HOKA UTMB Mont-Blanc 2025 プレビュー:TDS、OCC、CCC、UTMB

2025年のHOKA UTMB Mont-Blancは、8月25日月曜日の午前8時(日本時間午後3時)にPTLのスタートで開幕します。今年の大会はUTMBワールドシリーズの3度目のシーズンとなり、UTMB(100Mカテゴリ)、CCC(100Kカテゴリ)、OCC(50Kカテゴリ)の3つのレースがシリーズファイナルとなります。UTMBは距離174km、累積獲得高度10,000mD+、CCCは距離101km、累積獲得高度6,050mD+、OCCは距離57km、累積獲得高度3,500mD+です。

HOKA UTMB Mont-Blancでは、月曜日から水曜日にかけてPTL、TDS®︎、MCC、ETC、YCCなど様々な距離のレースが行われます。この記事では、その中のTDSとUTMBワールドシリーズファイルの3つのレースの見どころや有力選手を紹介します。

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大会開催中の各レースのライブトラッキングやコース上からのライブ配信はUTMB LIVEのウェブサイトから見ることができます。

(All photo & image © UTMB)

UTMB

世界のトレイルランニングシーンにおいて、唯一無二の存在感を放つUTMBは、8月29日金曜日17:45(日本時間30日土曜日0:45)にシャモニーをスタートします。今年はコース序盤で土砂災害があったことから、コースが一部変更されています。このため距離は176kmから174km、累積獲得高度は9,915mから9,900mに変更となりました。これに合わせて、スタート時刻も例年より15分繰り上げられています。また、40km地点付近のラ・バルムのエイドが今年から廃止となっています。

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2025.08.05

エリートレベルの選手は561名がエントリーしており、そのうちの女性の比率は約45%と過去最高になっています。

女子のレースではやはり女王、コートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA)が最有力の本命選手となります。UTMBでは2019、2021、2023年の覇者であり、今回は4度目の栄冠を目指します。「このコースの挑戦が大好き。再びシャモニーの雰囲気を味わうのが楽しみ」とコメントしており、意欲は十分です。今シーズンは250マイルのCocodona 250でDNFとなったのち、6月にLavaredo 120Kで優勝しています。

ドウォルターに挑むのは、近年のUTMBの表彰台の常連で安定したパフォーマンスを上げているルース・クロフト Ruth Croft (NZL)。CCC優勝(2015年)、OCCで連覇(2018年、2019年)を経て昨年はUTMBで準優勝とこの大会での経験を重ねています。今年のウェスタンステイツで大会新記録を更新して優勝したアビー・ホール Abby Hall (USA)は今年のUTMBでもその快調ぶりを発揮すれば先頭争いに加わるでしょう。2023年のCCC2位で昨年のUTMBで6位のエミリー・ホーグッド Emily Hawgood (ZWE)、2021年UTMB準優勝のカミーユ・ブリュヤス Camille Bruyas (FRA)、プロトライアスリートのキャリアからトレイルに転じ、昨年のCCCで7位のヘザー・ジャクソン Heather Jackson (USA)、2023年UTMB準優勝のカタリナ・ハルトムート Katharina Hartmuth (GER)、2019年UTMB4位のエカテリーナ・ミチャエワ Ekaterina Mityaeva (AIN)、昨年のUTMB4位で今年4月のCanyons 100Mで優勝のチェン・リン Lin Chen (CHN)といった選手がスタートラインに揃います。

日本の宮﨑喜美乃 Kimino Miyazaki枝元香菜子 Kanako Edamotoの活躍にも期待です。宮﨑は今年2月のTarawera 100Mで優勝。UTMBには2022年の24位、2023年の15位に続いて三度目の挑戦です。枝元は2023年のCCC、2024年のOCCに続いて今回は初のUTMBとなります。

男子ではUTMB優勝経験を持つレジェンドの参戦が話題です。フランソワ・デンヌ François D’Haene (FRA)は2012、2014、2017、2021年のUTMBチャンピオンで、4年ぶりにこのレースを走ります。ケガからの復活でかつてのような圧倒的な強さを見せるかどうか注目です。高い実力と経験値を兼ね備えるルドヴィック・ポメレ Ludovic Pommeret (FRA)は2016年UTMBのチャンピオンです。今年は50歳でHardrock 100を制したことが話題になりましたが、今年のUTMBでも注目の存在です。

