[DC] 2013年も欧州・米国で活発な交流、ISF会長マリノ・ジャコメッティ氏

昨年、2012年の世界のトレイルランニング・シーンを盛り上げるのに一役買ったのが、世界スカイランニング連盟(International Skyrunning Federation, ISF)のシリーズ戦・ (R) World Series(SWS)だった。

そのISFの会長、Marino Giacometti(マリノ・ジャコメッティ)氏が2012年を振り返り、2013年のスカイランニングとSWSについて語ったインタビュー記事が、スペインのトレイルランニングメディアに掲載され、ISFのサイトにも英訳が掲載されている。このインタビュー記事のポイントを紹介したい。

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世界のトレイルランニングのトレンドを取り入れて、80km、そして100マイルという従来のSWSにはなかった長距離のレースをシリーズ戦に組み込んだ背景、ヨーロッパとアメリカの有力選手が交流することで、アメリカでも欧州的な高山の急峻でテクニカルな山岳レースが開催される可能性があること(、Joe GrantやDakota Jonesはそれぞれのブログなどで欧州のスカイレースの魅力を綴っており、Dakotaが8月に開催しようとしているTelluride Mountain Runもその動きの一つだ)。さらには、スカイレースをオリンピック競技とすることにも関心を示している。

一方、日本やアジア・パシフィック地域については特段の言及がないのは寂しいところ。2013年がアジア・パシフィック地域も含めて盛り上がって行くことに期待したい。

元となるスペインのメディア・CARRERASPORMONTAÑAの記事とISFのサイトの記事は以下の通り。

Carreras por Montaña, la web del trail running
スペインのトレイルランニング・メディア、CARRERASPORMONTAÑAの記事。
What’s in store – 2013 and more
ISFの英語訳記事。

なお、今年2013年のSWSシリーズ戦の予定については下の当サイト記事をご参照下さい。

[DC] 100マイルレースが登場、アメリカのレースが増える・2013年のSkyrunner (R) World Seriesの年間スケジュールが発表 | DogsorCaravan.com

ISF会長、Marino Giacometti(マリノ・ジャコメッティ)氏インタビュー記事の要旨

(SWS)のフォーマット変更について

2013年のコースの距離別のカテゴリーのみのシンプルなランキングへの移行を見据えて、2012年のSWSから総合ランキングは残しながらウルトラ(80km以上のコースのカテゴリー)を新設する等の改革を進めてきた。

・2013年のSWSで100マイルレース(<アンドラ>)が初めて加えられたことについて

100マイルレースについてはその人気やレースの状況について関心を持っていた。しかし、選手の安全が十分に確保できるかを懸念してきた。ISFとしてもレースの主催者や選手と直接協力し、安全確保、準備、装備、競技規則などの知見を共有していくつもり。

・今後SWSに100マイルレースは増えていくか。

おそらく増えていくだろう。2014年のシリーズ戦について100マイルレースを増やすことも検討中。とはいえ、50kmのレースとは違い、選手が年間に走れる100マイルレースの数は限られる。ISFでは世界の代表的なレースの結果から集計する世界ランキングの対象レースにウルトラを20レース、スカイを20レース、バーティカルを10レース、指定する予定。

・2012年にウルトラのシリーズ戦をスタートしたことについて

ISFでは20年前からフルマラソン以上の距離のレースについても取り組んできた歴史がある。2012年のウルトラのシリーズ戦のうちTrofeo Kima(50k, イタリア)、Transvulcania(83km、カナリア諸島)についてはスカイランニングのコンセプトにぴったり合うレースだった。他の3レース(Speedgoat 50k<アメリカ>、Cavalls del Vent<スペイン>、Templier<フランス>)については主催者の考え方や悪天候から課題もあったように思う。いずれにしても、ウルトラのレースは発展途上にあり、選手の協力を得ながら正しい方向に進んでいると思う。

・ISFの足元の課題について

ISFは高山で開催するランニングレースでは唯一の世界的な競技団体。競技の発展のため、世界の選手、レース主催者、業界関係者の拠り所となることを目指している。

世界的に競技として成長しているが、山岳で開催されるという性質から安全確保と環境保護のため参加者数に上限を設けざるを得ない。観戦するスポーツにはなり得ないのでメジャーなスポーツとも競争しようがない。ISFも他の競技団体のように資金の援助を受けることは少ない。
競技としての成長を目指すには、現在の欧州でSalomonやThe North Faceが行っているような投資をより多くの業界各社に期待せざるを得ない。従来からあるスポーツ競技に支出してきた各社もアウトドアスポーツに目を向けつつある。例えば、Adidas、Asics、New Balanceなどだ。業界各社には選手がプロとして活躍できるようなサポートに投資することを期待したい。

アスリート委員会の発足について

世界的なトップ選手の有志で構成されたアスリート委員会を2012年に設立し、積極的に活動してもらった。重要なテーマについてISFの運営委員会の諮問に答えてもらっている。

・欧州以外への展開について

多くのアメリカの有力選手がSWSのシリーズ戦に参加するなど、大西洋をまたいでの交流は盛んになった。5月のカナリア諸島パルマ島でのセミナーでは若い世代のアメリカの選手はより急峻でテクニカルな山岳レースについて強い興味を持ってもらえた。これから数年のうちに、アメリカでもスカイランニングのコンセプトに則ったレースが開催されるだろう。無論、自然保護のルールに沿って森林管理当局の認可を得ながら進めて行くことになるだろう。

・スカイランニングのオリンピック競技化について

2008年の創設以来、ISFはオリンピック憲章に基づいて運営してきた。2011年7月のIOC委員との会談以降も、スカイランニングが山岳で開催される競技であることには何も見解は変えていない。短距離のバーティカルレースやビルの駆け登りレースならばオリンピックの競技形式に合うかもしれない。いずれにしても、50カ国の賛成が必要であり、早くても2020年か2024年の話になる。ISFからはIOCに対して冬季オリンピック大会のように「アウトドア・オリンピック大会」を開催することを提案している。アイディアは理解されているが、資金面の課題もあり、現時点では多くの関係者にとっての夢にとどまっている。あるいは一部の関係者にとっては悪夢なのかもしれない。

・SWSの次の目的

SWSを世界的なアウトドア・ランニングの標準として認知してもらうこと、100マイルレースやシリーズ戦に加わった新しいレースの認知度を高め、質の高いイベントを継続して開催していくことだ。2013年はチームでの参加やランキングに注目が集まるだろうし、世界の有力選手がスカイランニングの精神に刺激を受けて参加することを期待している。

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