51回目を迎える2024年のウェスタンステイツ Western States 100が今週末の6月29-30日にわたって開催されます。100マイルのトレイルランニングレースの歴史が50年前に始まったイベントであり、今日ではアメリカだけでなく世界的に知られたウルトラマラソンの権威と伝統を備えた大会として、ランナーの関心を集めています。
375人のランナーが参加するレースは6月29日土曜日午前5時(日本時間同日午後9時)にカリフォルニア州オリンピックバレーのパリセーズ・タホ・リゾートでスタートします。スタート直後の標高差800m強の登りの後は標高2000mを超える高山エリアを経て、いくつかの渓谷の登り下りを繰り返します。渓谷の谷底の暑さがランナーを苦しめます。100kmを過ぎてペーサーとともに走るようになると、コースの起伏は緩やかになりますが、このセクションで走れる足をどれだけ残したかでレースの結果は大きく変わります。
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コースのコンディションについては、高山エリアでの残雪が例年話題となりますが、今年は雪は少ない様子。一昨年の山火事の影響で、コース上を多く木々は少なくなっており、どの選手にとっても照りつける日差しと高い気温にどのように対処するかがポイントとなります。
今回のウェスタンステイツには男子の大会記録保持者、ジム・ウォルムズリー Jim Walmsley が2021年以来初めて出場します、女子では昨年の準優勝、ケイティ・シャイド Katie Schide が頂点を極めるかどうかが注目されます。
そうした世界トップクラスのアスリートとともに、今年の大会には視力障害を持つウィリアム・バーカン William “Will” Barkan がスタートラインに立ちます。12月の抽選で9000人以上の応募者の中から出場権を獲得したバーカンは、ガイドランナーとともに、トレッキングポールの使用を特別に認められて出場します。
女子の注目選手
昨年の女子のレースではコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter が大会新記録となる15時間29分という圧倒的なパフォーマンスを見せたことが話題となりました。しかしコートニーは今年のウェスタンステイツにはエントリーしていません。しかし、コートニーに続いて2位だったケイティ・シャイド Katie Schideのパフォーマンスも素晴らしいものでした。彼女の16時間43分は歴代2位であり、ウェスタンステイツには初挑戦だったことを考えれば、今年の優勝候補筆頭だといって間違いないでしょう。フランス在住で、2022年のUTMBでのチャンピオン。今年4月のCanyons by UTMB 100Kでは大会記録を40分上回る鮮やかな勝利を挙げています。昨年のレユニオンでのDiagonale des Fousでも優勝しています。
昨年3位のエスター・シラー Eszter Csillag(HUN, 香港在住)はアスリートとしては2022年のシーズンにブレイク。Transgrancanaria Classicでの5位、UTMBでの5位、WMTRC世界選手権ロングで4位。昨年のウェスタンステイツの後はTranslantau 100kで優勝したのち、日本でITJ70kに参加して優勝したのも日本のファンには記憶に新しいところです。
エミリー・ホーグッド Emily Hawgood(ZWE、米国在住)はウェスタンステイツでは昨年と一昨年と5位になっており、UTMBでは2021年に6位、2022年は10位、CCCで2023年に準優勝。今年春はイタリアでChianti Ultra Trail by UTMB 73kに参加して優勝しています。
昨年7位のイーダ・ニルソン Ida Nilsson(SWE、ノルウェー在住): 昨年の7位で、最近の成績では2022年のWMTRC世界選手権ロングで2位でした。今シーズンは5月にTransvulcaniaで2位となっています。
昨年8位のプリシラ・フォージー Priscilla Forgie(CAN)は昨シーズンは春のCanyons by UTMB 100kで2位のほかCCCで12位でした。
このほか、次の選手にも注目です。
- シャン・フージャオ Fu-Zhao Xiang (CHN):2023年UTMBで4位、Translantau by UTMB 140kで優勝。
- イングヴィルド・カスパーセン Yngvild Kaspersen (NOR):2023年CCC優勝、2023年Black Canyon Ultra 100Kで7位。
- ラグナ・デバッツ Ragna Debats (NED、スペイン在住):2021年ウェスタンステイツで3位、2023年Javelina Jundred 100で2位。
