[DC] 奥宮俊祐、北島良子がともに初優勝・第23回ハセツネCUP・日本山岳耐久レース 2015 リザルト #Hasetsune

Okunomiya-finish-Hasetsune2015

トレイルランニングには絶好ともいえるコンディションの中、緊迫した優勝争いとなり見応えあるハセツネとなりました。今回が23回目となる日本を代表する71.5kmの長距離トレイルランニングイベント、日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)が今年も10月31日土曜日にあきる野・奥多摩山域(東京都)で開催されました。男子では奥宮俊祐 / Shunsuke Okunomiya (MountainHardwear / Montrail)が7時間40分31秒で、女子では北島良子 / Ryoko Kitajima (R x L)がそれぞれ優勝しました。

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MHW-montrail - logo「ミスターハセツネ」と呼ばれる奥宮はこれまでハセツネで2位に3回、3位に2回と上位の常連ですが今回が初めての優勝。北島良子も2011年から毎年ハセツネで表彰台に立つトップ6に入り続けてきましたが、今回が初優勝。男子は2位に三浦裕一 / Yuichi Miura(MountainHardwear / Montrail)、3位に奥山聡 / Satoshi Okuyama (Inov–8)が続きました。女子では2位に福田由香理 / Yukari Fukuda(Altra)、3位に高村貴子 / Takako Takamura (Tecnica)。ベテランも20代の若手もそれぞれに活躍するレースとなりました。

今年の当サイトのハセツネCUPのライブ速報はMountainHardwearmontrailのご協賛によりお送りしました。

レースの展開

ハセツネカップ今回のハセツネは、昨年、一昨年にそれぞれ優勝している上田瑠偉、東徹がそれぞれケガからの回復中、女子でも過去2回優勝の大石由美子が翌週のレースを控えて出場を見送るなど、出場を見送る有力選手が目立ちました。そうした中でどんなレースが展開されるのかに注目が集まりましたが、本番では中盤に順位が入れ替わる例年以上に緊迫したレースでした。

Start-Hasetsune2015

2015年のハセツネCUPのスタート。

男子では今回が10回目のハセツネとなる奥宮俊祐を先頭にした先頭集団が互いの姿を確認するようにレースをリード。CP1 / 浅間峠(22.7km)は昨年の上田瑠偉のタイムから8分遅れの2時間22分に奥宮俊祐が先頭で到着、続いて菊嶋啓 / Kei Kikushima、奥山聡、地下翔太 / Shota Jige小山真一 / Shinichi Koyama牛田美樹 / Miki Ushida土屋克則 / Katsunori Tsuchiya、三浦裕一の7人が切れ目なく続きます。奥宮は「途中で少しペースを落としてみたが、後続のランナーは前に出ようとしなかった」といい、互いの出方を伺いながら上位選手には控えめなペースで進みます。

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醍醐丸で先頭をリードする奥宮俊祐。

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醍醐丸で奥宮に続く菊嶋啓(手前)。

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醍醐丸での奥山聡。

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先頭集団で醍醐丸を走る三浦裕一(手前)、名取将大(中)。

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醍醐丸での沈在徳 / シン・ジェドク / Sim Jae Duk。

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醍醐丸でトップの北島良子。

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醍醐丸での高村貴子。

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醍醐丸での福田由香理。

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醍醐丸での鴨井夕子。

レースが展開し始めたのはCP2 / 月夜見第二駐車場(42.1km)に向かう途中。奥山聡や菊嶋啓など数人のランナーがペースを上げて、集団から先行し始めます。奥宮もその様子を確認してから、トップ集団から抜け出た選手を追い始めます。月夜見には4:41で奥山聡がトップで到着。その2分半後に奥宮、トップから4分後に三浦裕一が続きます。しかし奥山は「スタート直前まで体調は万全だったのに、実際にスタートしてみると少し走っただけで体が重く感じていた」といい、リードしていた御前山への登りも思うようにペースを上げることができず、奥宮に先頭を譲ります。

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月夜見の給水ポイントに2番手で到着した奥宮俊祐。

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月夜見に4位で到着の地下翔太。箱根駅伝で上武大のアンカーを走った経験を持ち、フルマラソンPRは2:17。

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月夜見に到着した加藤淳一。

結局、CP3 / 御岳(58.0km)では6:40で奥宮が続く奥山より6分早く通過。奥山のわずか30秒後には足取りの軽い三浦が続きます。そのまま奥宮俊祐が7:40:31でフィニッシュし、10回目のハセツネ完走で初優勝。これまで2位を3回、3位を2回という上位常連で毎回優勝候補として期待されていた奥宮の初めての優勝にフィニッシュラインに詰め寄せたギャラリーからは大きな歓声が上がりました。

