ペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trails 2017 プレビュー #UTWT

ご先祖様が街からかなたに見えるあのお山の上の教会まで一泊二日でお詣りした道。その古道をたどる旅が現代のトレイルランニング・レースとなったのがこの大会です。地中海に面したスペインのカステリョー・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Planaで4月22日土曜日に開催されるペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsは街からペニャゴロサ山へと登ってフィニッシュするコースで、115kmと63kmのレースが行われます。今年からUltra-Trail World Tourに加わり、さらに来年2018年はIAUトレイル世界選手権として開催されることが決まり、地元の熱意がどんどん高まっている大会です。日本からも大瀬和文 Kazufumi Ose吉原稔 Minoru Yoshiharaが参戦するこの大会を当サイト・DogsorCaravan.comが現地からリアルタイムでレポートをお送りします。(追記・MiM 62kmの有力選手を加えました。)


(写真・深夜0時にスタートし、闇の中で高度を上げていくランナーたち。Photo courtesy of Penyagolosa Trails)

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そもそも「ペニャゴロサ」とは何?

奥に見えるペニャゴロサ山への参詣道が大会のコースの元になっている。Photo courtesy of Penyagolosa Trails

この大会の舞台となるカスティリョン(バレンシア州カスティリョン県)は地中海の海岸に面すると同時に背後には高い山々が控えます。その中でも標高1814mのペニャゴロサ Penyagolosa(巨大な岩、の意)は周囲から独立した気高い山容を持ち、カスティリョンを代表するという山として愛されてきました。そのペニャゴロサの山中にあるサンホアン・ペニャゴロサ聖堂 Ermitorio de Sant Joan de Penyagolosaは14世紀から信仰の対象として親しまれ、地域の村々から山を登って多くの人たちが詣でてきたといいます。こうして「ペニャゴロサ参りの道」(Camins de Penyagolosa)と呼ばれる参詣道が生まれました。

こうした参詣道は時代が進むにつれて使われなくなり、その跡も忘れ去られそうになっていましたが、近年歴史ある古道を再生しようという地元に人たちの活動が活発になっています。地元ではペニャゴロサ参りの歴史と古道の周囲の多様な植生を持つ自然をユネスコの世界遺産として登録しようという機運が盛り上がっているそうです。

ペニャゴロサ参りをトレイルランニングで現代に復活

忘れられていたペニャゴロサ参りの古道を再生しようと地元の登山家やハイカーが立ち上がったのは1950年代のこと。古道をつないだカステリョー・デ・ラ・プラーナからペニャゴロサ山頂までのロングトレイルが生まれました。当時は途中で一泊して二日間の登山ルートでした。1990年代にはこのロングトレイルを1日で走るというイベントが生まれます。こうした試みを経て、1998年にMarató i Mitja(マラト・イ・ミトジャ、マラソン+ハーフマラソンの意)というトレイルランニング大会が生まれます。これがペニャゴロサ・トレイルズのMiM(63km)の始まり。2013年にはMiMのコースを元に距離を延ばしたCSP(115km)が誕生。地域の協力を受けてこの大会はどんどん成長を続け、2017年からのUltra-Trail World Tourへの加入、来年2018年のIAUトレイル世界選手権開催が決定。地域の皆さんに愛されるペニャゴロサをトレイルランニングを通じて世界の人たちに知ってもらおう、という地元の皆さんのあふれる熱意を感じます。

ペニャゴロサ・トレイルズのコースのイメージ図。赤線が元の参詣道にあたり、65kmのMiMのコース。緑がそれを元に115kmになったCSP. Image courtesy of Penyagolosa Trails

115kmのCSPと63kmのMiM

ペニャゴロサ・トレイルズのイベントのうち、Ultra-Trail World Tourのシリーズ戦、およびスペイン国内のレースからなるシリーズ戦であるSpain Ultra Cupの一つとなっているのが、115kmの「CSP」です。4月22日土曜日の深夜0時(日本時間同日午前7時)に海辺の街、カステリョー・デ・ラ・プラーナのハイメ一世大学のスタジアムをスタートし、ペニャゴロサの山中にあるサンホアン・ペニャゴロサ聖堂でフィニッシュするポイント・トゥ・ポイントのコース。カステリョンの山間の小さな村や町をつないで進んでいきますが、途中には5回ほど標高差400mほどの急な登りが含まれています。海辺でスタートして山でフィニッシュするので、累積獲得高度は5,439mD+となる一方、累積喪失高度は4,227mD-となります。制限時間は28時間。定員は600人です。

