22年、23年、そして今年もウェスタンステイツとUTMBのダブルでいずれも好成績を残しています。この二つの大会以外では今年3月にイタリアのChianti Ultra-Trail by UTMB 74kで優勝しています。

イーダ・ニルソン Ida Nilsson (SWE) は最近では2022年のチェンマイでのWMTRCでの銀メダルや、2023年のCanyons by UTMB 100kでの優勝、今年5月のTransvulcaniaでの準優勝と活躍が続いており、100マイルでも昨年のウェスタンステイツで7位になっています。UTMB Mont-Blancには2018年のCCCで3位ののち、2022年と2023年はいずれもCCCを走りながらもDNFで終わっています。今回は100マイルのUTMBに初めてのエントリーです。

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2022年のシーズンにウェスタンステイツで3位、UTMBで2位という好成績のダブルで注目されたのがマリアン・ホーガン Marianne Hogan (CAN) です。今回は2年ぶりのUTMBへの参戦です。この間は2023年11月にUltra-Trail Cape Town 100Kで2位、今年6月のSwiss Canyon Trail 111kで優勝しています。

日本からは昨年のIstria 100 by UTMB 168kで優勝、昨年のUTMBで15位の宮﨑喜美乃 Kimino Miyazakiや、伊東ありか Arika Ito澤田由紀子 Yukiko Sawada矢野淳子 Junko Yanoがエントリーしています。

さらに今年のUTMBの女子優勝選手には次の選手が続きます。

  • ラグナ・デバッツ Ragna Debats (NED):2023年Javelina Jundred 100で2位。
  • ヘレン・ミノ・フォークナー Helen Mino Faukner (USA):2023年CCCで3位、2024年Desert Rats by UTMB 50Kで優勝。
  • マノン・ボアール・カイエ Manon Bohard Cailler (FRA):2021年TDS優勝、2023年WMTRC世界選手権ロングで銅メダル。
  • フィオナ・パスカル Fiona Pascall (GBR): 2023年Julian Alps by UTMB 170kで優勝、2024年mozart 100 by UTMB 105Kで優勝。
  • エカテリーナ・ミチャエワ Ekaterina Mityaeva(ANA):2024年90km du Mont-Blancで優勝、2019年UTMB4位、2021年TDSで4位。
  • クラウディア・トレンプス Claudia Tremps (ESP):2021年UTMBで9位、2022年TDS®︎で2位。2024年Trail Menorca Cami de Cavalls 85Kで優勝。
  • アンヌ・リーズ・ルーセ Anne-Lise Rousset (FRA):2024年MIUT 116kで2位、2023年Hardrock 100で2位。2014年CCC優勝、2018年CCCで4位。
  • アビー・ホール Abby Hall (USA):CCCでは2019年に8位、2021年2位、2022年3位。2022年Transvulcaniaで優勝。
  • カタルジーナ・ソリンスカ Katarzyna Solińska(POL):2023年UTMBで6位、2021年CCCで5位。2024年Trail Verbier St. Bernard by UTMB 61kで優勝
  • マイテ・マイオラ Maite Maiora Elizondo (ESP):2023年UTMBで5位、2024年MIUT 116kで3位。
  • タラ・フラガ Tara Fraga (USA): CCCで2022年11位、2023年9位。2024年Transgrancanaria 84kで優勝。
  • フィオナ・ポルテ Fiona Porte (FRA):2023年TDS®︎で準優勝。
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男子は昨年のチャンピオン、ウォルムズレーの連覇なるか

男子のUTMBでは昨年、ジム・ウォルムズレー Jim Walmsley (USA)が19:37という大記録で念願の優勝を勝ち取りました。ウォルムズレーのUTMBへの挑戦は2017年の5位に始まり、2018年のDNF、2021年のDNF、2022年の4位を経ての勝利でした。トレーニングのためのフランス滞在からも帰国し、今年6月にはウェスタンステイツで4度目の優勝をしています。今年のUTMBで優勝すれば欧州と米国のビッグイベントでのダブルを制するというレガシーを達成することになります(2011年にキリアン・ジョルネがこのダブルをすでに達成しています)。今シーズンのウォルムズレーは例年に比べるとレース出場は少なく、目標レースを絞り込んで今回のUTMBに挑むのかもしれません。

マチュー・ブランシャール Mathieu Blanchard (FRA)にとってUTMBは2018年の初参戦での13位に遡りますが、ファンの印象に残るのは一度はキリアンに先行して先頭を走り、最後は2位でフィニッシュした2022年です。昨年はウォルムズレー、ザック・ミラー、ジェルマン・グランジェに続く4位でした。今回も優勝候補として記憶に残る活躍が期待されます。最近では2023年のウェスタンステイツで6位、今年6月のMaXi-Race 93kで優勝しています。