ジョナサン・アルボン Jonathan Albon (GBR)は2021年OCC優勝、2022年CCC準優勝、2023年CCC優勝という経歴の持ち主で、初挑戦のUTMBでも頂点に最も近い存在です。ダニエル・ジョーンズ Daniel Jones (NZL)はウェスタンステイツで昨年4位、今年5位と近年頭角を表してきたアスリートです。ヘイデン・ホークス Hayden Hawks (USA)は2017年CCCで優勝したのち昨年のCCCで優勝を重ね、満を持してUTMBに挑みます。2019年にUTMBに参戦した際はDNFでした。さらに2018年CCC優勝、2022年UTMBで3位、2023年ウェスタンステイツ優勝のトム・エヴァンス Tom Evans (GBR)、今年のウェスタンステイツ4位のジェフ・モガベロ Jeff Mogavero (USA)、そして今シーズンはLavaredo 120Kでコースレコード、Grand Raid Ventoux 100Kでも優勝と絶好調のベン・ジーマン Ben Dhiman (USA)は今年の台風の芽となるかもしれません。中国からはドージ Ji Duo (CHN)がエントリーしています。

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日本の選手では今年6月のKaga Spa 100Kで鮮やかな勝利を挙げた黒河輝信 Terunobu Kurokawa、2023年TransLantau 129Kで4位の万場大 Hajime Mambaに加え、今年のマウントフジ100で5位の池畑拓哉 Takuya Ikehata、2023年Kosciuszko 100M準優勝の澤柳匠 Takumi Sawayanagiに注目です。

CCC(Courmayeur – Champex – Chamonix)

CCCはイタリア・クールマイユール Courmayeur を8月29日金曜日の9:00(日本時間同日16時)にスタートし、スイスを経てフランス・シャモニーまでの約101km、累積標高約6,000mD+のコースを走ります。イタリア〜スイス〜フランスとツール・ド・モンブランの南半分をたどり、エリートからアマチュアまで幅広く、毎年大きな注目を集めています。制限時間は26時間30分となっています。

CCCもエリート選手のエントリーは昨年比で10%増で、レースのレベルはさらに高くなりそうです。

男子のレースでは、マウンテンランニングやミドルディスタンスのスペシャリストとして知られ、UTMBでもOCCで2023年に優勝、2024年に準優勝という成績を挙げているフランチェスコ・プッピ Francesco Puppi (ITA)が今回がCCCに挑むことが話題になっています。今年初めての100kmレースとしてCanyons by UTMB 100kを走って優勝しており、調整は順調といえそうです。昨年のOCCチャンピオンのイーライ・ヘミング Eli Hemming (USA)も今年はCCCに挑戦します。今年春のBlack Canyon 100kで100kmにデビューしており、4位となっています。今年のウェスタンステイツで準優勝のクリス・マイヤーズ Chris Myers (USA)、ミドルディスタンスの山岳コースで強いデイヴィッド・シンクレア David Sinclair (USA)と先頭集団は米国勢が中心となりそうな勢いです。

加えて2021年CCCで4位、2022年に同3位となって世界のトレイルランニングファンに知られるようになったアンドレアス・ライテラー Andreas Reiterer (ITA)も注目です。CCCには2023年、2024年も出場していますがいずれもDNFでしたが、今シーズンはTransvulcania 73kで2位、Lavaredo 120kで3位と好調です。フランスのユゴ・デック Hugo Deck (FRA)は昨年のUltra-Trail Cape Town 100kや今年5月のMaXi Race 100kで優勝。CCCは2021年に5位でフィニッシュした経験を持ちます。2024年のMt. FUJI 100のKAI70kで優勝しているスペインのアンドレウ・シモン・アイメリチ Andreu Simon Aymerich (ESP)も今年のCCCを走ります。UTMBでは2019年OCCで準優勝、2022年CCCで6位、2024年CCCで6位でした。今年は6月のmozart 100 93kで優勝しています。

中国のメン・グアンフー Guangfu Meng (CHN)は今年のMt. FUJI 100 ASUMI40kの優勝で日本でその才能を示しましたが、今回のCCCでも活躍が期待されます。2023年のOCCで7位、昨年のCCCは47位で完走しました。中国からはルオ・カンファ Canhua Luo (CHN)もCCCに参戦します。UTMBでは2019年に100マイルで11位でした。アメリカの注目株、ジェシュルン・スモール Jeshurun Small (USA)も今年のCCCを走ります。

女子では2023年OCC、2024年CCCのチャンピオンであるトニ・マキャン Toni McCann (RSA)が今年の優勝候補の最右翼となります。今シーズンはLavaredo 50kで優勝しています。2023年CCC優勝のインヴィルド・カスペルセン Yngvild Kaspersen (NOR)は今年のLavaredo 80kで準優勝などの成績を残しています。2019年トレイル世界選手権の金メダリストで、2021年OCC優勝、2022年CCC優勝、2023年UTMBで3位、2024年UTMBで5位のブランディーヌ・リロンデル Blandine L’Hirondel (FRA)は今年はCCCを選びました。CCC優勝経験者の三人の間のタフなレース展開に注目が集まります。

