【編者より・DogsorCaravanでは トレイルランニングのファンの皆さんが深い関心を持つ、創造的で生産性の高い仕事と生活について、情報を発信する試みを進めています。「DogsorCaravan Creative & Productive」はそうしたコンテンツのカテゴリーです。】
PLAUD株式会社は都内で新製品発表会を開催し、次世代AIボイスレコーダー「Plaud Note Pro」を発表しました。同製品は10月14日に国内で発売されます。価格は税込30,800円で、シルバーとブラックの2色展開となります。本製品は、2025年9月にドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2025」において、16カテゴリー1,800点以上の製品の中から「Best in Accessibility Focused Product」(アクセシビリティ重視製品賞)を受賞しています。
Sponsored link
DogsorCaravanでは昨年秋にカプセル型の「PLAUD NotePin」をご紹介しました。実はそれ以来、取材やコンテンツ制作といった業務にもプライベートにもこの製品を積極的に活用しており、筆者にとっては今や手放すことのできない重要なギアとなっています。今回もPLAUDにお誘いいただき、発表会に参加してきました。
PLAUDはAIネイティブハードウェアのパイオニア
PLAUDは、2021年11月12日にサンフランシスコで設立されたグローバル企業です。共同創業者兼CEOのネイサン・シュー Nathan Xu 氏を中心に、最先端のAI研究人材が集結し、AIネイティブハードウェアおよびソフトウェアの設計・開発を手がけてきました。現在は米国本社のほか、シンガポール、深圳、東京に拠点を持ち、180人以上のメンバーを擁しているといいます。
同社は2023年6月、Kickstarterで世界初のAI録音デバイス「Plaud Note」の予約販売を開始し、わずか1ヶ月で売上100万ドルを達成。同年夏に正式発売した後、日本では10月からMakuakeで先行販売を開始し、2ヶ月で売上2.7億円を記録、ビジネスツールカテゴリー歴代1位を獲得しました。2024年8月には、ウェアラブル型の「Plaud Note Pin」を発表しています。同製品はレッド・ドット・デザイン賞2025を受賞するなど、デザイン面でも高い評価を得ています。
同社は2025年6月時点で世界累計出荷台数100万台以上を達成するなど、急激に成長しています。AIネイティブハードウェアというカテゴリーでは Meta Ray-Ban に次ぐ世界第2位の出荷数を記録しています。2025年4月には、日本法人PLAUD株式会社が正式に業務を開始し、法人向けプランの提供も開始しています。
会話こそが知性。それがPLAUDの企業理念
今回の発表会には、PLAUD Inc. 共同創業者兼CEOでありPLAUD株式会社代表取締役の ネイサン・シュー Nathan Xu 氏が来日して登壇しました。同社は今回の新製品の発表に先立ち、リブランディングを実施しており、ロゴをリニューアルしたほか、同社のミッションも「Amplify Human Intelligence(人間の知性を増幅する)」に更新したことを明らかにしました。「私たちは、人間に取って代わるのではなく、人間の能力を高めるAIソリューションを構築しています」と強調し、人間とAIの協働を目指す姿勢を鮮明にしました。

PLAUD Inc. の共同創業者兼CEOであるネイサン・シュー氏(中央)、PLAUD株式会社ジェネラルマネージャーのワトソン・ザン氏(右)、PLAUD株式会社セールスディレクターの鈴木直幸氏。
シュー氏は「PLAUDは会話そのものが知性の形であると考えています」と語り、ビジネスにおける対面コミュニケーションの重要性を説きます。「すべての仕事は対人コミュニケーションから始まります。会話には知識、経験、そして意思決定が含まれています」とし、会話に含まれる知性をリアルタイムで捉え、活用することの重要性を訴えました。
さらに人間の記憶の限界について指摘します。「スマートフォンやパソコンのキーボードで情報をデジタル化する時点で、私たちはすでに文脈の80〜90%を失っています」と述べ、コミュニケーションにおける記憶の喪失、会議中の注意散漫、理解力の限界、エネルギーの制約といった人間の制約を挙げました。「センサーとAI機能を組み合わせることで、100%の記憶、ゼロの注意散漫、24時間365日の稼働、すべてを深く理解する能力を実現できます」とし、10倍の効率性と精度の向上を目指す、としました。
