2017年 TDS®︎、OCC、CCC®︎ プレビュー #UTMB17

UTMB-2016-logo-ColumbiaUTMB®︎が事実上の世界選手権として注目を集めるようになって久しく、最近では他にも魅力的で人気の高いトレイルランニング・イベントが各地にあらわれています。それでもトレイルランニングに関心のある人にとって毎年のUTMB®︎は必ず耳にする話題でしょう。ランナーとして世界を代表する山岳エリアで自分の力を試したい人、ましてや世界のトップレベルのアスリートたちとそうしたい人にはなおさらUTMB®︎は気になる存在に違いありません。

今年も8月28日月曜日のPTLのスタートでUTMB®︎は開幕。9月1日金曜日にスタートする171kmのUTMB®︎に加えて4つのイベントが開催されます。この記事ではこれらUTMB®︎の姉妹レースのうち、119kmのTDS®︎、56kmのOCC、101kmのCCC®︎について注目選手を紹介します。171kmのUTMB®︎については明日以降、ご紹介する予定です。

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(写真・2016年CCCのスタート。Photo by Koichi Iwasa of DogsorCaravan.com)

当サイトはUTMB®︎の大会メディアパートナーとして今年のUTMB®︎を現地で取材します。有力選手のインタビューや、UTMB®︎だけでなく、各姉妹レースについても会場やコース上から大会の様子をお伝えします。大会期間中は当サイトの記事のほか、速報についてはTwitterアカウント / @DogsorCaravanFacebookページもあわせてご覧ください。

今回のUTMB®︎について大会パートナーのColumbia MontrailMountainHardwearのご協賛によりレポートをお送りします。

UTMB®︎で開催される主なイベントとその日程については当サイトの記事をご覧ください。

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15回目となるUTMB®が来週開幕、当サイトも現地からレポートします。 #UTMB17

2017.08.22

UTMB®︎の女子、男子有力選手については、次の当サイトの記事でご紹介しています。

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2017年 UTMB®︎ プレビュー(女子) #UTMB17

2017.08.24

2017年 UTMB®︎ プレビュー(男子) #UTMB17

2017.08.25

TDS®︎

8月30日水曜日午前6時(日本時間同日午後1時)にイタリア側のクールマイユール CourmayeurをスタートするTDS® (Sur les Traces des Ducs de Savoie)は2009年に第一回のレースが開催されました。クールマイユールからモンブランを時計回りに進んでシャモニーへと向かう119km 7,250mD+のコースは、171kmのUTMB®︎と重なる部分は少なく、UTMB®︎以上に急登や岩場が多くなっています。

TDS®︎のコース概要。

今年はUltra-Trail®︎ World Tourの”Pro”レーベルのレースとなったTDS®︎には、例年以上に有力選手が集まります。距離こそUTMB®︎より短いですがUTMB®︎より山岳的な要素が強いレースをリードしそうな選手の顔ぶれをみてみましょう。

女子 Women

ミンミ・コトカ Mimmi Kotka (スウェーデン)は昨年のCCCで優勝、2位のジョー・ミーク Jo Meekとは37分の大差でした。今年に入ってからは6月の80km du Mont-Blancで優勝、7月のスカイランナー・ワールドシリーズ(SWS)のHigh Trail Vanoise 70kで3位、その3週後のSwiss Alpine Marathon 47kで優勝、と好調です。100kmを超えるレースは初めてとなりますが、今年のTDSの女子優勝を掴む可能性は高いでしょう。

2016年のCCCで優勝したミンミ・コトカ Mimmi Kotoka。

オーストリアのルーシー・バーソロミュー Lucinda Bartholomew (オーストラリア)は21歳の若さですがウルトラマラソンの記録は16歳まで遡ることができ、経験は豊富。2016年はオーストリアのスカイランニングの大会、Buffalo Stampede 75kで優勝、中国・ゴビ砂漠のDevil’s Ridge Ultra 70kで優勝、ヨーロッパのMatterhorn Ultraks 46kで9位に。今年は5月に雨でコース変更となったUltra-Trail Australia 100kで優勝したのち、6月に80km du Mont-Blancでミンミ・コトカに23分差の2位となっています。再びモンブランでミンミ・コトカとリードを争うことになるかもしれません。

