ブルガリアのバルカン山脈で開催のマスターズ・スカイランニング世界選手権で宮川朋史、岡田裕也、宮坂康子が金メダル、日本は国別団体で銀メダルに輝く

ブルガリアのバルカン山脈は40歳以上のスカイランナーによる世界最高峰のスカイランニング・レースが繰り広げられました。2025年10月3日から5日にかけて開催された第3回マスターズ・スカイランニング世界選手権 2025 Masters Skyrunning World Championshipsには、23カ国からアスリートが集結しました。大会初日は厳しい悪天候に見舞われましたが、日曜日の決勝では「雲は少なく、空はもっと多く (Less cloud. More sky)」というスカイランニングのキャッチフレーズを体現するような青空が広がり、大会は成功裏に幕を閉じました。

(写真は最終日のSKYのレースを終えた日本代表チーム。Photo © JSA)

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今大会は、ブルガリアのカルロヴォ Karlovoで開催されたBalkaniada SkyRaceの一部として行われ、マスターズ選手権の歴史上初めて、VERTICALSKYSKYULTRAの3種目すべてが実施されました。アスリートは40歳以上(040)、45歳以上(045)、50歳以上(050)、55歳以上(055)の4つの年齢カテゴリーに分かれて競いました。

国別団体では日本が銀メダルを獲得。Photo ©Damiano Benedetto / ISF

国別団体では日本が銀メダルを獲得。Photo ©Damiano Benedetto / ISF

合計75個のメダルと世界タイトルがかけられた今大会では、23カ国の公式チームが参加。そのうち17カ国ものチームがメダルを獲得するという結果は、スカイランニングが世界的に広がり、競技レベルがますます拮抗していることを示しています。

大会初日の金曜日は、嵐と集中豪雨によりコースが壊滅的なダメージを受けたことから、主催者は厳しい判断を迫られました。しかし、迅速な対応により3種目すべてで代替コースが設定され、無事に競技がスタートしました。

初日のVERTICALは、距離3.6km、獲得標高840mの代替コースで開催されました。男子のレースで全年代を通じてトップでフィニッシュしたのは、オーストリアのクリスチャン・ホフマン Christian Hoffman (AUT, O50)で、30分51秒というタイムで頂上に到達しました。ホフマンは2024年の富士登山競走で来日し、男子総合で準優勝となった経験も持ちます。女子はオーストラリアから参加したジェシカ・ショート Jessica Short (AUS, O40)が39分01秒で全世代を通じたトップで完走し、金メダルを獲得しました。ショートはレース後、「夏の間ずっとシャモニーにいたので、この天気にはそれほど驚きませんでした。でも、ここに来て新しいトレイルを探検できることに本当に興奮しています。私たちオーストラリアチームを代表できることを誇りに思います」と語りました。

土曜日のSKYULTRA(距離52km、獲得標高3,000m)は雲が低く垂れ込める中でスタートしましたが、徐々に晴れ間が広がる展開となりました。男子レースでは、イタリアのルカ・アリゴーニ Luca Arrigoni (ITA, O40)が他を圧倒。唯一6時間を切る5時間52分51秒でフィニッシュしました。アリゴーニは2023年の銀メダル、2024年の銅メダルに続き、ついに金メダルを獲得し、マスターズ選手権での3色のメダルを手にすることとなりました。「この勝利でメダルコレクションが完成し、とても満足しています。最高のシーズンでした」と彼は喜びを語りました。

SKYULTRA男子で首位となったルカ・アリゴーニ。Photo ©Damiano Benedetto / ISF

SKYULTRA男子で首位となったルカ・アリゴーニ。Photo ©Damiano Benedetto / ISF

女子では、ソフィア・バイゼル Sofia Beizel (AIN, O40)が6時間53分17秒で首位となり、2024年大会に続く連覇を達成しました。また、O55カテゴリーではハンガリーのイルディコー・ヴェルメシュヘル Ildikó Wermescher (HUN)が3大会連続となるタイトルを獲得。現在60歳の彼女は、女子総合15位という素晴らしい走りを見せました。

最終日となった日曜日のSKYは、その名の通りの快晴に恵まれました。距離26km、獲得標高1,900mのコースからは、バルカン山脈の壮大な景色を望むことができました。男子レースでは、VERTICALで優勝したオーストリアのクリスチャン・ホフマン Christian Hoffman (AUT, O50)が再び実力を発揮し、2時間54分25秒で首位でフィニッシュ。今大会で二冠を達成しました。

女子のレースはスロバキアのヴィエラ・スリヴコヴァ Viera Slivková (SVK, 040)が3時間33分で首位、金メダルを獲得しました。彼女の記録は、290人の参加者中、総合20位という快挙でした。O50カテゴリーでは、チェコ出身のレジェンド、アンナ・ストラコヴァ Anna Strakova (CZE)が優勝し、自身にとって3度目となるマスターズ世界タイトルを手にしました。

