2月22日土曜日に、欧州トレイルランニングシーンの春のビッグイベント、The North Face Transgrancanaria のメインレースである126kmの「クラシック Classic」が行われ、女子はへンリエッテ・アルボン Henriette Albon (NOR) 、男子はカレブ・オルソン Caleb Olson(USA)がそれぞれ優勝しました。アルボン、オルソンともにTransgrancanariaに初参戦で大きなタイトルを手にすることになりました。日本から参加した土井陵 Takashi Doi(JPN)は男子26位でフィニシュしています。
この日に合わせて行われた82km「アドバンスト Advanced」では昨年のClassicの覇者、ラウル・ブタッチ Raul Butaci (ROU) が男子優勝。女子はイーダ・ニルソン Iida Nilsson (SWE) が優勝しています。昨年のClassicで6位の吉住友里 Yuri Yoshizumi (JPN) は9位と健闘しました。
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(写真・Classic 126km女子優勝のへンリエッテ・アルボン Henriette Albon (NOR) Photo © Miguel Travieso / Gran Canaria World Trail Majors)
厳しいコンディションの高速コースを制したアルボンとオルソン
昨年はコース中盤の山岳部で夜間に冷たい雨が降り続けましたが、今年のClassicは例年より気温が上がり、特にレース後半は灼熱の太陽の下、選手にとっては厳しい条件のレースとなりました。こうした中で女子優勝のアルボンは15時間02分50秒、男子優勝のオルソンは12時間17分25秒という驚異的なタイムでフィニッシュすることになりました。今年は大会を象徴する名所であるヌブロ岩 Roque Nublo がコースから外れるなど、コースはやや高速化していたものの、ハイレベルなアスリートによるレース展開が反映された結果といえるでしょう。

Photo © Daniel Delfour – Gran Canaria World Trail Majors
全体のリザルトはこちらから見ることができます。

昨年14年ぶりの参戦で準優勝のミゲル・ヘラス Miguel Heras は今回はDNFに。Photo © Matias Novo – Gran Canaria World Trail Majors
女子レース:アルボンが女王の座へ、2位、3位は僅差の争い
女子のレースは、有力選手として注目されていたヨンヴィル・カスペルセン Yingvild Kaspersen(NOR)が序盤でリタイア。前半はこのレースで一昨年に3位、昨年2位のクラウディア・トレンプス Claudia TREMPS (ESP) や昨年のAdvancedで4位のマルティナ・クランチニク・ポトルチ Martina KLANCNIK POTRC (SVN) がリードする展開となりました。レース中盤のアルテナーラ Altenara(66.8km地点)では、ヘンリエッテ・アルボン Henriette Albon (NOR) が浮上し、トップのトレンプスの1分後に迫ります。3番手のクランチニクは10分差で追います。
レース後半に入ると、ヘンリエッテ・アルボンがその強さを発揮し始めます。アルテナーラを出てクラウディア・トレンプスを抜き去ると、独りでリードを広げ続けます。一方、2位争いはトレンプスとクランツニクが競り合うことになります。
最後はヘンリエッテ・アルボンが後続に1時間以上の大差をつける15時間2分50秒でフィニッシュ会場のパルケ・スール Parque Sur に到着。2022年のCCCで6位のほか、昨年はUltra-Trail Snowdonia 50Kで優勝、Trofeo Kimaで3位の結果を残していますが、今回は100kmを超えるウルトラディスタンスで大きなタイトルを手にしました。
2位にはクラウディア・トレンプスが16:09で続き、三大会連続でトップ3に入りました。トレンプスに6分半の差でマルティナ・クランツニクが3位となり、表彰台はノルウェー、スペイン、スロバキアの3選手が分け合う結果となりました。

