トレイルランニングシューズは、大手アウトドアスポーツブランドから新興のブランドまで、今日では様々な製品であふれています。その中で2021年創業のカナダ発のメーカーで、革新的な素材を惜しげなく使うことで注目されているのが「norda(ノルダ)」です。
DogsorCaravanでも norda がブランドとして最初に発売したオールラウンドなトレイルランニングシューズ「norda 001」についてレビューしたばかりです。ダイニーマを使用した圧倒的な強度を持つアッパー。Vibram MegaGripをアウトソールの全面に使用することで強力なグリップを生み出しながらも、260g(メンズUS8.5)という軽さ。クッションと安定性を重視したドロップ5mmのロープロファイルのミッドソール。そして1000マイル以上走ってもアッパーもソールも機能が損なわれないという耐久性。発売から3年半が経った今も、その新鮮さが損なわれないトレイルランニングシューズです。
Sponsored link

norda 005
- 発売日:2025年3月14日(金)
- 税込価格:¥52,800
- メンズサイズ展開:26.0〜30.5cm
- ウィメンズサイズ展開:23.0〜26.5cm
シューズ業界に精通した夫妻が作り出した、トレイルランニングレースのための究極のシューズ
鎌倉でのイベントの冒頭で登壇したニックさんは「norda」を創業した理由について語りました。ニックさんは大学卒業後にナイキに入社して以来、一貫してフットウェア業界でキャリアを積んでおり、中国に赴任して製造拠点で働いた経験も持ちます。同じくフットウェア業界で働く妻で norda の共同創業者であるウィラ Willa Martire さんと、一緒にランニングに出かけると二人は「もっと優れたランニングシューズが作れるはずなのに、なぜ誰も作らないのか」と議論していたといいます。やがてウィラさんはニックさんに「シューズ作りのことをよく知っているあなたが、最高の素材を使って究極のランニングシューズを作るべき」と迫るようになります。

norda創業者でCEOのニック・マルティレさんが参加者を前に創業のエピソードとシューズ作りについて語りました。
やがてパンデミックとなり、自らの生き方を見つめ直した夫妻は2021年8月にカナダ・モントリオールでノルダを設立します。プレミアムランニングシューズに特化した小さなファミリー企業の最初の製品「norda 001」が好評を博する中で、ニックさんは「トレイルランニングのための最も軽く、最も強く、最も速く、最も安定し、最も長持ちするスーパーシューズ」の開発に取り掛かります。そして2年以上かかって生まれたのが「norda 005」です。

ニックさん自身も鎌倉でトレイルランを楽しみます。
アッパー、ミッドソール、アウトソールに独自の素材と構造を採用することで軽量を追求
norda 005 の214g(メンズUS8.5)という重さは十分なクッション製を備えた他のトレイルランニングシューズと比較すると30~40%程度は軽量化されていることになります。ニックさんは「片足50〜60グラムほどの差があると考えれば、ランニング中に足を上げるたびに必要とされる運動エネルギーも少なくて済むことになります」とその意義を語ります。なお、norda 005 には通常用と別にレース用のインソールが付属しており、このインソールに取り替えるとさらに軽量化できるといいます。

この軽量性を実現しているのが、バイオベースのDyneema(ダイニーマ)素材を使用した革新的なアッパー構造です。ダイニーマは重量あたりの強度が鋼鉄の15倍とされる超高強度繊維で、耐摩耗性と耐水性に優れながらも軽量であるという特性を持ちます。しかしシューズのアッパーとして使えるように編み込むには他の繊維をどのように組み合わせるかのノウハウが必要です。「他社でもダイニーマをアッパーに使ったという例があるがその比率は数割程度。ノルダではほぼ全部と言えるほどダイニーマ素材でできている」(ニックさん)とのこと。この結果、通常のシューズのアッパーの引っ張り強度が平均40ニュートン程度なのに対して、005のアッパーは5,000ニュートンの強度を持ちます。このダイニーマ素材のアッパーは耐久性にも優れ、テスターが実際に数百キロを走った後もアッパーにほとんど摩耗の兆候が見られなかった、といいます。

ミッドソールにはランニングシューズでは初めて「Arnitel TPEE(熱可塑性ポリエステルエラストマー)」を採用。この素材は軽量でありつつも、反応性(responsive)の高い素材で、かつ高い耐久性をも備えます。近年、マラソンシューズでブームとなりトレイルランニングシューズでも取り入れられているカーボン繊維素材などでできたプレートは採用していません。「プレートの反発力が思わぬ方向に働いてトレイルでは不安定に感じる他、トレイルランニングで重要な着地時に地面の状態を感じ取れる接地感が損なわれる」(ニックさん)とその理由を説明します。高機能なミッドソールですがスタックは前足部が21.5mm、かかとが28.5mmでドロップが7mm。トレイルのスーパーシューズでは30mmを超えるものもあることを考えると、ロープロファイルとエネルギーリターン、衝撃吸収性能を高いレベルで両立しています。