Okunomiya-finish-Hasetsune2015

奥宮俊祐が2015年のハセツネCUPで優勝。

続く2位には三浦裕一でトップから7分差。昨年17位でハセツネにデビューし、今年は後半に良い走りをみせて2位をつかみました。3位には奥山聡。一昨年3位に続き昨年2位で歴代3位のタイムを持つ今回の優勝候補でしたが、この日は思わぬ苦杯を舐めることになりながらもトップ3入り。4位と5位には加藤淳一加藤昌文で、二人とも序盤は先頭集団を追わず、後半に順位を上げていくスマートなレースを見せました。6位の地下翔太は箱根駅伝の経験を持ちトレイルランニングは今シーズンからというランナー。終盤の金比羅尾根の下りで思うようにスピードに乗れず、両加藤に先を越されましたが御岳までは4位を走る健闘をみせました。7位から10位には伊藤健太 / Kenta Ito牛田美樹 / Miki Ushida沈在徳 / シン・ジェドク / Sim Jae Duk牧野公則 / Masanori Makinoが続きました。

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晴れやかな笑顔でフィニッシュ後のインタビューに応える奥宮俊祐。

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優勝した奥宮俊祐(左)と2位の三浦裕一(右)。大塚浩司を加えたチームmontrail/MountainHardwearが今年もチーム優勝。

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スマートな走りで4位に入った加藤淳一。

女子のレースは今回5回目のハセツネでいずれもトップ6の表彰台に立っている北島良子、22歳の大学生・高村貴子、今シーズンはITJやスカイランニング日本選手権・美ヶ原80k優勝で昨年のハセツネで2位の福田由香理の3人が優勝争いを繰り広げました。序盤の醍醐丸 / 15.3kmでは北島良子がリードし、高村、福田がそれぞれ北島から2分、4分の差で続きます。その後、「順位は考えずに自分のペースで走った」という高村が得意の登りパートで北島に追いつき、CP2 / 月夜見第二駐車場(42.1km)では北島に4分のリード。しかしエイドでの補給やトイレで月夜見を先に出てその後のリードを維持したのは北島良子。さらに福田由香理もCP3 / 御岳(58.0km)では高村を捉えて僅差で2位に浮上。

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月夜見に女子3位で到着した福田由香理。

そのまま北島良子が9:28:36で5回目のハセツネで初優勝をつかみました。6分後に2位で福田由香理がフィニッシュ。昨年は北島が3位に対して福田は2位でしたが今年は北島に先を譲る形となりました。3位にはトップから9分で高村貴子。4位以降は丹羽薫 / Kaori Niwa松井一葉 / Kazuha Matsui浅原かおり / Kaori Asahara鴨井夕子 / Yuko Kamoi齋藤美紀 / Miki Saito大庭 知子 / Tomoko Ohba佐藤光子 / Mitsuko Satoがトップ10に入りました。このうち松井一葉は2011年に50代になってからハセツネに挑戦し始め、2011年には3位。今回は5位でタイムは自己ベストとなる10時間切りと衰えぬ強さを見せました。

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北島良子が2015年のハセツネCUPで優勝。

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女子2位でフィニッシュした福田由香理。

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フィニッシュ後にインタビューに応える北島良子。

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女子4位でフィニッシュした丹羽薫。

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女子5位の松井一葉が醍醐丸を進む。57歳で自己ベストとなる9:58でフィニッシュ。

観戦記・ベテランの初優勝にスピードだけではないトレイルランニングの奥深さをみた

ここ数年のハセツネはスピードこそが優勝の鍵という新しい時代を迎えたかのようでした。特に男子のレースは2012年のダコタ・ジョーンズ(7:22:07)、2013年の東徹(7:19:13)、2014年の上田瑠偉(7:01:13)と毎回大会新記録が更新されています。そうした中で今回の2015年ハセツネCUPは東、上田をはじめとしてここ数年のスピード化を牽引してきたランナーの多くが出場を見送り、フィニッシュのタイムだけ見ればスピード化は一段落したようにみえます。その分、今回のハセツネCUPでは71.5kmという長いコースでいかに自分の力を発揮するか、という自らを律する力が問われることとなりました。これまでハセツネで何度も上位を走る経験を積み重ねてきた奥宮俊祐、北島良子がそれぞれ10回目、5回目の挑戦で初優勝を手にしたのは、経験を通じて鍛えられた自律力で秀でていたから、といえるでしょう。二人の他にも男子で4位、5位の加藤淳一、加藤昌文、女子5位の松井一葉も自律力でスマートな走りをみせました。

