UltrAspire ウルトラスパイア・ザイゴス Zygos 3.0レビュー

UltrAspire(ウルトラスパイア)がアウトドアスポーツやウルトラマラソンのためのハイドレーションパックのブランドとしてスタートしたのは2011年。その製品はアメリカ・ユタ州を拠点に、豊かな自然の中でエリート・イモータルと呼ぶトップ選手たちによるテストとフィードバックを繰り返して生み出されます。

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そのウルトラスパイアの製品の中でも100マイルのトレイルランニングレースをはじめ、最も多くのシーンに対応できるのが2015年に登場したザイゴス Zygos。日本でもこのザイゴスは評判を呼び、山岳アスリートである山本健一さんのテストとフィードバックを受けて、オリジナルのザイゴスにカスタマイズを加えた「山本健一シグナチャーモデル」も登場しています。そして今シーズンはこのシグナチャーモデルの三代目となるザイゴス3.0が日本および香港のみで限定発売に。オリジナルモデルのコンセプトは生かしつつ、日本のトレイルランナーのニーズに応えたザイゴス3.0について紹介します。

あわせて、ウルトラスパイアの注目のアイテムである「フィッテッドレースベルト」とウエストに大光量のライトをつけることができる「ルーメン600R」も紹介します。

幅広く使えるレースベスト、ザイゴス3.0

ザイゴス3.0は最近のトレイルランニング向けのバックパックのスタンダードといえるベスト型のハイドレーションパックです。マイクロファイバーポリエステルの大小のメッシュを組み合わせたベースとなる生地を、背中から脇、そして体の前面へと、体の形に沿って立体的に縫製して着るような着用感を実現。

同じように100マイルレースに対応とうたう他社のバックパックと比べても、収容力には余裕がある印象で、山のコンディションに応じてウェアなどを追加する場合にも無理なくパッキングができそうです。

シンプルで収納しやすい背面の荷室

ザイゴス3.0の背中に一番近いところにあるのが、2リットルまでのハイドレーションバッグを収納できるポケット。このポケットはメインの荷室とは独立していてジッパーなどもないため、ハイドレーションバッグを取り出して給水してまたしまう、という動作を速やかに済ませることが可能です。

背面には独立したハイドレーション用のポケット。中央のクリップで固定できる。

メインの荷室は軽量な撥水ナイロン素材で容量のわりには荷室が広く感じます。最近は外側の素材に伸縮性のあるニット状の素材を使って、荷物が入りそう見えないけれど入れてみるとたくさん入る、というバックパックがありますが、ザイゴス3.0は見た感じでどれくらいの荷物が入るかイメージしやすいのでパッキングはしやすそう。カタログでは10Lとなっていますが、実際にはそれ以上に容量はありそうです。

背中の荷室はどれくらいの荷物が入るかイメージしやすい。

荷室へのアクセスは上半分をジッパーで大きく開くことができるタイプ。中は背中側に大きいポケットがあるだけで、現行のオリジナルのUSモデルであるZygos 2.0には設けられている財布や鍵などのためのポケットはなく、自由にパッキングが可能となっています。

荷室はジッパーで大きく開くことができ、の内部はシンプルな構造。

荷室の外側にはメッシュ素材の大きなカンガルーポケット。ここには入れたり出したりがしやすいこのポケットは防水シェルのような大きめのウェア類を入れておくのにちょうどよいスペース。このポケットの上に上下2本のスターナムストラップがあり、外側のポケットから物が飛び出すのを防ぐほか、メインの荷室の荷物が少ない時にストラップを締めることでゆれを防ぐこともできます。

背面の二本のストラップで荷物が少ない時も荷室を安定させることができる。下の方には左右にトレッキングポールを固定できるバンジーコードがついている。

カンガルーポケットの下の方には左右二箇所にバンジーコード。トレイルランニングの場合は折りたたんだトレッキングポールをくくりつけるためにこのバンジーコードを使うでしょう。

さらにその下、バックパックの底にあたる場所にもジッパー付きのポケットがあります。スマートフォンや財布なんかが入る大きさですが、荷物の重みやバックパックを置いた時に力がかかることを考えると、ここにはグローブとかネックウェアを入れておくのがいいかもしれません。