PLAUDの製品は現在、世界170カ国で累計100万台以上が出荷されており、日本は米国に次ぐ第2位の市場となっています。ターゲットユーザーは、ビジネスエグゼクティブとプロフェッショナル知識労働者の2つのセグメントです。「経営幹部やビジネスリーダーは、業務時間の大半を対人コミュニケーションに費やしています。従来、彼らの生産性を高めるソリューションは存在しませんでした」とシュー氏は説明しました。プロフェッショナル知識労働者については、「高い知識密度、会話への高い依存度、影響力の大きい意思決定」という3つの共通点を持つ医師、弁護士、コンサルタント、ジャーナリストなどを例として挙げました。
フラッグシップモデルとしての進化した新ハードウェア「Plaud Note Pro」
日本法人であるPLAUD株式会社のジェネラルマネージャー、ワトソン・ザン Watson Zhang 氏が今回の新製品の詳細を紹介しました。「Plaud Note Pro」は2023年夏に発表したPlaud Note、2024年8月に発表したPlaud Note Pinに続く最新フラッグシップモデルとして位置づけられます。
製品デザインについて「波紋のようなデュアルトーンの仕上げ」を採用したと説明しました。クレジットカードサイズ(85.6×54.1×2.99mm)という携帯性を維持しながら、重量わずか30gの軽量アルミボディに高度な録音・AI機能を搭載しています。
4基のMEMSマイクと5メートル集音
最大の進化点は、4基のMEMSマイクの搭載です。「最大5メートルの音声まで正確にキャッチすることが可能」(ザン氏)であることに加え、AI指向性収音技術により、「話している人の音を自動的に検知し、しっかりとフォーカスします。周囲の雑音をしっかり抑えながら、音の自然な響きと厚みをそのまま届けます」とその進化ぶりを説明します。
また、スマートデュアルモード録音機能により、対面モードと通話モードを自動で切り替えます。「対面のミーティングでも、電話での会話でも、Plaud Note Proは自動的にその違いを理解し、状況に合わせて最適なモードに切り替えます」とザン氏は語りました。
これまでのモデルに対して、新製品では2つの録音モードが追加されました。「音声強化モード」では最大5メートル先までの集音が可能で、会議やプレゼンテーションなど広い空間に対応します。「長期間駆動モード」では、3m以内の音声を収音し、最大50時間の連続録音を実現。通話や打ち合わせで1日中記録してもバッテリーの心配は不要となりました。
0.95インチAMOLEDディスプレイを新搭載
Plaud Note Proには、Corning Gorilla Glassで保護された0.95インチのAMOLEDディスプレイが新たに搭載されました。ザン氏はこのディスプレイについて「最大600ニットの明るさで、太陽の下でもはっきり見えやすく、反応もスムーズです」と話します。録音状態、バッテリー残量、現在の録音モードを一目で確認できる、としています。
アプリも大きく進化、目玉はマルチモーダル記録とPlaud Intelligence 3.0
続いて、PLAUD株式会社セールスディレクターの鈴木直幸氏が、新製品とともに導入される、大きく進化したソフトウェア「Plaud Intelligence 3.0」とアプリのアップデートについて詳細を説明しました。
複数のメディアに対応するマルチモーダル記録が可能に
まず鈴木氏は「Plaud Intelligenceは、記録、抽出、活用という3つの要素で構成されています」と話します。
最大の新機能は、複数のメディアに対応するマルチモーダル記録です。「今までは音声のみでしたが、今回は音声以外の情報も取り込めるようになりました」と鈴木氏は説明しました。具体的には、録音中に画像を取り込む機能、アプリ内でメモを取る機能、そしてハイライト記録機能が追加されました。
画像取り込み機能により、「プレゼンテーション中のスライドの画像やホワイトボードに記載した内容など、視覚的な情報を取り込めます。この情報は音声と同期させることで、要約の際に非常に精度の高い情報として活用できます」としています。
ハイライト記録機能について、鈴木氏は「録音中に短くタップすることで、過去30秒までさかのぼって情報をハイライトとして記録できます。会議の最中に重要な情報が見つかった時に、ちゃんとさかのぼって情報をキャッチできます」と説明しました。
多次元要約と3,000種類のテンプレート
抽出機能については、「多次元要約」という新機能が追加されました。「一つの要約だけでは、全ての情報を共有したり見たりすることができません。今回、同じ録音の中で、要約以外にも様々な項目を追加の要約として取り込むことができるようになりました」と鈴木氏は説明しました。
これを実現するのが、テンプレートガイドというテンプレートコミュニティです。「ユーザー様が作成したカスタムテンプレートを投稿していただく機能を搭載しており、現在3,000種類以上のプロフェッショナル要約テンプレートにアクセスできます」としています。全体を外観する要約をするだけでなく、そこに続いてさまざまなニーズや使用シーンに応じた要約や整理を行なって追記することができます。
