[DC] 伊豆を世界に誇るトレイルランニングのフィールドに・Izu Trail Journey、実行委員会訪問とコースの試走

来年、2013年3月10日に初めて開催されるIzu Trail Journey。この西伊豆の松崎町をスタートして、伊豆山稜線歩道を経由して修善寺に至る70キロのトレイルランニングレースは町から町へと向かうロマンある「旅」を思わせるコースが魅力的で、10月13日に始まったエントリー受付は翌日には1500人の定員が埋まってしまうほどの人気。


前評判の高いこのレースについての情報をお伝えすべく、当サイトは先週末に現地を訪ね、大会実行委員会の皆様にお話しを伺い、コースについても下見をしてきました。 この記事では、実行委員会の皆様のお話を紹介するとともに、コースの概要についてもご紹介します。

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伊豆トレイルランニングレース実行委員会の皆様。左から(岩佐)、副会長・高柳孝博さん、会長・齋藤省一さん、伊東直記さん(一般社団法人はな・ろま)、総合プロデューサー・千葉達雄さん。


Izu Trail Journey、開催までの経緯

My Photo Stream-555「伊豆ではかつて伊豆アドベンチャーレースというアウトドアイベントを開催していました」と語るのは伊豆トレイルランニングレース実行委員会副会長の高柳孝博さん。高柳さんはかつて主催者として伊豆アドベンチャーレースに関わってこられた。松崎をスタートしてシーカヤック、トレイルランニング、マウンテンバイク、ロープを使った沢登りなどで3日間にわたって200キロを超えるコースでのレースは1999年から2005年まで行われていた。「伊豆アドベンチャーレースはスタッフの負担が次第に重くなり2005年が最後となりましたが、この伊豆の自然を生かしたイベントができないものか、と考えていました」とのこと。

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総合プロデューサーの千葉達夫さんは「私も最初は選手として伊豆アドベンチャーレースに参加しました」とのこと。「もともと伊豆の出身で、選手として参加しているうちにアドベンチャーレースの運営を手伝うようになっていたんですよね」。その後、伊豆アドベンチャーレースが開催されなくなり、スポーツマネジメント会社で仕事をしていた千葉さんは、アドベンチャーレースで活躍していた田中正人さんに誘われて2007年のハコネ50kを観戦する。「ハコネ50kのスタート、ゴールをみていてとてもいい雰囲気だったのが強く印象に残りました。こんなレースを伊豆でできたらいいなと思ったのを覚えています」と千葉さんは語る。

その後、千葉さんは仕事を通じて接点のあった、トレイルランナー・鏑木毅さんに伊豆でのトレイルランニングレースの構想を相談。かつて伊豆アドベンチャーレースを主催されていた松崎町の方々と伊豆でのレース開催に向けた準備や関係者の皆さんとの話し合いを経て、いよいよ昨年6月にIzu Trail Journeyの開催に向けたプロジェクトがスタートした。

「開催する以上は、今後のトレイルランニングレース運営のモデルとなるようなしっかりした運営にしたいと考えています」との意気込みをみせる千葉さん。3月の伊豆は寒さも残り、コースの多くは山深いルートを通る。ランナーに携行を求めるアイテムのリストはしっかり定め、レース前には全選手について装備チェックを行う予定とのこと。このほかにも見やすく整理された大会ウェブサイトなど、全般にウルトラトレイル・マウントフジを参考にした質の高い運営を目指していると当方は感じた。


伊豆とトレイルランニング

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漆喰のなまこ壁が美しい伊豆文邸。脇にはいつでも入れる足湯も。どこか情緒ある建物が並ぶ松崎の街は映画やドラマのロケ地としても知られる。

「温泉と宿、海の幸を楽しむだけでない、伊豆の自然の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と話す大会実行委員会・会長の齋藤省一さんは松崎町観光協会の会長を務める。「伊豆は海と山に囲まれた自然の宝庫。幅広い世代の方達に魅力を知っていただき、新しい伊豆観光の魅力を提案したいと思っています。伊豆全域にわたって、かつて生活道路として使われていた山道はたくさんあり、そうした山道でのトレイルランニングの提案もしていきたいですね。このIzu Trail Journeyをきっかけに伊豆の各地でレースを開催したり、トレイルランナーが気軽に立ち寄って交流できるような拠点をつくったり、といったことができればいいと考えています。」これまで、伊豆のトレイルランニングのルートというと伊豆山稜線歩道が知られる程度だったが、今後は関東からも交通の便がよく、海と山が楽しめる伊豆がトレイルランニングのメッカとなることも期待できるかもしれない。

