[DC] 上田瑠偉が7時間1分で大会新記録、女子はエイミー・スプロストンが優勝・第22回ハセツネCUP・日本山岳耐久レース 2014 リザルト #Hasetsune

Ruy Ueda Hasetsune Finish

今年も男子の大会記録が大幅に更新され、21歳の大学生・(Montrail / MountainHardwear)が7時間の壁に迫りました。新しいヒーローの誕生は日本におけるトレイルランニングの新時代到来を印象づける結果となりました。そして女子はアメリカのエイミー・スプロストン/(Montrail / MountainHardwear)が優勝しましたが日本の女子ランナーもエイミーに迫るレース展開でした。

台風19号が日本列島を縦断する前に開催、閉幕された日本山岳耐久レース(ハセツネカップ)は10月12日日曜日の午後1時にあきる野市の五日市中学校をスタート。当日スタートラインに立った2264人のうち、1922人がフィニッシュし、完走率は84.9%となりました。以下、上位選手のレース展開と順位・タイムをご紹介します。

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レース展開

超大型の台風19号が接近しているものの、その歩みの遅さが幸いして大会が開催された12日日曜日から13日月曜日にかけての東京・奥多摩は穏やかな天候となりました。レーススタート時の天候は曇り、気温は22℃程度。ランニングのレースにはベストに近いコンディションとなりました。

2014 Hasetsune Start

ハセツネが五日市中学校をスタート。

午後1時に五日市中学校をスタートすると上位選手は今年もスピーディな展開。醍醐丸/15.3kmでは昨年の大会記録ペースとほぼ同じペースで上田瑠偉東徹がリード。一分差でマックス・キング/奥山聡が続きます。上位陣はお互いの様子をみるようにCP1/浅間峠22.7kmへ。トップ到着の上田瑠偉のCP1到着タイム、2:14は大会記録を作った昨年のペースとほぼ同じ。さらに5番手からトップ20位くらいまでは各ランナーの間は狭く、互いの様子を見ながら抜きつ抜かれつの展開となります。浅間峠では、膝の故障が痛む山田琢也がリタイア。昨年2位の大杉哲也も胃腸の調子が優れない様子で勢いがなく、30番台を走ります。

Ruy Ueda Toru Higashi

スタートから5キロほどの今熊山を通過する東徹と上田瑠偉。(Photo by まめさん)

Ruy Ueda Sengen-Pass

浅間峠をトップで通過する上田瑠偉。

Max King Sengen-Pass

浅間峠を通過するマックス・キング。

レースが展開し始めたのは浅間峠を出て、日が暮れ始めた頃から。三頭山36.3kmからの下りで上田瑠偉が加速しはじめます。上田のCP2/月夜見42.1km到着は4時間18分。この大会発出場だった昨年に比べても表情には余裕があり、昨年の東徹の大会記録更新時よりも2分早いペースで単独で手早く給水を済ませて出発。月夜見に2番手で到着したのは奥山聡でトップの上田から4分差。上田の背後についていた東徹は3番手で2番手の奥山から8分ですが、給水所では今日は脚が重いと苦笑気味。さらに2分後に到着したマックス・キングも「Rough trail(きついトレイルだね)」と漏らし、足取りはやや重く見えました。さらにその後に奥宮俊祐、秋元祐介、小川壮太が続きます。

Ruy Ueda Tsukiyomi

CP2 / 月夜見に単独トップで現れた上田瑠偉。

上田瑠偉はCP3/御岳58.0kmに6時間5分と、昨年の東徹より11分も早く現れ、当サイトを驚かせました。このままフィニッシュまで快調な走りをみせるだろうと確信させる軽やかな走りでフィニッシュを目指します。CP3/御岳に続く奥山聡が現れたのは18分後で、そのとき既に上田は日の出山山頂を通過しています。このCP3/御岳までの区間で続く上位陣も明暗が分かれます。東徹、マックス・キングのペースが落ちて順位が後退。3位に奥宮俊祐、4位の東徹を挟んで5位に小川壮太が浮上。6位に秋元祐介を挟んでマックス・キングは7位に。

Satoshi Okuyama Mitake

御岳神社の参道を通過する奥山聡。

Max King Mitake

御岳神社の参道でのマックス・キング。

フィニッシュラインでは、スタートから6時間55分の午後7時55分に上田が金刀比羅神社(フィニッシュまで約1キロ)を通過したとのアナウンスが流れ、想定より早いフィニッシュに騒然とした雰囲気に。結局午後8時過ぎに7時間1分13秒で上田瑠偉がフィニッシュ。昨年、東徹が更新したばかりの大会記録(7時間19分13秒)を18分も短縮して、ギャラリーを驚かせました。21分後に2位の奥山聡がフィニッシュ。昨年の3位の奥山は今シーズンは脚の故障をきっかけに様々なケガに悩まされましたが、ようやく快復した夏以降に取り組んだトレーニングが実を結びました。3位には今回が9回目のハセツネとなる奥宮俊祐。今回のハセツネは何度も一緒にレースを走り、今夏マッターホルンで遭難した相馬剛のことを思いながら走ったとレース後に語りました。7時間28分は自己ベスト記録となります。

