高温多湿の気候で快適なランニングウェアを作りたかった、と聞いて納得しました。
冬にトレイルランニングのハイシーズンを迎える香港。この冬は例外ですが、いつもはこの時期に香港に取材に出かけています。ここ数年、そこで地元のランナーの皆さんが日本では見慣れないブランドのランニングショーツを履いているのを見かけます。
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実はこのブランド「T8」は日本でも取扱いが始まっており、アーリーアダプターなトレイルランナーの方々からは好評とのこと。今回、T8から声をかけていただき、シェルパショーツ Sherpa Shortsとコマンドー Commandosをレビューさせていただきました。
結論から先にいうと、まずは快適な履き心地に唸らされました。その後、細部をチェックしてみると実によく考えられている、と感心。半日以上走り続けるようなウルトラディスタンスのレースはもちろん、余裕の収容力のポケットは1、2時間の近所のランニングにも気軽に出かけられます。さらにインナーショーツが独立しているツーピース構造はタイツと組み合わせたりして活用することも可能です。
香港生まれのランニング・ギア、T8
T8のファウンダーの一人、ジョン・エリスは香港在住のトレイルランナー。そのジョンが香港の高温多湿な気候に合った、汗をすぐに発散させて通気性の高いウェアを作りたいと考えたのがT8の始まりです。超軽量で超涼しくて走っていて肌に擦れないランニングウェア。レース中は上半身はシャツを着ないジョンにあわせたのか、T8の最初の製品はランニングショーツでした。
ちなみにブランド名の「T8」とは、台風が接近した時に香港の気象局が発表する警戒レベルに由来します。T8が発表されたら学校も会社も休み、地下鉄もバスも運休となります。それぐらい猛烈な台風のパワーにあやかろう、ということなのでしょう。
インナーショーツが分かれているのが珍しい、でもこの方が便利
T8のランニングショーツのアウターは、薄手のナイロン素材の本体と伸縮性の高い素材にメッシュポケット付きウェストが一体となっているシェルパショーツ Sherpa Shorts v2です。このショーツにはインナーがついていないので、あわせてインナーショーツのコマンドー Commandosを組み合わせることになります。
最近はインナーが最初から一体化しているランニングショーツが多いですが、別になっていればどちらかが先に傷んでしまったり、機能がアップデートされた新製品が発売された場合に一方だけを買い換えることもできます。あとは気温が低い場合にはインナーまたはアウターだけタイツに替えることもできます。T8のビジネスを考えると一体になっている方がよさそうですが、あくまでランナーの使い勝手を優先しているところは好印象です。
インナーのコマンドー Commandosは肌擦れを起こさない工夫を満載
まずインナーショーツのコマンドー Commandosからみてみましょう。インナーショーズのクオリティは一回に1-2時間ほど走るだけならあまり気になりません。しかしさらに長時間にわたって長い距離を走った経験があるランナーなら、インナーショーツの縫い目や縁の処理が汗で濡れた肌に擦れて耐え難い痛みを引き起こすのをご存知のはず。
コマンドー Commandosも肌との擦れを起こさないことを徹底的に考え抜いています。ベースとなる生地は85g/㎡のナイロン90%・スパンデックス10%。汗の通りがよく適度にテンションがあります。股下は15cmとなっていて、肌の擦れが起こりやすい内ももはしっかりガードされます。股下が長めに取られていることで両脚の履き口の縁かがりの縫い目が股間の皮膚に擦れないのも好印象。
縫い目はあるのですが、縫い合わせの出っ張りはうまくインナーの外側になるようにしてあり、肌に接する内側は滑らかです。
さらに、「MIND over Mountain」のロゴが入ったウェストのゴムバンドは幅2cmとかなり細め。ここはもっと幅があった方がフィット感があるでしょうが、長時間走るランナーがバンドが当たる部分の肌のかゆみを気にすることを考慮しているのでしょう。
メッシュポケットが実用的なシェルパショーツ Sherpa Shorts v2
インナーのコマンドー Commandosに組み合わせるアウターがシェルパショーツ Sherpa Shorts v2です。腰から下の本体部分は薄手でサラサラした生地で股下は15cm(6インチ)、両脚の履き口の縁は圧着されていて縫い目はありません。