Izu Trail Journey、コースの概要

Izu Trail Journeyの70キロのコースはバラエティに富んだコースでランナーを飽きさせない。序盤には廃道となっていたトレイルを整備した再生古道、そして17キロに及ぶ長い未舗装林道。二本杉峠から始まる伊豆山稜線歩道は明るいブナの森、スズタケ、クマザサの先にくっきりとトレイルが浮かぶ風景。海と港町、富士山の眺め、そして最後は修善寺の温泉街へのフィニッシュ。当方が下見した印象をもとにそのコースを紹介したい。

1. スタート・松崎港から宝蔵院(8.5km)まで

コースは松崎町の北部の松崎港をスタート。当日は午前6時にここをスタートする。3月10日の松崎町の朝の気温は平均で7℃くらい。ちなみに松崎町の最高気温は13℃くらいでコース最高地点に近い天城高原の日中の最高気温は5℃くらい。

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スタート地点の松崎港。堤防には釣り人が多数。

国道136号線に出てすぐに山沿いを登る舗装路の県道へ。高台に民宿やみかん畑をみながら登りが3-4kmほど続く。

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伊東さんが代表をつとめる「はな・ろま」ではカワノリの養殖も手がけているとのこと。

舗装路から北に伸びる尾根沿いの登りのトレイルへ。ここから桜田再生古道トレイルへ。かつて伊豆アドベンチャーレースの運営に携わっておられた 伊東直記さんによれば、「このトレイルはかつては林業や炭焼きの作業道として使われていたものの最近まで廃道となっていました。今回、このレースを行うに当たってこのあたりのルートを調べていたところ、地元でマウンテンバイクをやっている方がこのトレイルを少しずつ整備していることがわかりました。今回はそのコースをレースに活用することになります」とのこと。

ただ、下見した週末は行き先を示す道標などはまだついておらず、どちらに行けばよいか迷う分岐もありGPSとコンパスで丹念に現在地を確認しながらルートファインディングする必要があった。現時点では準備なしにこの部分を試走するのはリスクが伴うように思われた。

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桜田再生古道トレイルの分岐の例。右か左か。

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杉林の中を進む再生古道トレイル。

スタートから7kmちょっとでロードに出て、数百mでロードが合流するT字路へ。この脇に富貴野山山頂の宝蔵院に至る参道・大師道への入り口がある。コースは大師橋を渡って右側の女坂を進む模様。

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宝蔵院への参道の入り口を示すしるし。

女坂の登り数百mを登り切ると駐車場があり、ここが宝蔵院のWP(ドリンクのみのエイド)となる模様。このレースのエイドステーションはドリンクや補給食に加えて、エイドごとに地元のおもてなしも用意される計画があるそうで、この宝蔵院でも何か体が温まるものが振舞われるかもしれない。ここから次のエイドステーション、AP1・こがね橋(25km地点)までは17km近くあるので、十分な補給をしておきたい。

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宝蔵院の駐車場。ここがWP(ドリンクのエイド)となると思われる。

2. 宝蔵院(8.5km)から八瀬峠(12.1km)まで

ここから宝蔵院敷地内の森(富貴野山21世紀の森)に入る。コース表示がないと幾つかある道標に戸惑うが、長九郎遊歩道へ向かう表示に従う。トレイルは深い森の中で美しい。途中で南側の大沢温泉から登るトレイルとの合流点(出合)を通り、4km弱のトレイルでCP1・八瀬峠(12.1km地点)に到着。特段の目立った地名表示はないが長九郎山への登山道の入口がある。コースはこの標高820mの八瀬峠まで上り基調が続くのだが、急な箇所は少なく、レース序盤であればすんなりいけてしまいそうだ。

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長九郎遊歩道。深い森の中を進むトレイル。

3. 八瀬峠(12.1km)から二本杉峠(32.4km)まで(試走が認められていない区間)

八瀬峠からは未舗装の国有林道に入り、二本杉峠への登り口まで17キロほど林道が続く。この部分は大会実行委員会によれば「森林管理署はトレイルランニングの試走は不可との見解」とのことで、現時点では試走はできない。

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八瀬峠。正面に見えるのは長九郎山への登山口。コースは林道を左に進むことになる。

コースは八瀬峠から約8kmでCP2・諸坪峠(20.3km地点)に。地図によればここまでの長九郎林道は緩やかな前半の下りと後半の登り。ここからは東の荻野入林道へ入る。諸坪峠からはしばらく川沿いの下りの林道へ。4.6kmほどでAP1・こがね橋(25km地点)へ。ここから次の仁科峠のエイドまでも17kmほどあり、十分な補給をここでしておく必要がありそうだ。

