来月スタートラインに立つ人にも、来年のエントリーを目指す人にも役に立つアドバイス。もっと早く知りたかったよ。。
STRAVAはランニングや自転車のアクティビティを記録することを通じたアスリートのためのソーシャルネットワーク。来月のウルトラトレイル・マウントフジ Ultra-Trail Mt. Fuji(UTMF)のスタートを前に、STRAVAの中の人たちが蓄積されたデータを徹底分析して、トップアスリートとともに検証。そこから導かれた結論を公開してくれました。
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分析の対象となったのは6,000人以上の100マイラー(過去一年以内に一度のアクティビティで100マイル以上を走った人たち)のデータ。そして分析に加わったのは昨年のUTMFのチャンピオン、ディラン・ボウマン Dylan Bowman(ボウマンのSTRAVAアカウント)、昨年のUTMF11位の田中”JR”裕康 Hiroyasu Tanaka(STRAVAアカウント)、昨年のUTMF8位でニューヒーロー(ヒロイン)賞を受賞した宮﨑喜美乃 Kimino Miyazaki (STRAVAアカウント)のみなさんです。
UTMFでの成功の鍵を握るのは「スピード・トラップ」
UTMF2018を走ったエリートアスリート3選手にインタビューを行ったところ、共通して、序盤のスピードを出しやすい区間、自分のペースを維持する走りがレースの鍵を握るという答えが返ってきました。レース本番で「スピード・トラップ」にのまれることなく、自分の走りを実現するためのヒントをエリートアスリートのトレーニングから紐解きます。
速い海外勢とミドルレンジが強い日本勢がいたので、ハイペースになると予想し、周りに流されず自分の想定タイムをきっちり刻む事を心掛け、終盤A7山中湖から勝負して、できればプッシュすることを戦略として立てていました。基本的には「ハアハア」いわない事を心掛け、予定の箇所で勝負することにしていました。最後の1マイル、12位だったサンゲ・シェルパ Sange Sherpa選手に追いつかれ「together」と言いわれ、正直、抜かされても追いかけられる状態ではなかったので一緒に走ろうと言われホッとした反面、最後までちゃんと走りきれてない自分が情けなかった。彼の紳士的な対応に非常に感謝しています。
スタートしてから麓までの区間。レースにのまれやすい私は、前半いかに自分のペースで走れるかがポイントになります。
レースでの通過時間にあわせたトレーニングが重要
各区間で自分の場合には何時頃走るのかを計算し、その時間に合わせたトレーニングを行いました。例えば、天子山塊が夜になりそうな人は夜間山走を、ロード区間が長くなりそうであれば夜間ロード走を行う。逆に炎天下の中ロードを走る可能性があれば、その時間帯に走る、など。各自のペースによって、トレーニングする時間場所が異なると思うので、先にタイムチャートを考えて、それに応じたトレーニングが必要だと思います。
エリートランナーは世界の100マイラー平均の2倍以上走り、 5倍以上登っている
STRAVAユーザーの100マイラーの平均トレーニングの記録をみると獲得標高が週平均で994m、月平均で3,291m。距離や時間とともに、獲得標高を積んでいるという、ウルトラトレイルならではの傾向がみられます。
100マイル完走前 12週間のトレーニング記録(週平均)
ランニング時間 | 獲得標高 | ランニング距離 |
6時間16分 | 994m | 57km |
100マイル完走前 12ヶ月のトレーニング記録(月平均)
ランニング時間 | 獲得標高 | ランニング距離 |
21時間 | 3,291m | 196km |
一方で、エリートランナーのディラン・ボウマン、田中裕康のレース12週間前のトレーニングの記録をみると、二人ともUTMF本番の5-2週間前は週間で距離140~150km、獲得標高5,000m以上、13時間以上に達します。レース1ヶ月前後に距離、獲得標高、時間の3つともボリュームの大きいトレーニングをしていました。
エリートランナーの1週間のトレーニングルーティンからみえたこと
100マイル完走時の平均ペース(すなわちそのランナーの実力のレベル)によって100マイラーを分類して、完走前の12週間、12ヶ月間の練習回数(セッション数)をそれぞれ比較すると、やはりランナーの実力によって練習の頻度にははっきりと違いがありました。
平均セッション数(週 | 平均セッション数(月) | |
低ペース(10分/kmより遅い) | 3回 | 12回 |
中ペース(8分~10分/km) | 4回 | 14回 |
高ペース(8分/kmより早い) | 4回 | 14回 |
トップ選手 | 6回 | 24回 |
100マイル完走時のペースを、低ペース(10分/kmより遅い)、中ペース(8分~10分/km)、高ペース(8分/kmより早い)の3つのカテゴリに分類。低ペースのランナーは週平均で3回、月平均で12回であるのに対して、中・高ペースのランナーは週平均で4回、月平均で14回と1.2倍多い傾向がみられます。また、エリート選手のセッション数は週6回、月24回であることを踏まえると、練習回数をいまより増やすことで100マイルの平均ペースを上げることができるかもしれません。
ディラン・ボウマンはトレーニングに一貫して継続することを最も大切にしているといいます。忙しく平日に時間を取ることもが難しい人も、週末にトレーニングを全部押し込むのではなく、短い時間でも毎日走ることをすすめています。
ディラン・ボウマン、田中裕康の平均的な1週間の各セッション内容を具体的にみると、毎日トレーニングに変化をもたせ、1週間のセッションは6回行い、1日レスト日を入れています。平日に一定程度の距離を積み重ねるとともに、週末を活用して土曜日、日曜日と連続して30km前後のランニングを行い、ウルトラトレイルのトレーニングに重要といわれている、2日連続で長い時間動き続ける”Back to Back”を実践していることがうかがえます。
宮﨑喜美乃も、高強度高負荷のトレーニングを行う週末に向けて調子があがるように、平日のトレーニングに取り組んでおり、どう週末にあわせていくかを考えていくことが、結果的にレース直前のピーキングに役に立つと話しています。
トップ選手たちのSTRAVAのトレーニング記録を参考にすることで、自分のトレーニングをさらに良いものにするヒントを得られるかもしれません。
100マイラーに最もポピュラーなクロストレーニングとは?
