感動の最終回まであとちょっと?まだ続きます。
(コース変更区間スタート)
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今回、2011年のUTMBでオリジナルのコースが変更されたのはは2カ所。いずれも直前の天候悪化に伴うトレイルの状況を考慮したもので、1カ所がコース最終版のVallorcineからフィニッシュ地点であるChamonixまで。Tete aux Ventsに登らず、谷を進むことに変更された。変更後の距離は約15キロ。こちらはレース当日の午前中にはアナウンスがなされていた。
もう1カ所がこれから進む124キロ地点のChampex lacからTrientまで。こちらはレース中に変更が発表された。UTMBより先にスタートしたCCCでも同じコース変更がなされたようだ。当方がコース変更を知った時点でわかっていたのは、Bovineへは登らず麓の街Martignyに下りて登り返すこと、コース全長が4キロ延びて170キロになること、だけだった。オリジナルのコースでChampex lac – Bovine – Trientは16キロほどなので変更後のChampex lac – Martigny – Trientは20キロほどか(実際には先のVallorcine – Chamonixの区間が短くなっていることもあって21.5キロほどあった)。
その程度の情報を元に午前3時20分にChampex lacのエイドを出発。名前の通りのシャンペ湖の湖岸を走るが湖面を吹く風は昨年同様に冷たい。しかし装備のせいか補給がうまくいっているせいか、気温がそもそも違うのか、昨年のような歯の根が合わない寒さは感じずにすんだ。
しばらくはオリジナルのコースと同様、緩やかな林道を行く。フランス人のランナーの集団に入って、前後しながらもゆっくりしたジョグのペースで走る。あとで地図上で確認したところでは5キロ弱進んだところでオリジナルのコースがBovineへの登りに入るのに対して、変更後のコースは谷に下りる。
コース上では確かに長い下りが続き、途中には道路を横切っては木段を下ることを繰り返すところがあった。地図をみれば明らかだが、これは谷沿いの車道がつづら折りになっているのをつづらの折れた箇所から次の折れた箇所へとたどっているためだ。
なお、コース上にはマーキングが完璧になされているので、全く地理感がなくても迷わずコースをたどることができる。
(Martignyはまだ?謎のコース)
やがて谷底に川が流れる街のようなところのロードに出て、Martignyについたと思った。そして谷を挟んで向かいの山へと登っていく。ああ、Trientへと登り返しているんだな、と思った。
長いストロークの直線的なつづら折りの車道を上り、それが後半は未舗装の林道のようになる。単調だが登りはきつい。このあたりでまたGarmin FR310xtの電池残量の警告が出たので、立ち止まって先ほどのようにGarminを腕から外してeneloopと繋ぎ、充電状態にしてジップロックのバッグに入れて手で持つ。
コースは登りから今度は斜面をトラバースするトレイルに変わった。それもかなり長い。進みやすいのでゆっくりだが走る。何人か抜いた気がする。いったん公園のようなところに出て、そこからは下りの方向にコース表示。Trientへと登り返しているんじゃなかったのか!その公園のようなところが既に通過してきたところのようにも思え、コースを間違えているあるいはループしているのかと思ったが、コース表示に沿ってみんなと一緒に下っていく。前をいくランナーに、「一体僕らはどこへ向かってるの?」と聞くと「Martignyだよ」という。周りのランナーもコースについてたずね合っている。トレイルの様子をみると少し急だが木立はよく手入れされているようだ。このあたりで周囲は明るくなってきたのでヘッドライトを片付ける。
下りきったところにまた街がある。線路を横切って進むとチェックポイントと小さなエイドステーション。午前6時45分に到着、Champex lacからは14キロ弱進んでいる。ここがMartignyなのだという。ええ〜。フランス人ランナーがここからどのようにTrientやCatogneに向かうのかと聞いているようだが、スタッフも詳細を把握しているわけではないようで要領を得ない。
あとで地図でGPSログを確認してみたところ、こういうことだ(下の地図参照)。我々がChampex lacから下りてたどり着いたMartignyだと思ったところはLes Valettesという小さな村だった。ここからは南西側へ谷沿いに進んで北へと回り込むとMartignyに着く。しかしそれでは面白くない(?)ので谷沿いに巻かずに登り上げ、山越えでMartignyに向かった。そんなことらしい。
コーラを飲み、防寒具のうちレインウェアのパンツだけは脱ぐ。ある程度充電できたGarmin FR310xtを腕につける。長居はせず、手持ちのジェルで補給しながら先へ進む。
(標高差1000m一気登り大会、これがバーティカル・キロメーター?、そしてTrientへ)
Martignyの街は標高500mくらい。ここから街の家並みの間を進む。相当な急坂なので舗装路であるがトレッキングポールを使ってノルディックウォーキングのようにしてゆっくり登っていく。やがて現れたトレイルは民家とブドウ畑の間の路地、農場の脇を流れる用水沿いのあぜ道、前半にも出てきたつづら折りの登り車道の折れた部分を繋ぐ急坂などを道路を渡りながら繋ぐというもの。アルプスの雄大な山容、植物も少なくなったトレイルとは全く違う人里のトレイル。しかも斜面に対してほぼ垂直に進むので傾斜を強く感じる。朝日は気持ちいいがこのような登りトレイルが延々と続く。周囲はペースが落ち気味だ。当方も辛いが、ステップを小さくしてリズムを維持して確実に登っていく。朝日に輝く草むらも美しい。
いくつかの街を経由したがまだ登りは続く。Trientは標高1300mのはずなのでもう着いてもいいかもと思うがまだまだ登りは続く。途中で地元の方がドライフルーツのアプリコットとブドウを用意しておられたのをありがたく頂戴する。
登り続けて標高1530m、La Forcrazまで到着してようやく登りは終了。地味とはいえ、実に標高差1000mを直登で一気に登ったことになる。レース後に地図上で確認したが、オリジナルのコースでBovineから下りてくるのもこの村だ。しばらくフラットな林道を南に進むと賑やかな歓声が下から聞こえてくる。今度は牛が鳴らしているカウベルの音ではないようだ。やがて右手に急なつづら折りの下りトレイルの入口。思い出した。ここを下りればTrientのエイドステーションだ。なかなか急な下りを慎重に下り、手前のトイレで用を済ませてエイドに到着したのは午前8時57分。Champex lacから実に5時間以上経っていた。
ちょうど行き違いでエイドを出ようとするキャットさんと会った。ここま来たけど膝が痛くて途中で止めるかもしれない、という。こんな時はいつもなら「無理しない方がいいよ」と応えるのだが、今回は「キャットさんらしくもない、ここまで来たら最後までがんばって」と応えた。このあと、彼のその最後のがんばり振りを見ることになる。
このコース変更区間については、車道を走ったり、単調な登りをひたすら登らせたり、偉大なアルプスとはほど遠い里山を登らせたりと、UTMBらしくないと不満も聞くが、当方としてはこれもまた面白いと思った。特に偶然ではあるが、コースの概要を知らないままの20キロ以上のコースはまるでミステリーツアーのようなおもしろさもあったと思う。