CSPのコースは海辺の街から山へと登ってフィニッシュする「登山競争」型のコース. Image courtesy of Penyagolosa Trails

大会の原型となったMiMの方は元の参詣古道に沿ったコースで、スタート地点、フィニッシュ地点はCSPと同じ。距離は63kmで累積獲得高度は3,045mD+となる一方、累積喪失高度は1,833mD-となります。スタートは4月22日土曜日の午前6時(日本時間同日午後1時)で制限時間は15時間。定員は1500人。このレースもSpain Ultra Cupの中距離カテゴリーのシリーズ戦の一つとなっています。

当サイトは現地からペニャゴロサ・トレイルズのCSPをライブ速報します。

当サイトではサハラマラソンに続いて、バレンシアを経由してカステリョーに移動します。ペニャゴロサ・トレイルズの開催を控えた街の様子をお伝えするほか、大会が開催される週末はコース上からライブ速報をお届けします。また、日本から参加する大瀬和文さん、吉原稔さんのインタビューもお届けする予定です。世界に向けておらが山を知ってもらおうと盛り上がるこの大会に密着してお伝えする当サイトのレポートをどうぞお楽しみに。

メインイベントとなるCSP 115kmのスタートは4月22日土曜日の深夜0時(日本時間同日午前7時)、トップの選手のフィニッシュは午後1時より少し前となりそうです。

ペニャゴロサ・トレイルズについての情報源には次のものがあります。

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今回の有力選手のご紹介

今年はこれまで以上に4月にUltra Trail World Tourのレースが集中するようになりました。ペニャゴロサ・トレイルズが開催される同じ週末にはマデイラアイランド・ウルトラトレイル MIUTが開催され、そちらに出る有力選手も多くなっています。しかしこのペニャゴロサのCSP 115kもかなり見ごたえのあるレースとなりそうです。日本の大瀬和文吉原稔を含む有力選手をみてみましょう。

Women / 女性

フランチェスカ・カネパ/Francesca Canepa

アメリカ・オレゴン州在住のジャネッサ・テイラー Janessa Taylorはもっぱらアメリカのレースを走っていてUTWTのシリーズ戦ではまだなじみがありません。しかしアメリカの100マイルのレースを16時間台で走って優勝していることからその走力の高さはうかがえます(2014年Mountain Lakes 100、Badger Mountain Challenge 2015)。今年に入ってからはSean O’Brien 100kで3位、4月に開催のAmerican River 50で優勝したばかり。今回、欧州でその実力を発揮すれば優勝争いに加わるでしょう。2012年、2013年のトル・デ・ジアン Tor des Geantsを連覇しているフランチェスカ・カネパ Francesca Canepa(イタリア)も今回のペニャゴロサにエントリーしています。長距離のトレイルレースに年間に10回以上走るというスタイルは今も変わらず、昨年はUTWTのシリーズ戦の100 miles of Istria、mozart 100(100k)で優勝、Eiger Ultra Trail(101k)で6位、4K Alpine Endurance Trail Valle de’Aostaで優勝といった結果を残しています。そしてスペインのジェンマ・アレナス Gemma Arenas Alcazarは昨年Transvulcania 73kで6位、Ultra Skymarathon Madeira 55kで優勝、High Trail Vanoise 67kで4位、スカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで9位、Ultra Pirineu 110k優勝、IAUトレイル世界選手権・Trans Peneda-Gerez 85kで5位と活躍が目立ちました。2月のTransgrancanariaは途中でリタイアとなったため、そこからのリカバリーが気になるところ。

この3人に加えて次の女子選手に上位入りが期待されます。

  • マリア・ピラ Maria Mercedes Pila Viracocha

    マリア・ピラ Maria Mercedes Pila Viracocha(エクアドル、スペイン在住):昨年のこの大会で女子優勝。今年はTransgrancanariaで6位に。このほか昨年2016年でTransgrancanariaのAdvanced 83kで3位、Gran Trail Peñalara 113kで優勝。

  • イルディコ・ヴェルミシャー Ildiko Wermescher(ハンガリー):今年2月のTransgrancanariaで5位。2016年Eiger Ultra Trailで4位、UTMBで7位。
  • ルチアーナ・モレッティ Luciana Moretti(アルゼンチン):2015年UTMBで6位、昨年2016年はTarawera Ultramarathonの62kで6位。2014年にはUTMFにも参加していて11位になっています。
  • シャリ・アドリアン Xari Adrian(スペイン):ペニャゴロサに115kmのCSPが誕生した2012年と翌年2013年に二連覇。2015年にも3位となっています。昨年2016年はトル・デ・ジアン Tor des Geantsで7位でした。