CCCで2008年に2位、2010年に優勝、2011年UTMBで5位、2012年CCCで3位となっているモー・ゴベール Maud Gobert(フランス)はUTMBだけでなく様々なレースで活躍しているベテラン。今回のTDSが天候などで厳しいコンディションとなった場合は経験がものをいう展開となるかもしれません。最近では2016年のHigh Trail Vanoise 67kで2位、スカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで4位、トレイル世界選手権・Trans Peneda Geres 85kで14位、今年6月のLavaredo Ultra Trail 120kで4位となっています。

Dong-Li-Square

ドン・リー / Li Dong

優勝争いに加わりそうなトップ選手としては中国のドン・リー Dong Li(中国)の名前も挙がります。2015年はスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで2位、Transgrancanaria 130kで3位、TNF100 Australia 100kで優勝、2016年はHong Kong 100で優勝、80km du Mont-Blancで3位と目覚ましい活躍でしたが、その後はケガのせいかレースでは実力を発揮できていません。今年4月のTsaigu 50kではチームサロモンのイーダ・ニルソン Ida Nilssonなど3人に遅れをとって4位という結果でした。今回のTDSのスタートラインに不安なく立てるようであれば、上位に入るに違いありません。

キャスリン・ゲッツ Kathrin Götz(スイス)が長距離のトレイルランニングレースを走るようになったのは昨年からですが、7月のEiger Ultra Trail E101で2位、Swissalpine Marathon 78kで5位、トレイル世界選手権・Trans Peneda Geres 85kで6位という実績を残しています。ただ、今年に入ってからは目立った記録がなく、5月のトレイル世界選手権・Trail Sacred ForestsではDNFとなっており、こちらもTDSのスタートラインに立てるかは本人のコンディション次第かもしれません。

上記の選手に続いて、トップ10入りが見込まれる有力選手は以下の皆さん。

  • マリー・マクノートン Marie Mcnaughton (香港在住、ニュージーランド) : 今年のHong Kong 100で3位、9 Dragons Ultra 50/50、Translantau 100、Korea 50kで優勝、Ultra-Trail Australia 100kで11位、Eiger Ultra Trail E101で5位。昨年のUTMB®︎では15位。
  • リサ・ボルザニ Lisa Borzani (イタリア): 今年のLavaredo Ultra Trailで3位、Andorra Ultra Trail 170kで優勝、トレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsで24位。
  • メラニー・ルセ Mélanie Rousset (フランス): 今年のTransgrancanariaで3位、2015年UTMB®︎で9位。
  • イルディコ・ヴェルミシャー Ildiko Wermescher (ハンガリー): 今年のTransgrancanariaで5位、Penyagolosa Trails CSPで4位、Western Statesで8位、High Trail Vanoise 68kで8位、Swissalpine T133で2位。UTMB®︎では2014年に6位。
  • ソニア・ロカテッリ Sonia Locatelli (イタリア): 2016年OCCで3位。
  • ララ・クリヴェリ Lara Crivelli (イタリア) : 2016年OCCで2位。
  • 上宮逸子 Itsuko Uemiya(日本): 2015年STYで3位、2016年はOSJ新城32k、OSJ山中温泉75kで優勝、峨山道76kで2位、2017年OSJ新城32kで2位。
  • 黒田清美 Kiyomi Kuroda(日本): 2015年UTMFで7位。
  • 湯浅綾子 Ayako Yuasa(日本): 白馬国際50kで2014年優勝、2015年2位、2016年3位。2017年OSJ奥久慈59kで2位。
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男子 Men

Antoine-Guillon-face

アントワン・ギュイヨン / Antoine Guillon

アントワン・ギュイヨン Antoine Guillon (フランス)といえば、レユニオン・Diagonale des Fousでは毎年上位常連で2015年に優勝するなど、距離が長く、そしてテクニカルなトレイルになっても常に大きく崩れることのない安定したパフォーマンスをみせるトレイルランナー。UTMB®︎には2005年に4位となってから2011年に8位となるまで6度完走してからは、TDSを2012年(3位)、13年(2位)、15年(3位)と走っています。47歳の今年、TDSで優勝することになればベテランの活躍が大いに話題となるでしょう。今シーズンは4月にMIUT(マデイラ)82k、7月にAndorra Ultra Trail・Ronda dels Cims 170kでそれぞれ優勝しています。