そしてアウトソールのラバー素材には世界初となる「Vibram Megagrip Elite」を搭載。「Vibram Megagrip」よりも軽量ながらさらに高いグリップ性を備えるという素材です。開発の段階で、nordaのアンバサダーアスリートにテストのために norda 001のアウトソールだけを「Vibram Megagrip Elite」に変更したものを提供したそうです。4月の北大西洋のマデイラ島で悪天候のなか開催された「MIUT」に参加したそのアスリートからは「ウェットなコンディションのトレイルでグリップが抜群だった」というフィードバックがあったそうです。ラグの高さは約4mmでラグの配置もやや控えめ。これは素材のグリップ力と舗装路を走る場合の使いやすさなどでバランスをとったデザインとなっているようです。
細すぎないフィット感、ミニマルなシューズの履き口は着用感に個人差も
norda 005 に足を入れてみると、トゥボックスは比較的低めの設計で、横幅は標準的です。先にレビューした「norda 001」に似て、アッパーはしなやかで適度なゆとりのある足型が使われていて、足指が締め付けられるような感覚はありません。
サイズ選びについても「001」と同じくメーカーの説明では「サイズ感はやや小さめで、通常より0.5cm大きいサイズを選ぶことをお勧めします」とのアドバイスがあります。
足を入れた時にくるぶしを包むシューズの履き口は薄い生地になっていて内側にクッションが設けられています。この部分が厚いクッションとなっているシューズに慣れていると、nordaのミニマルなデザインはテクニカルなトレイルでは足首がしっかりホールドされないと感じる可能性はあると思いました。この点について私が試してみたところでは、シューレースの締め方でフィット感はかなり変わると感じました。軽量と強度が高いアッパーであることと引き換えに、走り始める前のフィット感の調整は他のシューズに比べるとシビアだと言えるかもしれません。

実際に走ってみると、シューズの軽さは明らか、接地間や反発力もしっかり感じられる
鎌倉でのイベントの後半では norda 005 を試し履きして、約1時間半にわたってトレイルを走りました。
まず舗装路を走り始めると、その軽さと弾むような反発力に気付きます。アウトソールのグリップもさほど気にならず、ロード用のランニングシューズで走っているような感覚です。
トレイルに入ると Vibram Megagrip Elite のグリップ力をすぐに感じるようになりました。着地では衝撃を吸収し、蹴り出しでは反発力で身体を押し出すような感覚があり、楽しく走れます。登りの足上げがいつもより楽に感じられたのは、214gという軽さのせいかもしれません。
下りではアウトソールのグリップ力に加えて、足が接地した時の感覚に優れていることを実感します。岩や木の根が多いところ、濡れて滑りやすいトレイルを安心して走破できるので、この接地感のよさを好むランナーは多いでしょう。
中距離のトレイルランニングでスピードを求めるランナーには最適
軽量性と着地から蹴り出しのレスポンスの良さを追求した norda 005 は、トレイルランニングにおいてスピードで勝負するレースのためのスーパーシューズだといえます。世界初搭載となる新素材、Vibram Megagrip Eliteを使ったアウトソールはテクニカルなトレイルからスムーズなシングルトラック、さらには舗装路まで、様々な地形に対応できる万能性をこのシューズにもたらしています。
距離でいえば、多くのランナーにとっておそらく10kmから50kmくらいまでのトレイルランニングレースでこのシューズの威力が発揮されるでしょう。さらに長い100kmや100マイルとなると、例えばnordaのシューズであれば 001 のように安定性やクッションに機能を振ったシューズの方がしっくりくるかもしれません。
norda 005 は国際的なトレイルランニングレースでも履いたアスリートを表彰台に導いています。鎌倉でのイベントの直前の週末にはアルゼンチンのパタゴニア地方で行われたValhöll by UTMBの85kでゲディミナス・グリニウスが男子2位、ジェイソン・シュラーブが男子3位に。アメリカ・アリゾナ州で行われたCrown King 50Kではアーデン・ヤングが女子2位となりました。
高価なシューズではあるが、その耐久性を理解して新しい使い方をするシューズだと考えれば誰にとっても選択肢となりうる
革新的な素材を使うことで卓越した性能を備える norda 005 ですが、日本での販売価格は52,800円(税込)とトレイルランニングシューズとしては最高級の価格帯に位置しています。
しかし、海外のレビューアーによれば走行距離が1000kmを超えてもアッパーに傷みはなく、ミッドソールやアウトソールは機能を失っていないといいます。こうした耐久性を考慮すれば、熱心なトレイルランナーにとっては投資する価値があると言えるでしょう。
ランニングシューズといえば、400-500kmを走ると当初の履きごこりは失われるが勿体無いので多少劣化しても履き続ける。そうして一年に数足のシューズを捨てる。私も含めてそんな人が多いと思いますが、環境負荷の観点からもそんなサイクルは見直す余地があるかもしれません。そして、norda 005のオフホワイトとグレーの落ち着いたスタイルはトレイルランニング以外でもいろんなシーンで履くことができ、愛着も持てそうです。
norda 005はその軽量性、反応性、耐久性において非常に高いレベルを達成しているトレイルランニングシューズです。高価格ながらも、その性能と耐久性を考慮すれば、真剣にトレイルランニングに取り組むランナーにとっては検討する価値のある一足です。