国別団体で銀メダルを獲得した日本チームは、各種目で素晴らしい走りを見せました。金メダル3つ、銀メダル2つ(国別団体を含む)、銅メダル3つを獲得し、日本のマスターズ世代のレベルの高さを世界に示しました。

大会初日のVERTICALでは、宮川朋史 Tomofumi Miyagawaが男子O40カテゴリーで見事金メダルを獲得。合田睦美 Mutsumi Godaが女子O45部門で銀メダルに輝き、日本チームに幸先の良いスタートをもたらしました。

Verticalで金メダルの宮川朋史(左)と銀メダルの合田睦美。Photo © JSA

Verticalで金メダルの宮川朋史(左)と銀メダルの合田睦美。Photo © JSA

厳しい天候の中、Verticalを終えた日本代表チーム。Photo © JSA

厳しい天候の中、Verticalを終えた日本代表チーム。Photo © JSA

2日目のSKYULTRAでは日本男子が大活躍。岡田裕也 Yuya Okadaが男子O45部門で世界チャンピオンの座に輝きました。さらに、大畑匡孝 Masataka OhataがO40部門で、清水克利 Katsutoshi ShimizuがO50部門で、中川善博 Yoshihiro NakagawaがO55部門でそれぞれ銅メダルを獲得する快挙を成し遂げました。VERTICALで金メダルを獲得した宮川選手も、このSKYULTRAで4位入賞と強さを見せました。

SkyUltraで銅メダルを獲得した中川善博。Photo © JSA

SkyUltraで銅メダルを獲得した中川善博。Photo © JSA

最終日のSKYでは、宮坂康子 Yasuko Miyasakaが女子O55部門で金メダルを獲得し、有終の美を飾りました。

SKYで金メダルの宮坂康子。Photo © JSA

SKYで金メダルの宮坂康子。Photo © JSA

今大会、日本代表選手は出場した3種目すべてで全員がフィニッシュするという素晴らしい結果を残し、個人の活躍だけでなく、チームとしての総合力の高さも証明しました。

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日本代表選手の主なリザルト

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VERTICAL

  • 宮川朋史 Tomofumi Miyagawa: O40 男子 1位
  • 合田睦美 Mutsumi Goda: O45 女子 2位
  • 高前直幸 Naoyuki Takamae: O40 男子 5位
  • 川崎義孝 Yoshitaka Kawasaki: O50 男子 5位
  • 中山立 Tastsuru Nakayama : 050 男子8位
  • 細木郁生 Ikuo Hosoki : 045 男子10位
  • 内田正直 Masanao Uchida : 055 男子11位
  • 村井理利 Masatoshi Murai : 045 男子13位
  • 西山真一 Shinichi Nishiyama : 040 男子15位

SKYULTRA

  • 岡田裕也 Yuya Okada: O45 男子 1位
  • 大畑匡孝 Masataka Ohata: O40 男子 3位
  • 清水克利 Katsutoshi Shimizu: O50 男子 3位
  • 中川善博 Yoshihiro Nakagawa: O55 男子 3位
  • 宮川朋史 Tomofumi Miyagawa: O40 男子 4位
  • 小野田誠也 Seiya Onoda: O45 男子 5位
  • 岩瀬史明 Fumiaki Iwase : 055 男子5位
  • 黒川芳恵 Yoshie Kurokawa : 050 女子7位
  • 静貫太郎 Kantaro Shizuka : 050 男子8位
  • 中山立 Tastsuru Nakayama : 050 男子14位
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SKY

  • 宮坂康子 Yasuko Miyasaka: O55 女子 1位
  • 細木郁生 Ikuo Hosoki: O45 男子 5位
  • 川崎義孝 Yoshitaka Kawasaki: O50 男子 5位
  • 山本隆二 Ryuji Yamamoto: 055 男子7位
  • 村井理利 Masatoshi Murai : 045 男子9位
  • 西山真一 Shinichi Nishiyama : 040 男子10位
  • 内田正直 Masanao Uchida : 055 男子12位

今大会でメダルを獲得したのは、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チリ、クロアチア、チェコ、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、日本、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、イギリスの17カ国でした。

国別団体ランキングでは、49人という最大の選手団を送り込んだポルトガルが圧倒的な力を見せつけ金メダルを獲得。そして、日本が堂々の銀メダルに輝きました。銅メダルは開催国のブルガリアでした。

閉会式ではメダル授与式が行われ、開催地カルロヴォが位置する有名な「バラの谷」の伝統的な衣装をまとったダンサーによる音楽や踊りが披露され、祝祭のムードに包まれました。ブルガリア・スカイランニング連盟のディミタル・ディミトロフ Dimitar Dimitrov会長は、「ブルガリアは本物のスカイランニングの楽園であり、今後もさらに発展させていく計画です」と、将来への展望を語りました。

(Source: ISF, JSA)

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