受賞者発表・「DogsorCaravan Award 2019」

当サイト・DogsorCaravanが関心を持ってフォローしているトレイルランニング、スカイランニング、ウルトラマラソンにおいて、日本を拠点に活動するアスリートでその年にもっとも賞賛に値するパフォーマンスを示した人を「DogsorCaravan Award」(ドッグスオアキャラバン・アワード)として選びます。

これまで当サイトが主催してきた「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー Trail Runner of the Year in Japan」(TROYJ)に代わる賞となり、対象にウルトラマラソンを加えたこと、読者投票を行わず当サイト編集人の岩佐が独りで選考に当たることを明確にしたこと、が異なります。

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【お知らせ】「DogsorCaravan Award」を「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」に代えて発表します。

2019.12.27

DogsorCaravan Award・本賞

女性の部・吉住友里 Yuri Yoshizumi

今年最もめざましい成績を挙げた女性アスリートには吉住友里 Yuri Yoshizumiさんを選びました。すでに日本のスカイランニング、トレイルランニングの世界でトップ選手として知られるようになって久しい吉住さんですが、今年はUTMB®︎ Mont-Blancの56kmのレース、OCCで3位となる快挙を見せてくれました。さらに世界の頂点を極めようと取り組み続けているバーティカルキロメーターでは世界シリーズ戦(Vertical Kilometer World Circuit)では、粟ケ岳2位、Olympus2位などで年間ランキング2位に。さらにトレイル世界選手権(ポルトガル)では16位となりました。国内でもバーティカルキロメーターではジャパンシリーズ、日本選手権を制し、富士登山競走では4回目の優勝を果たしています(2016年五合目、2017年山頂、2018年山頂、2019年山頂<五合目打ち切り>)。吉住さんは「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」では2016年に本賞、2017年と2018年は特別賞を受賞しています。

吉住友里 Yuri Yoshizumiさん(2019年トレイル世界選手権)

  • 今年の主なリザルト・吉住友里 Yuri Yoshizumi
    • OCC・3位
    • 粟ヶ岳VK・2位
    • Olympus Marathon VK・2位
    • Marathon Transvulcania・優勝
    • トレイル世界選手権(ポルトガル)・16位
    • 富士登山競走山頂コース(五合目打ち切り)・優勝
    • 大紀町シーサイドトレイル・優勝
    • OSJ奄美50k・優勝
    • 善光寺ラウンドトレイル・2位
    • 上田VK・優勝
    • 経ヶ岳VL・2位
    • 志賀高原マウンテントレイル・優勝
    • モントレイル黒姫・優勝
    • 野沢トレイルフェス27k・優勝
    • 武田の杜・優勝
    • 四国中央VK・優勝
    • びわ湖VK・優勝
    • 烏帽子VK・優勝

受賞インタビュー・吉住友里 Yuri Yoshizumiさん

ー 秋にはケガをされたりしたこともありましたが、結果としては素晴らしい1年でしたね。

「今年はいろいろな経験をさせてもらいました。バーティカルキロメーター・ワールドサーキットについては、(ポイントがカウントされる)年間に5つのレースに必ず出るとは決めていませんでした。春の粟ヶ岳、夏のOlympus(ギリシャ)で2位になり、これはやるしかない、と秋まで挑戦を続けることを決めました。ヨーロッパのレースではシリーズ戦でいつも上位の選手だけでなく、それぞれの大会の地元に強い選手がいたりして、改めて選手層の厚さを実感しました。」

ー 今年10月からは富士吉田に移住されたと聞きました。

「ここ何年か、夏の間は富士山の山麓を拠点にしてトレーニングしていました。練習の環境が素晴らしいのはもちろん、地元の皆さんに親切にしていただいて、ここに住みたいと思うようになりました。引っ越しをしてから2ヶ月になりますが、レースだったりトレーニングだったりで出かけてばかりです。それでも、あの富士山の麓に自分の家がある、と思うと気持ちが落ち着きます。」

ー 来年の目標を聞かせてください。

「来年はナショナルチームのメンバーとしてスカイランニング世界選手権(7月)に参加して、日本チームとしてメダルを目指します。富士吉田でも何か自分の得意なことを生かして地元を盛り上げるために役に立てたらいいな、と考えています。」

男性の部・上田瑠偉 Ruy Ueda

DogsorCaravan Award・本賞には上田瑠偉 Ruy Uedaさんを選びました。今シーズンの上田さんは今年からカテゴリーが一本化されたスカイランナー・ワールドシリーズで実力を発揮。日本での開幕戦、粟ヶ岳スカイレースでの勝利の後は欧州で転戦し、距離やコースの特性が異なるレースに挑み続けました。最終戦となるLimoneでは最終盤まで勝負を持ち込んでの劇的な勝利を勝ち取って、年間シリーズチャンピオンとなりました。同シリーズを日本人選手が制したのは初めて。改めて世界的なトップ選手としてその存在を知られることになりました。このほかにも国内ではOSJ新城32k、日光マウンテンマラソンなどで優勝。7月には富士登山競走に初めて挑戦し、五合目打ち切りとなったレースで2位となっています。上田さんは「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」では2014年、2017年に本賞、2016年に特別賞を受賞しています。

