HOKA UTMB Mont-Blancが2030年までにCO2排出量20%削減を宣言、炭素排出の少ない交通手段を選ぶランナーを抽選で優遇

フランス・シャモニーで開催される国際的なトレイルランニングイベント、HOKA UTMB Mont-Blancは、環境負荷軽減に向けた野心的な計画を発表しました。大会として2030年までに二酸化炭素排出量を2024年実績に対して20%削減することを公約し、持続可能な交通手段(モビリティ)の利用を促進するための包括的な戦略を展開することを明らかにしました。

20年間の環境配慮の取り組みは新段階へ

HOKA UTMB Mont-Blanc はUTMBワールドシリーズの頂点となるフラッグシップイベントであり、トレイルランニングというスポーツにおいて先駆的な取り組みを積極的に推進している大会です。2003年の大会創設当初から持続可能性をイベントの使命の中核に据えてきた経緯があります。

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今回発表された2030年までのCO2排出量20%削減(2024年比)という目標は、パリ協定にインスパイアされた戦略に基づいて設定したといいます。

この目標達成のため、同イベントは環境保護団体 Protect Our Winters(POW)とプロトレイルランナー協会(PTRA)との協力により、「コミット」「測定」「削減」「オフセット」という4つの柱からなる計画を実施します。

交通が最大の課題、排出量の88%を占める

2024年に大会の依頼によりコンサルティング会社 Utopies 社が炭素排出監査を実施しました。その結果、イベント全体の炭素排出量の約88%が交通によって発生し、そのうち86%が大会会場への往復移動に関連していることが判明したそうです。

これを受けて、HOKA UTMB Mont-Blanc は2026年からこの最も重要な改善分野である交通に焦点を当てて取り組みを強化します。

参加者の79%がヨーロッパ各国から来訪することから、短距離の飛行機による移動の削減と、鉄道やバスによる移動の促進に重点を置く、としています。ヨーロッパ以外から来る20%の参加者に対しても、ヨーロッパ到着後には低炭素の交通手段を利用するよう奨励します。

「気候変動の目撃者として、私たちが愛する環境を守るために行動を起こしています。私たちのカーボンフットプリントにおける交通の圧倒的な影響を考えると、結果を達成するためには集団行動が不可欠です」と、UTMB フランス・イベント・ディレクターの イザベル・ヴィズー・ポレッティ氏はいいます。

革新的な30%抽選ボーナス制度を導入

2026年大会からは、持続可能な交通手段を選択することが、大会の参加者にとって具体的なメリットとなる施策が始まります。大会のウェブサイトに新たに設けられた、移動手段による炭素排出量を比較するツール「UTMB GO」(このツールはすでに公開済み)が各参加者の居住地に基づいて最も炭素排出を抑える効率的な移動ルートを推奨します。この提案に従った参加者は、エントリーに抽選が必要なレース(UTMB、CCC、OCC、ETC)において、当選率について30%増しとなる「抽選ボーナス」が提供されます。

このシステムは各国の個別の交通事情を考慮し、居住地に関係なく全参加者に公平で公正なアプローチで実施されるといいます。

包括的な交通サービスへの投資の拡大

大会では低炭素排出の交通手段を奨励し、大会開催中の自家用車への依存を減らすため、交通サービスに大幅な投資を行っています。これらの取り組みは2025年に約60万ユーロを占め、イベント最大の支出分野となっているとのこと。

10年以上にわたって運営されている大会開催中のシャトルバスのサービス「UTMB Mobility」は、28ヶ所の停留所を結ぶ15の路線を運行しており、約120台のバスが稼働します。2024年にはこのバスについて50万ユーロが投資され、道路から6,000台以上相当の車両を削減することができた、としています。

「UTMB GO」をウェブ上のプラットフォームとして提供することで、参加者がUTMBでの移動を計画する際に、自動車を可能な限り使わずに、低炭素の移動手段でエリア内を移動できるように支援します。

詳細は2025年秋に発表予定

この発表に合わせて行われたオンラインプレスカンファレンスでは、低炭素の交通手段の利用を促す施策のほかにも「炭素貢献」のための寄付金の徴収についても言及がありました。今年開催の2025年大会でもUTMBの大会自身とパートナー各社からは義務的に、参加者からは任意で寄付金が集められています。これによって集まった2万5千ユーロは独立機関が認定する環境対策のプロジェクトに提供されます。2026年大会では参加者についても義務的に寄付金が徴収され、その額は炭素排出が少ないシャモニーの近隣からの参加の場合は数ユーロ程度、大陸をまたぐような遠方からの参加の場合は100ユーロ程度となるといいます。

こうした取り組みに客観性を持たせるため、大会ではプロトレイルランナー協会(PTRA)やウィンタースポーツをベースとする環境団体である- Protect Our Winters Europe との協議を経て、持続可能性に関する戦略と施策を決定したと説明します。会見にPTRAを代表して同席したヒラリー・ジェラルディは二酸化炭素排出の削減と、国際的な参加の推進との間でバランスを取る必要がある、との指摘もしていました。

発表に合わせて行われたプレスカンファレンスの模様。

発表に合わせて行われたプレスカンファレンスの模様。

トレイルランニングにおいては常に積極的に問題に向き合い、アクションを起こしてきたUTMBが、炭素排出の削減にさらに大きく踏み込んでいくことになります。スポーツの熱狂と環境責任を両立させるモデルケースとして、トレイルランニングのみならず、世界のアウトドアスポーツ界からその成否が注目されることになります。現在、世界各国の52大会へ拡大した UTMB ワールドシリーズの中で、シャモニーはサステナビリティの先導役として旗を高く掲げて走り続ける構えです。

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