【リザルト】WMTRC 2025 ショート種目はトランシャンとアレクサンダーソンが圧勝、日本勢も健闘

スペイン、アラゴン州ピレネー山脈に位置するカンフランク Canfranc Prineos で開催中の2025年マウンテン&トレイルランニング世界選手権(WMTRC Canfranc-Pirineos)は大会2日目を迎え、45kmのショートトレイル競技で男女それぞれ新たな世界チャンピオンが誕生しました。男子はフランスのフレデリック・トランシャン Frédéric Tranchand (FRA)が、女子はスウェーデンのトーベ・アレクサンダーソン Tove Alexandersson (SWE)が、ともにコースレコードを更新する圧巻の走りで金メダルに輝きました。日本勢では近江竜之介 Ryunosuke Omiが男子17位と善戦しました。

(写真・ショート種目の女子のレースで圧勝したトーベ・アレクサンダーソン Tove Alexandersson。 Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos)

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男子:トランシャンが序盤からレースを支配、スペイン勢が表彰台を席巻

男子のレースは、タイ、インスブルックに続いてこのショート競技で3度目の金メダルを狙うスティアン・アンゲルムンド Stian Angermund (NOR)を筆頭に、実力者がスタートラインに揃ったことからハイレベルな戦いが予想されました。 序盤、最初の大きな登りであるラ・モレタ La Moleta(標高2,572m)へ向かう中で、先頭集団はアンゲルムンド、フランスのフレデリック・トランシャン Frédéric Tranchand (FRA)、そして地元スペインのマヌエル・メリージャス Manuel Merillas (ESP)の3人が形成することになりました。

しかし、レースが大きく動いたのはラ・モレタからのテクニカルな下りのセクションでした。ここでトランシャンが一気に抜け出し、カナル・ロヤ Canal Roya (16.4km)のエイドに到着した時点でメリージャスとアンゲルムンドに対し1分以上のリードを奪います。

レース中盤、35km地点では、先頭を独走するトランシャンを追って、スペイン勢が驚異的な追い上げを見せます。 メリージャスが2分差、さらにアンドレウ・ブラネス Andreu Blanes (ESP)が8分差、アライン・サンタマリア Alain Santamaría (ESP)が9分差で続き、表彰台を独占する勢いを見せ始めます。

しかし、トランシャンの勢いは最後まで衰えませんでした。最後の峠越えで勝負を決めるアタックを仕掛けると、そのままフィニッシュラインに飛び込み、4時間42分10秒のコース新記録で世界チャンピオンの座を手にしました。

ショート種目の男子優勝のフレデリック・トランシャン Frédéric Tranchand。 Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

ショート種目の男子優勝のフレデリック・トランシャン Frédéric Tranchand。 Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

銀メダルは4時間45分33秒でマヌエル・メリージャス Manuel Merillas (ESP)が獲得。 続いてアンドレウ・ブラネス Andreu Blanes (ESP)が4時間51分52秒で銅メダル、アライン・サンタマリア Alain Santamaría (ESP)が4時間55分48秒で4位に入り、スペインが見事なチーム力を見せつけました。

優勝したトランシャンは、「今日はスタートから最高の気分で、レース全体を楽しむことができた。ラ・モレタの下りで思い切ってアタックし、最後まで力強いペースを維持できた。最後に少し痙攣があったが、集中力を保って勝利できた」と喜びを語りました。

日本代表の近江竜之介 Ryunosuke Omiは30位前後でスタートした後、中盤に順位を上げて17位、5時間4分36秒と善戦しました。今回がWMTRC世界選手権に初登場となった笠木肇 Hajime Kasagiは終盤に順位を上げる手堅い展開で43位に。

男子17位と健闘した近江竜之介 Ryunosuke Omi。 Photo © DogsorCaravan

男子17位と健闘した近江竜之介 Ryunosuke Omi。 Photo © DogsorCaravan

日本のエース、上田瑠偉 Ruy Uedaはスタート直後にハチに襲われるトラブルがありながらも、序盤は7番手でコースを進みます。しかし後半に入って順位を落とすことになり、46位でのフィニッシュとなりました。続いて小笠原光研 Koken Ogasawaraが95位でレースを終えています。

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ショート男子優勝のトランシャン(中)、2位のメリジャス(左)、3位のブラネス。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

ショート男子優勝のトランシャン(中)、2位のメリジャス(左)、3位のブラネス。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

Short Trail Men

  1. フレデリック・トランシャン Frédéric TRANCHAND (FRA) 4:42:10
  2. マヌエル・メリジャス Manuel MERILLAS (ESP) 4:45:33
  3. アンドレウ・ブラネス Andreu BLANES (ESP) 4:51:52
  4. アライン・サンタマリア Alain SANTAMARIA (ESP) 4:55:48
  5. マルチン・クビツァ Marcin KUBICA (POL) 4:56:38
  6. ルカ・デル・ペロ Luca DEL PERO (ITA) 4:56:57
  7. マルティン・ニルソン Martin NILSSON (SWE) 4:57:09
  8. ダヴィデ・マニーニ Davide MAGNINI (ITA) 4:57:42
  9. シルヴァン・カシャール Sylvain CACHARD (FRA) 4:58:23
  10. ロレンツォ・ロタ・マルティル Lorenzo ROTA MARTIR (ITA) 4:58:54

