UTMB®︎ Mont-Blancが今年の大会で独自のヘルス・ポリシーに基づく検査を実施、失格には至らないものの違反事例も

【追記・最後の「解説」のセクションでNSAIDsの例として列挙したうち、アセトアミノフェンについてはNSAIDsには通常は含めないことから、削除しました。2021.09.25】

UTMB®︎ Mont-Blancは今年8月23-29日に行った大会で、独自のヘルスポリシーに基づく参加選手の健康管理の仕組みである「QUARTZ Event Program」に従って、エリート選手の検査を行ったことを明らかにしました。その結果、レース後の検査において、大会として服用を禁じている解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>)を3人の選手について検出。今回はルールの周知が十分でなかったとして違反した3選手について処分は見送られたものの、今後同様の事例においては無条件に失格またはペナルティを課すとしています。

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UTMBが導入しているQUARTZ Event Programとは

UTMB®︎ Mont-Blancは2008年から「QUARTZ Event Program」を導入。参加選手には以下の薬物等を摂取しないことを求めています。

  • 大会60日前から大会参加中
    • 鉄剤の静脈内注射(Intravenous iron infusion)
  • 大会7日前から大会参加中
    • 静脈内注射(Intravenous infusion)
    • 吸入薬(Gas inhalation)
    • WADAのドーピング禁止表により治療使用特例(TUE)の対象となる物質
    • 投与方法にかかわらず、全ての糖質コルチコイド(glucocorticoids)
    • 甲状腺合成ホルモン剤 Thyroid synthesis hormones(ただし、甲状腺の一部または全部を摘出した場合、または医学的原因による甲状腺機能低下症の場合を除く)
  • スタート24時間前から大会参加中
    • 投与方法を問わず、すべてのβ2アゴニスト (beta-2-agonists)
    • 投与方法に関わらず、トラマドール、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含むすべての鎮痛剤
    • WADAモニタリングプログラムに含まれるすべての物質

さらに、これらのルールの実効性を確保するため、UTMB®、CCC®、®の4つのレースの前後に選手から各種の検体(血液、唾液、毛髪、尿)を採取。大会公式ルールにおいて、検体中に未承認物質が検出された場合、検査を拒否した場合、虚偽の提出をした場合は、競技前または競技後にその選手を失格にする、としています。

今年の大会では3選手に違反があったものの処分は見送り

今回2021年大会では以下の検査を実施。

  • レース30日前:4レースの参加者について59回の検査を実施
  • レース前日:4レースの参加者について94回の検査を実施
  • レース後:4レースの完走者のうち30人を検査

30日前と前日の検査ではルールに反する事例は皆無であったものの、レース直後のエリート選手の唾液検査において3人の選手から非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を検出。

QUARTZ Event Programの専門家との検討の結果、大会はこれら3人の選手の処分を見送ることを決めました。その理由はまず違反が見られたレース後の検査は今回初めて実施したこと、次いで今回が初の違反でありルールについての知識不足が背景にあったこと、としています。ただし、今後同様の違反が発覚した場合には、無条件に(automatically)失格とするか、ペナルティを課すと警告しています。

さらに、来年2022年から始まるUTMB®︎ World Seriesにおいてはシリーズに加わるレースはUTMB®︎ Mont-Blancと同様にQUARTZ Event Programを導入。選手に対しては自らの健康と競技を尊重することを求め、大会の導入するヘルス・ポリシーに従うことを求めています。

解説・UTMB®︎が導入するのはある意味ではアンチ・ドーピングよりも広い規制、参加する選手は趣旨を理解した上で慎重な対応が求められる

QUARTZ ProgramはUTMB®︎ Mont-Blancのメディカルディレクターを務めるパトリック・バッセ氏が中心になって立ち上げたプログラムで、ITRAを共同でUTMBのほか、トレイル世界選手権やUTWTのレースなどでエリート選手の検査を行うほか、健康状態を報告、管理するウェブプラットフォームを運営してきました。

QUARTZプログラムについては、WADAがコントロールするドーピング検査との関係が常に問われてきました。QUARTZプログラムの側では、単にドーピング行為を摘発するということよりも、アスリートの健康を守ることに力点を置くという説明がされてきました。

今回のUTMB Mont-BlancでのQUARTZプログラムの実施結果についての発表からは、「アスリートの健康を守る」という趣旨からWADAの禁止リストにある物質だけでなく、NSAIDsについても服用を禁じ、違反した場合には失格という厳しい姿勢で臨んでいることが注目されます。NSAIDsといえばアスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど、処方箋なしで薬局で買える市販の解熱鎮痛剤が該当します。UTMBに参加するアスリートはもちろんですが、全てのランナーもこうしたQUARTZプログラムの趣旨を一度考慮に入れた上で、自らの健康を守るために必要なことを考える必要がありそうです。【追記・アセトアミノフェンについてはNSAIDsには通常は含めないことから、この段落中の記述から削除しました。2021.09.25】

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