昨年のCCCで終盤に上田瑠偉に追われながらも優勝したミシェル・ランヌ Michel Lanne (フランス) は今年はTDSにエントリーしています。本格的な山岳コースを得意とするランヌにとってはTDSは持ち味を活かせるコースといえるかもしれません。最近では昨年のTrail des Aiguilles Rouges 51kで優勝、今年5月のMaxi-Race 83kで2位、そして今月のTromsø Skyrace 57kでは3位となっています。100kmを超えるレースにはあまり出ていませんが、レユニオン・Diagonale des Fousで2011年、2015年(ともに7位)に完走しています。

昨年のCCCで優勝したミシェル・ランヌ Michel Lanne。

Daniel-Jung-square

ダニエル・ユング Daniel Jung

イタリアの大会で活躍していたダニエル・ユング Daniel Jung(イタリア)は昨年のTransalpine Run 250kで優勝してから、その名前を世界的な有力選手として聞く機会が増えました。今年に入ってからはHong Kong 100で2位、MIUT 112kで6位、Transvulcaniaで5位、Eiger Ultra Trail E101で5位となっています。初出場となるUTMB®︎のレースでも上位が期待されます。

フルビオ・ダピ Fulvio Dapit (イタリア)はヨーロッパのスカイランニングのレースで活躍していましたが、ここ数年はより距離の長いトレイルランニングの大会に出るようになって実績を残しています。2016年にはMIUT 115kで6位、High Trail Vanoise 67kで4位。今年の夏はLaveredo Ultra Trail 119kで4位、Eiger Ultra Trail E101で7位。今回は意外にも初めてのUTMB®︎参戦となります。

ネパールのサミル・タマン Samir Tamangは2014年のTDSで優勝したグザビエ・テベナールに35分差で2位となっています。その後は2015年のスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで優勝、オーストラリアのBuffalo Stampede 41kで4位、今年のUltra-Trail Australia 50kで優勝。2014年のような走りをみせるなら、今回のTDSでも優勝争いに絡んでくる可能性は高いでしょう。

パブロ・ヴィラ Pablo-Manuel Villa-Gonzalez (スペイン)は28歳で最近はもっぱらスカイランニングの大会で活躍していて、例えば昨年はZegama-Aizkorriで11位、Livigno Skymarathon 34kで5位、Matterhorn Ultraks 46kで7位、Limone Extreme 25kで6位。今年はトレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsで10位になっています。しかし、2012年にTDSに出場していてその時は優勝したダワ・シェルパに63分差で4位。5年ぶりのTDSで上位をねらってくるかもしれません。

上記の選手に続いて、男子トップ10入りが見込まれる有力選手は以下の皆さんで、すでに各地の大会で実績を持つアスリートが揃います。

  • クレマン・モリエ Clément Molliet (フランス) : 昨年のCCCで4位、Trail Aiguille Rouges 51kで2位。
  • ヴァンサン・ヴィエ Vincent Viet (フランス): 昨年のCCCで5位、Maxi-Race 82kで2位、Templier 76kで6位。
  • エルネスト・アウシロ Ernest Ausiro Subirats (スペイン): 2016年Ultra Pirineuで5位。
  • フランチェスコ・ロドリゲス Francisco Javier Rodriguez Bodas (スペイン) : 2014年TDSで4位、昨年のUTMB®︎で12位。
  • ポール・ギブリン Paul Giblin (アメリカ在住、イギリス): 2016年Western Statesで5位、UTMB®︎で17位。
  • シルバン・カミュ Sylvain Camus (フランス): 2016年Mont-Blanc Marathon 42kで7位、レユニオン・Diagonale des Fousで8位。
  • サシャ・デリバズ Sacha Devillaz (フランス): 2015年CCCで3位、2016年80km du Mont-Blancで5位、今年のMaxi-Race 83kで優勝。
  • ホーキン・ガライ Jokin Garai (スペイン) : 2015年Ehunmilak G2H 91kで優勝。
  • エマヌエーレ・ルドヴィシ Emanuele Ludovisi (イタリア): 今年のVibram Maremontana 60kで2位。
  • マルコ・ザンチ Marco Zanchi (イタリア): 2016年UTMB®︎11位。
  • イオン・アスピロス Ion Azpiroz (スペイン): 2015年UTMB®︎13位。
  • パトリック・ヴェルメ Patrik Verme (スウェーデン): 2016年Swiss Irontrail T121で2位。
  • ポール・テラノヴァ Paul Terranova (アメリカ): 2016年 Quicksilver 100kで優勝、Bandera 100kで2015年2位、2016年3位。2016年Western Statesで16位。
  • フランシスコ・メンドーサ Francisco Mendoza Guil (スペイン): 2016年Ultra Sierra Nevada 63kで2位。
  • アンドリュー・タッキー Andrew Tuckey (オーストラリア): 2014年UTMB®︎6位、2015年Western Statesで9位。
  • フレデリック・デスプランチェ Frédéric Desplanches (フランス): 2014年Templiers 100kで2位。
  • デヴィッド・ジャーカー David Jeker (カナダ): Ultra-Trail® Harricana Du Canada 125kで優勝。
  • 大瀬和文 / Kazufumi Ose