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今年のウェスタンステイツで昨年に続いて2界連続で準優勝という快挙を成し遂げたシャン・フージャオ Fuzhao Xiang (CHN)は今年はCCCを選びました。これまでUTMBでは100マイルを走っており2023年には4位となりました。CCCには初登場となります。100Kカテゴリーのレースでも昨年秋のUltra-Trail Ninghaiや今年4月のMount Yunで好タイムで優勝しています。今年のマウントフジ100のKAI70kで優勝したアンナ・タラソワ Anna Tarasova (ESP)は近年好調で、今年はmozart 100 93k、Lavaredo 80kでいずれも優勝しています。この勢いでCCCでも上位入りが期待されます。

2023年、2024年のCCCでいずれも4位となり、世界にその名を知られるようになったハオ・ハ・ティ Hau Ha Thi (VNM)は今年もCCCにエントリーしており、さらに上位を狙います。最近は昨年12月のChiangmai 50Kで優勝、今年のウェスタンステイツでは6位と善戦しています。アメリカのダニ・モレノ Dani Moreno (USA)は2022年のOCCで3位となってUTMBにデビュー。昨年のOCCでは6位でフィニッシュしています。2024年のZegamaで優勝したシルビア・ノルドスカー Sylvia Nordskar (NOR)はミドルディスタンスで強いイメージがありますが、今回はCCCを選びました。2022年のCCCで12位になった経験を持ちます。スンマヤ・ブッダ Sunmaya Budha (NEP)は2022年のCCCで準優勝の経験があります。最近では昨年秋の中国のビッグレース、Tsaigu Trail 100kで優勝、今年1月のHong Kong 100で準優勝と、100Kカテゴリーで好成績を残しています。バレエダンサーのバックグラウンドを持つ異色のウルトラランナーとして注目されるマルティナ・ムリナルチク Martyna Mlynarczyk (POL)は昨年のCCCで準優勝という好成績を残しました。最近では7月のMonte Rosa 40kで優勝しています。

日本から参加では吉住友里 Yuri Yoshizumi (JPN)の活躍が期待されます。100Kカテゴリーのレースでは昨年夏の奥信濃100や秋のハセツネCUPで優勝し、今年6月のKaga Spa 100Kでもタフなコンディションながら2位に入っています。UTMBでは2019年にOCCでトップ3入りの快挙を成し遂げ、2023年からはCCCにスイッチして今回が3度目のCCCとなります。

OCC(Orsières – Champex – Chamonix)

8月28日木曜日にはUTMBワールドシリーズファイナルの50KカテゴリーのレースとなるOCCが行われます。スイス・オルシエール Orsières を朝の8:15(日本時間同日15:15)にスタートし、フランス・シャモニー Chamonix にフィニッシュするコースは距離57km、累積獲得高度3,498mD+。

近年OCCはGTWSやマウンテンランニングのレースで転戦するトップ選手が集まる傾向があり、エリートレベルの選手の数は前年比で29%増となっています。UTMBインデックスでみても、上位選手の平均レベルはUTMBやCCCを凌ぐ水準となっており、競技レベルとしては最もハイレベルなレースといえます。このOCCを制することはミドルディスタンスのトレイルランニングの頂点に立つことを意味します。

そのコースは100マイルのUTMBのコース後半の大きな登り下りを繰り返すセクションの多くと重なり、アルプスの美しい景色を楽しめる素晴らしいレースです。しかし、長く続く登りと下り、一部のテクニカルなセクションが選手たちを待ち受けます。

男子は2023年UTMBチャンピオンであり、今回は57kmという短めの距離に挑むジム・ウォルムズレー Jim Walmsley(USA)が話題となっています。2019年のWMRAマウンテンランニング世界選手権で42kmを走って金メダルを獲得した経験も持っており、このカテゴリーでもスピードは折り紙付きです。そのウォルムズレーに対して、スカイランニングのレースで上位常連の欧州勢がどんなレース展開を見せるか。ロベルト・デロレンツィ Roberto Delorenzi(SUI)、ナディール・マゲット Nadir Maguet(ITA)、クリスティアン・ミノッジオ Cristian Minoggio(ITA)といった各国の実力者が揃います。2022年のCCCチャンピオンで9時間53分のコースレコードをもつペッテル・エングダール Petter Engdahl (SWE)も近年はミドルディスタンスのレースにフォーカスして実績を残しています。

