【編者注・先月開催されたウルトラトレイル・マウントフジ/ULTRA-TRAIL Mt.FUJI。今回は参加者の12%強が海外からの参加という国際的なイベントとなり、海外と日本の海を越えたトレイルランナーの交流の舞台ともなりました。
このうち、フランスから来日したLionel Trivel/リオネル・トリベル(Lafuma)、Antoine Guillon/アントワーヌ・ギィヨン(Lafuma)は、昨年の欧州での交流がきっかけで来日、日本のトレイルランナーのサポートを受けて今回UTMFを完走、アントワーヌが7位、リオネルが9位に入る快挙となりました。両選手をサポートした日本のランナー仲間である鶴橋美由紀さんからレポートを寄稿していただきました。アントワーヌとリオネルについては当方によるインタビューもご覧ください。】
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昨年2012年9月、イタリアのマラトラ峠で出会った日仏消防士の友情により、今回のサポートチームは結成された。3名の選手、7名のサポーター、2台の車の布陣。
Tor des Geants/トルデジアン(編者注・毎年9月にイタリア北部のヴァッレ・ダオスタ自治州で開催されるトレイルランニングレースで、距離は330km、累積高度24,00mD+、制限時間は150時間に及ぶ)でリタイアをしたShogo Mochizuki/望月将悟は、友人の応援の為コースを進むフランス人Lionel Trivel/トリベル・リオネルと出会う。彼らは、お互いに消防士だと分かり、すぐに意気投合した。
私はShogoから二人で楽しく話をしながらマラトラ峠まで走った事を聞く。
「Lionelは、もしかしたら日本に興味があるのかも?UTMFに出たいのかな?!」
ふと思った・・・。聞いてみよう。
Facebookでメッセージを送った。「日本で開催されるUTMFというレースを知っていますか?」「私は来年参加する予定です。」Lionelからの返事にはそう書いてあった。
それから約半年間、Lionelとメッセージのやり取りをし、UTMFでサポートをすることとなる。
Lionelはチームメイト(LAFUMA TEAM TRAIL France所属)のAntoine Guillon/ギィヨン・アントワーヌとその家族と共に日本にやって来た。数日間の東京滞在を楽しみ、レース会場の河口湖へ移動した。
サポートに関する打合せは、東京で1回とレース直前の確認のみ。(私はLionelのアシスタントを担当しており、エイド毎のドリンクや補給食について書かれたメモを貰い、簡単な説明を受ける)それ以外は、すべてメール等で対応した。
彼らのサポートを全力で行うため、我々サポーター陣は入念な準備を行ってきた。エイド間の移動ルートの確認、推定移動時間の計測等々。2台の車で3名の選手を追うため、万が一、3選手がバラバラに離れてしまった場合のシュミレーションも行った。選手がエイドに到着した時、我々が到着していないという事態だけは避けたいと思い、必死だった。が、彼らは「もし、自分達の到着に間に合わなくても、問題ないよ。その時は、エイドの物を食べるし、そこで水の補給もできる。」「僕達は、エイドではいつも笑顔でいるし、 急げとストレスを与えることもないよ。」とても寛大な二人に助けられ、サポーター陣もリラックスしてレースを迎えることができた。
彼らはいつもと変わらず、自分達の心地よいリズムで走り続けた。神秘的な日本のトレイル、そびえたつ富士山、満月の光により、凛とした山筋が美しく照らし出される。彼らの頭の中には、自然豊かな日本の姿がしっかりと記憶された。
彼らは、またエイドで日本食を楽しんだ。箸を使ってお雑煮を食べる彼らの姿は微笑ましかった。Lionelは初めて食べた餅に感動していた。
ShogoがA3でリタイアをした。彼のリタイアにLionelも大変残念がっていたが、彼がサポートチームに加わり、幾つかのアドバイスや自分達の為にたくさんサポートしてくれた事をとても喜んだ。
1年程前から、LionelとAntoineはレースで二人一緒に走るようになっていた。2012年TDS(終始、共に走り2位3位で仲良くフィニッシュ)、2012年のGrand Raid Réunion(膝のトラブルでLionelがリタイアをするまで、Antoineと共に走る)、そして2013年UTMFにおいても、自然なリズムで二人は共に走る。
「Allez Antoine!!」「Allez Lionel!!」
「Merci.」
彼らは笑顔と感謝の気持ちを伝えて、A10を出発する。
「私達はやれるだけのことはやったわ。あとは、二人がTOP 10に入るのを祈ってゴールで待ちましょう。」Antoineの妻Anne(アン)が言った。
21:04:44 Antoineが7位でゴール !!
約5分後、21:10:16 Lionelは9位でゴール !!
日本のトレイルの美しさ、オーガナイザーの素晴らしさ、ボランティアスタッフの素晴らしさ、そして我々サポートチームの素晴らしさを賞賛し、感謝の気持ちと共に彼らの冒険は終わりを迎えた。
レース翌日、コース上にある河口湖浅間神社の七本杉へ向かった。木が大好きなAntoineは大喜び。まだレースを続けている選手に「頑張ってください!!」とLionelが声を掛ける。
そんな光景を見て、私は今回のサポートを企画し、本当に良かったと思えた。こうして、彼らの冒険を共有するという我々の新しい挑戦は無事に終わった。
人との繋がりの大切さ、トレイルレースを愛する気持ちを再認識させられた。国境を越えたそれぞれの挑戦は、感慨深い思い出となった。今後、外国人選手を迎える事ができるプライベートサポートチームが増え、トレイルランニングを通じた国際交流が更なる発展を続けいていくと信じている。
追伸: レース後、二人はレースで共に走った距離を数えると決めた。UTMFを終えた現在、二人の走行距離427Km。「次回はTJARに参加する為に日本に来るよ。」そう言って、フランスへ戻った・・・。
(参考) Lionel TrivelによるUTMFレースレポート(Facebook)
(参考)Antoine Guillon/ギィヨン・アントワーヌがレース・ディレクターを務めるトレイルランニング・レース、Trail 6666 Occitane et Grand Raid Occitan。フランス南部、ラングドック地方のロクブルン/Roquebrunの町を基点に今年は5月31日から6月2日にかけて開催される。149km、119kmのコースの他、リレー形式でチームでも参加できる。
プロフィール・鶴橋美由紀(つるはし・みゆき)
2006年からトレイルランニングを始める。2008年12月から1年間、フランス料理の勉強と語学研修の目的で渡仏。シャモニーで欧州最大の山岳耐久レース『ツールド・モンブラン』に出会い、翌年(09年)cccクラス(98km)に選手として参加し20時間23分で完走。その後もTor des Geant/トルデジアンなど欧州のトレイルレースに出場するなど活躍を続けている。静岡県生まれ。