Ruy Ueda Hasetsune Finish

2014年のハセツネを7時間1分13秒で優勝した上田瑠偉。

Satoshi Okuyama Finish Hasetsune

2位でフィニッシュした奥山聡。

4位には東徹が続き、5位に小川壮太。そして6位には秋元祐介が表彰台を射止めました。秋元は21歳の自衛官で今年の北丹沢で2位となって注目を集める若いランナーです。7位に今年のUTMFで8位の小林慶太、8位にマックス・キング、9位に須賀暁、10位に牛田美樹が続きました。その他トップ20圏内では、ハセツネ上位常連で安定した実力の伊東努横内宣明が11位、12位に。昨年初出場で2位だった大杉哲也はCP2 / 月夜見で48位まで後退した後、21位まで順位を上げてフィニッシュしました。

女子では昨年優勝の大石由美子がケガのためこの日のレースを見送りました。また、女子上位常連の佐藤光子も走りながらのレース撮影となるため、上位を走ることはなさそう。結局、レースは序盤からエイミー・スプロストン/Amy Sprostonがリードします。しかし、わずか数分後に江田良子福田由香理山ノ内はるか大庭知子が僅差で続きます。CP1/浅間峠ではエイミー・スプロストンが方を並べるように走っていた福田由香理と大庭知子に7分のリード。江田良子は二人の3分後に続きます。CP2/月夜見でもエイミーの2番手・大庭知子へのリードは6分でまだ逆転の可能性はありそう。大庭から3分で福田由香理、江田良子が続きます。

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CP3/御岳をエイミーは8時間17分ほどで通過しますが、3分差で福田由香理が迫ります。福田に2位を譲った大庭知子は福田から15分後に御岳を通過。1分後に4番手で江田良子が続きます。

Amy Sproston Finish Hasetsune

女子で9時間31分で優勝したエイミー・スプロストン/Amy Sproston。

女子の優勝はアメリカのエイミー・スプロストン/Amy Sprostonが9時間31分18秒で手にしました。エイミーは昨年のハセツネで3位でしたが、トップを走っていたレース中に途中で眠くなる等して順位を落としていましたが、今年は昨年の経験からうまく学んで勝利を手にしました。2012年のIAU100km世界選手権優勝、2013年ウェスタン・ステイツ3位などの実力の持ち主です。2位にはエイミーから4分で福田由香理 。トップの独走を許さない粘りをみせました。3位には江田良子が入りました。2012年に2位となっているハセツネですが今年はこの日に向けた特別なトレーニングはしなかったといい、実力の高さを発揮しました。

4位には大庭知子、5位には。吉田は九州をベースに活躍するランナーで今年のSTYで2位となって注目されています。6位に鴨井夕子、7位に丹羽薫、8位に道田明子、9位に松浦真由美、10位に松井一葉が続きました。

リザルト

  • 大会公式のリザルトはこちら(男子女子

男子 / Men

  1. 上田瑠偉 / Ruy Ueda (Montrail / MountainHardwear) 7:01:13
  2. 奥山聡 / () 7:22:02
  3. 奥宮俊祐 / Shunsuke Okuyama (Montrail / MountainHardwear) 7:28:34
  4. 東徹 / Toru Higashi () 7:34:46
  5. 小川壮太 / Sota Ogawa (Salomon) 7:36:13
  6. 秋元祐介 / Yusuke Akimoto (La Sportiva) 7:43:48
  7. 小林慶太 / Keita Kobayashi (The North Face) 7:44:30
  8. マックス・キング / Max King (Montrail / MountainHardwear) 7:49:05
  9. 須賀暁 / Satoru Suga (The North Face) 7:51:57
  10. 牛田美樹 / Miki Ushida (Japan Skyrunning Team) 8:00:04
  11. 伊東努 / Tsutomo Ito (八百武) 8:01:19
  12. 横内宣明 / Noriaki Yokouchi (ハマーWAVE) 8:03:20
  13. 加藤昌文 / Masafumi Kato (La Sportiva) 8:03:41
  14. 森本幸司 / (GGRC熊本) 8:04:13
  15. 大瀬和文 / Kazufumi Oose (TEAM TARZAN) 8:04:28
  16. 荒木宏太 / Kota Araki (ASICS) 8:05:45
  17. 三浦裕一 / Yuichi Miura (Montrail / MountainHardwear) 8:06:09
  18. 渡辺裕治 / Yuji Watanabe (DMJ) 8:09:49
  19. 菊嶋啓 / Kei Kikushima (La Sportiva) 8:33:07
  20. 柳下大/ Dai Yagishita (TEAM 阿闍梨) 8:35:04
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女子 / Women

