[DC] 初応募・初挑戦には超狭き門・Hardrock 100の抽選

アメリカの100マイルレースで、コロラド州サンフアン山脈で開催されるHardrock Hundred Mile Endurance Run (HR100)。来年7月12日に開催されるHR100のエントリーの抽選が日本時間の16日日曜日の深夜に行われ、863人の応募者から140人が出場権を得て、133人がウェイティングリストに載った。

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HR100はSilvertonの町を起点/終点とする累積獲得高度33,993フィート(10,361m)、コースの平均標高が11,000フィート(3,352m)という壮大な山岳レース。累積獲得高度や平均標高はUltra Trail du Mont Blanc/UTMBを優に超える。コースの最高標高は14,048フィート(4,294m)に達する。壮大な氷河地形を眺めながらの高所での大きなアップダウンのコースは、トレイルランナーなら誰もが憧れるレースだ。

Hardrock 100 | Hardrock Hundred Mile Endurance Run
HR100の大会ウェブサイト


12月16日に行われた2013年のHR100の抽選結果

トレイルランニングの人気を反映して、年々応募者は増加。一方で一回の出場者は140人に限られるため、抽選での当選確率は2%にも満たない(初応募の場合)。抽選の結果のハイライトは次の通り。詳しくは下のiRunFar.comの記事をご覧ください。

Hardrock 100 2013 Lotto Results
  1. 男子有力選手ではこれまで5度優勝しているKarl meltzer、2010年優勝のJared Campbell、2012年2位のJoe Grantが当たり。海外からはUTMBなどでおなじみのSebastien Chaigneauが出られる可能性の高いウェイトリスト入り(初参加の部4番)。
  2. 当たらなかった、またはウェイトリスト下位の主な選手は次のようにめまいがするほどの有力選手が並ぶ。抽選が本当に運で決まったことをうかがわせる。Kilian Jornet, Adam Campbell, Duncan Callahan, Mike Foote, Anton Krupicka, Dave Macky, Mike Wolfe, Mike Wardian, Luke Nelson, Jason Schlarbなどなど。なお、昨年優勝で優先出場権を持つHal Koernerはエントリーしていない。
  3. 女子有力選手では2008-11年に4連覇しているDiana Finkel、昨年優勝のDarcy Africa, WS100で優勝しているTracy Garneauのほか、HR100で優勝歴のあるBetsy Kalmeyer、Betsy Nyeなど。出られる可能性の高いウェイトリストではUTMBで5度優勝のLizzy Hawker(初参加の部5番目)など。
  4. 女子で当たらなかった、またはウェイトリスト下位ではAnna Frost、Nikki Kimballなど。
  5. 日本関連では、米国在住のNegoroさん、Miyazoeさん、Yamagataさんが当たり。この他、先般当サイトでも紹介した高松在住の尾形鉄郎さんがウェイトリスト上位で出場の可能性大(初参加の部3番目)。今年出場でUTMF9位の礒村真介さんや横山峰弘さん、大内直樹さんは外れ(ついでに当サイトの岩佐も外れ)。

Hardrockは下に解説するように、これまでのHardrockの出場回数に応じて参加者数の枠を決めており、その結果として今年のように初めて出場しようと応募してきたランナーが抽選で選ばれる可能性は低くなる。一方でかつてここまでトレイルランニングの人気が高まる前に、何度もHardrockを走っているランナーは比較的高い確率で走ることができる。

このことについてはいろいろな意見はあるだろうが、当方としてはそうしたレースがあってもよいし、それがトレイルランニングというスポーツの特徴だと考えることができると思う。140人という出場者数はコースの保護と安全確保のために決まる上限。一方、このレースに注目し、世界の有力選手がしのぎを削る世界選手権にしたり、世界の有力選手が友好を深める親善イベントにする義理はどこにもない。このエリアの山を愛し、昔からこのレースを手作りで運営して楽しんできたコミュニティのためのイベントなのだ、という判断があるのならそれは尊重されるべきだろう。その意味では、今後のこのスポーツの方向について考える一つのモデルケースだといえるかもしれない。