さらに、スカイランニングやGTWSではおなじみのルカ・デルペロ Luca Del Pero (ITA)は5月のZegamaで4位。続いてダビデ・マニーニ Davide Magnini (ITA) やアントニオ・マルチネス Antonio Martinez Perez (ESP) 、アンジェイ・ヴィテック Andrzej Witek (POL)、 エゼキエル・ルット Ezekiel Rutto (KEN) といった選手の名前が続きます。以上10名はUTMBインデックスが900を超えることからもレベルの高さが窺えます。

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日本からは上田瑠偉 Ruy Ueda (JPN)がこのOCCにエントリーしています。昨年秋から中国のTsaigu Trail 50k、タイのChiangmai by UTMB 50kで優勝したのちは、海外レースは控えて臨んだ先月の富士登山競走で優勝しています。UTMBでは2016年のCCCで準優勝、2017年OCCで26位、2021年OCCで22位、2022年ETCで準優勝といった結果を残しています。さらに日本勢では甲斐大貴 Hiroki Kai松永紘明 Hiroaki MatsunagaもOCCに参戦します。

女子のレースもミドルディスタンスでは世界最高レベルのアスリートが顔をそろえます。オリエンテーリングで世界王者としてその名を上げ、今日ではトレイルランニングの第一人者として知られるジュディス・ウィダー Judith Wyder(SUI)は今回の優勝候補と見られています。昨年のOCCで2位ののち、今シーズンは3月のChianti Ultra-Trail 46kで優勝、5月のZegama、6月のMarathon du Mont-Blancではいずれも準優勝と好調です。そのウィダーに勝ち、昨年のOCCを制した中国のヤオ・ミャオ Miao Yao(CHN)はディフェンディングチャンピオンとして今年のOCCに戻ってきます。ヤオは今シーズンは国際レースは控え気味ですが、Val d’Aran 51kでは優勝、今月のSIerre-Zinalは7位でフィニッシュしています。UTMBでは2018年のCCCで優勝し、2023年のOCC3位を経て、昨年OCCでも頂点に立ちました。ジョイライン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno(KEN)はトレイルランニングの国際大会へのデビューとなった昨年のSierre-Zinalで優勝して話題となりました。そのSierre-Zinalでは今年連覇を成し遂げています。この間、昨年のGTWSグランドファイナルの23kや今年6月のMarathon du Mont-Blancで優勝しており、この勢いで今回のOCCも制することになるのか注目です。

続く選手たちもいずれもトレイルランニング界で確かな足跡を残しており、層の厚いレース展開が予想されます。スペインからはロサ・ララ・フェリウ Rosa Lara Feliu(ESP)、サラ・アロンソ Sara Alonso(ESP)、アメリカからはソフィア・ラウクリ Sophia Laukli(USA)、ハンナ・オールグッド Hannah Allgood (USA)が上位に食い込む実力あるアスリートです。

TDS(Sur les Traces des Ducs de Savoie)

UTMBの中で最もワイルドなレースとしてファンの人気を集めるTDSは、イタリア・クールマイユールからフランス・シャモニーへ至る距離約148km、累積獲得高度9,300mのコースを走ります。パスール・ド・プラロニャン Passeur de Pralognan をはじめ、世界有数のテクニカルなトレイルがランナーを待ち受けます。スタート時刻は8月25日月曜日の23:50(日本時間26日火曜日6:50)。制限時間は約44時間55分となっています。

2025年のTDSはエリートレベルの選手のエントリーが前年比で37%増となり、ハイレベルなレースとなることが見込まれています。

女子の注目は、今シーズンにHardrockl 100で準優勝、Trail 100 Andorra 100Kで優勝など好調なマノン・ボアール・カイエ Manon Bohard Cailler (FRA)。2021年のTDSでの優勝に続いて昨年はUTMBを走っており、今年は再びTDSを走ります。今回がUTMBへの初参戦となるキャレス・アーノルド Careth Arnold (USA)、そしてGrand Raid Ventoux 100Mの覇者であるイダ=ソフィー・ヘーデマン Ida-Sophie Hedemann (GER)がレースに加わります。

 


男子では今年のVerbier St-Bernard X-Alpine、Valhöll Fin del Mundo 100Mを制しているベニャ・マルミソール Benat Marmissolle (FRA) がリードする展開が予想されます。さらにアントワーヌ・シャルヴォラン Antoine Charvolin (FRA)や2019年のUTMBチャンピオンでTDSでは2016年に優勝しているパウ・カペル Pau Capell (ESP)、フランスのトレイルランニング界の人気者であるアレクサンドル・ブシェ Alexandre Boucheix (FRA)の活躍が期待されます。

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