上田瑠偉 Ruy Uedaさん(ワールドシリーズ最終戦) Photo by © Sho Fujimaki

  • 今年の主なリザルト・上田瑠偉 Ruy Ueda
    • OSJ新城32k・優勝
    • 粟ヶ岳SKY・優勝
    • RedBull 400札幌・優勝
    • 戸隠マウンテントレイル・優勝
    • Livigno・優勝
    • 中央アルプス・優勝
    • BUFF® Epic Trail・4位
    • Royal Ultra SkyMarathon Gran Paradiso・3位
    • Ultra Pirineu・4位
    • Limone・優勝
    • 日光マウンテンマラソン・優勝
    • 富士登山競走・2位
    • びわ湖VK・優勝
    • びわ湖SKY・優勝

受賞インタビュー・上田瑠偉 Ruy Uedaさん

ー トレイルランニング、スカイランニングのプリンスとして有名な上田さんですが、今年のレースでの粘り強さ、シーズンを通じての安定感はさらにレベルが一段上がったと感じます。

「どうでしょうか。ワールドシリーズは目標にしてきましたから優勝は当然うれしいのですが、来年もまた同じようなパフォーマンスをみせることができるかどうかはわかりません。あれはまぐれだった、ということにならないようにしたいですね。昨年2018年に比べてケガが少なかったのはよかったですが、特段トレーニングを変えたわけではありません。今年はうまく行き過ぎたシーズンで、来年はこんなにうまくいかないだろうと思います。」

ー 来年2020年には、いよいよフランスに住んでアスリート活動に打ち込むことになりますね。

「大きく環境が変わりますから、たぶん最初は同じようにアスリートとしての力を発揮するのは難しいんじゃないかと覚悟してます。ただ、目の前のいいこと悪いこと、全ての経験は将来に向けてのプラスになる、自分が化けるための糧になるに違いないと思っています。今年は世界チャンピオンになれましたが、そこで満足して停滞してはいけない、例え結果が出なくても新しい環境で挑戦を続けたい。アスリートとして、さらに人間として成長したいと考えています。」

ー アスリートとしての来年の目標を聞かせてください。

「今年の世界シリーズ年間チャンピオンとして、スカイランナー・ワールドシリーズやスカイランニング世界選手権に挑戦します。それ以外にも欧州の魅力あるレースには出たいと思っています。例えば、Zegama、Dolomyths Run、Sierra Zinalは走りたいですね。」

特別賞

女性の部(順不同)

本賞の吉住友里さんと並んで今年、素晴らしい成績を挙げたアスリートとして5名を選びました。

高村貴子 Takako Takamuraさん(Madeira Sky Race)Photo by MIGU RUN Skyrunner World Series

昨年の「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」本賞の高村貴子 Takako Takamuraさんは今年も精力的に国内外のレースに挑戦。スカイランナー・ワールドシリーズでは粟ケ岳3位、Royal Ultra Sky Marathonで7位、Comapedrosaで8位、 Matterhorn Ultraksで8位、Limoneで10位。国内でも7月の北丹沢での2位や上州武尊山スカイビュー30で男女総合4位での優勝が印象的でした。

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その北丹沢で優勝したのは立石ゆう子 Yuko Tateishiさん。高村さんが優勝した上州武尊山スカイビュー30では2位。スカイランニング日本選手権となった志賀高原エクストリーム54kでは2位に。立石さんは昨年の「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」の特別賞でした。

星野由香理 Yukari Hoshinoさんはその志賀高原エクストリーム54kで優勝。来年はスカイランニング世界選手権に焦点を合わせます。今年はTDS®︎で13位、UTMFでは7位となっています。2014年、2015年の「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」の特別賞受賞者です。

今年春のUTMFで浅原かおり Kaori Asaharaさんは前回に続いての女子3位で表彰台に立ちました。このほかにもOSJおんたけ100kや甲州アルプスオートルートチャレンジ67kで優勝しています。

藤澤舞 Mai Fujisawaさん(サロマ湖100km)

ウルトラマラソンからは藤澤舞 Mai Fujisawaさんを特別賞に選ばせていただきます。昨年2018年は100km世界選手権で3位となった藤澤さんですが、今年は自己ベストのタイムでサロマ湖100kmを連覇。秋に行われた100kmアジア・オセアニア選手権で優勝しています。

