【追記しました】OCCはジム・ウォルムズレー、ジョイリーン・チェプンゲノが最後まで白熱したレースを制す、上田瑠偉は先頭集団を走るもリタイア【 #UTMB 2025 Day 4】

【追記・9月9日、ワールドアスレチック World Athletics 傘下のアンチドーピング機関である Athletics Integrity Unit(AIU)はケニアのアスリート、ジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno (KEN) に対し、8月9日のシエル・ジナール Sierre-Zinalでの優勝した際にアンチ・ドーピング規則違反があったとして、2年間の資格停止処分を科したと発表しました。この結果、2025年8月9日以降のすべての競技成績・受賞・ポイント・賞金等も失効となりました。UTMBワールドシリーズは8月28日に開催されたOCCでの成績についてもチェプンゲノの優勝を取り消し、新たな女子選手の順位を発表しています。以下のリザルト記事のうち、OCCの女子の順位表について追記します。20250910】

HOKA UTMB Mont-Blancでは8月28日木曜日にOCCが開催されました。スイスのオルシエールをスタートし、フランスのシャモニーでフィニッシュするコースは前夜の雨によるコース上の安全管理のため、距離61km、累積標高3,400mD+の代替コースで開催。スタート時刻も2時間繰り下げて午前10時15分となりました。元のコースに比べてテクニカルな山岳セクションは少なくなったものの、長く続く登りと下り、そして最終盤のスピード勝負となるフラットなトレイルが選手の対応力を試します。1,568人の選手が参加し、UTMBワールドシリーズの三つのレースの中でも最もエリート選手の層が厚い今年のOCCは最後まで目の離せない白熱したレース展開でした。

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(写真はOCC男子優勝のジム・ウォルムズレー。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux)

OCC女子優勝のジョイリーン・チェプンゲノ。Photo © UTMB / Quentin Iglesis

OCC女子優勝のジョイリーン・チェプンゲノ。Photo © UTMB / Quentin Iglesis

OCC男子:ジム・ウォルムズレーが最後まで力の入ったレースで勝利、上田瑠偉は健闘しながらもDNF

男子のレースは最初から最後まで、上位の順位が次々に入れ替わる展開となりました。2023年UTMBのチャンピオンであるジム・ウォルムズレー Jim Walmsley (USA)は膝の故障からのリカバリー中で、9月のWMTRC世界選手権を控えて距離の短いOCCを選びましたが、ミドルディスタンスのトップ選手たちに対して、別格の強さを発揮しました。レース前半はペッター・エングダール Petter Engdahl (SWE)、サム・ヘンドリー Sam Hendry (CAN)、そして日本の上田瑠偉 Ruy Ueda(JPN) が先頭集団を形成します。代替コースではマルティニー Martigny(22.9km)からコル・ド・バルム Col de Balme(38.7km)まで標高差1800mD+程度の長い登りとなります。霧が濃く気温も高めというコンディションの中、この登りをウォルムズレーは終始安定したペースで登り続けて先頭集団から抜け出します。

一方、上田瑠偉 Ruy Ueda (JPN) はマルティニーへの下りでは一時は先頭に立つなど順調でしたが、マルティニーで「エイドが見つからない」(上田選手のSNS)というトラブルに見舞われます。その後の登りではトリアン Trient(32.6km)までは上位で持ち堪えたもののその後は失速し、コル・ド・バルムでリタイアすることになりました。

コル・ド・バルムからは長く続く下りでしたが、アルジャンティエール Argentière(50.1km)のエイドでウォルムズレーが短い補給をする間に、マウンテンランニングのベテラントップ選手であるクリスティアン・ミノッジョ Cristian Minoggio (ITA) がエイドを先に通過していきます。ウォルムズレーもすぐに後を追い、両者のデッドヒートとなります。一度は視界に入らないほどにリードを広げたミノッジョの背中を、残り1kmというところでウォルムズレーがとらえて逆転。ウォルムズレーが5時間00分35秒で2025年OCCのチャンピオンのタイトルを獲得しました。ミノッジョはわずか20秒という僅差で準優勝に。3位には、こちらもコース終盤に順位を上げる鮮やかな展開を見せたアンジェイ・ヴィテック Andrzej Witek (POL)、が入りました。

最後までウォルムズレーと激しい競り合いとを繰り広げたクリスティアン・ミノッジョ Cristian Minoggio (右)。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

最後までウォルムズレーと激しい競り合いとを繰り広げたクリスティアン・ミノッジョ Cristian Minoggio (右)。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

女子のOCCはUTMBに新たなスター選手が誕生したレースとなりました。五輪代表経験もある元トラックランナーで、トレイルランニングの経験はわずか2年、40km超のレースは今回が初というジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno (KEN)が制しました。レース序盤は昨年のOCC優勝のヤオ・ミャオ Yao Miao (CHN)と並んで走り、中盤に入ってからもヤオ・ミャオが僅差で続いていました。長い登りから下りに転じるコル・ド・バルム Col de Balme(38.7km)でチェプンゲノがヤオ・ミャオを引き離し、そのまま終盤は独走して5時間34分03秒で優勝を果たしました。陸上競技を引退し、出産して体重も増えていた時にトレイルランニングを知ったといい、それから間もない昨年のSierre-Zinalで優勝、そして今年は連覇を達成。シャモニーでは今年6月のMarathon du Mont-Blancで優勝した経験も持ちます。UTMBのレースではケニア勢としても初めて頂点に立ちました。

OCCをリードするジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno Photo © UTMB / Gabriele Facciotti

OCCをリードするジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno Photo © UTMB / Gabriele Facciotti

最後までチェプンゲノとタイトなレースを繰り広げたヤオ・ミャオ Yao Miao (CHN)は1分10秒差の2位でフィニッシュしました。3位はユーディト・ヴィダー Judith Wyder (SUI)が続きました。4、5位にはそれぞれモード・マシス Maude Mathys (SUI)とサラ・アロンソ Sara Alonso (ESP)が入り、今日のミドルディスタンスのトップ選手たちが勢揃いするレースとなりました。

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2025年OCCの男子トップ3。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

2025年OCCの男子トップ3。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

男子

  1. ジム・ウォルムズリー Jim WALMSLEY (USA) 05:00:35
  2. クリスティアン・ミノッジョ Cristian MINOGGIO (ITA) 05:00:55
  3. アンジェイ・ヴィテク Andrzej WITEK (POL) 05:04:08
  4. ペッター・エングダール Petter ENGDAHL (SWE) 05:05:08
  5. クリスチャン・ジョーンズ Kristian JONES (GBR) 05:05:50
  6. アダム・ピーターマン Adam PETERMAN (USA) 05:06:19
  7. ルカ・デル・ペロ Luca DEL PERO (ITA) 05:07:46
  8. アントニオ・マルティネス・ペレス Antonio MARTÍNEZ PÉREZ (ESP) 05:10:21
  9. デイビッド・ノリス David NORRIS (USA) 05:12:33
  10. サム・ヘンドリー Sam HENDRY (CAN) 05:17:43
2025年OCCの女子トップ3。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

2025年OCCの女子トップ3。Photo © UTMB / Nils Charles Oddoux

女子

  1. ジョイリーン・チェプンゲノ Joyline CHEPNGENO (KEN) 05:34:03
  2. ミャオ・ヤオ Miao YAO (CHN) 05:35:13
  3. ユーディト・ヴィダー Judith WYDER (SUI) 05:38:22
  4. モード・マティス Maude MATHYS (SUI) 05:45:43
  5. サラ・アロンソ Sara ALONSO (ESP) 05:50:26
  6. イーダ・アメリエ・ロブサム Ida Amelie ROBSAHM (NOR) 05:52:28
  7. ロサ・ララ・フェリウ Rosa LARA FELIU (ESP) 05:55:54
  8. イクラム・ルハルサラ Ikram RHARSALLA (ESP) 05:56:21
  9. ジャズミン・ロウザー Jazmine LOWTHER (CAN) 06:02:56
  10. エリサ・モラン Elisa MORIN (CAN) 06:03:19
  1. ミャオ・ヤオ Miao YAO (CHN) 05:35:13
  2. ユーディト・ヴィダー Judith WYDER (SUI) 05:38:22
  3. モード・マティス Maude MATHYS (SUI) 05:45:43
  4. サラ・アロンソ Sara ALONSO (ESP) 05:50:26
  5. イーダ・アメリエ・ロブサム Ida Amelie ROBSAHM (NOR) 05:52:28
  6. ロサ・ララ・フェリウ Rosa LARA FELIU (ESP) 05:55:54
  7. イクラム・ルハルサラ Ikram RHARSALLA (ESP) 05:56:21
  8. ジャズミン・ロウザー Jazmine LOWTHER (CAN) 06:02:56
  9. エリサ・モラン Elisa MORIN (CAN) 06:03:19
  10. カミーラ・マリアーノ Camilla Magliano (ITA) 06:05:23
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まさに世界最高レベルのトレイルレースとなったOCC、そして8月29日金曜日はCCC、UTMBがスタート

今回のUTMBワールドシリーズファイナル、OCCは、世界最高峰のエリートアスリートが集結し、男女ともに戦略的で最後まで白熱したレース展開となりました。ウォルムズレーの勝利は100マイルだけでなく、ミドルディスタンスでの実力を示し、王者の幅広い才能と努力が印象的でした。チェプンゲノはケニア勢としての初のUTMBのレースでの勝利であり、今後さらにグローバル化が進むトレイルランニング界のトレンドが見て取れます。また男子・女子ともにトップ10争いは10分以内の接戦で、それぞれのバックグラウンドを持つ選手たちの激突が印象的でした。

8月29日金曜日はUTMBワールドシリーズの100KカテゴリーのファイナルとなるCCCが午前9時(日本時間同日午後4時)にクールマイユール Courmayeur をスタートします。そして、100Mカテゴリーのファイナル、UTMBがシャモニー Chamonix のプレ・デュ・トリアングル・ド・ラミティエ Place du Triangle de l’Amitié を17:45(日本時間同日深夜24:45)にスタートします。

両レースとも、ノンストップでUTMB LIVEでライブ配信を視聴することができます。

HOKA UTMB Mont-Blanc 2025 プレビュー:TDS、OCC、CCC、UTMB

2025.08.24
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