こがね橋から6kmちょっとで二本杉峠へと登りあげるトレイルの入口に到着することになる。ここからは実際に試走したが、二本杉峠への登りは高低差で100mほど、距離1kmほどだが、沢沿いの登りなのでややガレた箇所があったり、少しルートがわかりにくい箇所がある。沢沿いを登り切ってしばらく尾根沿いのトレイルを進むと標高820mのCP3・二本杉峠(32.4km地点)に到着。

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二本杉峠。かつての天城峠で、江戸時代に下田に着いたハリスはここを通って江戸に向かったという。


4. 二本杉峠(32.4km)からフィニッシュ(70km)まで

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朝の二本杉峠。

ここからは伊豆山稜線歩道へ入ることになる。ハイキングコースとしてよく整備され、道標も多く試走もしやすいパートだ。トレイルランニングのルートとしてもよく知られているので詳細は割愛するがいくつか気がついたポイントを。

  • 二本杉峠からはしばらく南側斜面に付いたトレイルを経て滑沢峠に出る。この先、三蓋山(みかさやま)の手前に、台風で斜面のトレイルが崩壊した箇所があったが、ここは今回試走した際には安全に通れるように修復済みだった。
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滑沢峠へ向かう。

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三蓋山から天城峠側にあった崩落箇所は修復されていた。

  • 三蓋山の前後は広場状で踏み跡が見つけにくいところもあるので、随所におかれた道標を確認しながら進む。
  • 猫越岳(ねっこだけ)前後あたりからコース全体にわたって倒木をまたいだりくぐったりする箇所が多い。ニットキャップなどで頭を保護しておくとよさそう。
  • 仁科峠(42.2km地点)にエイド(AP2)がおかれる。次のエイドはAP3・土肥駐車場(53.6km地点)。
  • 仁科峠から風早峠、宇久須峠、魂の山と海が見える眺めのよいトレイル。しかし登り下りは急で木段が付いていることが多く、コンディション次第では滑りやすそう。

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  • 魂の山から土肥峠、南無妙峠のあたりは杉林となり、木陰でしっとりとした雰囲気。
  • 船原峠の先から一旦、一旦伊豆スカイラインのロードの登りで2kmほど進むとAP3・土肥駐車場(53.6km地点)。眺めがすばらしい。ここから先はエイドがないので注意。
  • 最後の大きいピーク、達磨山で強い風に吹かれながら駿河湾越しの富士山を眺めれば、だるま山高原レストハウスまではもうすぐ。だるま山高原レストハウスはCP5(60.5km地点)なのでエイドはないが、駐車場もあるので応援の人も多そう。
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達磨山山頂。

  • だるま山高原レストハウスからは、ゆるい下りが続く。だるま山高原キャンプ場の中を抜け、道路沿いのトレイルを進むと一旦ゴルフ場そばのロードを1キロほど。交通量が多く、歩道が設けられていないので、試走する場合(特にグループで試走する場合)は安全に気をつける必要がある。
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修善寺温泉へと向かうトレイルは快適。

  • ゴルフ場のクラブハウス前を過ぎて練習場のあたりから北側のロードに入る。虹の郷の北側のトレイルを通って修善寺自然公園へ。ここから南に進んで北又川を渡って東に進むと、やがて修善寺の温泉街に。独鈷の湯公園でフィニッシュ。
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フィニッシュの独鈷の湯公園。弘法大師が開いた温泉とのこと。

今回の試走は写真をとったり、コースを確認したり、着替えなどの荷物を背負いながらで二本杉峠からフィニッシュまでの38kmで7時間半かかった。14時間という制限時間を考えると、ジャーニー=「旅」とはいうものの、フィニッシュ地点まで旅を続けるには林道をしっかり走り、後半もそれなりに動ける体力を残しておく必要がありそうだ。


試走するならこんなプラン

このコースを試走するならどんな計画になるだろうか。現時点では国有林道の試走が認められていないこと、桜田再生古道トレイルの試走が難しいことを考えると、後半の二本杉峠以降だけを試走するというのが現実的かもしれない。

  • 朝、バスで修善寺駅から天城峠まで。天城峠から伊豆山稜線歩道に入ってだるま山高原レストハウス、または修善寺温泉まで40キロ強を一気に走る。修善寺温泉の日帰り湯で汗を流して日帰り。
  • 修善寺温泉あたりで一泊。午前中に宿に入り、バスか宿にクルマで送ってもらって天城峠へ。20キロ強を走って船原峠からロードでバス停(大曲茶屋)から修善寺に戻る。翌日、船原峠に戻り、残りのコースを修善寺温泉まで。

コース前半部分を一部だけでも試走し、松崎の街を観光したい、ということなら松崎から河津方面の移動が必要になるため、計画は難しくなる。タクシーでの移動や荷物を全て背負う等の工夫が必要になりそうだ。

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