2015年ハセツネCUPの男子トップ6。左から2位三浦裕一、優勝の奥宮俊祐、3位奥山聡、4位加藤淳一、5位加藤昌文、6位地下翔太。

男子のレースでは序盤はハセツネのベテランで優勝候補の一人で会った奥宮を先頭とする集団が三頭山の手前まで続きましたが、上記レポートにもあるように奥宮がペースを抑えても前に出るランナーはいなかったようです。ここで自分のペースで前に飛び出していけるランナーがいたら、レースの展開は大きく変わっていたかもしれません。一方の奥宮は、三頭山あたりから奥山聡、菊嶋啓らが先に出てからもそのペースや御前山へと登るライトのわずかなブレから判断して自分のペースなら追いつけると考え、動じることはなかったといいます。

Women's podium Hasestune 2015

2015年ハセツネCUPの女子トップ6。左から2位福田由香理、優勝の北島良子、3位高村貴子、4位丹羽薫、5位松井一葉、6位浅原かおり。

スピード化で新時代を迎えたハセツネCUP。しかしフルマラソンの自己ベストや他のトレイルランニングレースの実績だけでは計れない、「山岳耐久」の名にふさわしい自らを律する力が問われることを改めて示したのが今年のハセツネCUPでした。今回、10回目の完走で「アドベンチャーグリーン」の称号もつかんだ奥宮は「これからもハセツネを走り続け、20回完走を目指す。そして盟友の相馬(剛)さんと同じように2回目の優勝に挑戦したい」と抱負を話しました。

Men's podium Hasetsune 2015

2015年のハセツネCUPでチーム戦で上位の3チーム。表彰台に上ったトップ6。優勝はチームMontrail/MountainHardwear(中)でメンバーは奥宮俊祐、三浦裕一、大塚浩司。 2位にチームinov-8 A(左)、3位にチームinov-8 B(右)。

一方で、今回のハセツネでも今後の活躍が楽しみな新しいアスリートが登場しました。男子では2位の三浦裕一、4位の地下翔太、7位の伊藤健太、10位の牧野公則、女子3位の高村貴子はこれからのハセツネCUPを始め、各地のトレイルランニングレースで注目を集めることになるでしょう。

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リザルト

全体のリザルト速報はこちら

男子 / Men
1. 奥宮俊祐 / Shunsuke Okunomiya (montrail / MountainHardwear) 7:40:31
2. 三浦裕一 / Yuichi Miura (montrail / MountainHardwear) 7:47:15
3. 奥山聡 / Satoshi Okuyama (Inov–8) 7:53:11
4. 加藤淳一 / Junichi Kato (MONTURA) 8:04:21
5. 加藤昌文 / Masafumi Kato (LaSportiva) 8:04:45
6. 地下翔太 / Shota Jige 8:06:02
7. 伊藤健太 / Kenta Ito 8:08:18
8. 牛田美樹 / Miki Ushida (Inov–8) 8:11:58
9. 沈在徳 / シン・ジェドク / Sim Jae Duk (Salomon) 8:16:45
10. 牧野公則 / Masanori Makino 8:19:25
11. 小山真一 / Shinichi Koyama 8:26:14
12. 柴田幸生 / Yukio Shibata 8:29:09
13. 吉田徹哉 / Tetsuya Yoshida 8:32:03
14. 佐藤岳人 / Takahito Sato 8:32:55
15. 伊東努 / Tsutomu Ito 8:33:05
16. 横内宣明 / Noriuchi Yokouchi 8:34:42
17. 細山雄一 / Yuichi Hosoyama 8:35:43
18. 渡辺裕治 / Yuji Watanabe 8:37:34
19. 吉田賢治 / Kenji Yoshida (LaSportiva) 8:39:49
20. 大河原斉揚 / Nariaki Okawara 8:40:48

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女子 / Women
1. 北島良子 / Ryoko Kitajima (R x L) 9:28:36
2. 福田由香理 / Yukari Fukuda (Altra) 9:34:11
3. 高村貴子 / Takako Takamura (Tecnica) 9:37:44
4. 丹羽薫 / Kaori Niwa 9:53:16
5. 松井一葉 / Kazuha Matsui 9:58:55
6. 浅原かおり / Kaori Asahara 9:59:57
7. 鴨井夕子 / Yuko Kamoi 10:19:13
8. 齋藤美紀 / Miki Saito 10:22:15
9. 大庭 知子 / Tomoko Ohba 10:31:35
10. 佐藤光子 / Mitsuko Sato 10:32:31

謝辞

今回のハセツネCUPのライブ速報をお送りするにあたっては、昨年に続いて佐藤正和さんとそのご友人にアドバイスとご協力をいただきました。さらに今回は国内外のトレイルランニングレースで活躍するアスリートの皆さんにゲスト・レポーターとしてアドバイスとご協力をいただきました。上田瑠偉大瀬和文小川比登美東徹宮崎喜美乃の皆さんです(五十音順)。さらに大会会場ではたくさんの皆さんから差し入れや励ましの言葉を頂戴しました。心より感謝いたします。

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