81 – The North Face Transgrancanaria – Claudia Tremps 2nd The North Face Transgrancanaria 2025 ©Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors (2).jpeg
CLASSIC 126KM 女子
- ヘンリエッテ・アルボン Henriette ALBON (NOR) 15:02:50
- クラウディア・トレンプス Claudia TREMPS (ESP) 16:09:20
- マルティナ・クランチニク・ポトルチ Martina KLANCNIK POTRC (SVN) 16:11:07
- マリリン・ナカシュ Maryline NAKACHE (FRA) 16:18:13
- エーヴィ・ベングス Eevi BENGS (FIN) 16:43:20
- ヴィクトリヤ・セヌティエネ Viktorija SENUTIENE (LTU) 16:43:24
- マルケタ・シムコバ Marketa SIMKOVA (CZE) 16:55:23
- マイテ・マイオラ・エリソンド Maite MAIORA ELIZONDO (ESP) 16:59:31
- アンナ・フィッシャー Anna FISHER (USA) 17:14:55
- エリサベト・リオス・ペレド Elisabeth RIOS PEREDO (BOL) 18:23:01
男子レース:Olson、Albon、Wadeによる三つ巴の戦い
男子のレースの序盤ではジョナサン・アルボン Jonathan Albon (GBR)、ミゲル・ヘラス Miguel Heras (ESP) 、カレブ・オルソン Caleb Olson (ESP) らが先頭集団を形成し、ハイペースのレースが展開します。しかし、序盤のハイペースと夜間の冷え込みは、徐々に選手たちの体に負担をかけ始め、昨年4位のアベル・カレテロ Abel CARRETERO (ESP) やこの大会で四連覇のパウ・カペル Pau Capell (ESP) 、14年ぶりに参加した昨年準優勝のミゲル・ヘラスといった有力選手がリタイアを余儀なくされました。
レース中盤に入るとカレブ・オルソン、ジョナサン・アルボンに昨年8位でUTMB11位のジョシュ・ウェイド Josh WADE (GBR)が加わった3選手による先頭争いとなります。
エル・ガラニョン El Garañon(87.3km地点)への急登で、オルソンがウェイドを引き離し、単独でリードし、エイド到着で4分差まで差を広げます。一方、3番手で追うアルボンもウェイドとの差をじりじりと詰め、エイド到着で3分差に迫ります。その後、アルボンはウェイドをとらえて2位に浮上しました。
しかし先頭を走るオルソンの勢いも衰えることはなく、アヤガウレス Ayagaures(113.5km)ではオルソンが2番手のアルボンに6分のリード。アルボンは3位のウェイドに9分半差となりました。
そして、カレブ・オルソンが12時間17分25秒でフィニッシュラインに到達し、今年のTransgrancanariaを制しました。オルソンは昨年のウェスタンステイツで5位となったのち、CCCで12位となるなど欧州でも結果を残していますが、今回は大きなタイトルを手にしました。8分後には、ジョナサン・アルボンが2位でフィニッシュ。2021年OCCや2023年のCCCでの優勝のほか、障害物レースやスカイランニング、トレイルランニングの世界チャンピオンのタイトルを手にしているアルボンですが、今回は女子優勝のヘンリエッテとともに夫妻で表彰台に立つ快挙となりました。アルボンから15分差でジョシュ・ウェイドが3位で続きました。昨年の3位、イオネル・クリスティアン・マノレ Ionel Cristian MANOLE (ESP)が4位で続きました。

男子優勝のカレブ・オルソン Caleb Olson (USA) Photo ©Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors
日本から参加の選手では土井陵 Takashi Doiが16:49で26位。序盤にトップ10前後を走った長田豪史 Goshi Osadaは88kmでリタイアという結果でした。

