2025年4月17日、株式会社ヨシノパワージャパンは、次世代の三元固体電池を搭載したポータブル電源『YOSHINO B1200 SST』を発表しました。この製品は1,085Whという大容量を備えながらも、世界最小クラスのコンパクト設計を実現し、業界最高クラスの安全性の証であるドイツの第三者認証機関TÜV SÜDによるSクラス認証を取得しています。(写真は別途言及のない場合はメーカーのプレスリリースより)
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『YOSHINO B1200 SST』の最大の特長は、ヨシノ独自の「三元固体電池」技術による圧倒的な安全性にあります。ポータブル電源に用いられている電池は早い時期には「三元系」が用いられ、エネルギー密度が高いものの、寿命が短めで安全性に課題があるとされていました。ついで現在主流の「リン酸鉄系」が用いられるようになり、これはエネルギー密度が低めながら長寿命と安全性の高さが高いのが特徴です。ヨシノパワーでは「三元系」ながらも電解質を従来の液体ではなく固体にすることで、両者のメリットを両立するという「三元固体電池」を新たに採用しました。この「三元固体電池」は同社の商標であり、これを初めて製品化したのが『B1200 SST』となります。
搭載されるバッテリーセルは150℃の耐熱試験や13kNでの圧迫試験、4mmの釘刺し試験をクリアしており、発火リスクを大幅に低減しているとしています。また、-20℃から65℃という広い動作温度域に対応し、4,000回以上の充放電サイクルという長寿命も実現。定格出力は1,200W(瞬間最大1,600W)で、70分での急速充電も可能です。この製品の詳細については、DogsorCaravanのニュース記事で紹介しています。
DogsorCaravanではメーカーから試用のために『YOSHINO B1200 SST』をお借りして、およそ約3週間にわたり実際に使用しました。日常生活での使い勝手のほか、アウトドアアクティビティや災害時も想定して実際にどんな使い方ができるか、試してみました。
容量や出力に対してコンパクトなポータブル電源
メーカーから届いた『YOSHINO B1200 SST』はコンパクトとはいえ11kgの重さがあるので、緩衝材に包まれて箱に入って届きました。同梱されていたのは本体に加えて、家庭用のコンセントに繋ぐAC充電ケーブル、ソーラーパネルに接続するためのソーラー充電ケーブル(MC4 to XT60)、自動車のシガーソケットに接続するための充電ケーブル、本体からシガーソケット対応の製品に出力するためのシガーソケット出力ケーブルが入っています。

4種類のケーブルが付属している。写真は当サイトが撮影。
本体を取り出すとそのデザインに目を引かれます。落ち着いたグリーンを基調としたカラーリングは、アウトドアシーンはもちろん、リビングなどの室内空間にも馴染みやすいと感じます。端子や冷却のための開口部も滑らかで落ち着いたデザインになっています。
カタログのスペックは、サイズが296×204×256mm、重量約11.6kgとなっています。1kWhクラスのポータブル電源としては、世界最小・最軽量級を謳っており、同容量クラスの従来製品と比較して体積が約20%削減されているといいます。筆者はポータブル電源を普段から使っているわけではないので体感的な比較は難しいのですが、ヨシノパワーの既存モデル「YOSHINO B600 SST」とほぼ同等の筐体サイズで容量を大幅にアップさせていると聞くと、驚かされます。
実際にハンドルを持って持ち運んでみると、11kgという重量は短い距離であれば片手で十分持ち運べます。車への積み込みや、キャンプサイトへの移動もさほど無理なくできる重さとサイズ感です。

本体からの出力ポートは全て前面にまとめられている。本体への入力ポートは蓋つきで背面にある。写真は当サイトが撮影。
このポータブル電源自体を充電するための端子は本体背面にありますが、操作や端子を接続するインターフェースは本体前面にまとめられています。中央に見やすい液晶ディスプレイがあり、その周りに各種の出力ポートが配置されています。実際に使用する場合には本体の電源をオンにしてから、各出力のスイッチをオンにすることで使えるようになります。
AC出力は100VのACコンセントが横並びに4口搭載されています。USB出力は最大100W出力のPD対応のType-Cポートと、60W出力のPD対応のType-Cポートがそれぞれ1つずつ。さらに18W出力のUSB Type-Aポートが2口あります。DC出力はDC5521(12V/10A)ポートが1口と、シガーソケット出力が1口用意されています。