100マイラーの中で最もポピュラーなクロストレーニングはライド(自転車)アクティビティであることがわかりました。100マイル完走前の12ヶ月間で56.85%がクロストレーニングとしてライドアクティビティを行っています。ディラン・ボウマンもリカバリーを兼ねて週1〜2回程度、ライドアクティビティを行っています。
仲間と一緒に走ることがトレーニングの鍵
ディラン・ボウマンはUTMFに向けたトレーニングの間、毎週土曜日にサンフランシスコで友人のランショップが主催するグループランに参加して約2.5時間のランを行っていました。グループランのはじまる1時間前に一人で走り、その後5-10人程度の強いランナー仲間と一緒に走ることで、強度の高い練習を行っていました。
誰かと一緒に走ることは、ひとりで練習をするよりもハードな練習をすることを助けてくれるのでトレーニングの一環として重視しているといいます。
田中裕康選手もトレーニングはグループで行うことが多く、週の半分以上はグループで行っています。
また、STRAVAが2018年12月に発表した『Year in Sport 2018』 のアクティビティトレンドからも、グループでワークアウトすることでアクティビティの時間や距離が長くなる傾向があります。仲間と一緒にトレーニングし、STRAVAで互いのアクティビティをシェアすることで、トレーニングがより充実したものになるかもしれません。
当サイトの中の人はこう思った
レース中のペース配分の重要さ、というのはロードのマラソンでもウルトラトレイルでも基本中の基本。でもたくさんの選手たちに囲まれて高揚した気分でスタートしてしまうと、つい我を忘れてペースを上げてしまうんですよね。
STRAVAにレースの時のアクティビティのログをアップロードすると、自動的にレースを走ったことを検知して、そのレースを走った人たちのアクティビティをみることができる機能があります。私のような人はそこでレースで上位になった選手のアクティビティをみて、どんなペース配分にしているかよく見たほうがよさそうです。もちろん、いつも同じくらいのペースで競り合っている仲間のランナーと比べるのも刺激になります。
トレーニングの質と量についてはSTRAVAのデータで客観的に示されると、やっぱり結果を出すのに楽な道はないんだとわかりますね(でも休養日を設けることも大事です)。STRAVAでは自分のトレーニングのボリュームの推移や前年と比較したりといったことも簡単です。
グループランもトレーニングに有効ということですが、何より一人で走るより楽しく走れます。STRAVAではグループランをするとそのメンバーを自動的にまとめて自分のアクティビティに記録してくれる機能もあります。
昨年は海外のレースで相次いでリタイアという憂き目にあった当サイトの中の人もがんばりますよ(でもUTMFまではなかなか時間が取れません)。
(source: STRAVA)
レース序盤では30分以上の大きな差があり、最後の5kmまでトップを走るパウ・カペル選手に追いつかない状況でしたが、無理にスピードを上げて追い上げることなく、快適に走り続けました。外からの影響に左右されるのではなく、競争意識を維持しながら、自分の内面に意識を集中し、自分が快適なペースで走りつづければ、必ず追いつくと信じて平常心を保つことで、いいコンディションで走りつづけることができました。
最後に一番難しいパートが来る、山中湖以降の50kmが鍵
山中湖付近から始まる最後の50kmは一番つらく、特に杓子山の登りは厳しくエネルギーがなくなります。UTMFのコースはスピードを出せるところが罠のように「スピード・トラップ」が設定されていて、最初の30kmはすごく速い。そこで攻めすぎると、杓子山にたどり着く頃には力を出し切ってしまうことになる。レース序盤では自分のペースを維持し、適切なペースで最後を迎えることが大切です。