トム・エヴァンス Tom Evans (GBR)も今回のUTMBで優勝に最も近い選手です。2018年のCCC優勝を経て、ケガと手術を経た2022年のUTMBではブランシャールに続く3位。昨年はウェスタンステイツで優勝する快挙も話題になりました。今シーズンは6月のLavaredo by UTMB 120Kで2位やTransvulcaniaで3位といった記録を残しています。

ドイツのハネス・ナンバーガー Hannes Namberger (GER)も近年のUTMBを上位で引っ張ってきた選手です。2019年のCCCを12位でデビューし、2021年UTMBは6位。2022年はDNFでしたが作為年は8位でした。6月のLavaredo by UTMB 120Kでは前出のエヴァンスを抑えて優勝していることからもその実力の高さはうかがえます。

ドミトリ・ミチャエフ Dmitry Mityaev (ANA)はUTMB Mont-BlancではTDSで2018年に 3位、2019年に2位となって表彰台に登った姿が印象に残っていますが、100マイルのUTMBでは初参戦の2021年にDNFでした。最近の記録では2023年のUltra-Trail Cape Town 100kで優勝、今年のTransvulcaniaで準優勝。シャモニーでも90km du Mont-Blancで6月に優勝したばかりであり、今回のUTMBは満を持しての出場となります。

中国のシェン・ジアシェン Jiasheng Shen (CHN)もまた、ここ数年で国際的な大会での活躍の場面が増えています。UTMB Mont-Blancには2018年のOCCがデビューで6位に。以後はCCCで2019年は5位、2022年の4位を経て昨年は準優勝となっています。2023年には初めての100マイルレースであったウェスタンステイツを4位で完走し、今年もウェスタンステイツは8位でトップ10入りしています。経験を重ねて今回は初めて100マイルのUTMBを走ることになります。2月にはTransgrancanariaを走り5位という結果を残しました。

これまでのUTMBを制した「UTMBレジェンド」も今年のレースに参加します。ルドヴィック・ポメレ Ludovic Pommeret (FRA)は2016年のチャンピオンですが、今年7月にはHardrock 100で大会記録を更新して優勝したことで再び注目を集めました。2019年優勝のパウ・カペル Pau Capell (ESP)も今年のUTMBに戻ってきます。6月にはIstria 100 by UTMB 110kで3位に入りました。2013年UTMBで準優勝のミゲル・ヘラス Miguel Heras (ESP)も今年2月のTransgrancanariaで2位となって健在ぶりを示しており、今年のUTMBに加わります。

日本からは昨年11月のTranslantau by UTMB 140で4位の万場大 Hajime Mamba、今春のMt. FUJI 100で3位の村田諒 Ryo Murata、昨年11月のTranslantau by UTMB 140で5位の城武雅 Masashi Shirotakeのほか、池畑拓哉 Takuya Ikehata杉本愉 Satoshi Sugimotoといった選手に注目です。

有力選手のリストは以下のようにさらに続きます。

  • ジェルマン・グランジエ Germain Grangier (FRA): 2023年UTMBで3位、同年Diagonale des Fousで2位。
  • ミゲル・アーセニオ Miguel Arsénio (POL): 2024年Swiss Canyon Trail 111kで優勝。
  • オレリアン・デュナン・パラ Aurelien Dunand Pallaz (FRA): 2021年UTMB準優勝、2023年Hardrock 100で優勝。
  • ベン・ジーマン Ben Dhiman (USA): Trail 100 Andorra by UTMB 105Kで2023年優勝、2024年2位。2024年MIUT 115kで優勝。
  • セバスチャン・スペーラー Sébastien Spehler (FRA): 2024年Trail Alsace Grand Est by UTMB 100 mileで優勝。
  • ユン・ヤンチャオ Yanqiao Yun (CHN): 2023年CHINA100 100kで優勝、同年Translantau by UTMB 140Kで2位。
  • イオネル・マノレ Ionel Cristian MANOLE (ROU): 2024年Val d’Aran by UTMB 51kで4位、Transgrancanariaで3位、Transvulcaniaで5位。
  • ドー・ジ Ji Duo (CHN): 2023年UTMBで14位、Doi Inthanon by UTMB 160で優勝。
  • ドリュー・ホルメン Drew Holmen (USA): 2023年CCCで5位、2024年Canyons by UTMB 100Kで2位。
  • チョウ・ジアジュ Jiaju Zhao (CHN): 2021年UTMF優勝、2024年7月Chongli 168で優勝。
  • ヤニック・ノエル Yannick Noël(FRA): 2021年UTMBで11位、2023年TDSで3位。2024年Lavaredo by UTMB 120Kで3位。
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