本体中央に配置された液晶ディスプレイは、バッテリー残量をパーセントで表示するほか、現在の出力電力(W)、入力電力(W)、そして現在の使用状況であとどれくらいの時間使用できるかの目安などがリアルタイムで表示されます。三段階で明るさが変わるLEDライトバーも搭載されており、夜間や暗い場所での操作に便利です。
基本性能をチェック
出力はスペック通り1,200Wとパワフル、複数の家電をつないでも安定
「B1200 SST」の定格出力は1,200W、瞬間最大1,600Wとなっています。AC電源として手元の家電製品を動かしてみましたが、満充電状態で1,200Wのドライヤーのスイッチを入れると、残り45分とディスプレイに表示されて普通に使うことができました。一方、キッチンで使っている1,250Wの電気ケトルはスイッチは入ったものの、ディスプレイには「Overload」と表示されてすぐに停止しました。上限はぴったり1,200Wと考えてよさそうです。
二つ以上の家電製品を使う場合も、電圧降下や過負荷エラーは発生せず、複数機器の同時利用でも安定した給電が可能です。先に接続していた方の電源が一旦オフになるということもありませんでした。実際に試したのは1,200Wのドライヤーと250Wの携帯ケトルですが、この場合もディスプレイには1,330Wという、1,200Wを超える値が表示されながらもドライヤーと携帯ケトルが動作しました。短時間であれば最大1,600Wの瞬間最大出力が出るようです。
ただ、出力が大きい家電製品を使うと「B1200 SST」の内部のファンが稼働します。このファンの音は結構大きく、家電製品のスイッチをオフにしてからもしばらくファンは回り続けるので、状況によっては気になるかもしれません。試した限りでは、450Wの掃除機を動かしたあたりからファンが回るようになりました。
ちなみにAC出力は純正弦波で、精密機器にも安心して使えます。
USBポートもスペック通りの出力を確認することができました。ノートパソコン、タブレット、スマホ、モバイルバッテリーなどをスピーディに充電できるだけでなく、スマートウォッチやワイヤレスイヤホンなど、小さい出力で充電する機器もちゃんと充電することができました。
ユニークな機能としては、無停電電源装置(UPS)として作動する機能があります。家庭のコンセントからAC充電ケーブルを「B1200 SST」の背面に挿し、「B1200 SST」のAC出力ポートから家電製品などにつなぐことで、不慮の停電があったときにも「B1200 SST」からの給電に自動的に切り替わる、というものです。ただし、切り替えは「0.02秒以内」で、0ms切り替えには対応していません。このため、デスクトップPCやWiFiルーター、DLNAサーバーのUPSとしては使えませんが、冷蔵庫や冷暖房器具などには便利に使えそうです。
充電もスピーディ
一方で、「B1200 SST」の本体を家庭のコンセントで充電する時のスピードですが、バッテリーを完全に使い切った状態から100%の満充電までは1時間20分ちょっとでした。メーカーが謳う「1000WのAC充電、70分で80%まで充電可能」という言葉通りだったといえます。朝起きてから充電を始めても出発までに充電が可能です。
ACコンセント以外では、付属品のシガーソケット充電ケーブルを使って、車のシガーソケットから120W(12V/10A)での充電が可能で、この場合は「約7時間で80%まで充電可能」となっています。さらに、ソーラー充電パネルによる充電も可能です。ヨシノパワーの100Wパネル(SP100)と200Wパネル(SP200)に対応し、SP200を2杯使用することで「約2.5時間で80%まで急速充電が可能」です。天候や設置条件に左右されますが、アウトドアや災害時でも現実的な充電時間といえそうです。
静音だが、いったんファンが回りだすとちょっと気になるかも
大容量なだけあって「B1200 SST」には冷却用のファンが内蔵されています。無負荷時は公称値で25dB前後となっていて、ファンノイズはほとんど気になりません。500W以下の出力時には静音モードでファンが作動しますが、35~52dB程度の静かさを維持します。この時は夜間の車中泊やテント内でも、動作音で睡眠や会話が妨げられることはなさそうです。これを超える出力の時はさらに勢いよくファンが回るようになり、締め切った車内や夜の睡眠時にはちょっと耳障りかもしれません。大出力の家電機器を使った後は使い終わった後もしばらくファンが回るほか、本体への充電中も途中ではファンの動作音がちょっと気になる時がありました。
ただファン音は一定レベルに抑えられており、不快な高音や振動も感じません。全体としては静音設計が徹底されている印象です。
専用アプリで本体の操作や入力、出力の状態を確認できる