    大瀬和文 Kazufumi Ose (日本): 2014年UTMB®︎で22位、2015年UTMFで6位。2016年にHong Kong 100kで7位、トレイル世界選手権・Trans Peneda-Geres 85kで30位。今年はHong Kong 100kで16位、9 Dragons Ultra 50mileで優勝、Translantau 50k優勝、Penyagolosa Trails CSPで8位、Ultra-Trail Australia 100kで9位、スカイランニング日本選手権・美ヶ原80kで3位。例年より層の厚いTDSですがトップ10入りに期待です。

OCC

UTMBの5つのレースの中では最も距離が短く、後発のレースが56km 3,500mD+のOCC (Orsières Champex Chamonix)です。スタートは8月31日木曜日午前8時15分(日本時間同日午後3時15分)です。スタートはスイスのオルシエール Orsièresで、ここから約10kmはロードやダブルトラックのトレイルでUTMB®︎やCCCのエイドとなるシャンペ Champex-Lacへと登ります。以降のコースは概ねUTMB®︎と同じですが、コル・デ・モンテ(37.5km)から先の49km地点・フレジエール FlégèreまではUTMB®︎とは異なります。

OCCのコース概要。

56kmという距離は171kmのUTMB®︎への入門編、あるいは一部を体験するという意味合いもあるでしょうが、年々この距離を得意とするアスリートやこれまでにUTMB®︎の他のレースで活躍し、今回はあえてOCCを選んだアスリートも増えており、レースとしてのレベルは上がっています。

女子 Women

スティービー・クレマー / Stevie Kremer

OCCの女子のレースはかなり豪華な顔ぶれです。2013年、2014年にスカイランナー・ワールドシリーズのSkyカテゴリーの年間チャンピオンとして活躍したスティービー・クレマー Stevie Kremerが今回のOCCにエントリーしています。2015年はKendall Mountain Run 19kで優勝、Sierra-Zinal 30kで4位、Matterhorn Ultraks 45kで2位、Run the Rut 25kで6位に。2016年はレースの数が減りましたが、Olympus Marathon 42kで優勝、Sierra-Zinal 30kで7位、今年のBroken Arrow Skyrace 52kでは2位でした。クレマーもUTMB®︎のレースは初めてで、ケガなどなければ優勝に一番近いところにいるといってよさそうです。

20130831-Rory-Bosio-UTMB

2013年UTMBで女子優勝、男女総合で7位でフィニッシュしたRory Bosio / ローリー・ボジオ。

アメリカのローリー・ボジオ Rory Bosioは2013年、2014年のUTMB®︎を連覇、特に2013年は男女総合7位となる快挙でUTMB®︎の歴史に名を刻んだランナーです。以後はレースから少し距離をおいていて2016年にLavaredo Ultra Trail 122kで14位、今年は6月にアメリカのスカイランニングのイベント、Broken Arrow Skyrace 52kで5位、7月にTahoe Rim Trail 50mileで男女総合優勝といった記録を残しています。OCCの結果にかかわらず今回の話題の選手です。

2012年から2015年までスカイランナー・ワールドシリーズのUltraカテゴリーの年間女王の座を譲ることのなかったのはエメリー・フォレスバーグ Emelie Forsberg (スウェーデン) です。ケガをしてからはあまりレースには出ていませんが、2016年にはアメリカ・コロラドのKendall Mountain Run 19k、イタリアのテクニカルな山岳レース、Trofeo Kima 52kで優勝。今年はZegama-Aizkorriで8位になっています。今回のOCCで初めてUTMB®︎のレースを走ることになりますが、まだ本来のパフォーマンスには届かないのかもしれません。

フランスのアマンディーヌ・フェラート Amandine Ferratoは30-50kmのレースに強いアスリートで今年のトレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsではトップとわずか3秒差という接戦で2位となっています。今年は8月にSierra-Zinal 30kで3位になっており、上記の有名選手を制してOCCを制する可能性は十分にあります。

