北太平洋のカナリア諸島、グラン・カナリア島で2月19-23日の日程で「The North Face Transgrancanaria」(ザ・ノース・フェイス トランスグランカナリア)が開催されます。島の北部から南部へと縦断する距離126km、累積標高差6,866mの「Classic」をはじめ、8つのレースが開催されるこのイベントは、ヨーロッパにおけるトレイルランニングのシーズン開幕を告げるイベントとして人気を集めています。
26回目となる今年の大会には、あわせて70カ国以上から5,300人ものランナーが集まります。参加者の57%がカナリア諸島の外からの参加者で、エントリー数は昨年比30%増だったといいます。
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(Photo © José Miguel Muñoz – Gran Canaria World Trail Majors)
1月のHong Kong 100と2週前のBlack Canyon Ultrasに続き、この大会はグラン・カナリア・ワールド・トレイル・メジャーズ Gran Canaria World Trail Majorsの第3戦となっており、ロングシリーズは126kmの「Classic」とショートシリーズは距離47km、累積標高1,840mD+の「Marathon」がランキングの対象となります。
次々に変わる気候の中を駆け抜ける「Classic」
島の北側に位置するグラン・カナリア島の中心都市、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア。その観光名所であるビーチスタートし、南側のマスパロマスまで全長126kmのコースを「Classic」の選手は走ります。2月21日金曜日の23時59分(日本時間22日土曜日8時59分)にスタートすると、氷点下まで気温が低下する夜間の山岳エリアへと進み、後半は太陽がジリジリと照りつけ気温が25℃に達する砂漠地帯を通過するという、厳しい環境の中でレースは続きます。

Photo © David Delfour – Gran Canaria World Trail Majors
トレイルはアルテナラ山頂(標高1,949m)付近の玄武岩質の尾根では強風の中を進み、最後の下りとなる急斜面は疲労した脚へ容赦なくダメージを与える、ハードなセクションを含みます。
Classic 女子・優勝争いは激しいものになる予感
昨年のこのレースを制したコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA) のような圧倒的な存在感を示す選手は今年の女子のエントリーリストには見当たりません。ITRAパフォーマンスインデックスではイングヴィルド・カスペルセン Yngvild Kaspersen (NOR)が820で今回の出場選手で首位となります。ミドルディスタンスに強い選手ですが、ここ数年はウルトラに活躍の場を広げており、2023年のCCCで優勝、昨年のウェスタンステイツでは5位となっています。
リア・インリン Leah Yingling (USA)は2022年から3度にわたってウェスタンステイツでトップ10入り、Transgrancanariaでは2022年に61kmのAdvancedで3位に入った経験も持ちます。イギリスのフィオナ・パスカル Fiona Pascall (GBR)は2023年Julian Alps by UTMB 170kや2024年mozart 100 by UTMBで優勝の経験を持つウルトラトレイルのスペシャリスト。アンリエッテ・アルボン Henriette ALBON (NOR) は2022年CCCの6位で昨年はUltra-Trail Snowdonia 50Kで優勝、Trofeo Kimaで3位。スペイン勢ではTransgrancanariaで2023年に3位に続いて昨年は2位だったクラウディア・トレンプス Claudia Tremps (ESP)に注目が集まります。トレンプスは昨年のUTMBで8位でした。マイテ・マイオラ Maite Maiora (ESP)は砂金ではウルトラディスタンスのレースに挑戦する機会が増えており、昨年はMIUT 115kで3位、mozart 100で4位、UTMBで12位。Transgrancanariaでも46kmのMarathonで2023年に4位、2024年に9位となっており、今回は初めてClassicを走ります。

Claudia Tremps Photo © José Miguel Muñoz – Gran Canaria World Trail Majors
この他、昨年のTransgrancanariaの84kmで3位のマルティナ・クランチニク・ポトルチ Martina KLANCNIK POTRC (SLO) 、Penyagolosa Trails CSP 105kで2023年優勝、2024年2位のマリア・メルセデス・ピラ María Mercedes PILA (ECU) 、2023年Transgrancanaria Classicで7位で昨年のHardrock 100で8位のクレール・バンワース Claire BANNWARTH (FRA) もエントリーしています。
Classic 男子・アルボンとカペルの対決に注目
男子ではジョナサン・アルボン Jonathan Albon (GBR、ノルウェー在住)がTransgrancanariaに初めて参戦します。障害物レース、スカイランニング、トレイルランニングのそれぞれで世界選手権金メダリストとなった経験を持つアルボンは最近でも2021年のOCC優勝、2022年のCCCで2位、2023年のCCC優勝、2023年Templiers 81k、2024年Transvulcania 73kなど多くの国際的なトレイルレースで勝利を収めています。今回のTransgrancanariaの優勝候補の筆頭といえるでしょう。
一方、2019年UTMBチャンピオンでスペインのトレイルランニングのトップ選手であるパウ・カペル Pau Capell (ESP) はTransgrancanaria Classicを2017年から2020年まで四連覇しているこの大会のレジェンドです。昨年はIstrua 100 by UTMB 110kで3位などの結果を残しています。
2010年のこの大会のチャンピオンで48歳となった昨年、14年ぶりのTransgrancanariaを2位で完走したミゲル・へラス Miguel Heras (ESP)が今年もスタートラインに立ちます。昨年秋にはMuntanyes de Prades 87KやUltra Ibiza 3 Dias 89kといったスペインのレースに参加してそれぞれ3位、1位で完走しています。今年もベテランの活躍に期待が高まります。