男性の部(順不同)

男性では4人の選手を特別賞とさせていただきます。

石川佳彦 Yoshihiko Ishikawaさん(2018年Spartathlon)

ウルトラマラソンとスカイランニングの成績を比較することは難しいですが、超長距離ウルトラマラソンランナー、石川佳彦 Yoshihiko Ishikawaさんの今年のパフォーマンスは本賞の上田瑠偉さんと甲乙付けがたい素晴らしさでした。アメリカ・カリフォルニア州の灼熱の217km、Badwater 135を大会新記録で優勝。さらに東呉大学(Soochow University)で開催の24時間走では世界歴代4位の279.427kmを記録。200kmを超えるウルトラマラソンで世界の第一人者として注目を集めています。

小原将寿 Masatoshi Obaraさんは今年のUTMFで海外のトップ選手に続く4位となったことが話題になりましたが、その後のUTMB®︎では8位となって表彰台に立つ快挙を見せてくれました。2009年に鏑木毅(3位)、横山峰弘(6位)、山本健一(8位)の皆さんが表彰台に立ってから10年。続く世代の小原さんがUTMB®︎で8位となったことは日本のトレイルランニングの歴史に刻まれました。

ウルトラトレイルの分野では小原さんの活躍の影に隠れたかもしれませんが、大瀬和文 Kazufumi Oseさんのとりわけシーズン前半のパフォーマンスは素晴らしいものでした。2月の香港で行われた9 Dragons Ultraではジュリアン・ショリエを、3月のTranslantauではアントワーヌ・ギュイヨンを破って優勝。4月のUTWTシリーズ戦の100 miles of Istriaで優勝。「DogsorCaravan Award」の趣旨からは大瀬さんは特別賞として評価されるべきと考えました。

喜多村久 Hisashi Kitamuraさん Photo courtesy of Asia Trail Master

最近、トレイルランニングの人気が高まっている東南アジアについて、当サイトではAsia Trail Masterのニュースを通じてお伝えしています。その中で今シーズン話題の人となったのがマレーシア在住の喜多村久 Hisashi Kitamuraさん。今シーズンはAsia Trail Masterの11のレースで上位に入り続けて年間ランキング2位となりました。その中には12月のIzu Trail Journeyでの10位も含まれています。無論、相対的にみた東南アジアのレースの競技レベルはまだ世界と差がありますが、年間を通じて挑戦を続けたその成果について特別賞とさせていただきます。

2019年の注目選手

今回の「DogsorCaravan Award」を選ぶにあたって、各地で活躍した450人以上の選手の皆さんについて振り返りました。その中で注目すべきと考えた方々をここで紹介します。

女性の部(順不同)

  • 兼松藍子 Aiko Kanematsu: IAU24時間走世界選手権で6位、 富士五湖100k優勝
  • 秋山穂乃果 Honoka Akiyama: 千羽海崖トレイルランニングレース、OSJ新城32kで優勝、上田SKYで2位。
  • 枝元香菜子 Kanako Edamoto: TransJeju優勝、菅平スカイライン50k優勝、上州武尊山スカイビュー140で2位。
  • 丹羽薫 Kaori Niwa: トル・デ・ジアンで5位、Oman by UTMB®︎ 170kで優勝、Andorra Ultra Trail Euforiaで男女ペアトップ
  • 大石由美子 Yumiko Oishi: 上州武尊山スカイビュー140で優勝。OSJ新城64k、奥三河、道志村、甲州アルプス67kで優勝。
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男性の部(順不同)

  • 横内佑太朗 Yutaro Yokouchi: OSJ奄美50k、OSJおんたけ100kで優勝。ハセツネ30K、ロッキンベア黒姫42k、ITJで2位。
  • 黒河輝信 Terunobu Kurokawa: Aso Round Trail 120k、上州武尊山スカイビュー140で優勝。
  • 町田知宏 Tomohiro Machida: スパトレイル56k、トレニックワールド外秩父50kで優勝。石岡51kで3位、OSJ真昼山地で2位、志賀高原エクストリーム58kで4位。
  • 近江竜之介 Ryunosuke Ohmi: 中央アルプススカイラインジャパンで2位、志賀高原エクストリーム32kで3位、四国中央VKで優勝。
  • 風見尚 Nao Kazami: Comrades Marathon(南アフリカ)で3位。
  • 西村広和 Hirokazu Nishimura: スパトレイル72k、信越五岳110k、Madarao50k、ITJで優勝。
  • 近藤敬仁 Yoshihito Kondo: 上田SKY、北丹沢、経ヶ岳、甲州アルプス67kで優勝。志賀高原エクストリーム32kで2位。

2020年もDogsorCaravanをどうぞよろしくお願いいたします。

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