イングビルド・カスペルセン Yngvild Kaspersen (ノルウェー)はトレイルのレースを走るようになったのは2015年から。しかし2016年にはZagama-Aizkorriで優勝、Run the Rut 28kで2位、Templiers 76kで2位に。現在22歳という若さの勢いが手伝えば、今回リードを争うことも期待できそうです。

今回のOCCには日本から吉住友里 Yuri Yoshizumiが参戦します。昨年からバーティカル・キロメーターに集中して取り組み、2016年のスカイランナー・ジャパンシリーズ、VKカテゴリーでは参加した4レースで全て勝利し、12月のスカイランナー・アジア選手権・MSIG Lantau VKで優勝、5月のTransvulcania VKで優勝と世界に挑むバーティカルの女王として注目を集めています。VK以外でも、2016年は比叡山50kで圧勝、先月の富士登山競走では3時間切りまであと少しという好タイムで優勝しています。その吉住が普通のトレイルランニングのレースで走った記録というと昨年のトレイル世界選手権・Trans Peneda-Geres 85kで13位、優勝タイムから80分というものです。ただ、このバーティカルの女王のトレイルレースでの実力はこの世界選手権では十分発揮されなかった、とみた方がよいように思えます。参考までに2014年に3時間11分44秒で富士登山競走の女子チャンピオンとなったルース・クロフト Ruth Croftは翌年のCCCで男女総合8位となるタイムで優勝しています。そうすると、吉住がOCCの表彰台に立つ可能性が高い、と考えられる理由は十分にあるといえます。

今年の富士登山競走で優勝した吉住友里 Yuri Yoshizumi。

そのほか、女子選手では次のような選手が上位を走りそうです。

  • エミリー・ピーターソン Emily Peterson (アメリカ): 2015年TNF 50mileで5位、今年3月のMarin Ultra Challenge 50kで男女総合4位で女子優勝。
  • アニー・コンウェイ Annie Conway (イギリス): 2016年WMRAマウンテンランニング長距離世界選手権・Podbrdo 40kで優勝。
  • マルタ・モリスト Marta Molist (スペイン): Matterhorn Ultraks 46kで2015年に5位、2016年に6位。
  • エリ・ゴードン Eli Gordon Rodriguez (スペイン): 2017年Zegama-Aizkorriで11位。
  • サリー・フォウセット Sally Fawcett (イギリス): 2015年Lakeland 50mileで男女総合4位で優勝。

男子 Men

マルク・ラウエンスタイン Marc Lauenstein (スイス)は欧州を中心に30-40kmのトレイルレースで第一人者として活躍するアスリートで、ズバリ今回のOCCでは優勝候補の筆頭といえます。Marathon du Mont-Blanc 42kではキリアンが優勝した2014年、今年はそれぞれ4位でしたが2015年には優勝。Sierra-Zinalは2013年に優勝。Zegama-Aizkorriは2016年に2位、今年は3位。アメリカのPikes Peak Ascentで2010年に2位、2014年にMarathonで優勝。ちなみにAscentのタイムは2時間12分で宮原徹が翌年優勝した際のタイムを3分上回ります。

そのラウエンスタインに挑む選手の筆頭は日本の上田瑠偉 Ruy Uedaということになります。ハセツネCUP大会記録保持者であり、日本のトレイルランニング界のプリンスは昨年のCCCで2位となる快挙を成し遂げ、世界のトップ選手の仲間入りを果たしました。その後の上田は昨年10月のTempliers 76kは21位に止まりましたが、4月のKorea 50kでは圧勝、ラウエンスタインが3位となったZegama-Aizkorriでは8位に。7月にはDolomites Skyraceで9位、Skyrace Comapedrosaで3位となっています。昨年のCCCでみせた後半の粘り強い走りが今年もできれば、今回のOCCでも表彰台、それも一番高いところに立つことも十分に考えられるでしょう。

昨年のCCCを走る上田瑠偉 Ruy Ueda。

フランスのティボー・バロニアン Thibaut Baronianは現在27歳で昨年のOCCで優勝したグザビエ・テベナールから15分差の3位になっています。その後は上田瑠偉も出場したTempliers 76kで6位、スカイランニングアジア選手権・MSIG Lantau 50kで優勝タイムから14分差で4位。今年はMarathon du Mont-Blancで7位、先日のSierra-Zinalで7位。こちらも上田とともに優勝争いに加わるかもしれません。