専用のスマホアプリ「YOSHINO」でWi-FiまたはBluetoothを通じて「B1200 SST」に接続することができます。アプリ上ではUSB、AC、DCのそれぞれのポートの充電機能のオン・オフを切り替えるほか、本体のバッテリーの電力の残量やバッテリーの温度、入出力状況が確認できます。以上は本体のボタンやディスプレイでも確認できますが、アプリのみで設定できる機能には、操作した時の通知音のオン・オフ、ACとDCの充電ポートを使用していない時の自動電源オフまでの時間、本体ディスプレイの表示自動オフまでの時間、チャージモードの切り替え(急速、自動、通常の三つのモード、急速充電の場合はバッテリーへの負荷がかかるためバッテリー寿命に影響する)があります。
本体での分かりやすい操作を実現しつつも、細かい設定はアプリでできるようになっています。
アウトドアでも自宅でも活用シーンは幅広い
この「YOSHINO B1200 SST」が役立つシーンとしてはやはり、アウトドアアクティビティでしょう。トレイルランニングファンであれば、大会会場で受付を済ませてからスタートするまでの時間を車の中で過ごしたり、仲間の選手をサポートするための準備をするのに大活躍します。例えば、電気ポットでお湯を沸かしたり、電気毛布で身体を温めたり、扇風機で涼んだり。車載用の冷蔵庫で冷たい飲み物を冷やしておくのにもよさそう。もちろん、スマホやモバイルバッテリーの充電にも活用できます。動作温度の上限が65℃で、安全性の高い三元固体電池が使われているので、夏の車内でも比較的安全に使うことができるのが安心です。
筆者の場合は、トレイルランニング大会の現地での取材に威力を発揮します。実は今回、「YOSHINO B1200 SST」を大会取材の本番で活用しようとしたのですが、レビュー機のお借りできるタイミングに間に合わず、他社製品をレンタルしました。その体験からは、ポータブル電源を車内に備えておくことの安心感を実感しました。取材用のカメラやラップトップPC、スマホなどの充電であれば「B1200 SST」の1,085Whは2、3日であれば余裕の大容量です。取材では携帯電話の電波が入りにくい場所で、Starlinkやカメラ、PCなどを同時にポータブル電源に繋いで数時間に及ぶライブ配信もしました。その経験からは「B1200 SST」であれば10時間程度の連続ライブ配信も可能なはずです。というわけで、当サイトの次の機材への投資案件として「B1200 SST」は有力候補になっています。
車で持ち出す以外に、家の中でも幅広い活用シーンが考えられます。災害などで停電した時のための非常用電源としつつも、リビングルームや寝室に置いてスマホやタブレットを充電したり、玄関口や軒先に運んで掃除機や屋外散水機の電源にするのもよさそう。シンプルで落ち着いたデザインなので日常生活にも馴染みやすいのが魅力です。
また、電源の瞬断があっても差し支えない電気製品の無停電電源装置として使うことも考えられます。例えば冷蔵庫とか、熱帯魚を飼育する水槽周りとかに活用できそうです(メーカーではこの用途では過負荷保護を作動させないために、一度に一台の機器のみ接続するように、としています)。
まとめ・割高ではあるがコンパクトで安全性の高い新世代電池を採用しているのは魅力、セール価格の今はお買い得
「YOSHINO B1200 SST」の価格は通常価格169,900円(税込)、発売記念の2025年4月17日から5月26日までのキャンペーン価格が99,900円(税込)となっています。
1kWh前後の同容量クラスの主要メーカー製品と比較すると、発売時の通常価格で11万円台から13万円台のものが多く、セール価格ではさらにお買い得になっています。「YOSHINO B1200 SST」の約17万円の通常価格は確かに割高に感じてしまいます。
価格差の最大の要因は「B1200 SST」が採用している三元固体電池にあり、この新技術によって製造コストが高くなるのは避けられないのでしょう。しかし、この技術により安全性が向上し、バッテリーの長寿命というメリットをもたらしています。安全性については災害時や車中泊はもちろん、室内で人が近くにいる環境での使用することを考えると、重要なポイントです。バッテリー寿命については4,000回の充放電サイクルで80%以上の容量となっており、毎日使用しても約11年間使える計算です。長期にわたって使えると考えれば、見方は変わってくるでしょう。
単に容量や出力の大きさでコスパを計るのではなく、新世代のバッテリー技術で「安心を買う製品」だと考えれば、YOSHINO B1200 SSTは魅力的な製品です。
特にキャンペーン価格の99,900円であれば、三元固体電池技術を体験できる製品としては破格といえます。通常価格でも、安全性と長寿命を重視するユーザーにとっては、長期的な投資として十分に納得できる価格設定だと感じました。
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(協力・株式会社ヨシノパワージャパン)