- ヘザー・ジャクソン Heather Jackson:トライアスロンやグラベルバイクのプロアスリートとして活躍。2023年Javelina Jundred 100で優勝、昨年のウェスタンステイツではDNF。
男子レースの注目選手
男子ではジム・ウォルムズリー Jim Walmsleyがファンの注目を集めそうです。2016年に26歳で初めて出場したウェスタンステイツでは中盤まで圧倒的なリードを広げながらコースをロストするなどのトラブルで優勝を逃したことが話題となりました。翌年のDNFに続いて2018年には初優勝。2019年には14時間9分28秒の大会新記録を達成。以後は、フランスに拠点を移してトレーニングに打ち込み、昨年のUTMBでアメリカ人男性として初めての優勝を勝ち取りました。今年春、ウォルムズリーはアリゾナ州フラッグスタッフに戻り、今シーズンの初レースとしてウェスタンステイツに参戦します。2021年の優勝と合わせ、今回で四度目の優勝となるのか。昨年はモンブランでのUTMBのほか、Istria by UTMB 100マイル、Nice Cote d’Azur by UTMB 110kでも優勝しています。
ウェスタンステイツでは昨年の2位、一昨年の4位、2021年の2位となっているのはタイラー・グリーン Tyler Greenです。昨シーズンはTransgrancanariaでの3位、UTMBでの6位など、ウルトラディスタンスでの安定した実績を持つ選手です。
障害物レースのトップアスリートとしてトレイルに参戦するようになってからジョン・アルボン Jonathan Albon(GBR、ノルウェー在住)はスカイランニングから100マイルまで、あらゆるレースで手強い選手です。昨年はCCCで優勝のほか、フランスのTempliersでは昨年優勝、今年5月のTransvulcaniaでも優勝しています。テクニカルなコースから走れるコースまで安定して高いパフォーマンスを見せるアルボンは今回初めてウェスタンステイツを走ります。
ここ数年のウェスタンステイツではヘイデン・ホークス Hayden Hawksが上位でレースを引っ張る姿が見られました。2021年は8位、2022年は2位でフィニッシュ、昨年はケガのためDNFでした。今回のウェスタンステイツではその力をフルに発揮できるか。今年2月のBlack Canyon Ultras 100Kでは大会新記録で優勝しています。
ダコタ・ジョーンズ Dakota Jonesは昨年のウェスタンステイツで優勝したトム・エバンスとの間で先頭争いをしながらも、レース後半で失速して17位でのフィニッシュとなりました。しかし、昨年はTransvulcania優勝で、CCCで3位に入っていてその実力は確かなものです。日本のトレイルランニングファンにとっては2012年のハセツネCUPを新記録で優勝したことも記憶に残ります。。
このほか、次の選手にも注目です。
- シェン・ジアシェン Jia-Sheng Shen(CHN):昨年のウェスタンステイツで4位。2022年のCCCで4位、2023年に2位。今年はTransgrancanariaで5位、Mount Yun by UTMB 100kで3位。
- ダニエル・ジョーンズ Daniel Jones(NZL):昨年5位。昨年のUTMBで12位、今年のTarawera by UTMB 100kで前年に続いて優勝。4月のCanyons by UTMB 50kでは2位。
- ライアン・モンゴメリー Ryan Montgomery:昨年のウェスタンステイツで7位。11月のJavelina Jundred 100で3位。
- ジェフ・コルト Jeff Colt:ウェスタンステイツでは一昨年11位、昨年8位。2022年WMTRC世界選手権ロングで14位。
- コール・ワトソン Cole Watson:ウェスタンステイツでは一昨年14位、昨年9位。2023年のBlack Canyon 100kで4位、Canyons by UTMB 100kで優勝。今年4月のCanyons by UTMB 50kで3位に。
- ペーター・エンダール Petter Engdahl(SWE、ノルウェー在住):2022年CCC優勝、同年Transvulcaniaで優勝。
- デン・ゴーミン Guo-Min Deng(CHN):今年のMt. Fuji 100で優勝、2022年UTMBで20位。
今年もライブ配信やライブトラッキングでウェスタンステイツを観戦できる
ウェスタンステイツのレースの模様はYouTubeのライブ配信で観戦することができます。配信はスタート前の6月29日土曜日午前4時15分(日本時間同日午後8時15分)から、30時間の締切となる6月30日日曜日午前11時(日本時間7月1日月曜日午前4時)まで続きます。