そしてこのシェルパショーツ Sherpa Shorts v2の最大の特徴は4つのメッシュポケットがついたウェストです。幅11cmの伸縮性と張りのあるベース素材は極力圧着縫製で肌との擦れが起こらない工夫がされています。ウエストのフィット感を決めるのはゴムバンドではなくシンプルな平ひも。この平ひもはショーツの内側に出して締めることも、外側に出して締めることもできるようになっていて、よく考えられています。
ウエストの外側にくるメッシュポケットは前後左右にそれぞれ4つ。ポケットの入れ口にジッパーやベルクロはなく、メッシュ生地のテンションのみで中身をホールドすることになりますが、右側ポケットの底にキークリップが縫い付けられているのは実用的です。ポケットは左右がそれぞれ約19cm、後ろが15cm、前が22cmで、深さは約8-8.5cmとなっています。後ろのポケットはスマートフォン、前のポケットは500mlくらいのソフトフラスクがちょうど収まる感じです。もちろんジェルを入れたり、薄手のジャケットを入れたりすることもできるはず。
また、付属のシンプルなビブ・ホルダーを前ポケットのプルタブに取り付けて、レースのナンバーカードを取り付けることもできます。
T8のランニングショーツで走ってみた:日々のランニングが快適に
実際にこのシェルパショーツ Sherpa Shortsとコマンドー Commandosを履いて、40km弱、約4時間のランニングをしてきました。
筆者は大手ブランドがウエストにポケットがついたランニングショーツを発売する前からこのタイプのショーツは愛用しています(個人輸入で大量に買ったアメリカのRaceReadyのショーツを履きつぶしていますが、まだストックがあります)。しかし、長時間の、特に汗をかくシーズンのランニングでは、内股や股間の大事なところが肌擦れで痛むことがありました。その点、このT8のランニングショーツのセットはとにかく快適です。経験上、走るのが4時間を超えると肌に擦れを感じ始めるのですが、今回は全く痛みの兆候を感じることがありませんでした。
また、ウエスト周りのメッシュポケットも安定感があります。後ろの背中側のポケットはジップロックのバッグに入れたiPhone 11 Proがぴったり収まって、メッシュのテンションでしっかりホールドされています。iPhoneの出し入れもポケットにプルタブがついているので手探りで簡単にできます。このほか、ヘッドライトを左のポケットに入れてみました。レースでも実用的なPETZL REACTIKはちょっとかさばりますが、ポケットに入っている間も快適でした。これなら別途ランニング用のポーチやベルトを持つ必要はなく、身軽に走れます。
というわけで100kmや100マイルのような長時間のレースに臨む本気ショーツに使うのはもちろん、日々のちょっとしたランニングやトレーニングにも便利だと感じました。ホテルでさっと手洗いするのも簡単そうなので、旅行先でのランニングウェアとしても活用できそうな気がします。
サイズ選びが快適さのキモ、セパレートなので組み合わせをアレンジ可能
このT8のランニングショーツを快適に履くにはサイズ選びが重要です。ウェストのサイズでメンズ、ウィメンズそれぞれXSからXLまで5つのサイズ(メンズのシェルパショーツは6つのサイズ)が展開され、それぞれのサイズについてインチ単位でウェストのレンジが表記されています。私の場合は自分の身体で計ったサイズに合うものを選んだところ、ぴったりのフィットとなりました。
また、股下15cm(6インチ)というのもちょっと長めに感じるかも。アンダーショーツの股下の長さに合わせているのかもしれません。ウィメンズのシェルパショーツは少し股下が短く3インチになっており、T8によれば「男性で股下短めが好みの方はウィメンズを試してみてください、同じく股下長めが好みの女性はメンズを」とのこと。
お値段についてはシェルパショーツ Sherpa Shorts(9,000円<税別>)とコマンドー Commandos(3,000円<税別>)をセットで買うと、大手ブランドの似たアイテムよりも少々お高くなります。ただ、上でも触れたようにインナーショーツのみ買い替えたり(筆者の経験ではランニングショーツはインナーが先に傷むことが多い)、他のアイテムと組み合わせることができるのは他社製品にないメリットです。
T8の製品は日本国内ではTomo’s Pitのオンラインストアをはじめとするショップで取り扱われています。