底に当たる部分に大きなポケットがある。

なお、現行のUSモデルであるZygos 2.0には、アイスアックス(ピッケル)をつけるために荷室の外側の上の方にバンジーコードのクリップがついているのですが、日本向けのこのモデルでは付いていません。この辺りは日本のユーザーの声に応えた結果でしょう。

左右で使い分けられる側面のポケット

背中側の荷室と体前部のハーネスをつなぐ部分は左右とも大きなジッパー付きのポケットになっています。左側のポケットは外側が撥水ナイロンの生地で内側もナイロンの生地で補強されているのに対して、右側のポケットは外側がメッシュで内側にメッシュ生地のポケットがついている、という違いがあります。左側は食べた後のジェルの袋や着替えた後のウェアといった汚れ物を入れるスペースに。右側は食べる前のジェルやサプリメントを整理して入れておき、ジッパーを閉めても外から中身が確認できるようにする、といった使い方ができそうです。

左側のポケットは内側もナイロンの生地が貼られている。

右側のポケットはメッシュ生地で内側に仕切りがある。

左右に大容量のポケットを備えたフロント

体前部はこれまでのザイゴスと同じように、ゴム製のショックコードをフックに引っ掛けるというシンプルな作りながら、呼吸による伸縮を妨げず長時間身につけていても快適なままという「MAXO2スターナム」を装備。

ベストの左右をとめる「MAXO2スターナム」は一見シンプルながら呼吸を妨げない合理的なシステム。

そして、左右のショルダーハーネスにあたる部分には上下に収納スペースが設けられているのですが、ここも日本市場向けにカスタマイズされているところです。

まず胸から腹にかけてのポケットはシンプルに大きなメッシュ製のポケット。入り口をゴムなどで絞らず、バンジーコードでポケット全体を締めるという仕組みになっています。このポケットには550mlの「ウルトラフラスク550」が余裕で入るほか、薄手のジャケットやキャップを丸めて突っ込んだり、スマートフォンやヘッドランプを入れておくこともできそう。かなり大容量のポケットです(ちなみにUSモデルのZygos 2.0ではこのポケットにはバンジーコードがなく、底が浅めのため550mlのボトルを入れるとキャップはポケットから出た状態に。代わりにジェルなどを入れる小さめのポケットがついています)。

500mlのソフトフラスクを入れてもご覧の通り余裕の収容力。ポケットを締めるバンジーコードは余裕を持って長めにしてあるので、実際には必要な長さに切って調整した方がよさそう。

肩から胸のポケットは左側はジッパー付きのポケット。中にはゴムバンドがあるのでGPSの受信端末を入れて固定しておく、といった場合に使えそう。右側はこちらもバンジーコードで開け閉めできるメッシュ生地の小さいポケット。こちらはレース中に摂取するジェルを入れたフラスクやサプリメントを入れておくのによさそうです。この右側のポケットもUSモデルではマグネット付きのフラップで開閉するポケットとなっているのがカスタマイズされています。

左肩のポケット。中にあるゴムバンドを使ってGPS端末などを固定できるだろう。

右肩はバンジーコードで口を締めるシンプルなメッシュポケット。ここもUSモデルからカスタマイズされている。

なお、山本健一シグナチャーモデルとして昨年日本で発売された「ザイゴス 2.5」と比べるとポケットなどの構成は変わりません。しかしポケットに用いられているメッシュ素材がより伸縮性の高いものにアップデートされて中のものを取り出しやすくなっています。このほかベストの縁に施されているマイクロパイルがグレーからブラックに変更されて、3.0は全体がブラックで精悍なイメージになっています

  • ザイゴス3.0
  • ¥21,000(本体価格)
  • カラー/ブラック
  • サイズ/(S)90-105cm、(M)100-110cm
  • 重量/310g
  • 容量/10L

気軽に走り出せる。フィッテッドレースベルト

ランニング中に必要な小物を身につけておくのに便利なベルト類。ウルトラスパイアから新たに登場した「フィッテッドレースベルト」は腰にぴったりフィットするようにデザインされた円錐形のメッシュ生地の帯です。

背中側には左右にバンジーコードがあり、ここにはトレッキングポールや大き目のジャケットを固定するのに使えそう。そしてちょうど腰に当たるところは内側にもう一枚のメッシュ生地があるので、大きなポケットとして使えます。ここは「フォーミュラ250」のような小さめのソフトフラスクを入れておくことができます。

