[DC] トレイルランニング・ギア、2012年の回顧と2013年の展望

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年も明けて2013年。昨年を振り返り今年を展望する季節だが、ここでもトレイルランニング・ギアの振り返りと今年の展望をまとめておきたい。

トレイルランニングの人気が高まるのに合わせて多くのギアが登場したが、次の4つのトレンドについてまとめておきたい。

1. GPS機能がついたランニングウォッチ

GPS機能によってランニングの距離やペースを正確に把握できるランニングウオッチ(ABCウォッチ<Altimeter/高度計, Barometer/気圧計, Compass/方位計付きのランニングウォッチ>)。様々な機能の進化が著しい分野だが、2012年は設定により最長50時間にわたってログが取れるというSuunto AmbitGarmin Fenixが登場。100マイルレースなどで自分のログを残したいウルトラランナーの人気を得た。夏にはEPSONが「WristableGPS」シリーズを発表してこの分野に参戦。さらに、機能を限定したエントリーモデルも登場し、Garmin/Forerunner 10は日本でも並行輸入で1万円台中頃で販売されているようだ。GPS機能が付くのが標準となりつつあるスマートフォンで同様の機能が利用できるアプリも人気を得ている。

趣味のランニングにいちいち記録を取ることの煩わしさや、月間走行距離をむやみに積み上げて満足することに批判的な意見もあるかもしれない。しかし多くのランナーにとってランニングの記録を取って毎月の走行距離の目標を達成したり、同じコースを走っていてもより早く走れることを確認できるのは小さくない喜びだ。シリアスなランナーであれば、時々見返して自分のトレーニングの傾向や課題も見つけ出せる。トレイルランナーにとっては、GPSログをマップ上で追うのも楽しく、トレイルを覚えたり新しく開拓したりするヒントが得られるという魅力もある。

2013年はこうしたABCウオッチ単体の普及だけでなく、ランニングデータとランナーのアカウントのリンクを活用するウェブサービスが進化し、普及していくだろう。特に、FacebookなどのSNSと絡めたソーシャルネットワークとの相性はよいはずでブレイクスルーは続くだろう。先日紹介したStravaはその一つの方向性を示すものだろう。

[DC] Strava・プライバシー保護機能と坂登りタイムトライアルでランナーが交流しやすいランとバイクのSNS | DogsorCaravan.com

2. ウオータープルーフジャケットが軽量・高透湿に進化

Gore-Texなどの防水/透湿性のある記事を使ったウオータープルーフジャケットについても、2012年は大きな進化があった。従来のGore-Texの素材よりも軽量、しなやかで透湿性が高いというGore-Tex Active Shellを使ったジャケットが春に各社から発売され、人気を呼んだ。Gore-Texだけでなく、Pertexや自社開発の素材を使った200グラム前後の超軽量ウオータープルーフジャケットも登場した。トレイルランニングに関連しては、初開催のウルトラトレイル・マウントフジなどでウォータープルーフジャケットが必携品となり、かさばるジャケットを少しでも軽量化したいというニーズもあった。

ただ、この軽量・高透湿のジャケットの人気には少し気になる点もある。そもそものウォータープルーフジャケットの目的がよく理解されていない気がするのだ。

普通はウォータープルーフジャケットはレインジャケットととも呼ばれるように雨風をしのぐためのものと考えられているのだが、日本の低山で冬以外に日中に数時間程度のトレイルランニングをするのなら、たとえ雨が降る日であっても濡れたまま走り続けて、終わった後にすぐ着替えるというのが現実的だろう。夏の雨の日に雨だからとジャケットを着ても中が蒸れて不快なのですぐに脱いでしまうという体験はだれにもあるはず。このような経験が、「ウォータープルーフジャケットは重くてかさばるのに着ても不快」「『山に行くのにレインウェアは必携品』といわれるから持っていくけど本当はこんなのは不要、できるだけ安いかかさばらないものにしたい」「レインウェアなんて不要、ウィンドブレーカーがあれば十分なんじゃないのか」といった考えにつながるように思う。

トレイルランナーにとって、ウォータープルーフジャケットの目的は詰まるところは「適度な蒸れを作ることで体を保温する」ことのように思う。冬の寒い季節、あるいは高山の朝晩など気温が下がるときに着て体の周りの温かい空気を逃さない。温かさは体から蒸発する水分を含む湿った空気をためこむことで生まれる。雨が降ったときには雨そのものに濡れることよりも濡れた衣類から水分が蒸発して気化熱が奪われないようにジャケットを着る。