Hardrock 100の抽選の概要

以下は今回行われた2013年のHR100の抽選の仕組み。詳しくは以下のリンク先をご参照。2014年以降の抽選の仕組みは変更されるかもしれません。

Hardrock 100 Lottery | How the Lottery Works
HR100の抽選の仕組み

応募資格

  1. 過去5年以内に開催されたHR100を1回以上完走していること(2014年の応募では「過去3年以内」に変更される)。
  2. 直近に開催された3回以内のHR100をスタートしていること(2014年の応募ではこの条件は除かれる)。
  3. 2011年または2012年に行われた主な100マイルレースを一つでも完走していること(対象となるレースのリストはこちら。日本のレースではウルトラトレイル・マウントフジが含まれている。

出場者のカテゴリーと人数の配分

140人のエントリー枠は以下のカテゴリーに分類され、それぞれ出場者の人数が配分される。

初参加の部/First-timersまたはNever-run:35人
一度もHR100を走ったことがない人。全くの初応募の場合はチケット1枚。過去にDNSだったことがある人(ウェイトリストに載った、または出場者またはウェイトリストに載っていたが辞退したことがある人)はそのDNSの回数n回に対して、2^n枚のチケットが得られる(過去に3回ウェイトリストに乗ったことがある人は2^3=8枚のチケットが得られる)。

ベテランの部/Veterans:35人
過去に5回以上HR100を完走している人(2014年以降の抽選では直前に2年連続で途中棄権するとベテランの部ではなく下の「その他」の部に含まれる。以後完走すると翌年はベテランの部に復帰する)。過去の完走回数と同じチケットが得られる。

「その他」の部/Everyone else:70人
上記の二つに該当しない人。すなわち一度はHR100に出たがまだ5回に達していない人。過去の完走回数と同じチケットが得られる。

これも読む
【追記あり】DC Weekly 2022年7月18日 Hardrock 100、Badwater 135、Eiger、野沢温泉

それぞれのカテゴリー毎に抽選が行われ、順位のついたウェイトリストが設けられる(抽選された出場者が都合で出られなくなった場合、ウェイトリストで上位にある人から出場できる)。

2013年の抽選の当選確率

それぞれのカテゴリーの当選確率の概要は、下のブログ記事の試算によれば以下のようなもの。この抽選のように、複数のチケットを持つ人が当たり一個を引く確率は超幾何分布に従い、さらにより多くのチケットを持つ人が当たりを引いたあとは残りの人が当たる確率は高まる、などの条件をあれこれシミュレーションして、、といった計算をするので幾つか異なる試算結果がある模様。ただ、大まかな概要はどの試算も同じだ。わかるのは、一度でも完走した人(「その他」の部の人)は一度も完走していない人と比べて格段にチャンスが増すことだ。逆に初めて応募する人はわずか2.3%の当選確率しかなく、これは来年以降このレースの存在を知ってより多くの人が初めて参加しようとすればますます低い確率になることを意味している(一方、一度でも出たことのある人は比較的高い確率<といっても15%位からだが>で当たることになる)。

Yonder Mountain Trail Runner: Hardrock 2013 Odds

初参加の部/First-timersまたはNever-run:応募者619人、チケット1801枚、出場者35人
チケット1枚:2.3%
チケット2枚:4.5%
チケット4枚:8.8%
チケット8枚:16.8%
チケット16枚:30.8%
チケット32枚:52.3%
チケット64枚:77.6%

ベテランの部/Veterans:応募者44人、チケット356枚、出場者35人
チケット5枚:76.7%(定義によりこのカテゴリーの応募者は最低5枚のチケットを持つ)
チケット18枚:99.7%(最多完走者は18回完走)

「その他」の部/Everyone else:応募者191人、チケット638枚、出場者70人
チケット1枚:15.0%
チケット2枚:27.7%
チケット3枚:38.6%
チケット4枚:47.8%
チケット5枚:55.7%
チケット6枚:62.4%

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