AI機能については、GPT-5、Claude Sonnet 4、Gemini 2.5 Proなど最先端のAIモデルが採用されており、112カ国語の多言語対応を実現しています。
Ask Plaud 機能の強化
「Ask Plaud」機能は、従来の「Ask AI」をバージョンアップしたもの。チャット欄に質問やリクエストを書き込むとAIが答えてくれるのですが、「Ask Plaudに質問を投げかければ、最適な結論や次のステップをすべて回答してくれます。さらに、この回答の情報を要約と同じように、新規のノートとして保存することもできます」と鈴木氏は語りました。
発表会では実際のデモ画面が公開され、音声文字起こし、画像取り込み、ハイライト記録、メモ入力が統合された画面が示されました。「音声だけでなく、様々な情報を取り込んで収集し、要約を作り上げることができます。写真も合わせて盛り込むことができるので、今まで以上に圧倒的に豊富な情報を要約の中に盛り込めます」と鈴木氏は新しくなったソフトウェアの威力を強調しました。
世界最高水準のセキュリティ
セキュリティ面では、SOC 2 Type II、HIPAA、GDPR、EN18031といった国際的な基準に完全準拠しています。「Apple、Google、Microsoftと同様のベストプラクティスを採用しています」(シュー氏)とのことで、最高水準のデータ保護により100万人以上のプロフェッショナルユーザーから信頼を獲得していると述べました。
販売情報とアプリリリース
Plaud Note Proは10月14日より、公式サイト、Amazon公式ストア、楽天市場公式ストアで販売が開始されます。ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダデンキなどの家電量販店でも取り扱われる予定です。
新アプリ「Plaud App 3.0」は10月9日から公開されます。このアプリは、先行モデルのNote、NotePinでも利用可能です。サブスクリプションプランは、月300分まで無料のスタータープラン、月1,200分のプロプラン、無制限のアンリミテッドプランの3種類が用意されます。
PLAUDが展望するマルチモーダルAIの未来とは
シュー氏は自らのスピーチの最後に、PLAUDの今後の方向性について語りました。「私たちは録音デバイスを作り、会話を文字起こしし、要約していますが、次は何でしょうか。異なるセンサーを活用してマルチモーダルにすることはできるでしょうか。音声だけでなく、画像、テキスト、さらには人々の意図もキャプチャできるでしょうか」と問いかけ、会話を多次元で分析し、エージェント機能を活用して働き方を変革する未来像を示しました。

PLAUD Inc. CEOのネイサン・シュー氏。
編集後記・単なる時間節約のツールではなく、アウトプットを促し、コミュニケーションを深化させてくれる武器
昨年PLAUDと出会って以来、筆者は様々な取材現場でPlaud Note Pinを活用してきました。当初は単なる時間節約のツールとして導入しましたが、実際に使い続けることで、その価値は想像をはるかに超えるものだと実感しています。
最も革命的だと感じるのは、今までなら記事などのアウトプットにつながらなかった取材も、確実にアウトプットに繋げることができるようになった点です。発表会のような構造化された情報はもちろん、選手へのインタビューや、カジュアルな会話のように様々な話題が次々に飛び出してくる素材でも、Plaudは驚くほどクリアに整理してくれます。話題が散らばっても、文脈を失わずに要約してくれる能力は、ジャーナリストにとって何物にも代えがたいものです。
もう一つありがたいのは、記事執筆に取り掛かるまでのイナーシャ、つまりプロクラスティネーション(先延ばし)を乗り越えやすくなったことです。録音を聞き直して、メモを整理して、構成を考えて、という段階で挫折しがちだった作業が、Plaudによって大幅に圧縮されます。すでに要約があり、ハイライトがあり、必要に応じてAIに質問できる状態からスタートできるのは、心理的なハードルを大きく下げてくれます。単に楽ができるというだけではなく、細部を詰めたければどこで何を話していたか追跡し、実際の音声まで戻って聞くこともできます。これにより、記憶を辿ることも執筆作業もストレスが減るのです。
単なるボイスレコーダーでも、文字起こしサービスでもない。Plaudは知的生産のプロセスそのものを再設計するツールなのだと思います。今回発表されたPlaud Note Proと、マルチモーダル対応のPLAUD 3.0アプリは、音声だけでなく画像やメモも統合し、多次元的な記録と要約を可能にします。これは、知的生産性の新しい境地を開拓するものになるのではないかと期待しています。ネイサン・シュー氏が語った「会話こそが知性」という言葉は大げさではなく、ますます現実のものとなっていく予感がします。