こちらが背中側。左右にバンジーコードがついている。

背中側には大きなポケットがあり、小さめのソフトフラスクも収まる。

体の前面にもエナジージェルのような小物を入れられるメッシュ生地のポケットがあるほか、右側にはジッパー付きのポケットがあるのでここは鍵のような絶対落としたくない小物を入れておくのがよさそう。

こちらが体の前側。真ん中のストラップはグローブやニットキャップのような小物を一時的に引っ掛けておくのに使うようです。

前側にもジェルなどを入れられるポケットが複数ついている。

右側にはジッパー付きのポケットもある。

普段の気軽なランニングに便利なのはもちろん、レースでもザイゴスと組み合わせて使うことも可能。サイズはXSサイズまであるので、日本の女性ランナーも含めて大半のランナーがフィットするサイズを見つけることができそうです。

  • フィッテッドレースベルト
  • ¥4,600(本体価格)
  • カラー/ブラック
  • サイズ/(XS)59cm、(S)66cm、(M)74cm 、(L)82cm
  • 重量/68g
  • 容量/0.75L

腰に大光量のライトを。ルーメン600R

夜のトレイルランニングでは腰にヘッドランプを付けると地面に近いのでより明るく路面を照らせる、というノウハウは当サイトも聞いたことがありました。しかし、実際に腰につけることを想定したトレイルランニング向けのライト、それも600ルーメンという大光量のライトというのはウルトラスパイアが初めて実現したと思います。2016年に登場して以来、特にレースで上位を目指す有力選手の間では注目を集めたアイテムです。

これまでのベルトにポケットのついたモデルに加えて、ポケットのないシンプルなモデルとして新たに登場したのが「ルーメン600R」です。ポケットがない分だけベルトによるウェストの調節の幅が広がり、ウェストの細い女性ランナーにもフィットするようになりました。

電池はリチウムイオンバッテリー(別売)を使う。

左側の電源スイッチで、光量を4段階に切り替えることができる。右側はマイクロUSB端子となっていて、USBケーブルで充電できる。

最大600ルーメンのライトの光量は4段階に調節でき最大で8時間の連続点灯が可能。バッテリーはリチウムイオン電池(別売)で、USBケーブルで充電することが可能なのも便利。もちろん防水性(IPX6)も備えています。前モデルからはライトのLEDの周りのリフレクターが改良されました。光の照射がより均一になり、視界がクリアになっています。

こちらが600ルーメンのライトを取り付けるマウントのついたベルト。

マウントの左右の輪っかにライトをはめる。ライトと輪っかの間にちょうどいい摩擦があるので、ライトの向きを上下に調節することができる。

このライトを装着するベルトのマウントはシリコンでできていて、ライトをしっかり固定するのはもちろん、円筒形のライトの向きを上下に回すことで光の向きを変えることもできる、というよくできた作りになっています。この上下に光の向きを変えることができることはユーザーでも意外と知らない人が多いようです。ぜひお試しを。

  • ルーメン600R
  • ¥18,800(本体価格)
  • 重量/150g
  • サイズ/ワンサイズ(35cm-106cmに調整可能)
  • 電池/充電式18650リチウムイオン電池1本(別売)
  • 連続点灯/最大8時間
  • 防水性/IPX6(耐水形)

ウルトラスパイアといえばブライス・サッチャーさん

UltrAspire Zigos Bryce Thacher

2015年夏に来日した際のウルトラスパイア創設者のブライス・サッチャーさん。

ウルトラスパイアの創設者であり、製品のデザインの指揮をとるブライス・サッチャー Bryce Thatcherさんは1980年代に水分を持ち運ぶためのパックを製品化したこの分野のパイオニア。当サイトでも2015年夏にインタビューしたことがありますが、「自分で考えたオリジナルの発想を形にしたい」、という強い思いに圧倒されたものです。かつてグランド・ティトンのFKT記録を持っていて、今もトレイルランニングを楽しんでいるサッチャーさんのアイディアが詰まったウルトラスパイアのギアなら安心してトレイルランニングを楽しめそうな気がします。

(協力・株式会社エイアンドエフ

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