ダニエル・ガルシア Daniel Garcia Gomez (スペイン) は2015年のTransvulcania 73kで2位、2016年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kでは11位。今年5月のトレイル世界選手権・Trail Sacred Forests 50kで5位になっています。この選手も30-50kmのトレイルレースを得意としています。

パウ・バルトロ Pau Bartolo (スペイン)は2014年にCCCで優勝、翌年にはTDSで優勝しています。ただ、2016年のシーズンに入ってからはレースの結果はやや寂しく、この年に走ったOCCは11位という結果でした。今年2月のTransgrancanariaはDNFとなっています。もし、今回のOCCに向けてコンディションが整ってきていれば、UTMB®︎のレースで3つ目の優勝もねらえる力を持っているでしょう。

そのほか、OCCの男子のレースには次のような有力選手がエントリーしています。

  • デビッド・コマ David Coma (スペイン) : 2016年MIUT 115kで12位。
  • ケーン・レリー Kane Reilly (南アフリカ): 今年のMarathon du Mont Blancで5位。
  • エマニュエル・ゴー Emmanuel Gault (フランス): Templiers 75kで2014年、15年にそれぞれ7位。Ecotrail De Paris 80kで2014、15、17年に優勝。
  • ティボー・ガリヴィエ Thibaut Garrivier (フランス): Marathon du Mont Blancで2016年に8位、2017年に6位。
  • ダヴィデ・チェラズ Davide Cheraz (イタリア): 今年のMarathon du Mont Blancで11位。
  • パブロ・ビラロボス Pablo Villalobos (スペイン): Templiers 75kで2016年に11位。
  • イヴァン・カンプス Ivan Camps (スペイン): 昨年のOCCで5位。
  • モハメド・エル・モラビティ Mohamed El Morabity (モロッコ): 今年のMarathon des Sablesで2位。
  • サバ・ネメス Csaba Nemeth (ハンガリー): 現在49歳のベテランでUTMB®︎では第二回大会の2004年に5位、2006年に2位、2008年に8位、2009年に7位、2011年に4位、2012年(短縮版)に5位と初期のUTMB®︎で活躍した名選手。今年に入ってからもMozart 100®で3位、High Trail Vanoise 68kで12位など、現役で走り続けています。
  • ロビー・ブリトン Robert Britton (イギリス): 昨年のCCCで11位、2015年のTarawera 103kで7位。

CCC®︎

UTMB®︎の第4回大会となった2006年にスタートしたのが、クールマイユールからUTMB®︎のコース後半を使って行われるCCC® (Courmayeur Champex Chamonix)です。スタートは171kmのUTMB®︎のスタートと同じ9月1日金曜日の朝、午前9時(日本時間同日午後4時)で、コースは101km 6,100mD+となります。このCCC®︎も今年はUltra-Trail®︎ World Tourの一戦となり、”Serie”レーベルとなっています。

CCC®︎のコース概要。

女子 Women

マイテ・マイオラ Maite Maiora Elizondo (スペイン) はスカイランニングのトップ選手として知られ、昨年はスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kで優勝。今シーズンに入ってからは5月のZegama-Aizkorriで優勝したのを皮切りに、Livigno Skymarathon 34k、Royal Race Gran Paradiso 56k、Tromsø Skyrace 57kと連勝中。スカイランナー・ワールドシリーズではSky Extremeカテゴリーで最終戦を待たずに年間チャンピオンとなっています。UTMB®︎のレースは初めてですが、今シーズンの好調ぶりからはCCCでもレースをリードする可能性は高そうです。100kmを超える長距離のレースはあまり出ていませんが、昨年8月にはSwiss Irontrail T121に出場して優勝しています。

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昨年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kの表彰式。左から二人目がアザラ・ガルシア / Azara García、中央がマイテ・マイオラ / Maite Maiora。

アサラ・ガルシア Azara García De Los Salmones(スペイン)も30-50kmのレースで活躍していて、2015年にZegama-Aizkorriで優勝。昨年はスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kで優勝したマイオラに2分差で2位に。トレイル世界選手権・Trans Peneda-Geres 85kでは2位、今年2月のTransgrancanaria 123kでは優勝。今回のCCCでも優勝候補の一人ですが、今年はTransgrancanariaのあと、トレイル世界選手権・Trail Sacred ForestsでDNFとなったほか目立ったレースには出ていないようで、どんな状況でCCCのスタートラインに立つかが気になるところ。

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ナタリー・マクレア / Nathalie Mauclair