こうした目的が理解されれば、トレイルランナーにとってもウォータープルーフジャケットが「必要悪」としてではなく、場面を選んで積極的に活用できる道具として受け入れられるのではないだろうか。おそらく日本で走るトレイルランナーにとってウォータープルーフジャケットは(保険として荷物に入れるにしても)今よりも実際に使う場面は少なくなり、着るときは行動中に着たり脱いだりすることは少なくなるのではないだろうか。今年、軽量素材を使った頭を覆うフードのないウォータープルーフジャケットも発売されていたが、「適度な蒸れを作ることで体を保温する」という目的からは活用する余地のあるウェアだと考えられる。

3. ミニマリストランニングシューズの定着

当方の記憶では薄底・ロードロップ(かかととつま先の高低差が小さい)のシューズ、あるいは裸足でのランニングは2010年ごろからVibram Five Fingersの登場で話題になっていたが、実際に興味を持って取り組む人が増えてきたのは2011年にNew BalanceからMinimusシリーズが登場してからのように思う。そして2012年はシューズメーカー各社からベアフットシューズ、ミニマリストシューズと呼ばれるランニングシューズが多数登場し、ランニングシューズの一分野として定着した。ゴムのシートとひものストラップだけというシンプルなサンダルスタイルも広がりつつあり、5月にはLuna Sandalsで有名なBarefoot Tedも来日して話題になった。

当方もミニマリストシューズをいろいろと試し、シューズとフットストライク(かかと着地か前足部着地か)の関係などの情報を追った。今のところの結論としては、ミニマリストシューズを履いても従来型のシューズを履いても、ランニングの速さは変わらず、フットストライクもシューズを変えただけでは変わらない。そしてかかと着地でも前足部着地でもそれぞれになりやすいケガがある。

とはいうものの、ミニマリストシューズやワラーチ、ハラケッシュ、Lunaなどのサンダルを履くことで、今まで意識しなかった歩いたり走ったりする動作に伴う足の筋肉、腱、骨の動きが意識できるようになった。少しフットストライクを変えてみることで今までとは違う足の筋肉を使うようになった。そのこと自体にそれほどの意味はないかもしれない。ただ、こうした意識を持つことができることで、練習やレースの間の足の状態や痛みについてどのように対応すればいいか、客観的に考えることができるかもしれない。ミニマリストシューズを履く楽しみはこうした自分の足を乗りこなす楽しみのように思う。

ミニマリストシューズに続くランニングシューズのトレンドは何か?当方には方向はまだ見えないが、2013年はミニマリストシューズの流行は一段落する予感がする。当サイトでも紹介した日本でも本格的に来年から展開されるHoka One Oneの厚底でクッションの効いたシューズはその一例となるかもしれない。

[DC] 来年はブレイクの予感、ランニングに新感覚をもたらすシューズ・Try HOKA ONE ONE @ Sky High Mountain Works | DogsorCaravan.com

4. バックパック、ファニーパックの進化、ハンドヘルド・ボトルの見直しか

トレイルランニングは山に出かけるアクティビティ。だとすれば必ず持たなければならない装備があり、それらを納めるには背中に背負うバックパック(ザック)が当然必要、というのが日本のトレイルランニングの常識だった。背中に荷物を背負うことを前提に、ドリンクはハイドレーションバッグにいれてバックパックの中に納め、行動食やランニング中に必要な小物を納める腰のポケットが便利だった。

しかし、2010年夏に腰のハーネスがなく、ベストのように着るバックパック・Salomon/Advanced Skin SLAB(キリアンザック)が登場してから、荷物を最小限に絞り、フィット感の高いベスト型のバックパックが人気を得るようになる。さらにアメリカのトレイルランニング事情から情報を得た人たちがハイドレーションバッグではなく、ハンドヘルドボトルをトレイルランニングで使い始めると、補給やメンテナンスが容易なボトルに注目が集まりはじめる。こうした文脈から、従来からあったNathanのギアや2012年にアメリカから登場した新ブランド・UltrAspireのバックパック、ファニーパック(腰につけるバッグ)、ハンドヘルド・ボトルは日本でも新たな注目を集めた。

山深く水を得られるポイントが限られる日本のトレイルやトレイルレースでは、容量の小さいバックパックやボトルでは対応できないことが多い。とはいうもの、何度もトレイルに入り、レースを走ったランナーであれば、どのような装備や補給があれば安全に行動できるか経験が教えてくれるようになる。その結果、従来のようなバックパックをいわれるがままに使う必要がない場面がわかるようになる。行動の仕方、トレイルの楽しみ方の選択肢が増えるのはすばらしいことだ。

2013年もトレイルランニングの経験を積んだランナーが増えてくることに対応して、ランニングのための装備の選択肢は増えてくるだろう。ボトルのようにシンプルな方向だけでなく、最小限のビバーク装備を持つファストパッキングのための装備のニーズも増えてくるだろう。個人的にはハンドヘルド・ボトルで身軽に走ることの魅力を仲間のランナーに伝えていきたい。

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