男子2位のジョナサン・アルボン Jonathan Albon (GBR) Photo ©Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors
CLASSIC 126 KM 男子
- カレブ・オルソン Caleb OLSON (USA) 12:17:25
- ジョナサン・アルボン Jonathan ALBON (GBR) 12:25:06
- ジョシュ・ウェイド Josh WADE (GBR) 12:40:17
- イオネル・クリスティアン・マノレ Ionel Cristian MANOLE (ESP) 13:04:46
- カタリン・ソレカウ Catalin SORECAU (ROU) 13:53:41
- ヴィクトル・リシャール Victor RICHARD (BEL) 14:15:51
- アドゥール・メンディサバル・ルルアガ Adur MENDIZABAL LULUAGA (ESP) 14:26:11
- エスタニスラオ・リベロ・ガルシア Estanislao RIVERO GARCÍA (ESP) 14:27:10
- アンディ・フィオール=ベリー Andy FIOR-BERRY (GBR) 14:32:15
- アルベルト・マルティネス・ポンス Albert MARTINEZ PONS (ESP) 14:35:27
26 土井陵 Takashi Doi (JPN) 16:49:37

男子トップ3。Photo © Miguel Travieso – Gran Canaria World Trail Majors
82km「アドバンスト Advanced」も熱い展開に
126kmのClassicのスタートから一夜明けた土曜日の朝に82kmの「アドバンスト Advanced」がテロル Teror をスタートしました。
女子では序盤からレースをリードしたイーダ・ニルソン Ida NILSSON (SWE) が8時間34分54秒で優勝。Transgrancanariaへの初参加で見事にタイトルを獲得しました。そのニルソンに圧勝を許さず4分余りの差で2位に入ったのはアナ・タラソバ Anna TARASOVA (ESP)。後半に入って3位に浮上したカタジナ・ソリンスカ Katarzyna SOLINSKA (POL) がトップ3入りを果たしました。昨年のClassicで6位の吉住友里 Yuri Yoshizumi (JPN)は9位となりました。
ADVANCED 82 KM 女子
- イーダ・ニルソン Ida NILSSON (SWE) 08:34:54
- アナ・タラソバ Anna TARASOVA (ESP) 08:39:16
- カタジナ・ソリンスカ Katarzyna SOLINSKA (POL) 08:52:21
- ヘマ・アレナス・アルカサル Gemma ARENAS ALCAZAR (ESP) 09:12:07
- サラ・ヴィユイユ Sarah VIEUILLE (FRA) 09:20:13
- テレザ・フドコバ Tereza HUDCOVA (CZE) 09:26:15
- ステファニー・ハウ Stephanie HOWE (USA) 09:49:50
- マウゴジャタ・モチュルスカ Małgorzata MOCZULSKA (POL) 09:52:40
- 吉住友里 Yuri YOSHIZUMI (JPN) 10:02:21
- ドミニク・ヴァン・メッヘレン Dominique VAN MECHGELEN (BEL) 10:14:02
男子では昨年のClassicで3位のラウル・ブタチ Raul BUTACI (ROU) が7時間48分3秒で優勝。中盤のテヘダ Tejeda (35km)で先頭に立つと、ガラニョン Garañon(43.6km地点)への急登で後続への差を10分以上に広げて、リードをキープしました。11分半の差でオスワルド・メディナ・グティエレス Oswaldo MEDINA GUTIÉRREZ (ESP)が2位となり、3位はトマーシュ・フデツ Tomás HUDEC (CZE) でした。
ADVANCED 82 KM 男子
- ラウル・ブタチ Raul BUTACI (ROU) 07:48:03
- オスワルド・メディナ・グティエレス Oswaldo MEDINA GUTIÉRREZ (ESP) 07:59:24
- トマーシュ・フデツ Tomás HUDEC (CZE) 08:03:42
- エンリック・ポンス・ミール Enric PONS MIR (ESP) 08:14:20
- ダニエル・ユング Daniel JUNG (ITA) 08:21:00
- ウラジミール・ヤクボウスキ Uladzimir YAKUBOUSKI (BLR) 08:26:57
- シャヴェット・セドリック Chavet CÉDRIC (FRA) 08:30:53
- ギャビン・デイル Gavin DALE (GBR) 08:44:26
- エドゥアルド・スティベン・プリエト Eduard Stiven PRIETO (ESP) 08:51:38
- ピーター・ヴァン・デル・ゾン Peter VAN DER ZON (NLD) 08:59:21