UTMB®︎では2015年に優勝したほか、2014年に3位、2013年にはTDSで優勝しているナタリー・マクレア Nathalie Mauclair (フランス) は今年はCCCにエントリーです。UTMB®︎の他にもレユニオン・Diagonale des Fousでも2013年、14年に連覇。長距離のレースで積極的にレースをリードするスタイルです。最近はトレイル世界選手権で昨年のTrans Peneda-Geresで4位、今年のTrail Sacred Forestsで5位、Marathon des Sablesで昨年、今年とも2位。今年7月にはHardrock 100で初めてアメリカの100マイルレースを走り、3位でした。

アメリカからは昨年のLeadville 100で男女総合5位で優勝しているクレア・ギャラハー Clare Gallagher (アメリカ)をはじめ、アメリカのトレイルランニングレースで活躍するランナーが多数CCCにエントリーしています。ギャラハーは昨年のTNF 50mileで5位など、50マイルや100kmのレースの経験は豊富。

この他、次のような選手がCCCの上位をねらいます。

  • キーリー・ヘニンガー Keely Henninger(アメリカ): TNF 50mileで2015年7位、2018年8位の、2016年Bandera 100kで優勝。
  • キャシー・スカロン Cassie Scallon (アメリカ): 、今年のTransvulcania 73kで8位。
  • ケリー・ウルフ Kelly Wolf (アメリカ): 2016年のFlagstaff Sky Race 55kで優勝、今年のBroken Arrow Skyrace 52kで優勝。
  • ヒラリー・アレン Hillary Allen (アメリカ): 昨年のUltra Pirineuで2位、今年のTransvulcania 73kで3位などスカイランニングで活躍。8月5日のTromsø Skyraceで大きなケガをしたため、今回のCCC出場は見送るかもしれません。
  • エバ・モレダ Eva Moreda Gabaldon (スペイン): 昨年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで2位、今年のTransvulcania 73kで5位。
  • アンナ・コメット Anna Comet Pascua (スペイン): 昨年のUltra Pirineuで3位。
  • ライア・カニェス Laia Canes (スペイン): 今年のトレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsで7位、Penyagolosa Trails MiM 61kで優勝。
  • クリスティン・ベルグルンド Kristin Berglund (スウェーデン): 2016年Zugspitz Ultratrail 102kで優勝、Transalpine Runで2位、今年のTransgrancanariaで4位。
  • ホーリー・ラッシュ Holly Rush (イギリス): 2016年Templiers 76kで7位。
  • 太田美紀子 Mikiko Ota (日本): 2016年奥三河パワートレイルで2位、トレイル世界選手権・Trans Peneda-Geresでは67位。

男子 Men

今回のCCCにエントリーしているヘイデン・ホークス Hayden Hawks (アメリカ) 昨年7月のSpeedgoat 50kで優勝したのが初めてのトレイルランニングレースで、12月のTNF 50mileではザック・ミラーとの激しい競り合いの末に僅差で2位となったことでも話題になりました。100kmを走るのは今回のCCCが初めてとなります。今シーズンは春先はMoab’s Red Hot 55kで優勝、Chuckanut 50kで2位となりましたが、Transvulcania、トレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsでは振るわず、リカバリーが進んでいるかが今回のレースに影響しそうです。

Tom Owens

トム・オーウェンス / Tom Owens

トム・オーウェンス Tom Owens (イギリス)は34歳ですがスカイランニングでは長いキャリアを持つトップアスリートで、UTMB®︎のレースは今回が初出場です。昨年はスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kで2位、Skyrace ComapedrosaとTromsø Skyrace 53kで優勝、Trofeo Kimaで5位、Glen Coe Skyline 55kで2位。オーウェンスにとっても100kmという距離は初めてとなります。

アメリカのライアン・バック Ryan Bak (アメリカ)は2015年にWay Too Cool 50k, Lake Sonoma 50でそれぞれ2位、TNF 50mileで3位となり、翌年にはChuckanut 50kで優勝しています。持ち前のスピードを活かせば今回のCCCの上位に食い込むことになるでしょう。

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ヤン・ロンフェイ / Longfei Yan

中国のヤン・ロンフェイ Longfei Yanがトレイルランニング、ウルトラマラソンを走りはじめたのは2014年からで、中国国内のレースでは圧倒的な実力で優勝を重ねてきました。国際的な大会では2015年のHong Kong 100で優勝したのを最初に、同年のスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kでは2位、TNF 100 Australia 100kで4位、2016年のHong Kong 100でフランソワ・デンヌに次いで2位となっています。そのスピードは今回のCCCの選手の中でもトップクラスに違いありませんが、昨年からレースへの出場が控えめなのが気になるところ。ケガなどでなければ今回はかなりの上位を走るでしょう。