17 近江竜之介 Ryunosuke OMI (JPN) 5:04:36
43 笠木肇 Hajime KASAGI (JPN) 5:31:46
46 上田瑠偉 Ruy UEDA (JPN) 5:33:03
95 小笠原光研 Koken OGASAWARA (JPN) 6:00:27

男子団体は、2位から4位までを独占したスペインが合計タイム14時間33分13秒で金メダルを獲得しました。

男子団体結果

  • 金メダル: スペイン – 14:33:13
  • 銀メダル: フランス – 14:43:29
  • 銅メダル: イタリア – 14:53:33
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女子:アレクサンダーソンが異次元の走り、自身の記録を30分以上更新

女子レースは、スウェーデンの女王、トーベ・アレクサンダーソン Tove Alexandersson (SWE)が他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけました。彼女は数週間前に同じコースで開催されたカンフランク・カンフランク Canfranc-Canfranc の45kmレースで、転倒し手当を受けながらも5時間38分という驚異的な女子記録を樹立していました。

そして迎えた世界選手権本番。まだ傷跡も生々しい中、彼女はさらに進化した走りを見せます。 スタート直後から一人旅となり、最初の大きな登り、ラ・モレタを通過した時点で後続に3分以上の差をつけます。 その後もペースを緩めることなくリードを広げ続け、28km地点のカンダンチュ Candanchú ではその差は22分にまで開いていました。

一方、後方では銀メダル、銅メダルを巡る激しい争いが繰り広げられました。ラ・モレタのテクニカルな下りでイギリスのナオミ・ラング Naomi Lang (GBR)が2位に浮上。 オーストリアのアンナ・プラトナー Anna Platner (AUT)とスペインのサラ・アロンソ Sara Alonso (ESP)が激しく3位を争います。 その後、アロンソが驚異的な粘りを見せ、終盤にラングを捉えて2位の座を奪い返すと、そのままフィニッシュまでその順位を守り抜きました。

最終的に、トーベ・アレクサンダーソン Tove Alexandersson (SWE)が5時間4分20秒という、自身の持つ記録を30分以上も短縮する驚異的なタイムで世界チャンピオンに輝きました。 このタイムは、2020年にティボー・バロニアン Thibaut Baronian (FRA)が樹立した男子の旧コースレコード(5時間15分)をも上回るものでした。

銀メダルはサラ・アロンソ Sara Alonso (ESP)が5時間38分15秒で、銅メダルはナオミ・ラング Naomi Lang (GBR)が5時間38分54秒で獲得しました。

優勝したアレクサンダーソンは、「3週間前の転倒を繰り返さないよう、今日は下りでより慎重になった。登りでは少しペースが遅いように感じたけど、全体としては素晴らしいレースで、コースをとても楽しめた」とコメントしました。

日本から参加の髙村貴子 Takako Takamura はこちらもコーススタート直後にハチに刺されるトラブルがあったためか、序盤に出遅れます。後半には順位を徐々に上げたものの、今回は女子52位でのフィニッシュとなりました。

レースを終えた髙村貴子 Takako Takamura。 Photo © DogsorCaravan

レースを終えた髙村貴子 Takako Takamura。 Photo © DogsorCaravan

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Short Trail Women

ショート女子優勝のアレクサンダーソン(中)、2位のアロンソ(左)、3位のラング。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

ショート女子優勝のアレクサンダーソン(中)、2位のアロンソ(左)、3位のラング。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos

  1. トーヴェ・アレクサンダーソン Tove ALEXANDERSSON (SWE) 5:04:20
  2. サラ・アロンソ Sara ALONSO (ESP) 5:38:15
  3. ナオミ・ラング Naomi LANG (GBR) 5:38:54
  4. イダ・アメリエ・エイド・ロブサーム Ida Amelie Eid ROBSAHM (NOR) 5:44:54
  5. アンナ・プラトナー Anna PLATTNER (AUT) 5:45:40
  6. クレメンティーヌ・ジョフレ Clementine GEOFFRAY (FRA) 5:46:28
  7. ジェーン・マウス Jane MAUS (USA) 5:48:23
  8. イクラム・ラルサジャ Ikram RHARSALLA (ESP) 5:53:19
  9. ヨハンナ・ゲルフグレン Johanna GELFGREN (SWE) 5:56:41
  10. バルボラ・ブコブヤン Barbora BUKOVJAN (CZE) 5:56:43
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52 髙村貴子 Takako TAKAMURA (JPN) 6:41:34

女子団体は、アレクサンダーソンの圧巻の走りにチームメイトが続き、スウェーデンが金メダルを獲得しました。

女子団体結果

  • 金メダル: スウェーデン – 17:14:42
  • 銀メダル: スペイン – 17:29:04
  • 銅メダル: フランス – 17:55:55

歴史を刻むカンフランクのショートトレイルコース

今大会のショートトレイル競技は、この地域を象徴するレース、カンフランク・カンフランク Canfranc-Canfranc のマラソン競技と全く同じコースが使用されました。 このコースは、ピレネーの壮大な自然美と、テクニカルで厳しいフィジカルが要求されるユニークなレイアウトで知られています。 選手たちは、1,500mを一気に駆け上がる急登から始まり、テクニカルな下りを経て、さらにスキー場などを通過し、最後は122もの伝説的なつづら折りを下ってフィニッシュラインを目指します。

世界選手権は、明日9月27日にロングトレイル、28日にクラシック(アップ&ダウン)とU20のレースが行われ、フィナーレを迎えます。

(Text (c) Sergio Mayayo, WMTRC2025 Canfranc Pirineos)

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