  1. エイミー・スプロストン / Amy Sproston (Montrail / MountainHardwear) 9:31:18
  2. 福田由香理 / Yukari Fukuda (Altra / RunField) 9:35:50
  3. 江田良子 / Ryoko Eda (RUN塾) 9:49:29
  4. 大庭知子 / Tomoko Ooba (霞ヶ関RC) 9:50:44
  5. 吉田広美 / Hiromi Yoshida 10:20:51
  6. 鴨居夕子 / Yuko Kamoi 10:20:54
  7. 丹羽薫 / (チームチョキ) 10:22:35
  8. 道田明子 / Akiko Michida 10:27:44
  9. 松浦真由美 / Mayumi Matsuura (白岡RC) 10:37:22
  10. 松井一葉 / Kazuha Matsui (M@平塚) 10:47:19
  11. 宮崎喜美乃 / Kimino Miyazaki 10:58:54
  12. 有間由佳 / Yuka Arima (有間窯業) 10:59:10
  13. 町田はるか / Haruka Machida 11:05:53
  14. 浅原里美 / Satomi Asahara 11:06:03
  15. 太田美紀子 / Mikiko Ota (京都炭山修行走) 11:18:12
  16. 野間陽子 / Yoko Noma (内田治療院RC) 11:31:14
  17. 中村久美 / Kumi Nakamura 11:32:08
  18. 山ノ内はるか/ Haruka Yamanouchi 11:33:03
  19. 湯浅綾子 / Ayako Yuasa (Inov–8) 11:36:20
  20. 熊谷知子 / Tomoko Kumagai 11:55:23

観戦記・新しいヒーロー、上田瑠偉の誕生とトレイルランニングに新世代の台頭を印象づけた一日

今年のハセツネは、21歳の大学生・上田瑠偉が日本のトレイルランニング界の新しい時代の始まりをもたらした日と記憶されるかもしれません。

Ruy Ueda Finish Line

フィニッシュ直後にレースを振り返る上田瑠偉。

上田瑠偉は高校駅伝の名門・佐久長聖高出身で現在は早大在学中。陸上競技同好会で走りながら、昨年トレイルランニングのレースにデビュー。初挑戦の昨年のハセツネでは序盤からトップ集団に食らいつく積極的な走りをみせて7時間45分27秒で6位入賞。その後、武田の杜やハセツネ30kで優勝していましたが、今年のハセツネで7時間の壁に迫る活躍をすることまでは予想できませんでした。普段は同好会の練習でトラックで練習することも多いという上田は、トレイルランニングといえば山岳での行動力や登り下りの強さといった陸上の長距離走とは違う能力がものをいうという常識を破る存在です。無論、上田は昨年のハセツネ以来多くのトレイルランナーと知り合い、様々なトレイルを経験しています。今回のハセツネはランニングのスピードと山岳行動の経験や能力がより高いレベルで結びつき得ることを証明する国内で初めての出来事といえます。

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6位の秋元祐介、14位の森本幸司、17位の三浦裕一、28位の鬼塚智徳もランニングあるいはその他の活動での経験をベースに、比較的最近トレイルランニングに取り組み始めている人たちです。こうしたランナーがこれからランニングと山岳行動を高いレベルで結びつける新しい世代として活躍することになりそうです。一方、奥宮俊祐や小川壮太のように日本のトレイルランニングをリードする存在のトレイルランナーが今回のハセツネでも活躍したことは、新しい世代の刺激を受けて日本のトレイルランニングの競技としてのレベルが高まっていくことを予感させます。こうしたレベルの高まりにより、大多数の一般的なランナーにはトレイルランニングの楽しみ方が増えることが期待できます。

Yusuke Akimoto Sengen

今回6位に入賞した秋元祐介。浅間峠にて。

Shunsuke Okunomiya Sengen

3位でフィニッシュした奥宮俊祐。9回目のハセツネ完走。

1993年にハセツネが初めて開催されて以来、2000年頃までの優勝タイムは9時間台ということもありました。その後は8時間台が優勝タイムとなり、2006年に沈在徳が初めて7時間台で優勝(ちなみに今年も沈は9時間38分でフィニッシュしています)。2009年に後藤豊が7時間31分48秒で7時間半の壁に近づき、それを破ったのは2012年のダコタ・ジョーンズ(7時間22分)。そして、昨年の東徹、今年の上田瑠偉が続けて大会記録を更新。ハセツネが引き続きトレイルランナーやトレイルランニングに興味を持つロードランナーの関心を集め続けるならば、ハセツネの大会記録はこの先も毎年のように塗り替えられるのかもしれません。

参考

当サイトによるレース中のライブ速報のログ

ライブ速報・第22回ハセツネCUP・日本山岳耐久レース 2014 – Togetterまとめ

謝辞

今回の当サイトによるハセツネのライブ速報には、Masakazu Sato, Chihiro Sato, Yuta Yamato, Tomoya Yazaki, Takahiro Watanabe, の皆さんに、グループに分かれてコース上で取材に当たっていただきました。また、通過状況について一部、「まめさん」より情報をご提供いただきました。皆さまのご支援がなければ今回のライブ速報は実現しませんでした。心より御礼申し上げます。

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