ホルヘ・マラビラ Jorge Maravilla (アメリカ)はカリフォルニア在住のウルトラランナーで2012年のWestern Statesで8位。TNF 50mileでは2013年に7位、14年に7位、15年に4位、16年に4位と上位の常連。海外レースでは2015年のTarawera Ultramarathon 100kで2位になっています。ベテランの粘り強い走りがみられるか。

昨年のUTMB®︎のチャンピオン、ルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret (フランス)は今年はCCCを走ります。昨年のUTMB®︎では前半までは50位前後を走りながら、先行する選手がペースを落とす中で安定した走りをみせてついにトップでフィニッシュするというドラマティックなレース展開でした。また40代のベテランが優勝を勝ち取ったことも注目を浴びました。昨年のUTMB®︎以降は10月にトレイル世界選手権・Trans Peneda-Geresで5位。 12月にスカイランニングアジア選手権・MSIG Lantau 50kで3位、今年に入ってTransvulcania 73kで2位、トレイル世界選手権・Trail Sacred Forestsで6位に。安定した実力は健在で、今回のCCCでも後半に先行する選手のリードを脅かすかもしれません。

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昨年12月のMSIG Lantau 50に出場したルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret。

さらに今回は次のように有力選手のリストが長く続きます。誰がトップ10入りしてもおかしくない実力の持ち主です。

  • ライアン・サンデス Ryan Sandes

    ライアン・サンデス Ryan Sandes (南アフリカ): 今年のWestern Statesで優勝。UTMB®︎は2015年、16年に出場してリタイア、CCCは今回初エントリー。

  • トールベルガー・ジョンソン Thorbergur Jonsson (アイスランド): CCCで2015年に15位、2016年に9位。
  • ラシッド・エル・モラビティ Rachid El Morabity (モロッコ): Marathon des Sablesで2011年、2014-17年に優勝。昨年のOCCで2位。
  • マルチン・スビレク Marcin Świerc (ポーランド): 2016年High Trail Vanoise 67kで2位。今年のWMRAマウンテンランニング長距離世界選手権・Giir di Mont 30kで9位。
  • パディ・オレアリー Patrick O’leary (アメリカ在住、アイルランド): 2016年TNF 50mileで9位、Canyons Endurance Runで優勝。
  • イバン・オルティーズ Iván Ortiz Carrión (スペイン): 2017年Penyagolosa Trails MiM 62kで3位。
  • オーレリアン・コレ Aurélien Collet (フランス): 2017年Ultra-Trail Australia 100kで3位。
  • ベン・ダフュース Benjamin Duffus (オーストラリア) : 2016年Ultra-Trail Australia 100kで2位。
  • ヴァジャン・アームストロング Vajin Armstrong (ニュージーランド): Tarawera Ultramarathon 100kでは2011年2位、12年2位、13年3位、14年3位、15年4位、16年5位。昨年のSwissalpine Marathon 78kで優勝。
  • ジュリアン・ナヴァーロ Julien Navarro (フランス): 2014年Grand Raid Des Pyrénées 80kで優勝。
  • エフレン・セグンド Efren Segundo Quesada (スペイン): 2016年OCCで4位。同年のTransgrancanaria 81kで3位。
  • ミゲル・サンチェス Miguel Ángel Sánchez Cebrián (スペイン): 2016年Ultra Trail Guara Somontano 50kで優勝。
  • エリック・クラバリー Erik Clavery (フランス): 2015年UTMBで6位、同年のLavaredo Ultra Trailで2位。2016年Diagonales des Fousで6位。
  • ジウリアーノ・カバーロ Giuliano Cavallo (イタリア): 2016年CCCで3位。
  • ヴラド・イクセル Vlad Ixel (香港在住、オーストラリア): 2017年Ultra-Trail Australia 50kで4位。
  • ジャスティン・アンドリュース Justin Andrews (香港在住、アメリカ): 2017年Ultra-Trail Australia 100kで5位。
  • ハリー・ジョーンズ Harry Jones (タイ在住、イギリス): 2017年Hong Kong 100で8位、Translantau 100k優勝、Mozart 100で2位。
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