今週末の6月28-29日に、アメリカで最も歴史が長く、世界で最も競争の激しい100マイルレースの一つである「ウェスタンステイツ・エンデュランスラン Western States Endurance Run」が開催されます。カリフォルニア州のオリンピックバレー Olympic Valleyからオーバーン Auburnまでの100.2マイル(約161km)を走るこのレースは、累積獲得標高が約5,500m、累積下降標高が約7,000mという、下り基調ながらもタフなコースで知られています。
2024年大会はコンディションに恵まれ、男子のレースでは史上最多の12人が16時間切りを達成しました。しかし、今年は昨年に4度目の優勝を果たし、大会記録(14時間9分28秒、2019年)を持つジム・ウォルムズレー Jim Walmsley (USA)と、昨年の女子チャンピオンのケイティ・シャイド Katie Schide (USA)がともに今年の出場を見送りました。誰が今年のビッグタイトルを手にするのか。予測の難しいレースはトレイルランニング界の新しいスターを生み出すことになるかもしれません。
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男子レースの展望:王者不在のレースを制するのは誰か
男子は昨年のトップ10のうち、チャンピオンのウォルムズレー Jim Walmsley (USA)をはじめ5名が不出場となり、優勝候補を絞り込むのが難しい、オープンな状況です。しかし、昨年14時間40分を切る快走を見せた3選手が再びスタートラインに立ちます。
昨年の上位入賞者と注目選手
その3選手は次の通り。昨年2位のロッド・ファーバード Rod Farvard (USA) です。ウェスタン・ステイツでは2021年のDNFから着実に順位を上げ、昨年ついに表彰台に立ちました。昨年4位のダン・ジョーンズ Dan Jones (NZL)、昨年5位のケイレブ・オルソン Caleb Olson (USA)も、昨年の経験を武器に頂点を狙います。
彼らに挑むのは豪華な顔ぶれです。2011年のウェスタン・ステイツのチャンピオンであり、トレイルランニング界のレジェンド、キリアン・ジョルネ Kilian Jornet (ESP) が再び参戦します。2022年にはUTMBとハードロック100を制しており、今も世界トップクラスのトレイルランナーとしての実力は健在であり、豊富な経験の持ち主であることを考えれば、今回の最も有力な優勝候補と言えるでしょう。また、2022年のウェスタンステイツ覇者であるアダム・ピーターマン Adam Peterman (USA)も、ケガからの復活を果たし、2度目のタイトルを狙います。
さらに、昨年夏の Leadville 100 でコースレコードを樹立して話題となったデビッド・ローチ David Roche (USA)、そして昨年のUTMBで無名の存在ながら優勝して世界を驚かせたヴァンサン・ブイヤール Vincent Bouillard (FRA)といった、他のビッグレースの勝者たちも今年のウェスタン・ステイツでの優勝を狙っています。
その他、ヨーロッパのビッグレースで実績豊富なハンネス・ナンベルガー Hannes Namberger (GER)、今回が100マイルへのデビューとなるスロバキアのピーター・フラノ Peter Fraňo (SVK)、Black Canyon 100kを制して勢いに乗るセス・ルーリング Seth Ruhling (USA) などもトップ10争いに絡んでくるでしょう。
日本の甲斐大貴選手も参戦
日本からは甲斐大貴 Hiroki Kaiが出場します。今年2月のゴールデンチケットレース、Tarawera by UTMB 100kで準優勝したことで出場権を獲得しています。その後は、アメリカでトレイルレースを転戦しており、4月にはLake Sonoma 50 Mileで4位、Canyons 100k by UTMBで23位と、ウェスタン・ステイツに向けて経験を積んできました。世界のトップアスリートを相手にどのような走りを見せるか、注目されます。
女子レースの展望:新たな女王の座は誰の手に
昨年のチャンピオン、ケイティ・シャイド Katie Schide (USA)と、2023年に15時間29分34秒という驚異的なタイムで退会記録を更新したコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA)が今年のスタートラインには立たないため、例年にもまして多くの女子選手にチャンスがあると言えます。
昨年の上位入賞者と注目選手
昨年2位に入り、女子の歴代3位という偉業を成し遂げた中国のシャン・フージャオ Fu-Zhao Xiang (CHN) が今年の優勝候補と見られています。2022年、2023年と2年連続で3位に入っている香港在住のエスター・チラグ Eszter Csillag (HUN)も、三度目の正直で優勝を狙います。
米国在住のエミリー・ホーグッド Emily Hawgood (ZWE)は昨年4位となりました。4年連続のトップ10入りを果たしており、ウェスタン・ステイツでの安定感は抜群です。昨年6位のスウェーデンのレジェンド、イーダ・ニルソン Ida Nilsson (SWE)、元トライアスリートで昨年7位のヘザー・ジャクソン Heather Jackson (USA)ら、昨年のトップ10ランナーのうち6名が今年も顔を揃えます。
優勝争いに加わる実力者たち
2022年大会で3位に入ったカナダのマリアンヌ・ホーガン Marianne Hogan (CAN)は、同年のUTMBで2位に入るなど、ビッグレースでの実績は十分です。また、今年のBlack Canyon 100kでコースレコードを更新して優勝したライリー・ブレイディ Riley Brady (USA)も、昨年の14位から大きくジャンプアップする可能性を秘めています。
このほか、100マイルデビューとなるロザンナ・ブッハウアー Rosanna Buchauer (GER)、200マイル以上の超長距離レースで活躍し、アパラチアン・トレイルのFKT記録も持つタラ・ダワー Tara Dower (USA)、そして2021年優勝のベス・パスカル Beth Pascall (GBR)を姉に持つイギリスのフィオナ・パスカル Fiona Pascall (GBR)などの選手が女子のレースをリードすることが見込まれています。
男女ともに混戦模様となることが必至の今年のウェスタンステイツ100では、予測不能な展開が例年以上の興奮とドラマを生み出すことは間違いないでしょう。レースは米国太平洋夏時間の6月28日土曜日午前5時(日本時間同日午後9時)にスタートします。
レースのライブトラッキングはこちらのリンクから見られます。コース上からの映像を楽しめるライブ配信は大会公式のYouTubeチャンネルから視聴できます。このほか、iRunFarではテキストと写真によるライブアップデートを予定しています。