Men / 男性

ディドリク・ヘルマンセン Didrik Hermansen

男子のレースをリードするのはディドリク・ヘルマンセン Didrik Hermansen(ノルウェー)となるでしょう。今年に入って、1月のHK100で4位、2月のTransgrancanariaでは3位。そのほかでも2015年のLavaredo Ultra Trailで優勝、2016年のTransgrancanariaで優勝、ウェスタンステイツで2位でした。ロードのスピードランナーというイメージがありますが、最近のレースでは後半の粘り強さを発揮する機会が増えています。ヘルマンセンを迎えるのは昨年のCSP115kで優勝のセバス・サンチェス Sebas Sanchez(スペイン)です。昨年はスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで7位、Transgrancanaria 83kで優勝、Ultra Pirineuで6位とスペインの大会では上位に入る機会が増えています。ジェライ・デュラン Yeray Duran(スペイン)も昨年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで6位、TDSで2位。自らの地元であるTransgrancanariaで2014年に4位となって注目を集めました。今年2月のTransgrancanariaではリタイアしたためその事情が気になるところ。

ジェライ・デュラン Yeray Duran

セバス・サンチェス Sebas Sanchez

ティム・オルソン Timothy Olson

そしてフルビオ・ダピ Fulvio Dapit(イタリア)も今回のペニャゴロサにエントリーしていてます。昨年のMIUT 115kで6位、スカイランニングのレースであるHigh Trail Vanoiseで4位、Trofeo Kimaで11位でした。2月のTransgrancanariaを10位でフィニッシュしているティム・オルソン Timothy Olson(アメリカ)もまたこのスペインでの大会に参戦します。2012年、13年のウェスタンステイツ優勝で大会記録保持者、2013年UTMBで4位のティム・オルソンはスペインでもよく知られる人気のアスリートです。

このほか次の選手たちも上の5人に迫る活躍が期待できそうです。

  • ミゲル・サンチェス Miguel Angel Sanchez Cebrian(スペイン):昨年のペニャゴロサではMiM65kmで優勝。スペイン国内の50-60kmくらいのレースで上位を重ねていますが。今回は100kmを超えるレースへの挑戦となります。
  • レミ・クエラル Remi Queral(スペイン):昨年のこの大会、CSP115kmで2位。こちらはスペインの100km超のレースを中心に走っていて、Gran Trail Peñalara(112k)やHaria Extreme(100k)で昨年優勝しています。
  • マルコ・ザンチ Marco Zanchi(イタリア):2016年はLavaredoで8位、UTMBで11位、レユニオン Diagonale des Fousで9位など。
  • ケイシー・モーガン Casey Morgan(イギリス):今年2月に香港で開催された 9 Dragons Ultra 50/50で優勝。昨年はUltra Sierra Nevada 100kで3位、Ecotrail Funchal Madeira 80kで2位になっています。
  • ビクター・ベルナド Victor Bernad-Blasco(スペイン):2015年のペニャゴロサのCSP115kmで優勝、昨年は3位。昨年のUTMBでは23時間53分で13位。
  • ジャン・ホセ・ラロッチャ Juan-Jose Larrotcha(スペイン):2016年UTMBで24時間35分で15位。2015年のTDSで10位。
  • 大瀬和文 Kazufumi Ose(日本):国内外のレースを精力的に走っています。最近の海外でのリザルトはHong Kong 100で昨年7位、今年16位、今年2月の9 Dragons Ultra 50マイルで優勝。昨年12月のTNF 100 Hong Kongで8位。UTMBは2014年に24時間31分で22位、UTMFでは2015年に6位。昨年のOSJおんたけ100マイルで優勝しています。
  • アレハンドロ・フラグエラ Alejandro Fraguela Breijo(スペイン):2016年Ultra Sierra Nevada 100kで2位、Haria Extreme 100kで4位。
  • 吉原稔 Minoru Yoshihara(日本):昨年は奥三河70kで大瀬和文を上回る2位、OSJ奥久慈50kで優勝、神流50kソロで2位。海外ではIAUトレイル世界選手権・Trans Peneda-Gerez 85kでは75位にとどまりましたが、12月のスカイランニングアジア選手権・MSIG Lantau 27kでは4位に入っています。
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大瀬和文 / Kazufumi Ose

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吉原稔 / Minoru Yoshihara

MiM(62k)の有力選手

CSPが深夜0時にスタートしたのち、午前6時にMiMのレースがスタート。有力選手は次の通りです。

Men / 男性

  • マヌエル・メリラス Manuel Merillas (スペイン):昨年のゼガマ・マラソンで4位。スカイランニングでの活躍が著しい若手です。
  • ソンドル・アムダール Sondre Amdahl (ノルウェー):今年は4月のAntelope Island Buffalo Runの50マイルで優勝。
  • ロビー・ブリトン Robbie Britton (イギリス):最近は2015年のTarawera Ultramarathonで7位。
  • ダニ・サンタナ・ガルシア Dani Garcia (スペイン):スペイン国内の40-60kmのレースで実績豊富。

Women / 女性

  • アサラ・ガルシア Azara García (Spain)(スペイン):今年2月のTransgrancanariaで優勝。
  • マイテ・マイオラ Maite Maiora (Spain) (スペイン):昨年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kで優勝。
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