Miguel Heras, Photo © Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors
アメリカからは昨年のウェスタンステイツで5位のカレブ・オルソン Caleb Olson (USA) が参戦します。昨年はMIUT 85kで2位となった他、CCCに参加して12位となっており欧州のトレイルレースにも活躍の場を広げています。
昨年のClassicで3位のイオネル・マノレ Ionel Cristian MANOLE (ROU、スペイン在住) は昨年7月のVal d’Aran by UTMB 51kで4位などを経て、今年1月のHong Kong 100で4位となっています。昨年4位のアベル・カレテロ Abel CARRETERO (ESP) は6月のSwiss Canyon Trail 111k で3位、10月のUltra Pirineu 100k で2位。いずれも今年のClassicのレースをリードすることになるでしょう。さらにスペインのPenyagolosa MiM 60kで2023年、2024年に連覇しているホセ・フェルナンデス José Ángel FERNÁNDEZ JIMÉNEZ (ESP) や2023年のHardrock 100で2位、昨年のTor des Geantsで2位のベナー・マルミソール Beñat MARMISSOLLE (FRA) といった選手の名前が続きます。

Ionel Cristian Manole, Photo © Ian Corless – Gran Canaria World Trail Majors
日本からはトランス・ジャパン・アルプス・レースの大会記録ホルダーの土井陵 Takashi Doiがエントリーしています。昨年のKAI70kで準優勝の長田豪史 Goshi Osadaは2018年から3度、Transgrancanariaに参加したことがありますが、今回は2020年以来5年ぶりで初めてのClassicへの参加です。さらに日本トレイルランニング界のレジェンド、鏑木毅 Tsuyoshi Kaburakiも今回のClassicを走ります。
ショートシリーズとなる「Marathon」は山から海へと向かう下り基調の高速レース
今回のTransgrancanariaのレースの中で、「Marathon」と呼ばれる47kmのレースが今年新設のワールドトレイルメジャーの「ショートシリーズ」のレースとなります。
女子では昨年のこのレースを制したジェニファー・リヒター Jennifer Lichter (USA) が今年は連覇を狙います。優勝争いには昨年のZegama Aizkorri優勝のシルビア・ノルスカー Sylvia Nordskar (NOR)も加わるでしょう。さらに昨年のUltra Pirineu 42k準優勝で、Marathon du Mont-Blancで5位と健闘したローサ・ララ Rosa María Lara (ESP) や2023年Zegama優勝で同年のWMTRC世界選手権で6位のダニエラ・オーマス Daniela Oemus (GER)といった選手が注目されています。

Jennifer Lichter, Photo © Ian Corless – Gran Canaria World Trail Majors
男子では一昨年昨年と「Marathon」で優勝しているロバート・プケモイ Robert Pkemoi (KEN)が三連覇の狙います。昨年はSierre-Zinalで6位、Marathon du Mont-Blancで6位、Zegamaで5位とマラソンディスタンスでのスピードには定評があるアスリートです。この他、昨シーズンのワールドトレイルメジャー年間チャンピオンのミゲル・アーセニオ Miguel Arsénio (POR) が今年はMarathonを走ります。イタリアのフランチェスコ・プピ Francesco Puppiは2023年のOCCで準優勝、昨年はLake Sonomaで優勝。昨年のTransgrancanaria VKのチャンピオン、アンリ・アイモノド Henri Aymonod (ITA) は今年はMarathonを走ります。

Robert Pkemoi, Photo © Ian Corless – Gran Canaria World Trail Majors
このほかのカテゴリーにもエリート選手が参戦
82kmのコースで行われる「Advanced」には昨年のTransvulcania 73kで2位のイーダ・ニルソン Ida Nilsson (SWE)がエントリーしています。ニルソンはTransgrancanariaへの参加は今回が初めて。2017年と2021年にClassicで優勝しているアサラ・ガルシア Azara GARCIA DE LOS SALMONES (ESP)は昨年優勝したAdvancedを今年も選んでいます。昨年、Classicで6位に入った吉住友里 Yuri Yoshizumiは今年はAdvancedを走ります。吉住は5.5kmのバーティカルレースにもエントリーしています。
Advancedの男子は昨年のチャンピオン、アンジェイ・ヴィテック Andrzej Witek (POL)、昨年のClassic優勝のラウル・ブタッチ Raul Butaci (ROU)、2024年のSnowdonia by UTMB 100kとKAT by UTMB 81kで優勝のダニエル・ユング Daniel Jung (ITA)がエントリーしています。

Raul Butaci Photo © Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors
ライブ配信でレースの模様を生中継
今年もTransgrancanariaでは全ての選手の通過状況をリアルタイムで確認できるライブトラッキングに加え、レースの模様をYouTubeでライブ配信する予定です。47kmのMarathonについては2月21日金曜日9時(日本時間同日18時)から6時間にわたって配信予定。126kmのClassicは2月21日金曜日23時30分(日本時間22日土曜日8時30分)からスタートの模様が約1時間のライブ配信で見られるほか、一夜明けたレース後半を2月22日土曜日8時(日本時間同日17時)から生中継で見ることができる予定です。
ライブトラッキングのリンク:http://www.transgrancanaria.livetrail.run/
TransgrancanariaのYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@transgrancanaria102/streams
World Trail MajorsのYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@WorldTrailMajors/streams
